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パーコレーションの臨界確率 に関する研究

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(1)

パーコレーションの臨界確率 に関する研究

教育学研究科教育科学専攻 理数生活系教育領域 215M020

坂倉史健

2017 2 10 日提出

(2)

目次

1

概要および本論文の主な主張

1

1.1

概要

. . . . 1

1.2

背景

. . . . 1

1.3

主な主張

. . . . 1

2

確率論における基本的な定理および概念

7 2.1

集合における基本的な定理

. . . . 7

2.2

可測空間

. . . . 10

2.3

確率空間

. . . . 12

2.4

函数空間

L

p

(X) . . . . 18

3

パーコレーション

22 3.1 Z

2上での浸透確率

θ(p)

のいろいろな性質

. . . . 22

3.2

パーコレーションの相転移と基本的な定理

. . . . 29

4 Sharp threshold theorem 38 4.1 sharp threshold theorem . . . . 38

4.2 sharp threshold theorem

の証明

. . . . 42

4.3

横断確率の変化

. . . . 54

5

横断確率と

RSW

定理

56 5.1 RSW

定理

. . . . 56

5.2 p

0

= 1/2

の証明

. . . . 59

5.3 p

c

= 1/2

の証明

. . . . 63

5.4

代表的な格子の臨界確率について

. . . . 67

6

無限クラスターの一意性

70 6.1 Newman-Schulman

の議論

. . . . 70

6.2 N

1 a

s

.であること

. . . . 71

7

マルコフ連鎖

74 7.1

状態の分類

. . . . 74

8

ゴルトン

-

ワトソン分枝過程

79 8.1

ゴルトン

-

ワトソン分枝過程

. . . . 79

8.2

定理

8.1

の証明

. . . . 80

(3)

9

ツリー上における臨界確率の一意性

86

9.1

ツリーについて

. . . . 86

9.2 n

分ツリーでの臨界確率の一意性

. . . . 86

(4)

1 概要および本論文の主な主張 1.1

概要

本論文では,次の

3

つの結果を紹介する.

1

つ目は,パーコレーションの臨界確率

p

cの値について考え,その 値が 12 に定まることで,

2

つ目は,ボンドパーコレーションにおいて臨界確率

p

c

p

T の一意性を示すことであ る.そして

3

つ目は,ツリー上においてパーコレーションの臨界確率

p

c

p

T の一意性が成り立つことおよび,

そのときの臨界確率の正確な値について求めたことである.

1.2

背景

臨界確率

p

c

=

12

Kesten

による結果であるが,

Bollobas-Riordan

が注意したように

sharp threshold theorem

を使うことで,簡単に証明できるようになった.本論文では,

sharp threshold theorem

を使った

p

c

=

12の証明 を紹介する.

また,臨界確率

p

c

p

T の一意性は

1980

年に

Kesten

によって解かれており,さらにこの二つの値が

Z

2にお いて 12に等しいことまでが示されている.

本論文では以上

2

つの結果を丁寧に解説するように努めた.そのうえで,ツリー上におけるパーコレーション の臨界確率

p

c

p

T の一意性が成り立つことおよび,そのときの臨界確率の正確な値について得られた結果を報 告する.

1.3

主な主張

1.3.1

パーコレーションとは

Percolation

という言葉を辞書で引くと「浸透」「しみ出し」という訳語が書いてある.

1957

J

M

Ham-

mersley

は,パーコレーションを数学的問題として提唱し,果樹園における病害虫の広がり方を一つの例と

した.

まず,グラフ上のパーコレーションの一般的な定義を与える.その後

Z

2上におけるパーコレーションの定義を 与える.

V

を可算無限集合とし,

v

0

V

を原点として固定する.

E

V × V

の部分集合とし,

(v, w) E

ならば

(w, v) E

を満たすものとする.このとき,

(v, w)

(w, v)

を同一視しておく.そして,

G = (V, E )

を無限グラ フと呼び,

E

の元を ボンド と呼ぶ.

G

は連結であるものとする.このとき

E

の各ボンドを独立に確率

p

で開き,

確率

1 p

で閉じるとする.これを表すのに,

Ω = { 0, 1 }

Eを使う.

