堺 昌 彦
1. は じ め に
デー タベース ・システムは,ほ とん ど全 ての情報 システムの基盤 となってい る。 この ことは,会計 において も例外ではな く,デー タを収集 し,編成 し,保 存す るデー タベース ・システムは,会計情報 システムの中核 的な要素 として シ ステム全体 に大 きな影響 を及 ぼ している
i)0
ところで,本来,会計情報 システムは,複式簿記お よび原価計算 ( 本稿 にお いて以降は複式簿記 とのみ表記す る)の仕組み によってデー タを処理 し,必要 な情報 を提供 して きた
ii)。 この ような複式簿記の仕組みは,基本的に手作業 に よる記録 と計算 を前提 に して,長い年月 をかけて構築 されて きた ものである
。これに対 して,デー タベース ・システムは, コンピュー タ上でデー タの処理 を 行 う。本質的に,複式簿記 における記録 と計算の考 え方 と, コンピュー タにお けるデー タ処理の考 え方の間には大 きな隔た りがある
111)0それでは, この ようなデー タベース ・システムは, どの ように して複式簿記 の仕組み を前提 としている会計情報 システムを実現 していったのであろ うか。
その過程では どの ような問題が生 じたのであろ うか。 この ことを明 らかにす る ことは,会計情報 システム と会計デー タの本質 を理解す るうえで非常 に重要 な
i)
たとえば,会計情報システムにおけるデータベース ・システムの重要性 と意義に ついては,Ba
granoff,etal.2004,pp.2761277.及 び
p.280.で述べ られている。
ii)岡本2000, 1
頁。
iii)EverestandWeber1977,pp.341‑342.
〔99〕
知見 となるであろう。
そ こで本稿では,デー タベース ・システムが会計領域 に導入 されていった最 初期の時代 に焦点 をあて,そこで具体的なデー タベース ・システムに対応 して 行われた会計情報 システム研究が, どの ような ものであったのかについて検討 を行 う。
2. デ ー タベ ース ・システムの展 開
デー タベース ・システムの展 開をみるにあたって注意 しなければな らないこ とは,デー タベース ・システムが生成 し展 開 していったプロセスの特殊性であ る。デー タベースの概念 とデー タベース ・システムの基盤技術 とは,生成 した 時期 も場所 もまった く異 な り,相当な期 間,それぞれが交わることな く展開 し ていた とい う
iv)。 また,現在 でい うデー タベース ・システムの原型 ともいえ る
DBMS (DataBaseManagementSystems)が成立 した後 も,生成展 開を異 にする
2種類の
DBMSが並存する状況が続いたV ) 。
デー タベース ・システムの存在 は,会計 はもちろんの こと, さまざまな分野 に影響 を与 えて きた。しか し,この影響 を適切 に理解するためには,当該 「 デー タベース ・システム」の内容が一体 どの ような ものであったのかについて明確 に してお く必要があるであろう。そこで,本節では,まず,デー タベース ・シ ステムが どの ように生成 し展 開 していったのか を明 らかにする
。2‑ 1
データベース概念の生成
デー タベースの概念は1
960年前後 に生成 した。 もともとのデー タベース概念 は,冷戦時代の陸軍の指揮統制 システムに関与する技術者の間で生成 した もの であ り,途方 もな く複雑で高価 なオ ンライン, リアルタイム,インタラクティ
iv)Haigh2006,p.33.Ⅴ)1970
年代におけるDBMS の状況については関係型
DBMSの一人者であるDa
teの著書の序文に詳 しい。
ブに稼働す るコンピュー タ ・アプリケーシ ョン技術 を指 していた とい うv i ) 。 この ように軍需産業で生成 したデー タベース概念は,開発 にあたった企業が 民生用の新 たな市場 を作 り出すために積極的に売 り込んだことによ り
,1960年 代半ばには経営管理領域 に幅広 く伝 わっていた。売 り込 まれた システム自体 は 商業的に失敗 したが,概念 は一人歩 きし,経営管理領域 におけるデー タベース 概念は,主 に,「 経営情報 システム
