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「トライアングル・ディベート」による対話能力の育成 1)森作宜民,2)田口守

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Academic year: 2021

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「トライアングル・ディベート」による対話能力の育成

1)森作宜民,2)田口守

ュ嶋市立鹿野中学校 〒314−0038茨城県鹿嶋市城山4−7−10

2)?城大学教育学部 〒310−8512茨城県水戸市文京2−1−1

抄録

 対話能力は,実際に対話することでしか育成できないものと考える。そのため,学 校教育においては教師が意図的に対話の場面を設定し,生徒に数多く対話させること が求められる。ここで実践した「トライアングル・ディベート」は,ABCの3人が,① A→B(賛成意見),②B→A(質問),③B→C(反対意見),④C→B(質問),⑤ C→A(賛成意見),⑥A→C(質問)を各1分ずつおこなうものである。これは,通 常のディベートと違いグループでなく個人で意見を述べたり,相手の意見を聞き質問 したりする。また,最後の判定はせずに,その代わりに討論後に3人で意見交換や自己 評価をおこなう。この実践は,特に準備時間も必要とせずに,討論自体も①〜⑥の後,

意見交換と自己評価をしても15分程度で終わるため,短い時間で全員が対話を体験し たり,何度も繰り返し実践したりできるというメリットを持っている。また,対話に 必要な相手の意見をよく聞き,そこから学ぶという姿勢も身につけることができる。実 際におこなってみると,1分間で自分の意見をまとめたり,相手の意見を聞きながら質 問を用意したり,次の自分の意見をまとめたりすることが難しいという感想が多かっ た。これは,対話に求められる瞬発力であるが,何度か実践を繰り返すうちに少しず つできるようになっていったようである。

Key words:対話能力,聞く,相手の意見に学ぶ,瞬発力

はじめに

 一般に行われているディベートは,相手チームを論破することが目的となるため,そ こでのディベーターは,いかに相手に負けない論理を展開するか,そして,いかに相 手の論点の弱点を突くかに全精力を傾ける。そのため,論理的な思考力や発言力の向 上にはつながるが,相手の意見をもっと詳しく知ろうとか,相手の意見から学ぼうと いった本来対話に求められる基本的な姿勢は学べなかった。また,最後に判定を行う ため,授業後に多少しこりが残ることもあった。そして,深く論理を展開させるため には下調べの時間が必要になり,準備の時間の確保が問題となることがあった。そう いったデメリットを出来る限り解消し,しかも,論理的思考力や発言力の向上といっ たメリットは残そうという考えで設定したのが,この「トライアングル・ディベート

(ミニ・ディベート)」である。これは3人で行うが,通常のディベートのようにグルー プではなく,個人で意見を述べたり,質問したりする。また,判定もしない。そのか わりに,討論が終わった後で,3人で自分たちの討論に対する意見交換をするとともに,

自己評価カードの記録を残す。この実践は,準備時間も必要とせず,1サイクルだけで あれば最後の感想の交換、の時間,自己評価の時間をとっても15分ほどのため,全員が

(2)

対話を体験できるというメリットを持っている。また,相手の意見を聞いて質問をす るという時間があるため,話すことと同時に聞く力の育成につながる。そして,意見 を言ったり,質問をしたりという時間は1分という短い時間なため,対話に必要な瞬発 力の育成も図れる。

トライアングル・ディベート(ミニ・ディベート)の方法 1サイクル

① Aの役割をしている生徒が,Bの生徒に,テーマに対する賛成意見を1分間話す。

② Bの生徒がAに対して,今の賛成意見の中でよくわからなかったこと,もっと知   りたいことなどを1分間質問する。Aはその質問に答える。なお,このときの質問  は,自分の意見とならないように注意する。(この点は,④,⑥も同じ)

③ Bの生徒がCに対し,テーマに対する反対意見を1分間話す。

④Cの生徒はBに対し質問をする。Bはそれに答える。時間は1分間。

⑤ CはAに対し,テーマに対する賛成意見を話す。時間は1分間。

⑥ AはCに対し質問をする。Cはその質問に答える。時間は同じく1分間。

2サイクル (これは発展型とし,1サイクルの実践によって対話力が十分ついた後で  おこなうものとする)