は配置空間

(configuration space)

と呼ば れ,その元

ω

は配置

(configuration)

と呼ばれる.配置

ω

が決まると,ボンド

b E

ω(b) = 1

なら開いて おり,

ω(b) = 0

なら閉じている.このとき

ω(b)

の値は確率

p

1

となり,確率

1 p

0

となる.それぞれのボ ンドの状態が独立であることにより,

上では直積測度

P

pが与えられる.つまり

P

pは,任意の有限個のボンド

b

1

, b

2

, . . . , b

nと任意の

0

または

1

の値の列

a

1

, a

2

, . . . , a

nに対して,

P

p

(ω(b

i

) = a

i

, 1 i n) = p

a1+···+an

(1 p)

na1−···−an を満たす

上の確率測度である.

(5)

V × V

の点列

v

1

, . . . , v

kが路

(path)

であるとは任意の

1 i k 1

に対して

b

i

= { v

i

, v

i+1

} ∈ E

となるとき にいう.路はつながったボンドの列である.

U V × V

が連結であるとは

U

の任意の

2

u, v

に対して

U

内の

{ v

1

, v

2

, . . . , v

k

}

がとれて

v

1

= u, v

k

= v

を満たすときにいう.

{ v

1

, . . . , v

k

}

が配置

ω

の開路

(open path)

であるとは,任意の

1 i k 1

に対して

ω(b

i

) = 1

を満たすこ とをいう.

U E

ω

において開路連結

(open connected)

であるとは

U

の任意の

2

点の

u, v

に対して

U

内に

ω

の開路

{ v

1

, . . . , v

k

}

がとれて

v

1

= u, v

k

= v

を満たすときにいう.配置

ω

に対して極大な開路連結集合を開ク ラスタ―と呼ぶ.

v E

に対して

v

を含む

ω

の開クラスターを

C

v

(ω)

とかく.とくに

v

が原点

v

0のとき

C

v0

(ω)

と書く.一つの開クラスター

C

v

(ω)

が無限集合の時,これを無限開クラスターと呼ぶ.

以上の準備のもとに,パーコレーション問題を定義していく.

定義

1.1 θ(p)

を原点が無限開クラスタ―の中に含まれている確率とする.すなわち

, θ(p) = P

p

( | C

v0

| = )

このとき,

θ(p) > 0

ならば

,

パーコレーションが存在するという.ただし,

| C

v0

|

は原点を含む開クラスターに属 する点の個数とし,

p

はボンドが開く確率とする.

定義

1.2

パーコレーションの臨界確率

(critical probability)

を以下で定義する.

p

c

= inf { p [0, 1]; θ(p) > 0 }

次に,

Z

2上のパーコレーションについて定義する.

J.M.Hammersley

の果樹園における病害虫の広がりを例に 説明しよう.まず,果樹園の樹木を碁盤の目のように並べるとする.このとき,この碁盤の目は一対の整数の組

(x

1

, x

2

)

によって表すことができ,無限に広がった碁盤は

Z

2

= { (x

1

, x

2

); x

1

, x

2は整数

}

と表すことができる.

x = (x

1

, x

2

)

に対して,

| x | = √

(x

1

)

2

+ (x

2

)

2と表すとき,隣り合った樹木は,

| x y | = 1

となり,その

Z

2

2

点の対

{ x, y }

で表されたものをボンド

(bond)

と呼ぶ.

Z

2のボンド全体を

E

2と書き

E

2

= {

{ x, y } ; x, y Z

2

, | x y | = 1 }

と表す.それぞれのボンドはランダムに開いているか閉じているかしている.これを表すのに,

Ω = { 0, 1 }

E2 使う.

は配置空間

(configuration space)

と呼ばれ,その元

ω

は配置

(configuration)

と呼ばれる.配置

ω

が決まると,ボンド

b

ω(b) = 1

なら開いており,

ω(b) = 0

なら閉じている.このとき

ω(b)

の値は確率

p

1

となり,確率

1 p

0

となる.