(ManagementInformationSystems;M二s)」を構築するために必要 となる全社 的にデー タを共有するシステムが技術的に実 現可能であることを示すために,MI
Sの支持者達 に用い られたvii) 。 しか し, この ような概念 として展 開 したデー タベースには,その当時において,実現す るための具体的な技術の裏付 けはな く,遠い将来に実現す る可能性のあるシス テムの一般的な特性 を記述 した ものであったにす ぎなかったことに注意 しなけ ればな らない。
2‑ 2
データベース ・システムの基盤 となった技術
他方,デー タベース ・システムの基盤 となった技術 は,「ファイル ・マネ ジ メ ン ト・システム
(filemanagementsystems)」 として知 られるより質素なプ ログラムか ら発展 した ものであった。デー タベース ・システムの前身 ともいえ るファイル ・マネジメ ン ト・システムは,企業の定型的なデータ処理 を単純化 し, プログラムの作成,変更,保守 を容易 にす るための支援 システムであっ た
vlli)0現代のデータベース ・システムの原型 ともい うべ き
DBMSは,1
960年代 にお けるデー タベース概念 とファイル ・マネジメ ン ト・システムが組み合 わさるこ とによって成立 した。 しか し, ファイル ・マネジメ ン ト・システムは,あ くま でプログラマがプログラムを作成,変更,保守 を行 うにあたって利用するもの であ り, システムの非専 門家である経営管理者が直接 アクセスで きるような も
vi
)Haigh2006,p.33.vii)Haigh2006,p.36. v
i
H)
Haigh2006,pp.36‑37のではなかったことに注意 しなければならない。実際, ファイル ・マネジメ ン ト・システムの延長 ともいうべ き初期の
DBMSを,MISが想定するような経営 管理者が直接情報を引 き出す とい う用途に用いることは失敗 したとい う
ix)。
21 3 CODASYL
型
DBMSによるデータベ‑ス概念 と技術の統合この ように, 概念 としてのデー タベース と, 具体的な技術 としての ファイル ・ マネジメン ト ・システムは異 なる展 開を遂げていた。 しか し
,1960年代後半,
CODASYL (CommitteeOnDataSystemsLanguages)x)の
DBTG (Data BaseTaskGroup)Ⅹ i )の活動 において,DBMS 概念が生成 されることで,両者
は統合 に向か うことになる
。DBTGの 目的は,デー タベース概念 とファイル ・マ ネジメ ン ト・システム
を統合 させ た新 たな製品 を打 ち出す ことであった。 ここで,DBTGの主要 な メンバーは,既存の システムを製造 ・販売 している企業であったことか ら,新 製 品 は,既 存 の シス テ ムの発 展 の延 長 線 上 で検 討 され る こ とに な った。
DBTGは,既存の システムの強み と弱み を入念 に調査 し,有用 な特徴 を標準
化 す る こ とに よって,1
969年 と1
971年 の
2度 にわた って報告書 を公表 し,
DBMS概 念 を確 立 したⅩii) 。 この報告書 で確 立 された
DBMSを本稿 で は, CODASYL型
DBMSと呼ぶ。こうして公表 された
CODASYL報告書が提供 した ものは2つに大別で きる
。1
つは, CODASYL 型
DBMSについての広範 な概念的アウ トラインであ り,もう1 つは,CODASYL 型
DBMSにおける2つの具体的な部分要素 について の詳細 な仕様であった。 2 つの具体的な部分 とは,デー タベース構造 を定義す
ix)Haigh2006,p.33
.
x)CODASYLとは,コンピュータ上でのデータ処理の標準化を目指 して産官学が
共同で設立 した団体である。この団体の有名な成果としては,プログラミング言 語
COBOLの設計と保守が挙げられる
。(Haigh2006,p.39.)Xi)DBTGには,コンピュータ企業,大学,コンサルタント企業,コンピュータを
重度に活用する大企業がメンバーとして参加 した。(
Haigh2006,pp.39‑41 . )
Ⅹii)Haigh2006,pp.39‑40.