⑦ AがBに対し,テーマに対する反対意見を述べる。

⑧BはAに対し質問をする。

⑨BはCに対し,テーマに対する賛成意見を述べる。

⑩CはBに対し質問をする。

⑪ CはAに対し,テーマに対する反対意見を述べる

⑫AはCに対し質問をする。

1サイクル 2サイクル

o

指導方法

 a グループ分け

  ・3人を1グループとする。グループの設定は,出来るだけいろいろな人と討論   が出来るように,実施することに変える。

(3)

b テーマの設定

 ・生徒たちが考えやすい,生活の中の身近な内容をテーマとする。例えば「中学  校に制服は必要か?」とか「自分の気持ちを伝えるには手紙が一番か?」などと  いうようなものである。

  これは,各グループが自由に選べるように,いくつか例示しておきその中から  自由に選ばせる。

c役割を決める

 ・テーマに対し,以下のような役割を決める。

  A賛成の立場から意見を言う。Cに対して質問する。

  B 反対の立場から意見を言う。Aに対して質問する。

  C 賛成の立場から意見を言う。Bに対して質問する。

d トライアングル・ディベートを行う

 ・意見発表ならびに質問の時間は1分間とする。

e感想交換

 ・それぞれのグループごとに自由に感想の交換をする。

f 自己評価カードの記入

 ・それぞれが感想を書くとともに,自己評価を行う。

評  価  カ  一  ド

3年    組 氏名

テーマ 感想

鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈黶p一一一㎜一一一一一一一一一 一一一一一一一一一一一}一一一一一一一一一一一一一一一一

 テーマへの(賛成・反対)

モ見を,聞き手にわかりやす ュ話せたか。

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̀ {B ; C    l       I    l      l    l      i

 あいまいな点は聞き返すこ ニができたか。

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̀  l B  l C    l       I    l       i    l       l    l      I

* Aよくできた  Bだいたいよくできた  C もう少し

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授業記録

(1)テーマ 「自分の気持ちを伝えるには電話がよい」

1998,11,24(火)鹿野中学校 3年B組(ABCともに女子)

A→賛成意見

 え一と…,私は,自分の気持ちを伝えるには電話がいいと思います。それは,手紙 と違って,電話は相手に向かって直接話せるからです。しかも,話す相手が目の前に いないから,かえって話しやすくなります。それは,え一と…例えば,相手に直接だ とちょっと言いづらいことってあるよね。でも,電話だとそれが言えるってことがあ るんです。それが,電話のいいところです。それと,あの…,電話は遠くにいる人と も話せるでしょう。直接だと,学校から帰ったときにも話したいなって思っても出来 ないけど,電話だと出来るからいいです。

B→ 質問  A→ 答え

B あの,話す相手がいない方が話しやすいことがあるっていったけど,それってど んなこと。

A え一と,例えば,何か謝るときとか,それとか,あと,直接顔見ない方が本音が 言えたりするじゃん。

B でも,そういうのって,本当は相手の顔見ながら直接言った方がいいんじゃない の。(C それって意見じゃないの)ああ,そうか。

Aそれはそうかもしれないけど,言いにくいことが結局言えるんだからいいんじゃ

 ないの。

B でも,顔も見えないし,どんなところで電話しているかもわかんないと,ホント かなって思うことない?

Aそれは,声とかでわかるんじゃない。

B そ一かな…(1分の合図)

B→反対意見

 私は,電話は相手の顔が見えないから,あまりよくないと思います。それは,直接 言うときは相手の顔とか見えるから,気持ちとかもよく伝わるし,だからやっぱり,

直接会って話した方がいいと思います。それに,え一と,なんか言いにくいこととか っていうのも,直接会って堂々と言った方が好感が持てると思います。それから,あ の…,電話って,ときどき,気まずくなってシーンとかする事ってあるじゃないです か。そういうとき何にも出来ないから困ります。だって,電話って一対一じゃないで すか。他の人がいれば違う話題出してくれることもあるけどそれがないと結構つらい

ことってあるよね。

C→ 質問  B→ 答え

C え一と,相手の顔が見えないとあまりよくないって言ってたけど,どういうとこ  ろがよくないの。

B 相手の顔が見えると,自分の言ってることをどういうふうに聞いていてくれるか わかるじゃない。例えば,「そうそう」って任してるときは,話している途中でも 相手の気持ちとかわかりながら話せるでしょう。

(5)

C あとは,え一と…,気まずい時ってどんな時?