ボンドどうしをつなげた路

{ x

1

, . . . , x

k

}

が配置

ω

の開路

(open path)

であるとは,任意の

1 i k 1

に対 して

ω(b

i

) = 1

を満たすことをいう.

V Z

2

ω

において開路連結

(open connected)

であるとは

V

の任意の

2

点の

x, y

に対して

V

内に

ω

の開路

{ x

1

, . . . , x

k

}

がとれて

x

1

= x, x

k

= y

を満たすときにいう.配置

ω

に対し て極大な開路連結集合を開クラスタ―と呼ぶ.

x Z

2に対して

x

を含む

ω

の開クラスターを

C

x

(ω)

とかく.と くに

x

が原点

O

のとき

C

O

(ω)

と書く.一つの開クラスター

C

x

(ω)

が無限集合の時,これを無限開クラスターと 呼ぶ.

以上の準備のもとに,

Z

2におけるパーコレーション問題について定義していく.

(6)

定義

1.3 θ(p)

を原点が無限開クラスタ―の中に含まれている確率とする.すなわち

, θ(p) = P

p

( | C

O

| = )

このとき,

θ(p) > 0

ならば

,

パーコレーションが存在するという.ただし,

| C

O

|

は原点を含む開クラスターに属 する点の個数とし,

p

はボンドが開く確率である.

定義

1.4

パーコレーションの臨界確率

(critical probability)

を以下で定義する.

p

c

= inf { p [0, 1]; θ(p) > 0 }

定義

1.5

期待値による臨界確率

p

T は以下のように定義される.

p

T

= inf { p [0, 1]; E

p

( | C

O

| ) = ∞}

以上をもとに

3

つの結果を紹介する.

1.3.2

パーコレーションにおける臨界確率について

臨界確率

p

cについてその値が12であることを示す前に,以下のことが示される.

定理

1.6 Z

2上のパーコレーションにおいて,臨界確率

p

cは次を満たす.

1

3 p

c

2 3

この定理により臨界確率

p

cのおよその値がわかるだろう.そして,さらに正確な

p

cの値を求めるために次の

3

つの定理および

sharp threshold theorem

,横断確率の変化について考える.

定義

1.7

n上の関数

f

が単調増加

(increasing)

であるとは

ω η

ならば

f (ω) f (η)

となることをいう.

f

が単調減少

(decreasing)

であるとは

f

が単調増加なときにいう.

定義

1.8

事象

A

に対して

1

A

(ω) = {

1, ω A 0, ω / A

と定めると,

1

A

(ω)

が単調増加なとき

A

は単調増加という.

1

A

A

の指示関数と呼ばれる.

定理

1.9 (Harris-FKG

不等式

) Ω

n上の単調増加な関数

f

g

に対して

E

p

(f, g) E

p

(f )E

p

(g)

が成り立つ.

(7)

定理

1.10 (BK

不等式

) A, B

nの単調増加な事象とするとき,

P(A B) P (A)P(B)

ただし,

A B = { ω

n

; J K(ω), [1]

J

A

かつ

[1]

K(ω)\J

B } , K(ω) = { 1 j n; ω(j) = 1 } , [1]

J

= { ω(j) = 1, j J } .

A B

とは,図のように

x

y

とをつなぐ開路が存在する事象

A

u

v

とをつなぐ開路が存在する事象

B

とすると,それぞれが交わら ないという事象である.

x u y

v A B

定理

1.11 (Russo

の公式

) A

nが単調増加なとき

, d

dp P

p

(A) = ∑

1≤i≤n

P

p

(∆

i

A)

ただし,

i

A = { ω

n

; i

A

に関して

ω

pivotal }

である.

A = { ω

n

; x

y

がオープンパスでつながる

}

として

i

A

関して

ω

pivotal

であるとは,図のように

i

を開くか閉じるかに

よって

A

が起こるか否かが決まるようになっていることである.

y

x i

i

A

に関して

ω

pivotal

また,この等式は,

P

p

(A)

の微分は,

pivotal

な点の数の期待値によってあらわされることを意味する.

さらに独立確率変数列の特徴を示すひとつとして

sharp threshold theorem

を考える。この定理をパーコレー ションへ応用し横断確率の変化につなげる.