るためのデー タ定義言語 と,デー タにアクセス し操作す るデー タ操作言語であ る
Ⅹiil)。2‑ 4
関係型
DBMSの登場
こうして
,1970年代 には仕様が標準化 された
CODASYL型
DBMSが登場する ことになる。 しか し,この時代 における
DBMSは
CODASYL型だけではない。
CODASYL
報告書 とほぼ同時期 の
1970年,数学者 であ る
Coddが 関係 モデ ル に よるデー タベー ス上 で の デー タの構 造 と操作 につ い て の論 文 を発 表 し た
Ⅹiv)。以 降, この関係 モデルに基づ く
DBMSにつ いて も積 極 的 に研 究が行 われ
,CODASYL型
DBMSと並 んで この時代 の さまざまな議論の場 に登場す る こ とに な るの で あ る。 関係 モ デ ル に基 づ く
DBMSを,本 稿 で は関係 型
DBMSと呼ぶ
Xv)0
関係型
DBMSを検討す るにあたって注意すべ きことは
,1970年代 において, この
DBMSは本格 的 な商用化 には至 ってい なか った とい うこ とであ る
Ⅹvl ) 。
この当時,関係型
DBMSは,主 に,実験室 と机上での議論 における存在であっ た。 この点が,既存の システムの発展の延長線上で規定 され,実際の企業 にお ける具体 的な実装が議論 されていた
CODASYL型
DBMSとは対照的であ る
。とはいえ, コンピュー タの処理能力 の向上 をは じめ とした情報 システム技術 の
Xlli)Haigh2006,p.40. xiv)Codd1970.
xv)CODASYL
型
DBMSが,既存のシステムの延長線上で仕様を標準化 したもので あるのに対 し,関係型
DBMSは既存のシステムとは一線を画す,まった く新 し いものであった。関係型
DBMSは,データの概念上での構造 と操作のみを示す 概念スキーマ,物理的なス トレージを扱 う内部スキーマ,利用者ごとのデータ構 造を示す外部スキーマで表現される
3層スキーマ ・アーキテクチャを採用 してい る。 また,非常にシンプルな標準的なデータ操作言語によって,ハー ドウェアや ソフ トウェアに依存 しないデータの定義と操作が可能であるという特徴 をも
つ 。なお,関係型
DBMSは現代でいうリレーショナル ・データベース ・システムと 同義である。
Xvi)
商用ベースではじめて成功 した関係型
DBMSは
,1980年の
Oracleであったとい
う
。(Haigh2006,p.44.)進展 によって,近い将来,関係型
DBMSが商用化 されることは確実視 されて いた
Ⅹvii) 。 また,関係型
DBMSは,当時主流 であった
CODASYL型
DBMSとは,将来商用化 に至 った ときに競合す ることは自明であった。
この ようなことか ら,関係型
DBMS技術 に基づ く研究は,常 に
CODASYL型
DBMSに対す る具体的な優位性 を強調 しようとす る誘 因が存在 していたの である
。3.CODASYL
型
DBMSに基 づ く会 計 情報 システム研 究
3‑ 1 LibermanandWhinstonの研究
(1)
概 要
1975
年
,LibermanandWhinsotonは
,CODASYL型
DBMSの仕様 を反映 させ た 「 事 象 会 計 情 報 シス テ ム の構 築
(A StructuringofanEvents‑ AccountingInformationSystems)」 とい う論文 を公表 した。
彼 らは, この論文の冒頭で以下の ように述べ,企業内の情報 システムが,セ クションごと部門ごとに構築 されていることによる弊害 を指摘 した。
「 伝統的に,情報 システムは,企業の各部門ない しセクシ ョンごとに自身の データ ・ファイルを生成 し保持す るように設計 されている。 この手法の欠点は 明白である :複数の部門でデー タが重複 し,部門か ら正確 に共通のデー タを収 集す ることが困難 にな り,経営管理層の人間が個別の部門か ら特定のデータを 迅速に引 き出すのを困難に している
。」 (LibermanandWhinston,1975.)LibermanandWhinsoton
は, この ような問題 に対 して,中央集権化 された 共通デー タベースにあ らゆるデータを集めることによって,デー タの重複の排 除やアクセスの迅速化が達成で きると主張 した。そ して, この ような
「Sorter(1969)の事象会計アプローチに基づいた ̀
̀ 総合的"情報 システム
」 (Liberman andWhinston,1975)を,事象 会計情報 システム
(Event‑Accountingln‑‡vii)Data1975.
