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定理 8.1 の証明

ドキュメント内 パーコレーションの臨界確率 に関する研究 (ページ 83-94)

定理8.1を証明する前に,ゴルトン-ワトソン過程に関するいくつかの性質を示す必要がある.まず,母関数f から帰納的にfnを,f1=f そして任意のn≥1に対してfn+1=f◦fnと定義する.

命題 8.2 n≥1に対して,Z0= 1という条件のもとでのZnの母関数はfnである.

《証明》

帰納法で示す.

gnZ0= 1のもとでのZnの母関数とするとgn(s) =E(sZn|Z0= 1) (i)n= 1のとき

g1(s) =E(sZ1|Z0= 1) =E(s1i=1Yi) =E(sYi) =f1(s) が成り立つ.

(ii)gn(s) =fn(s)が成り立つと仮定する.

まず,はじめにZn =kで条件を付けると,Zn+1の分布は∑k

i=1Yiの分布と同じである.ただし,Yiは分布 (pk)k0に従う独立同分布の確率変数である.

ゆえに,

E(sZn+1|Zn=k) =E(ski=1Yi)

=E(sY1+Y2+···+Yk)

=

k i=1

E(sYi)

=f(s)k

よって,

gn+1(s) =E(

sZn+1|Z0= 1)

=

k=0

E(

sZn+1,1{Zn=k}|Z0= 1)

=

k=0

j=0

P(Zn+1=j, Zn =k|Z0= 1)·sj

=

k=0

j=0

P(Zn+1=j, Zn=k, Z0= 1) P(Z0= 1) ·sj

=

k=0

j=0

P(Zn+1=j, Zn=k, Z0= 1)

P(Zn=k, Z0= 1) ·P(Zn=k, Z0= 1) P(Z0= 1) ·sj

=

k=0

j=0

P(Zn+1=j|Zn =k)P(Zn=k|Z0= 1)·sj

=

k=0

P(Zn=k|Z0= 1)

j=0

P(Zn+1=j|Zn=k)·sj

=

k=0

P(Zn=k|Z0= 1)·E(sZn+1|Zn=k)

=

k=0

P(Zn=k|Z0= 1)·f(s)k

=gn(f(s)). 仮定より

gn(f(s)) =fn(f(s)) =fn+1(s) より,すべてのnについて成り立つ.

命題 8.3

E(Zn|Z0= 1) =mn (n0) が成立している.

《証明》

まず,明らかに次の式が成り立つ.

E(Zn|Z0= 1) =∑

k1

E(Zn|Zn1=k)P(Zn1=k|Z0= 1)

また,m=E(Y) =E(Z1|Z0= 1)であることと,{Yi}は独立でY と同分布であることに注意すると,任意の k≥1に対して

E(Zn|Zn1=k) =E ( k

i=1

Yi )

=E(Y1+Y2+· · ·+Yk)

=km が成り立つ.

したがって,

E(Zn|Z0= 1) =∑

k1

E(Zn|Zn1=k)P(Zn1=k|Z0= 1)

=∑

k1

kmP(Zn1=k|Z0= 1)

=m

k1

kP(Zn1=k|Z0= 1)

=mE(Zn1|Z0= 1) これを繰り返せば

E(Zn|Z0= 1) =mn1·E(Z1|Z0= 1)

=mn1·E1(Z1)

=mn これで定理8.1を証明する準備ができた.

《定理8.1の証明》

まずm <1の場合を考える.

任意の非負の整数値をとる確率変数Xの期待値に関して E(X) =

k0

kP(X =k)≥

k1

P(X=k) =P(X1) の不等式が得られる.この不等式と命題8.3を用いると

P(Zn1|Z0= 1) =E(Zn|Z0= 1) =mn が成立する.

ここで,nを大きくするとm <1より

(8.2.1) lim

n→∞P(Zn 1|Z0= 1) = 0 が得られる.また,事象列{Zn1}は単調に減少する.

したがって

nlim→∞P(Zn1|Z0= 1) =P

∩

n0

{Zn1}|Z0= 1

=P(任意のn≥0に対してZn 1|Z0= 1). ゆえに,m <1のとき(8.2.1)より,

P(任意のn≥0に対してZn1|Z0= 1) = 0 が成り立つ.