B なんか話していて,その話題が終わっちゃったときとかに,シーンとしちやうこ  とあるでしょう。あれ。

C だけど,目の前に相手がいてもなんか話しが続かなくなることってない?

B それもあるかもしれないけど,だけど,なんか他の話題が見つけやすいじゃん。

C→賛成意見

 私は,電話の方がいいと思います。理由は,目の前に相手がいないとあんまり緊張 しないから,恥ずかしくないし,話しも長く続くからです。それに,友達の家とか知 らなくても,電話番号知ってれば,夜とか,学校から帰った後でも話できるから便利 です。それに,今テレビ電話とか出来てきてるから,相手の顔とかもわかるようにな るし,あと,直接行って話すと遠くの人なんかだったらお金かかって大変じゃないで すか。でも,電話だったら,あんまりお金かかんないで話せるからいいと思います。

あとは,電話だと一対一だから,周りに友達とかいないと出来ないような話もできる でしょう。だからいいです。

A→ 質問  C→ 答え

A あの,目の前に相手がいないと緊張しないっていったけど,相手の顔が見えない  とかえって緊張することはない。

C 電話の時は,自分の部屋とかでいろんなかっこうして電話できるから落ち着くじ  やない。それに,相手が目の前にいないと,リラックスできるよ。

Aでも,さっきBさんも言ってたけど,相手の様子が見えないと,かえって気を使  いながら話をしなくちゃならないことってないかな。

C そういうこともあるかもしれないけど,でも,顔が見えると,相手の反応とか気 になるけど,それがないから楽じゃない。

A あと,家でよく言われるんだけど,電話で話が長くなると相手の家にも迷惑にな  るんじゃないの。

C それは,お互いが注意すれば大丈夫じゃない。

A周りに誰もいない方がいい話ってどんなの。(時間終了)

(2)テーマ 「中学校にはやはり制服は必要だj

1998,11,25(水).鹿野中学校3年D組(ABCともに男子)

A→賛成意見

 俺は,やっぱり学校では制服がいいと思う。だって,もし私服だったら,乱れ始ま ったらどんどん乱れると思う。制服だったら,あんまりそんなことないでしょ。それ に,ちゃんとしたときにはやっぱりけじめをつける必要があるでしょう。そういうと きのためにも制服が一番だよ。…(Arまだ一分にならない…」 crもう少し」)

それじゃ…,え一と,制服はやっぱり中学生らしいから。どこかへ出かけたときにも,

誰が見ても学生だってわかるし,学校にいても,なんか気持ちが引き締まるんだよ。

とにかく,制服だったら乱れを最小限にくい止められるよ。

B→ 質問  A→ 答え

(6)

 B 制服だとあまり乱れないっていうけど,今制服の学校がほとんどだけど,結構服  装乱れてるとこ多いんじゃないの。

 A でも,もしそれが私服だったら,もっとすごい事なってるよ。どんどん派手にな   つたとき,自由だとしたら限度越しちゃうよ。

①Bそれじゃ…,ちゃんとした時ってどんな時。

 A 例えば卒業式とか,入学式とか。

 B それじゃあ,そういう時だけ制服ってのはだめなの。それから,制服が中学生ら   しいっていうけど,私服でだって中学生らしい私服ってあるんじゃない。

 A ふだんの授業の時だって制服の方がいいよ。その方が,ああ中学生だって気にな   るでしょ。それから,中学生らしい私服っていうのもあるかもしんないけど,乱れ   ちゃったら大変だよ。

 あと,…(時間終了)

B→反対意見

 僕は,中学校は私服の方がいいと思う。だって,今はいろいろな服装があるのにみ んな同じ服装をして行かなくちゃいけないのはおかしいよ。それに,小学校だって私 服だし,最近では高校でも制服のないところはあるでしょう。それなのに中学校だけ が制服っていうのはおかしいと思います。ある程度きまりを決めて,その範囲の中で 自由ってすればそんなに乱れないと思います。今は,個性が大事なんだから,私服の 方がいいと思います。それから,私服だと中学生らしさを学べないという意見もある けど,僕は私服でも中学生らしさを学ぶことは出来ると思います。だって,教室で勉 強したり,部活やったりしてれば,「中学生」って感じになるじゃない。

C→ 質問  B→ 答え

 C 高校で制服のないとこってあんの。

 B あるよ。

 C どんなとこ。

 B え一と,水戸一高とか,土浦一高とか…。

 C どうしてその高校は制服がないの。

 B 制服がなくったって大丈夫だからじゃないの。

 C大丈夫って?