formationSystem)
と名付 けて提案 したのであるx
viii)。
(2) LibermanandWhinston
の事象会計情報 システム
LibermanandWhinstonは, この ような会計情報 システムを説明す るにあ
たって
CODASYL型
DBMSの仕様 に準 じた議論 を行 った。彼 らは,事象会計システムは,( 丑集合 デー タベース
(MassDataBase),②利用者が定義す る構
追 (User‑DefinedStructures),( 卦利用 者 が定義 す る関数
(User‑Defined Functions)の3 つの構成要素か ら成 る としたx I X ) 。
ここで,集合 デー タベース とは,一般化 されたフォーマ ッ トで記録 された事 象 デー タである。 この事象 デー タには,財務 的な取引デー タとそれ以外 の非財 務 的 なデー タとが含 まれ る とい う
ⅩⅩ)。利用者 が定義す る構造,お よび利用者 が定義す る関数 は,それぞれ
CODASYL型DBMSにおけるデー タ定義言語,デー タ操 作 言 語 に対 応 す る
。LibermanandWhinstonは, この よ うに, CODASYL型
DBMSの仕様 において実装が保証 されているフ レームワー クに準 じて会計情報 システム ( の基盤 となるデー タベース ・システム) を構築す る ことに よって,財務 デー タ及 び非財務 デー タを任意 に加工 して提供 で きること を示 したのであ る。
LibermanandWhinstonは, この ような観点の もとで,予 め定義 されてい
るデー タベース ・システムのデー タ構造 を,任意 に,各利用者のニーズに対応 す るデー タ構造 に作 り替 える仕組み を,階層型の論理モデルで説明 した。 しか し, ここで注意すべ きことは,彼 らの研 究 において,利用者の観点か ら再構築
‡Ⅵ11)ただし,彼 らは,
「 事象会計はSo
rterが提案 したものであるが,事象および事象 に対応 す るデー タにつ いての定義 には,一般 的 な合意 を得 た もの はない」
(LiebermanandWhinston,1975)として,事象会計が具体的にどのようなもの
であるのかは示 さなかった。彼 らの焦点は,So
rterが行った伝統的会計 ( 価値 アプローチ)において情報が集約されて提供されることに対する批判を,彼 らの 提案する事象会計情報システムに反映させることにあったと考えられる。この議 論については別の機会に行う。
Ⅹix)LiebermanandWhinston1975,p.249. xx)LiebermanandWhinston1975,p.249.
されるデー タ構造 は,階層モデルで構築 されているが,デー タベースに記録 さ れるデー タ構造 については,後述す るネッ トワーク ・モデルを含めて, さまざ まな選択肢があるとしていることである
ⅩXi)0( 3) 会計情報 システム研究 としての意義
この ように,Li
bermanandWhinstonにおける会計情報 システムの実装 をめ ぐる議論 は,CODASYL 型
DBMSの仕様 に準 じて行 われた。彼 らは, この ような議論 を行 うにあたって
CODASYLの技術 的な仕様 を直接みせ るのではな く,彼 ら独 自の定義 を与 えた概念や用語 を用 いて議論 を進めた。
具体的には,「システム」 と 「 構造」 とい う概念 に独 自の定義 を与 え,事象 会計 システムを説明 しようとした。ここで,「システム」とは,①ハー ドウェア,
② ソフ トウェア,( 彰ハー ドウェアとソフ トウェアの設計 を規定する概念,( む利 用者, とい う4 つの要素の相互関係である。「 構造」 とは, システムで用い ら れるデー タを表現 し記録す る物理的 ・概念的な手法であるとい う
ⅩⅩii)。
彼 らの研究では,情報 システムにおける技術的な問題 ( ハー ドウェア,ソフ トウェア) と,それ らハー ドウェアとソフ トウェアの設計 を規定す る概念,そ して利用者のニーズは明示的に区別 されていた。その上で,ハー ドウェアとソ フ トウェアの内容 については詳細 に立ち入 ることな くデー タを扱 うことがで き るもの として, 会計情報 システム研究の焦点 を,デー タベースに記録 されるデー タ構造 と,各利用者が必要 とするデー タ構造の論理モデル上での関係 に移行 し たのである。
3‑ 2 HasemanandWhinston
の研究
(1)は じめに
HasemanandW hinstonは, 1976
年 の論文 「 多 次元会計 システムの設計
ⅩXi)LiebermanandWhinston1975,p.249.