次に,m= 1,m >1の場合について

Z0= 1の条件のもとでのZnの母関数はfnであったので

P(Zn= 0|Z0= 1) =fn(0)

そして,事象{Zn= 0}nに関して増加しているので lim

n→∞P(Zn= 0|Z0= 1) = lim

n→∞fn(0) =P

∪

n0

{Zn = 0}|Z0= 1

が得られる.

ここで,

q= lim

n→∞fn(0)

=P

∪

n0

{Zn = 0}|Z0= 1

=P(あるn≥0に対してZn= 0|Z0= 1) で定義する.fn+1(0) =f(fn(0))であるのでnを大きくするとf の連続性により

f(q) =q m= 1の場合

f(s) =∑

k1

k·pksk1

<

k1

k·pk

=m= 1 (0< s <1) が得られる.f(s) =∑

k=0pkskは[s,1]で連続,(s,1)で微分可能であるから平均値の定理により f(1)−f(s)

1−s =f(c) となる c(s < c <1) が存在する ゆえに

f(1)−f(s) =f(c)(1−s)

<1−s

1−f(s)<1−s

⇔f(s)> s (s <1) を得る.

ゆえに,f(s) =sを満たす解は閉区間[0,1]ではs= 1のみとなる.したがってq= 1となる.

次にm >1の場合

f(1) =m >1でfの連続性から,もし1−η < s <1ならば1< f(s)< f(1) =mとなるようなηが存在 する.したがって平均値の定理により

f(1)−f(s)

1−s =f(c) となる c(s < c <1) が存在する ゆえに

f(1)−f(s) =f(c)(1−s)

>1−s

1−f(s)>1−s

⇔f(s)< s (s <1)

を得る.

ところで,s= 0でf(0) =p0 0となるので中間値の定理によりf(s) =sを満たす解は半開区間[0,1)で少 なくとも1つ存在する.この解をs1とする.(f(s1) =s1を満たす)

ここでこの解は半開区間[0,1)で一意的に決まることを背理法により示す.

そのために,半開区間[0,1)でs1とは異なる解t1が存在すると仮定する.ところで,f(1) = 1であるので平均 値の定理により,開区間(0,1)で

f1) =f2) = 1 を満たす解ξ1ξ21̸=ξ2)が存在する.(グラフの挿入)

一方,p0+p1<1より開区間(0,1)内の任意のsについて f′′(s) =∑

k2

k(k−1)pksk2>0

となるので,f(s)は0< s <1で狭義単調増加となるが,これは上のf1) =f2) = 1に矛盾する.

ゆえに,f(s) =sの解はq=s1q= 1の2つしかない.さらに,背理法を用いるためにq= 1とすると 1 =q= lim

n→∞fn(0)

であった.このことより,nが十分大きくなるとfn(0)>1−ηが成り立つ.

ゆえに,

1−η < s <1なら,f(s)< sよりf(fn(0))< fn(0)

が導かれる.しかしこれ,f(fn(0)) =fn+1(0)< fn(0)は,fn(0)がnに関して単調増加であることに反する.

よってq=s1

そして,q=s1<1なので0< q <1 ゆえに,

P(任意のn≥0, Zn1|Z0= 1) = 1−P(あるn≥0, Zn= 0|Z0= 1)

= 1−q

>0. よって示された.

さて,次にゴルトン-ワトソン過程は0にいくか無限大にいくかのいずれかであることを示そう.

8.4 p0+p1<1と仮定する.ゴルトン-ワトソン過程Znのすべての状態k≥1は非再帰的である.さらに P( lim

n→∞Zn = 0) =q P( lim

n→∞Zn=) = 1−q が成り立つ.

《証明》

p0= 0とする.

このとき,粒子の数は第1世代から次の世代へ移るにつれて増加するだけである.したがって,任意のk≥1 に対して

pn(k, k) ={(p1)k}n

が成り立つ.いまq1<1なので

nlim→∞pn(k, k)<∞ ゆえに,任意のk≥1に対して非再帰的である.

次に,p0>0とする.

このとき,ある状態k≥1に対して状態kにはじめて戻ってくる時刻を Tk= inf{n≥1 :Zn=k} で定義する.

もし第1世代に粒子が存在しなければ状態kには戻れないので

P(Tk <∞|Z0=k)≤1−p0k<1 定義によりこれは非再帰的を表す.