定理

1.12

ある定数

K > 0

n, p

に依存せず存在して

,

任意の

0 p 1

と任意の単調増加な

A

nに対 して

P

p

(A)(1 P

p

(A)) K(1 p) log 2 p(1 p)

i≤n

P

p

(A

i

)

log 1

(1 p)P

p

(A

i

)

ただし,

A

i

= A

i

A

とする.

この式を少し変形して

Russo

の公式を用いると次の系を得る.

1.13 ε

= sup

0≤p≤1

sup

1≤i≤n

P

p

(A

i

)

とおくと

,

ある定数

K

> 0

n

p

によらず存在して,

p

1

< p

2に対して常に

P

p1

(A)(1 P

p2

(A))

)

(p2p1)K

このとき,

ε

0

なら,

P

p1

(A) 0

P

p2

(A) 1

かのどちらかが成り立つことがわかる.

(8)

次に,

sharp threshold theorem

のパーコレーションへの応用としての横断確率の変化について考える.

補題

1.14 S(n) = [ n, n]

2

, ∂S(n) = { (x

1

, x

2

) Z

2

; max {| x

1

| , | x

2

|} = n }

とする.このとき,ある

C > 0

c > 0

に対して

n 1

ならば

P

1/2

(

原点と

∂S(n)

を結ぶ開路がある

) Cn

c となる.

O

∂S(n)

原点

O

∂S(n)

を結ぶ開路

1.15

θ ( 1

2 )

= 0

したがって

p

cの定義より

p

c

1/2

である.

また,

Q

n

= [0, n] × [0, n](Z

2の正方形

)

とし,

H(Q

n

) = { Q

nを左右に横断する開路がある

}

とおく.

1.16

ε

= sup

0≤p≤1

sup

b={x,y}⊂Qn

P

p

(H (Q

n

)

b

H (Q

n

))

とおくとき

,

ε

2P

1 2

(

原点と

∂S (⌊ n

2

⌋)

を結ぶ開路がある

)

が成り立つ.ただし,

u > 0

に対して

u = max { k; k

は整数で,

k u } .

したがって特に

n → ∞

のとき,補題

1.14

により

ε

0

である.

以上の定理を用いて次の定理が示される.

定理

1.17

p

c

= 1 2

つまり,平面の正方格子

Z

2のパーコレーションにおいて,臨界確率は

1/2

である.

1.3.3

臨界確率の一意性

定理

1.18 p < p

cのとき,定数

K > 0, c > 0

が存在して任意の

x Z

2に対して

τ

p

(0, x) Ke

c|x|

が成り立つ.ただし,

τ

p

(0, x) = P

p

(C

O

= C

x

)

である.

この定理より次の系を得る.

(9)

1.19

p

c

= inf { p [0, 1]; E

p

( | C

0

| ) = ∞}

つまり,

p

c

= p

T となり臨界確率の一意性がわかる.

1.3.4

ツリー上における臨界確率の一意性について

ツリーについて説明する.

例えば

2

分ツリーの場合について考える.まず,ルートと呼ばれ る特別な点が存在する.ルートには

2

人の子ども

(

)

がいて,また その

2

人の子どもにはそれぞれ

2

人の子どもがいる.このような状 況が以下同様に続いていくと考える.つまり,ルートは第

0

世代,

その子どもは第

1

世代,

· · ·

と続く.一般に

2

分ツリーの場合,第

k

世代では

2

k個の点が存在する.

ルートには

2

個の最近接点が存在し,他のすべての点には

3

個の 最近接点が存在する.したがって各点から出発するボンドは

(

ルー トを除いて

)3

個存在する.

ルート

2

分ツリー

p [0, 1]

とする.各ボンドはすべて他のボンドとは独立に,確率

p

で開き確率

1 p

で閉じているとする.そ して

C

をツリー上の開路でルートにつながっている点の集合とする.つまり

C

はルートを含む開クラスタ―で ある.