‡‡ii)LiebermanandWhinston1975,pp.246‑247
(DesignofaMultidimensionalAccountingSystem)
」 に お い て,
CODASYL型デー タベース ・システム技術 に則 った階層モデル,翌1977年 に 出版 した 『 デー タ管理入 門
(Lntroductio72tODataManagement)』のなかでネ ッ
トワーク ・モデルを提示 している。以降でこれ らについて検討 を行 う
0(2) 1976
年論文の概要
1976
年の論文 において,Has
emanandWhinstonは,以下の ように述べ,企業の会計情報 システムが財務デー タのみ を扱 い,他の業務 システムと連携 し ていないことを指摘 した。
「 伝統的な会計 システムは財務報告 を志向 している。そのため,財務デー タ のみが保存 される。
賃金労働者 についての,与 えられた 日数で何個の部品を作 ったのか,平均仕 損率はい くらか,部品にどれだけの価値 を付加 したのか といった情報 は,通常, 会計デー タと一緒 には保持 されない
。」 (HasemanandWhinston,1976)彼 らは,会計情報 システムに対する具体的な情報要求では,財務デー タと非 財務デー タを統合することが求め られるとし,その ような情報要求に応 え られ るような会計情報 システムについての議論 を行 った。そ して,従来の会計情報 システムのデー タ構造 と,他の業務 システムのデー タ構造 とを統合 した会計情 報 システムを構築することを論 じ, この ような会計情報 システムを多次元会計
システム と呼んだ
ⅩⅩiii)0
(3) HasemanandWhinston
の多次元会計 システム
HasemanandWhinston
が, この ような多次元会計 システムの実装 を論 じ るにあたって採用 したのは,「
LSDモデル"LogicalStructuringofData"Mod‑el)
」 と呼ばれる階層モデルであ る。 このモデルは,構造化 されていないデー タベースを階層型デー タベースに変換す るアルゴリズムが用意 されているとい
‡ ‡
iii)HasemanandWhinston1976,p65.う特徴があった
ⅩⅩ 1 V ) 。 この論理 モデルを用 いて,彼 らは,企業 内で分 断 され て構築 されている非階層型デー タベースを,階層型デー タベースへ と変換 し, 共通デー タベース として統合するためのプロセスを説明 したのである。
こうして構築 された共通デー タベースは,CODASYL 型
DBMSの仕様 に準 じた階層型 デー タベース ・システム となる。先 の節 で論 じた
Libermanand Whinston (1975)の成果 よ り, この ようなデー タベース ・システムをもつ会 計情報 システムは,利用者の情報要求に応 じて,任意にデー タを加工 して提供 する機能を持つ ことが保証 されているのである
。( 4) ネ ッ トワーク ・モデルによる会計情報 システム
その後,1
977年,Has
enmanandWhinstonは,ネ ッ トワーク ・モデル と呼ばれる論理モデルによって会計情報 システムの基礎 となるデータモデルを提示 した。 しか し, このネ ッ トワーク ・モデルが提示 された媒体 は研究論文ではな く
,CODASYL型DBMSについての解説書であった。 ここでは,CODASYL型
DBMSの実用例の1つ として,ネ ッ トワーク ・モデルによる会計デー タモ デルが提示 されたのである。
このモデルについては,DBMSの解説書 とい う性格上,会計の理論的観点 か らの議論は行われてお らず,このモデルに基づいて実装 された会計情報 シス テムが どの ような意義 を もつのかは示 されていない。 しか し
,CODASYL型
DBMSにおける会計情報 システムが どの ような ものになるかについては,同じく
CODASYL型DBMSを前提 としたLibermanandWhinston (1975),
HasemanandWhinsotn (1976)における議論 を踏襲するもの として扱 うのが適切であろう。伝統的な会計 における財務デー タと,他の業務領域 における非 財務デー タが統合 されたデー タベース ・システムをもち,利用者の情報要求に 応 じて,それ らのデー タを任意に加工 して提供することを志向 しているもの と 考 えられる。
xxiv)HasemanandWhinston1976.