 B だから,よくはわかんないけど,みんながある程度きまりを守っていられるって   ことじゃないの。

 C そうしたら,今の鹿野中だったら,制服っていってても襟カラーつけてないよう  な人がいるのに(A「それおまえじゃん」笑い),私服になったら守れないんじゃ  ないの。(Afそれ意見だよ」)

 B そんなことないと思うよ。初めは,少しはそうなるかもしんないけど…。(時間  終了)

C→賛成意見

  僕は,制服派です。学校へ来るとき,もし私服だったらいろいろ選ばなくちゃなん  ないし,友達と競ったりすることもあるかもしんないから,制服の方がいいと思いま  す。それに,なんといっても,○君(Aの生徒)も言ってたけど,制服の方が引き締  まるからいいと思います。やつぱ,びしつと引き締まるってのはいいよ。(笑い)そ  れから,例えば高校なんかでもそうだけど,制服で学校のイメージが決まる事ってあ

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るでしょ。そういうのって大事だよ。制服で高校選ぶこともあるし。(Br中学校の 話だよ」)だけど,中学校だって,少しは他の学校と違うじゃない,特に女子とか…。

(「まだ」)え一と…,制服は冬暖かくていいよ。やっぱり。

(時間終了)

A→ 質問  C→ 答え

 A なんでびしつとしなくちゃいけないんですか。

 C だって,それは義務教育だからだよ。義務教育はやつばしょうがないんだよ。

 A 学校のイメージっていってたけど,それはなんですか。

 C だから,例えば,X高校だったらブレザーとか, Y高校だったらあの制服とかっ  てあんじゃん。高校案内にものってるじゃん。

 A でも,それは高校の話で,中学校にはあんまりないんじゃないの。

 C でも鹿島中と鹿野じゃ違うよ。(Br学生服は同じだよ」)女子のセーラー服は違   うでしょ。

 A それはまあいいとして,私服だと友達と競うことがあるって言ってたけどそれは   どういうことですか。

 C それはね,例えば,友達がどっかのお店でかっこいい服とかかってきたとすんじ   ゃん,そうしたら,おまえとかだってそれ着たいなあって思うでしょ。そしたら,

  みんながそれ買ったりするでしょ。結構高かったりすんだよね,そういう服って。

  (時間終了)

感想

 ・質問するのが難しい。でも,やっていくうちにだんだん慣れてきた。

 ・1分間というのは長いと感じた。

 ・賛成意見も反対意見も考えながら,さらには質問もするので大変だった。

 ・短い時間で自分の考えをまとめたり,相手に対応するのは本当に難しいと思った。

 ・1度目と比べると,2度目,3度目と回数を行うごとに慣れてきた。

 ・相手の意見を聞きながら,次に自分が発言する内容を考えることは難しいと思った。

 ・相手の話をよく聞くということはなかなか難しいと思った。

 ・何度かやるうちに,少しずつ聴いたり意見を言ったりということができるように  なってきた。

 ・いろいろな人と対話をすることができてよかった。(同じクラスにいてもなかなか  こんな話をすることはない)

 ・質問をするのは難しく,何を質問しようかと悩んだ。私はテーマに対し反対意見  を言うことになった。個人的にも反対だったのだが,二人の賛成意見を聞いてなる  ほどと思う点もあった。

考察

 ① このトライアングル・ディベートでは,テーマについて深く考え意見を言ったり,

  その意見に対して質問したりという活動を行っていた。

   さらに,(2)の授業記録のBからAへの質問の中の①のような「相手の答えを   誘導する質問」がされているのも注目すべき点である。この時,質問者Bには,A   の言う「ちゃんとしたとき」が儀式的行事を指すのだろうということは予想されて   いただろうと考えられる。しかし,あえてその質問をし,Aに「卒業式や入学式」

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 と答えさせることで「それならその他の時には私服でもいいのでは」という自説を  展開しようと考えていたのであろう。これは高度な対話力だが,こういつた能力も,