また,

Z

nを開路でルートにつながっている第

n

世代の点の数とする.各点が次世代に

Y

個の点を生じさせる ものとし,

Y

を非負の整数値をとる確率変数で,その分布は

(p

k

)

k≥0で与えられる.式で表すと,

P(Y = k) = p

k

=

2

C

k

p

k

(1 p)

2k

(k = 0, 1, 2)

のようになる.

このとき次のような結果が知られている.

定理

1.20

m 1

ならば,

P (

任意の

n 0

に対して,

Z

n

1 | Z

0

= 1) = 0

m > 1

ならば,

P (

任意の

n 0

に対して,

Z

n

1 | Z

0

= 1) = 1 q > 0

ただし,

m = ∑

k=0

kp

kで期待値を表す.

この定理

1.20

を利用することで

2

分ツリーにおける臨界確率

p

cの値が12 であることが求められる.これをも とに,

2

分ツリーについて臨界確率

p

T の値を考えると次のことがわかった.

定理

1.21 2

分ツリーにおける臨界確率

p

c

p

T は一致し,その値は12 である.

また,このことを一般化し

n

分ツリーにおける臨界確率の値,および

p

T との一意性を考えると次のことがわ かった.

定理

1.22 n

分ツリーにおける臨界確率

p

c

p

T は一致し,その値は n1 である.

以上が,本論文の主な主張である.次章からこれらの主張を証明していく.

(10)

2 確率論における基本的な定理および概念

前章の主な主張を証明していく前に,確率論における基本的な定理および概念について紹介する.第

3

章から パーコレーションについて議論していく.

2.1

集合における基本的な定理

はじめに,集合における基本的な定理を証明しておく.

定理

2.1

ド・モルガンの法則

3

つの集合

X, A, B

に対して次が成り立つ.

X \ (A B) = (X \ A) (X \ B) (2.1.1)

X \ (A B) = (X \ A) (X \ B) (2.1.2)

( 2.1.1 )

の証明》

これを証明するために

x ̸∈ A B ⇐⇒ x ̸∈ A

かつ

x ̸∈ B

を示す.

x ̸∈ A B

とする.

x A

ならば,

x A B

となり矛盾するので,

x ̸∈ A

.同様にして

x ̸∈ B

がわかる.

また,

x ̸∈ A

かつ

x ̸∈ B

とする.

x A B

ならば,

x A

または

x B

となり,

x ̸∈ A

かつ

x ̸∈ B

に矛盾 する.よって,

x ̸∈ A B

以上より,

x ̸∈ A B ⇐⇒ x ̸∈ A

かつ

x ̸∈ B

である.

それでは

X \ (A B) = (X \ A) (X \ B)

を証明する.

x X \ (A B)

とする.

x X \ (A B ) ⇐⇒ x X

かつ

x ̸∈ A B

⇐⇒ x X

かつ

(x ̸∈ A

かつ

x ̸∈ B)

⇐⇒ (x X

かつ

x ̸∈ A)

かつ

(x X

かつ

x ̸∈ B)

⇐⇒ x (X \ A)

かつ

x (X \ B)

⇐⇒ x (X \ A) (X \ B ).

したがって,

X \ (A B) = (X \ A) (X \ B).

(2.1.2)

の証明》

(2.1.1)

より

X

を全体集合とみれば

(A B)

c

= A

c

B

c

(11)

が成り立っている.このことから

(A B)

c

= { (A

c

)

c

(B

c

)

c

}

c

= { (A

c

B

c

)

c

}

c

= A

c

B

c

.

したがって,

X \ (A B) = (X \ A) (X \ B).

定理

2.2

集合系に対するド・モルガンの定理

全体集合

X

の部分集合からなる集合系

{ A

λ

}

に対して,次が成り立つ.

(∪

λ

A

λ

)

c

= ∩

λ

A

cλ

(2.1.3)

(∩

λ

A

λ

)

c

= ∪

λ

A

cλ

(2.1.4)

( 2.1.3 )

の証明》

まず,

(∪

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ を示す.つまり

x (∪

λ

A

λ

)

c

= x

λ

A

cλ を対偶により示す.

x ̸∈

λ

A

cλ

⇐⇒

任意の

λ Λ

に対して

x A

cλでない.