( 5) 会計情報 システム研究 としての意義
HasemanandWhinston
の議論 も会計情報 システム研究 としての意義では,
LibermanandWhinstonと同 じもの と考 えて良いだろう。情報 システムのハー ドウェアとソフ トウェアの技術 的な詳細 については
,CODASYL報告書 にお ける仕様 によって実装が保証 されているもの として分離 し,仕様で準備 された プログラミング言語のインタフェースに基づいた論理モデル上で,デー タ構造 とその操作 を検討することで,実際に構築 される会計情報 システム ( お よび他 の情報 システム)が, どの ように してデー タを加工 して情報 を提供することが で きるのかを示 したのである。
3‑3 CODASYL
型
DBMS技術の会計情報 システム研究における意義
LibermanandWhinston (1975),HasemanandWhinston (1976),Hase一 manandWhinston (1977)が提示 したモデルは,それぞれに異 なる形式 をも つ ものであった。 しか し, これ らの研究 を,単純 にモデルの形式 によって区分 することは適切ではないだろう。
彼 らの議論の焦点は,一貫 して
,CODASYL型
DBMSの仕様の もとで,会 計情報 システムの実装 における問題 と解決策 を示す ことにあった。それぞれの 議論 は独立 した ものであったが
,CODASYL型
DBMSによる会計情報 システ ムの実装 において,企業で必要 となると考えられるデー タ構造 と操作 とを論理 モデル上で取扱 った とい う点では一致 している。
この ように してみると
,CODASYL型
DBMS技術 の会計研究 における意義 は,ハー ドウェアやソフ トウェアの技術的詳細 に立ち入 ることな く,実装が保 証 されているイ ンタフェースに則 った論理モデルを扱 うことによって,会計情 報 システムお よび他の情報 システムにおけるデー タ構造 とその操作 についての 議論 を可能に した点であろう。 これによって,情報 システム技術 についての複 雑 な専 門知識 を持 ち合わせていない会計の専 門家が,会計情報 システムお よび 他の情報 システムにおけるデー タのあ り方について検討することが可能になっ
たのである
。4.
関係型
DBMSに基 づ く会計情 報 システム研 究
4‑ l EverestandWeberの会計情報 システム実装研究
(1)
概 要
EverestandWeber
は,以下の ように述べ,会計情報 システムを構築す る にあたって,情報 システム技術が もた らす問題 を取 り上げて議論 を行 った。
「 本論では,会計 と情報 システムの間のイ ンタフェースのい くつかの側面 を 検討 し, イ ンタフェース調査 についての主要 な問題 のい くつか を識別す る。 」
(EverestandWeber,1977)
同時に,彼 らは
,Eaves(1966),Mathews(1967 )
,Colantonietal.(1971
),
LibermanandWhinston(1975),HasemanandWhinston(1976)を会計理 論 と情報 システムとの統合 を試みている研究 と位置づけた
XXv)。その うえで, これ らの研究に基づ く会計情報 システムにおいて発生す ると想定 される問題 を 取 り上 げて,議論 したのである
。EverestandWeberの議論 は,大別す ると 以下の 3 つ となる。
① 会計理論 と既存の情報 システム技術の統合 において生 じる問題の検討
②
CODASYL型
DBMSの長所 と問題点についての検討
③ 関係型
DBMSによる会計情報 システムの例示
( 2) 会計理論 と既存の情報 システム技術 の統合 において生 じる問題
EverestandWeber
は,会計 における複式簿記機構 と分類スキームを,「 会 計担当者は多 くの ̀ ̀ 人工物
(artifacts)" を扱 う。勘定国は,現実の実体
(real entities)よ りも有用 な用 語法,分類 スキー ム ない し表記法 の慣 行 であ る」
(EverestandWeber,1977)として利用者 にとって有用 なもの と位置づけた。
しか し, この ような会計の人工物 は,既存の
DBMS技術 におけるデー タ処 理効率 を重視す る考 えと相反す るため
,DBMSの機能 を犠牲 に して会計上の
Hv)EverestandWeber1977,p.340.