 トライアングル・ディベートのような対話の場をいくつも経験する中から生まれて  きたものを考えられる。

②このトライアングル・ディベートは一般に行われているディベートと違い,個人  で意見を述べ,聞き,そして質問をするというものなので,全員が同じ活動を体験  できる。そのため,グループでおこなうディベートの場合には消極的になりがちな  生徒も,積極的に活動する様子が見られた。

③ 3人で行うため,必ず一人直接対話には加わらない生徒が出来る。その一人の存  在が効果的だったように思う。例えば,(1)の授業記録ではBのAに対する質問  にCが,(2)の授業記録ではCのBに対する質問に対しAが「それは意見ではな  いか」と発言している。質問したりそれに答えたりしている生徒同士ではつい見逃  してしまいがちなことだが,冷静に対話を観察している生徒がいるためこのような  ルールについての確認をすることが可能となる。また,一対一よりも対話しやすい  場を構成することもできたのではないかと思う。

④ 一般のディベートの場合,討論を行うためには準備時間がかなり必要となる。そ  の時間は授業時間だけでなく,昼休みや放課後の時間にまで及ぶだろう。また,資  料がそろっても,それを検討し,意見をまとめていくにも時間がかかる。こういつ  た時間自体にも価値はあるが,対話能力の育成という観点から見ると無駄になって  いる時間が多いと思う。それに対して,トライアングル・ディベートの場合15分  あれば終わる活動だが,その15分のうち多くの部分は意見を言ったり,聞いたり,

 質問をしたりあるいは感想の交換をしたりという時間である。対話力を育成するた  めには出来るだけ多く対話する以外ないと思うが,その意味でも,この実践は効果  が大きいと思う。また,短時間で実践できるので何度も行うことが出来る。そのた  め,生徒にも自分自身の対話力が向上していくことが確認できるようである。

⑤ この実践では一般のディベートのような「判定」はしなかった。生徒には授業の  際に,「判定はするがその結果についてはその場限りのものとする」こととして,

 しこりは残さないような指導はするのだが,実際には難しいようである。また,筆  者自身がディベートを体験した際も「判定が正当ではない」とか「相手側の論理に  はこれこれという欠点があった」などということについて後々までグループ内で話  題になっていた。大人でさえそうなのだから,微妙な人間関係をはらんでいる中学  生には「判定」は行わない方がよいのではないかと思う。また,トライアングル・

 ディベートでは,相手の意見をよく聞き,それに対して質問をする時間を設定して  あるが,そのことによって,相手の意見から学ぶという姿勢も学ぶことができたよ  うである。これは,「個人的にも反対だったのだが,二人置賛成意見を聞いてなる  ほどと思う点もあった」という感想からもわかる。

⑥ 今回の実践では1サイクルの実践のみとなった。これは,2サイクル目の自分自  身の立場を変えて意見を言う活動が生徒にとって難しかったためである。今回の実  践記録はいずれも4回目の実践を載せてあるが,この記録にあるものも,必ずしも  スムーズな発言ばかりではなく「…」のところではかなり止まっていることもあっ  た。また,記録として載せていないグループでは二つぐらいの質問しかできない生  徒もいた。しかし,1回目の実践と比べるとかなりの進歩をしているのも事実であ  るので,このような実践を,中学入学時から繰り返すことで,2サイクルの実践が  行えるのではないかと考える。その際には,あるテーマを肯定・否定両面から考え  る力を養うとともに,友人の意見と合わせてそのテーマを広範囲からみる力の育成  にもつながると思う。また,対話に必要な瞬発力はさらに向上するものと考える。

(9)

資料

*生徒用プリント

 トライアングル・ディベート(ミニ・ディベート)の行い方

* この表は,授業を行うごとに配布する。最初の実践の時には,相手の意見をよく聞  いて,「質問」の時間には,「もっと知りたいところ」や「よくわからなかったとこ  ろを質問する」ことを説明する。また,下のメモ欄は自分の意見の論点を書いたり,

友達の意見を聞きながらメモをするときに使うことを伝える。しかし,メモを取る際 にも,出来るだけ相手の顔を見て話を聞くように指導する。

賛成→賛成の立場から意見を言う 反対→反対の立場から意見を言う

賛成,反対,質問 いずれも1分間 テーマは身近なものから

④  質 問

③  反 対

参照

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