=

ある

λ

Λ

に対して

x A

λ

.

⇐⇒ x

λ

A

λ

.

が成り立つ.よって,

x (∪

λ

A

λ

)

c

= x

λ

A

cλ

.

したがって,

(∪

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ が示された.

次に,

(∪

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ を示す.つまり

x

λ

A

cλ

= x (∪

λ

A

λ

)

c

(12)

を対偶により示す.

x ̸∈ (∪

λ

A

λ

)

c

⇐⇒ x (∪

λ

A

λ

)

c

でない.

= x

λ

A

λ

⇐⇒

ある

λ

Λ

に対して

x A

λ

.

= x ̸∈

λ

A

cλ

.

が成り立つ.よって,

x

λ

A

cλ

= x (∪

λ

A

λ

)

c

したがって,

(∪

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ が示された. 以上より,

(∪

λ

A

λ

)

c

= ∩

λ

A

cλ が成立する.

(2.1.4)

の証明》

上と同様に,まず,

(∩

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ を示す.つまり

x (∩

λ

A

λ

)

c

= x

λ

A

cλ を対偶により示す.

x ̸∈

λ

A

cλ

⇐⇒ x

λ

A

cλでない.

⇐⇒

ある

λ

Λ

に対して

x A

cλでない.

=

任意の

λ Λ

に対して

x A

λ

.

⇐⇒ x

λ

A

λ

.

が成り立つ.よって,

x (∩

λ

A

λ

)

c

= x

λ

A

cλ

したがって,

(∩

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ が示された.

次に,

(∩

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ

(13)

を示す.つまり

x

λ

A

cλ

= x (∩

λ

A

λ

)

c

を対偶により示す.

x ̸∈ ( ∩

λ

A

λ

)

c

⇐⇒ x (∩

λ

A

λ

)

c

でない.

= x

λ

A

λ

.

⇐⇒

任意の

λ Λ

に対して

x A

λ

.

が成り立つ.よって,

x

λ

A

cλ

= x (∩

λ

A

λ

)

c

したがって,

(∩

λ

A

λ

)

c

λ

A

cλ

が示された.以上より

(∩

λ

A

λ

)

c

= ∪

λ

A

cλ が成立する.

2.2

可測空間

は任意の集合を表すとし,

2

の部分集合の全体を表すとする.

定義

2.3 F ⊂ 2

であるとき,

F

上の部分集合族という.

定義

2.4

上の部分集合族

F

が次の条件を満たすとき,

F

上の集合体であるという:

1. ∅ ∈ F

2. A ∈ F ⇒ A

c

∈ F

3. A

B ∈ F ⇒ A B ∈ F

定理

2.5 F

上の集合体とする.このとき,次が成立する:

1. Ω ∈ F

2. A

B ∈ F ⇒ A B

A \ B

A B ∈ F

3. A

1

A

2

. . .

A

n

∈ F ⇒

n

i=1

A

i

n

i=1

A

i

∈ F

《証明》

1

の証明:

Ω =

c

∈ F

2

の証明:

A

B ∈ F

とする.

A B = (A

c

B

c

)

c

∈ F

A \ B A B

c

∈ F

A B (A \ B) (B \ A) ∈ F

(14)

3

の証明:

A

1

A

2

. . .

A

n

∈ F ⇒

n i=1

∈ F

を数学的帰納法により示す.

n = 1

のときは明らかである.

n = k

のとき命題が正しいと仮定する.

A

1

A

2

. . .

A

k

A

k+1

∈ F

とすると,帰納法の仮定より

k

i=1

A

i

∈ F

であるから,

k+1

i=1

A

i

= (

k

i=1

A

i

)

A

k+1

∈ F

が示され,

n = k + 1

のときも命題は正しい.

A

1

A

2

. . .

A

n

∈ F =

n i=1

A

i

∈ F

の方は,上記の結果にド・モルガンの法則を用いれば示される.

定理

2.5

3

が成立するからといって,

A

1

A

2

· · · ∈ F =

i=1

A

i

i=1

A

i

∈ F

が言えるとは限らない.そこで,上記のような可算個の集合の演算を自由に行えるような集合体を考える.