次に,事象A={nが無限大になっても,Znは無限大にならない}について

この事象A∋ω上ではZn(ω)が無限回,集合{0,1, . . . , N(ω)}を訪れるような整数N(ω)が存在する.Znは 非再帰的なので定理7.7よりZnがどの状態k≥1にも有限回だけ確率1で戻ってくることが分かる.

ゆえに,これが可能なのはZnA上で0に収束するときに限る.このことは,Aが起こってZnが0に収束 するか,Aが起こらないでZnが無限大になるかのいずれかを示す.

したがって,Znが確率qで0に収束するので,Znが確率1−qで無限大になる.

9 ツリー上における臨界確率の一意性

第5章において,Z2上の臨界確率pcpT の一意性を示すことができた.この章では臨界確率の一意性がツ リー上において成り立つこと,およびそのときの臨界確率の値を示す.ツリーにはZ2にはない性質がある.それ はツリー上においてループが存在しないということである.つまり,ある点xからスタートしてある点xに戻る 開路は,ツリーの性質上同じ点を2度通過しなければならないので,ループは存在しない.

また,ツリー上におけるパーコレーションは前章の分子過程に帰着することが知られている.

9.1 ツリーについて

はじめに,2分ツリーを例にとってツリーの説明をする.

まず,ルートと呼ばれる特別な点が存在する.ルートには2人 ルート の子どもがいて,またその2人の子どもにはそれぞれ2人の子

どもがいるという状況が以下同様に続いていく.つまり,ルート は第0世代,その子どもは第1世代,· · · と続く.第k世代では 2k個の点が存在する.ルートには2個の最近接点が存在し,他

のすべての点には3個の最近接点が存在する.したがって各点から出発するボンドは(ルートを除いて)3個存在 する.

次に,これをもとにn分ツリーについて説明する.まず,同様にルートと呼ばれる特別な点が存在する.ルー トにはn人の子どもがいて,またそのn人の子どもにはそれぞれn人の子どもがいる.という状況が以下同様に 続いていく.一般に第k世代ではnk個の点が存在する.ルートにはn個の最近接点が存在し,他のすべての点 にはn+ 1個の最近接点が存在する.したがって各点から出発するボンドは(ルートを除いて)n個存在する.

ここで,p∈[0,1]とする.各ボンドはすべて他のボンドとは独立に,確率pで開き確率1−pで閉じていると する.そしてCをツリー上のオープンパスでルートにつながっている点の集合とする.言い換えれば,Cはルー トを含む開クラスターである.

9.2 n 分ツリーでの臨界確率の一意性

2分ツリー,3分ツリーを考えた後,n分ツリーの場合,そして分岐の数が各世代において変数x(2≤x≤n) である場合について臨界確率の一意性およびその時の値を考える.

9.2.1 2分ツリーの場合

まず,はじめにいくつか記号を決める.

Znをオープンパスでルートにつながっている第n世代の個体の数とし,Z0= 1(ルートの個数)とする.

ある親が与えられると,開いたボンドでその親につながっている子どもの数Y は,2項分布B(2, p)に従う確率

変数となる.すなわち次のように表せる.

P(Y =k) = 2Ckpk(1−p)2k (k= 0,1,2) また,n≥1に対してZn

Zn=

Zn−1

i=1

Yi

と書ける.ただし,YiB(2, p)に従う独立同分布な確率変数とする.したがってZnはゴルトン-ワトソン分枝 過程となる.また,ZnCとの関係は

|C|=∑

n0

Zn

で与えられる.これより,

θ(p) =P(|C|=) =P(すべてのn≥1に対して,Zn1) が導かれる.また定理8.1により

θ(p) =P(すべてのn≥1に対して,Zn1)>0 とE(Y) = 2p >1とは同値であることが分かる.

したがって,2分ツリー上のパーコレーションに対する臨界確率pc= 12となる.

次に臨界確率pT について.pT = inf{p∈[0,1];Ep(|C|) =∞}であったのでE(|C|)について考える.命題 8.3より

E(|C|) =E

∑

n0

Zn

=∑

n0

E(Zn)

=∑

n0

(2p)n. このE(|C|)の値とpT の定義から,pT = 12であることがわかる.

つまり,2分ツリーにおいて臨界確率pcpT の一意性が示され,その値はpc=pT =12 である.