分 類 ス キー ム を実 現 しな けれ ば な らない こ とが 問題 に な る と した の で あ る
ⅩⅩ
vi ) 。
(3)CODASYL
型データベース ・システムにおける問題点
EverestandWeber
は,上記の ようなデー タ処理効率 と会計の分類スキー ムの間にギ ャップが生 じる問題 は
,CODASYL型
DBMSでは緩和す る可能性 があると論 じた。 しか し, この場合
,CODASYL型
DBMS技術 に起因する別 の問題が生 じることとい う。デー タ従属
(dathdependencies)の問題 と,データ操作言語の難解性の問題である。
CODASYL
型
DBMSでは,デー タ構造 とそれを実現す るハー ドウェア とソ フ トウェア とが個別のプログラムを通 じて不可分の関係 にあ り
,DBMSの構 築お よび運用 にあたっては,具体的な個 々のハー ドウェアとソフ トウェアの影 響 を強 く受けるという
ⅩXv l l ) 0
デー タ従属の問題 とは,この ような状況において発生す るもので,デー タベー スにおけるデー タ構造が具体的な
DBMSの技術 的な制約 を受 けることによっ て,環境の変化 に対応するための保守や拡張が困難 にな り,結果的に情報 シス テムの寿命が短 くなって しまうことをい う
ⅩⅩv
iii) 。
また
,CODASYL型
DBMSでは,デー タを抽出 ・加工す るために用いるデー タ操作言語 も,個 々のデー タベース ・システムごとに定義することになる。情 報 システムのそれぞれの利用者が この ような言語 を習得することは非常 に困難 であるため,結果 としで情報 システムが十分に活用で きな くなる問題が生 じる
とい う
xxix)。
xxvl)EverestandWeber1977,pp.341‑342. x‡vLi)EverestandWeber1977,pp.3441345. xE前 EverestandWeber19
7
7,pp.344‑345. xxix)EverestandWeber1977,pp.345‑346.( 4) 関係型デー タベース ・システムによる会計情報 システム
EverestandWeber
は,彼 らが支持す る関係型
DBMSでは,デー タ構造 はハー ドウェアとソフ トウェアの特性か ら独立 して定義す ることが可能で, また デー タ操作のための汎用的な言語 も準備 されていると論 じた
ⅩⅩⅩ)。そのため, これ まで指摘 した ような問題 は,関係型
DBMS技術 に基づ く会計情報 システ ムにおいては飛躍的に緩和 されることになると主張 したのである
。これ らの ことを示 した うえで,Eve
restandWeberは,関係型
DBMSにおいて会計情報 システムを実現するための基礎 となる論理モデルを例示 したので ある。 ここで,彼 らは,伝統的な会計の枠組 を肯定的に受入れる立場 をとって いた。実際,彼 らが提示 した論理モデルにおいて も,伝統的な会計 システムを 実現す ることが強調 されていた
ⅩⅩⅩi)。
4‑2 関係型データベース ・システム技術の会計 情報 システム研究における 意 義
以上の ように,Ever
estandWeberの議論の焦点 は,会計その もの よ りも む しろデー タベース ・システムの基盤 となる技術 にあった といえる。なかで も,
CODASYL型
DBMS技術 に基づ く会計情報 システムに対 し,関係型DBMS技術 に基づ く会計情報 システムの優位性 を明 らかにすることこそが,彼 らの議 論 における主たる目的であった といえよう。
会計情報 システム研究への貢献 とい う観点でみた場合,Eve
restandWeberの研究 は,CODASYL型
DBMSに基づ く研究 と同 じく,会計情報 システムにおけるデー タ構造 とその操作 を,実装が保証 された論理モデルによって提示 し たことである。異 なるのは,Eve
restandWeberが用いた論理モデルの記法が, 複雑 なプログラミング言語が提供するイ ンタフェースによるものか ら, よ り扱
うのが容易 な標準的なデー タ操作言語 に変わった とい う点であろう
。‡‡‡)EverestandWeber19
7