定義

2.6

集合

に対してその部分集合族

F

が次の条件を満たすとき,

F

上の

σ-

集合体であるという:

1. ∅ ∈ F

2. A ∈ F

ならば,

A

c

= Ω \ A ∈ F

3. A

1

, A

2

, · · · ∈ F

ならば

i=1

A

i

∈ F

また,このとき,組

(Ω, F )

は可測空間であるという.

2.2.1

測度の定義

測度論においては

±∞

も数として扱う.そこで実数空間を拡張する.

R ¯ = R ∪ { +

− ∞}

として,

R ¯

±∞

に関する演算は

a R ( ±∞ ) + a = a + ( ±∞ ) = ( ±∞ )

a > 0 ( ±∞ ) × a = a × ( ±∞ ) = ( ±∞ )

( ±∞ ) × 0 = 0 × ( ±∞ ) = 0

a < 0 ( ±∞ ) × a = a × ( ±∞ ) = ( ∓∞ )

a R a

±∞ = 0

とするが,

( ±∞ ) + ( ∓∞ )

( ±∞ )

( ±∞ )

などは定義しない.

定義

2.7 A

上の部分集合族として,

µ

A → R ¯

とする.このとき,

µ

上の集合函数という.

(15)

定義

2.8 F

上の集合体とする.

F

上で定義された集合函数

µ

A

B ∈ F

かつ

A B = = µ(A B) = µ(A) + µ(B)

を満たすとき,

µ

(

有限

)

加法的である

(

または,加法性を満たす

)

という.

定義

2.9 F

上の

σ-

集合体として,

F

上で定義された集合函数

µ

が,

A

1

A

2

· · · ∈ F

が互いに素

= µ (

i=1

A

i

)

=

i=1

µ(A

i

)

を満たすとき,

µ

σ-

加法的である

(

または,

σ-

加法性を満たす

)

という.

定義

2.10 (Ω

F )

を可測空間とする.

µ

F → [0

+ ]

µ( ) = 0

かつ

σ-

加法性を満たすとき,

µ

(Ω

F )

上の測度であるという.

定義

2.11 µ

が可測空間

(Ω

F )

上の測度であるとき,

(Ω

F

µ)

を測度空間と呼ぶ.

2.3

確率空間

定義

2.12 (Ω, F , µ)

が確率空間であるとは,測度空間

(Ω, F , µ)

において,

µ

F

上で定義された非負値の関数 であり,

µ(Ω) = 1, µ( ) = 0

を満たすときに呼ぶ.このとき,

を標本空間,

F

を事象系,

µ

を確率

(

測度

)

といい,

の元を基本事象,

F

の元を事象という.また,確率

µ

は以下,確率

P

と置き換えて考える.

定義

2.13 (Ω, F , P )

を確率空間とし,

から

R

1への関数

X : Ω R

1

(

)

確率変数であるとは,

X

F

に関して可測なことをいう.つまり,任意の実数

a

に対し,

(2.3.1) { ω Ω; X (ω) a } ∈ F

が成り立つことをいう.

また,

X

1

, X

2

, . . . , X

dを実確率変数とすると,ベクトル

X(ω) = (X

1

(ω), . . . , X

d

(ω))

R

dの元であるが,こ のとき任意の

a

1

, . . . , a

d

R

1に対して,

(2.3.2) { ω Ω; X

1

(ω) a

1

, . . . , X

d

(ω) a

d

} ∈ F

となる.そこで,

から

R

dへの関数

X = (X

1

, X

2

, . . . , X

d

)

(2.3.2)

をみたすとき,

X

d

次元確率変数とい う.一般に,

(Ξ, B )

を可測空間として,

から

Ξ

への値をとる関数

X

が,任意の

E ∈ B

に対して

(2.3.3) { ω Ω; X (ω) E } ∈ F

をみたすとき,

X

は,

Ξ

値確率変数 という.