9.2.2 3分ツリーの場合

2分ツリーの場合と同様に考えると次の定理を得る.

定理 9.1 3分ツリーにおける臨界確率pcpT は一致し,その値は 1

3である.

《証明》

2分ツリーのときと同様に,Znをオープンパスでルートにつながっている第n世代の個体の数とし,Z0= 1(ルー トの個数)とする.

ある親が与えられると,開いたボンドでその親につながっている子どもの数Y は,2項分布B(3, p)に従う確率 変数となり,

P(Y =k) = 3Ck·pk·(1−p)3k (k= 0,1,2,3)

と表せる.

また,n≥1に対してZn

Zn=

Zn−1

i=1

Yi

と書ける.ただし,YiB(3, p)に従う独立同分布な確率変数とする.したがってZnはゴルトン-ワトソン分枝 過程となる.ZnCとの関係は

|C|=∑

n0

Zn で与えられる.

このとき,2分ツリーのときと同様にしてθ(p)の定義と,定理8.1により,

θ(p) =P(|C|=)

=P(∑

n0

Zn=)

=P(すべてのn≥1に対して,Zn1)>0

⇔E(Y) = 3p >1

よって3分ツリーの上のパーコレーションに対する臨界確率はpc = 13となる.2分ツリーのときと同様に臨界確 率pT について考えると,

E(|C|) =E

∑

n0

Zn

=∑

n0

E(Zn)

=∑

n0

(3p)n このE(|C|)の値とpT の定義から,pT =13 であることがわかる.

つまり,3分ツリーにおいて臨界確率pcpT の一意性が示され,その値はpc=pT =13 である.

9.2.3 n分ツリーの場合

n分ツリーのとき,次の定理が成立する.

定理 9.2 n分木において,臨界確率pcpT は一致し,その値は 1nである.

《証明》

文字が混同するため,m分ツリーとして考える.Znをオープンパスでルートにつながっている第n世代の個体 の数とし,Z0= 1(ルートの個数)とする.

ある親が与えられると,開いたボンドでその親につながっている子どもの数Y は,2項分布B(m, p)に従う確 率変数となり,

P(Y =k) = mCk·pk·(1−p)mk (k= 0,1,2, . . . , m) と表せる.

また,n≥1に対してZn

Zn=

Zn−1

i=1

Yi

と書ける.ただし,YiB(m, p)に従う独立同分布な確率変数とする.したがってZnはゴルトン-ワトソン分枝 過程となる.ZnCとの関係は

|C|=∑

n0

Zn

で与えられる.

このとき,θ(p)の定義と,定理8.1により,

θ(p) =P(|C|=)

=P(∑

n0

Zn=)

=P(すべてのn≥1に対して,Zn1)>0

⇔E(Y) =mp >1

よってm分ツリーの上のパーコレーションに対する臨界確率はpc =m1 となる.臨界確率pT について考えると,

E(|C|) =E

∑

n0

Zn

=∑

n0

E(Zn)

=∑

n0

(mp)n このE(|C|)の値とpT の定義から,pT =m1 であることがわかる.

つまり,m分ツリーにおいて臨界確率pcpT の一意性が示され,その値はpc =pT =m1 である.

9.2.4 各世代における分岐の数が変数x(2≤x≤n)の場合

ツリー上の各世代における分岐の数がそれぞれ2からnのいずれかの値をとる場合について考える.このとき 次の定理が成り立つ.

定理 9.3 あるi世代の分岐の数をxi (2≤xi ≤n)とする.このxi分ツリーにおいて,臨界確率pcpT は一 致し,その値はsup

i

1

xi である.

《証明》

ルートをZ0= 1とし,あるi世代の分木の数をxiとする.第n世代の全サイト数は

n i=1

xi ただし2≤xi≤n

あるi世代において,両親が与えられたとき,開いたボンドでその両親につながっている子どもの数Y は二項分 布B(xi, p)に従う確率変数となる.すなわち

P(Yi =k) = xiCk·pk·(1−p)xik (k= 0,1, . . . , xi)

Znをオープンパスでルートにつながっている第n世代の個体の数とする.このとき,n≥1に対して Zn=

Zn−1

i=1

Yi

ドキュメント内 パーコレーションの臨界確率 に関する研究 (ページ 83-94)

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