7,pp.348‑349. mi)EverestandWeber1977,p.350.5.まとめと今後の展望
以上,本稿 では,デー タベース ・システムの生成 と展 開を整理 し,その上で, データベース ・システム技術 に対応 して行われた会計情報 システム研究につい て検討 を行 った。
デー タベースの概念は,長い間実際の システムや技術 とは乗離 して展 開 して きた。データベース概念が具体的な技術 と統合 されるのは,1
971 年,CODASYL の
DBTGによってDBMS概念が提唱 されてか らである。 したがって,DBMS 登場以前の会計情報 システム研究については,その前提 となっている技術が ど の ようなものであるのかについて個 々に明確 にする必要があるであろう。
DBMSに対応 して行われた会計情報 システム研究は,基本的に,ハー ドウェ
アとソフ トウェアの技術的な詳細 さを,会計情報 システムにおけるデー タのあ り方の議論か ら分離 させ た。DBMS の フ レームワークを活用す ることで,捕 象的な論理モデルだけで,会計情報 システムにおけるデー タ構造 とその操作の 議論 をすることが可能になったのである。
この ように して具体的な
DBMSを背景 に して論理モデルで検討 された会計情報 システムは,いずれ も伝統的な会計 システムにおける取引デー タを保持す るとい う点では共通 していた。つ ま り,複式簿記の仕組みにおいて記録 される 取引デー タは,その まま維持 されているのである。
DBMS
技術 の導入 によって変化 した部分 は,情報提供の局面 におけるデー タの処理方法 についてであった。DBMS の特性 を活用す ることによって,刺 用者の情報要求に応 じて保持 している取引デー タを加工 して,柔軟 な情報提供 を可能に したのである。これは,会計情報 システムの機能の拡張ではあったが, 記録 されるデー タと提供 される情報 とい う観点か らすると,会計のあ り方 を本 質的に変化 させ るものではなかった。
会計情報 システムにおけるデータ処理機構 を,複式簿記か らデー タベース ・
システムへ移行することは大 きな変化であった。 しか し, このデー タ処理機構
の仕組みの変化それ 自体 は,会計のあ り方すなわち会計理論 に対 して本質的な
影響 を与えなかったのである。
他方,この時代 には,データベース ・システムの登場に対応 して,会計のあ
り方を変えようとする研究 も行われていた。 これ らの研究の展開と意義につい
ては稿 を改めて議論 したい。
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(1985)「 会計モデル論研究小史 ( 二)
」『 合計
』 Vol
.128No.2,pp.107‑118.神 崎 稔 章
概 要
本稿 は1
980年代後半か ら
2006年に至 る長期デー タを用いた貯蓄投資バ ランス の観点か ら北海道経済 を傭轍 し直面する課題について考察 した。考察の結果, 北海道経済は,①全 ての時期 について一般政府の大幅な投資超過 と域際収支赤 辛,民間部門の貯蓄超過であ り,官依存下 にあること,② ただ し
2000年代以降 の新たな傾向 として一般政府の投資超過縮小傾 向の下で財政移転が資本移転か ら社会保障給付 を主体 とした経常移転 に変容 して きたこと, が明 らか となった。
今後北海道が この ようなマネーフロー構造 に依存す ることな く経済成長 を確保 するには,民間部門の貯蓄 を活用 した投資拡大や移輸出型の産業振興等 に向け た経済経営が課題 となろう
。は じ め に
19
世紀半 ば北海道 において政府の開拓が始 ま り今年で1
40年 を迎 える。北海 道開拓史の設置
(1869年),続 く北海道庁の設置
(1886年)以降,北海道は 日 本経済の一部 として組み込 まれて きた。第
1期北海道拓殖計画
(1910年) に始 ま り,北方農業 を確立 させた第二次北海道計画,戦後 には,北海道開発法
(1950午),北海道第
1次
5カ年計画
(1952年),そ して,高度経済成長期の第
2期お よび第 3 期北海道開発計画へ と至 る
1)0
高度経済成長期の国土政策は公共投資主導型の開発計画であ り,当然 なが ら
〔