定義

2.14

確率空間

(Ω, F , P )

上の確率変数の系

X

1

, X

2

, · · · , X

nが独立であるとは,任意の

a

1

, a

2

, · · · , a

n

R

1 に対して

(2.3.4) P

( ∩

n

i=1

{ ω Ω; X

i

(ω) a

i

} )

=

n i=1

P ( { ω Ω; X

i

(ω) a

i

} )

(16)

となるときにいう.

定義

2.15

確率空間

(Ω, F , P )

1

, B

1

), (Ξ

2

, B

2

), · · · ,

n

, B

n

)

を可測空間とし,各

i

に対して,

X

i

Ξ

i

確率変数 であるとき,系

{ X

1

, · · · , X

n

}

が独立であるとは,任意の

E

1

∈ B

1

, · · · , E

n

∈ B

nに対して

(2.3.5) P

( ∩

n

i=1

{ ω Ω; X

i

(ω) E

i

} )

=

n i=1

P(X

i

E

i

)

が成り立つことをいう.

定義

2.16

確率空間

(Ω, F , P )

n 1

に対して

X

nを可測空間

n

, B

n

)

に値をとる

Ξ

n

値確率変数とする.

このとき,系

{ X

n

; n 1 }

が独立であるとは,このうちの任意の有限個の部分系

{ X

n1

, X

n2

, · · · , X

nk

}

を任意に とったとき,これが独立なときにいう.

命題

2.17 (Ω, F , P )

を確率空間とするとき,以下が成立する.

(1) E

1

, E

2

, · · · ∈ F

ならば,

n=1

E

n

∈ F

(2) E

1

, E

2

, · · · ∈ F

かつ

E

1

E

2

⊂ · · ·

となっているならば,

P ( ∪

n=1

E

n

)

= lim

n→∞

P (E

n

)

(3) E

1

, E

2

, · · · ∈ F

かつ

E

1

E

2

⊃ · · ·

となっているならば,

P ( ∩

n=1

E

n

)

= lim

n→∞

P (E

n

)

(4) E

1

, E

2

, · · · ∈ F

のとき,

P ( ∪

n=1

E

n

)

n=1

P(E

n

)

(5) (Borel-Cantelli

の定理

) E

1

, E

2

, · · · ∈ F

(2.3.6)

n=1

P (E

n

) <

をみたすならば,

P ( lim sup

n→∞

E

n

) = 0

である.

(1)

の証明 》

E

1

, E

2

, · · · ∈ F ⇐⇒ E

1c

, E

2c

, · · · ∈ F

であり,

E

1c

, E

2c

, · · · ∈ F ⇐⇒

n=1

E

nc

∈ F

(17)

が成り立つ.

ド・モルガンの法則より

n=1

E

nc

= ( ∩

n=1

E

n

)

c

∈ F .

これより,

E

1

, E

2

, · · · ∈ F

ならば

n=1

E

n

∈ F

が示される.

(2)

の証明》

A

1

= E

1

, A

2

= E

2

\ A

1

, A

3

= E

3

\ E

2

, · · · , A

n

= E

n

\ E

n−1 とおくと,

n=1

A

n

=

n=1

E

n

.

よって

P ( ∪

n=1

E

n

) = P ( ∪

n=1

A

n

)

=

n=1

P ( A

n

)

= lim

n→∞

( ∑

k=1

P (A

k

) )

= lim

n→∞

( ∑

k=1

(P(E

k

) P(E

k1

)) )

= lim

n→∞

( P (E

n

) P (E

0

) )

( ∵ P (E

0

) = 0

とする

)

= lim

n→∞

( P (E

n

) )

ゆえに,

P ( ∪

n=1

E

n

)

= lim

n→∞

P(E

n

)

が示される.

(3)

の証明》

A

n

= E

n0

\ E

n0+nとおくと,

A

nは単調に増加する.

P (A

n

) = P(E

n0

) P (E

n0+n

)

で,命題

2.17

(2)

より,

P ( ∪

n=1

A

n

) = lim

n→∞

P(A

n

)

= lim

n→∞

( P (E

n0

) P(E

n0+n

) )

= P (E

n0

) lim

n→∞

P (E

n0+n

) (2.3.7)

また,

n=1

A

n

= E

n0

\

n=1

E

n0+n

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