植物染料によつで染色された布の染色堅牢度について
―耐光,洗濯,摩擦堅牢度―
山崎光子 県立新潟女子短期大学衣服研究室
Studies of the Color Fastness of the Clothing Materials
Dyed with Vegetable Colors Mitsuko Yamazaki
The Clothing Institute, N三igata Women,s College.
近年,天然染料(主として植物染料)の色の美しさが再認識されてきたことは,周知の事実であ るが,最近では,単なる手工芸品の染色のみにとどまらず,かなり企業化された方法でその染色が なされ,雅味ある織物などになつて人々を楽しませている。
このようセ「・美しいものとして一般の衣生活の中に入り込んで来た場合・着用時の強さが問題に なつてぐる。
少くなタとも明治初年までは,全ての染色に植物染料が使用されていtc。そしてその堅牢度は,
正餓働撚o靴する舗代蛾され磯多の染齢1からもわがるよう1・こ・ [L:fi Sの蜘もの 輔り:.ま鰯い⑩樋つたのである・
この植物染料の染色堅牢度に関しては,上村六郎氏をはじめとしてエ),横島氏2),由中氏3),松 浦氏4),岡氏ら5)そのほか多くの染色作家によつて研究されているが,数種の植物染料について の,またぽある堅牢度についての部分的追求であつて,そめ大要が一見してわかるように蓑示きれ たものはみあたらない。,
本実験では).その全体の様籾を明らかにする目的で,これまで「般に手工芸染隼用の植物染料と されてきた植物のすべてo,6),および身近にあ拳植物のうちで染料として使用可能といおれてい るもの1),6)について,媒染剤および繊維の種類は変え,その他の条件に可及的同一にして染色標 本をりくり,その耐光,洗濯,摩擦に対する染色堅牢度を測定して,それらの相互関係を検討し
た。
実験材料と方法 1.実験材、料
a.試 験 布
一般に植物染色に使用されている布地として,次のものを選んだ。
揚檎木絹羊染−2 h 綿(天竺)
(羽二重)
毛(モスリソ)
料
梅(樹皮)
(樹皮)
20 S
14匁付 60m/皿
3柘 榴(実)
4楼 椰 子(実)
一・ X 一
ラララ ︶ススス︶︶︶︶痩キキキ・実花花葉虫エエエ!曳 !曳 ︵ ︵ ︵︵︵︵車子 子一プ柄
矢丁 銭脳567890王2媒 ーユ ー ¶上 蘇よ刈 茜紫34567891 王 ¶上 暫上 て← −←−
Pグウツド(エキス)
柔 芳(心材)
も ぎ(全草)
」 安(全草)
げんのしようこ(全草)
c.
媒染剤として今回使用可能な次のものを選んだ。
1明 馨 2 舘化第一錫 3 生 石 灰 4 重クPム酸カリ 5硫一酸 銅 6硫酸第一鉄
(根〉
根(根)
Al2(SO4)3KzSO4・24H20 SnCl2・2H20 1
CaO
K2Cr207 CuSO4・5HzO FeSO4・7H20 (媒染薙は全て一級試薬を使用した。)
2.染色方法
染色法に関しては6),7),8)等もあるが,今回は上村六郎民の方法1)を採用した。まず,被染物 の目方と同量の染料を,被染物の50倍量の水に入れて加熱し,沸騰させ,30分間加熱をつづけてか
ら染液をとり出す。(エキスを使用する幌合は被染物の目方の1/4を溶解させて用いる。)
その中に,あらかじめ湯洗いした被染物を入れ,さらに再び沸騰,後10分加熱する。その間被染 物を染液から3回引きあげてしぼる。染め上つた布は染液を型旦放冷してからとり出し乾燥させ
るo
次に被染物の肪の10吻媒染瓶』徽物5。樋の水に入れ力燃溶解し,その中に先の染 色布を入れ;6eec・・−S。℃で10分間媒染する。この間に3回,液から引きあげてしぼり,後,乾燥
する。
またさらに, その媒染し終えた布を前記の染液の残液5⑪倍董(染着,蒸発などにより減少した分 は水を加え元の量にする)に入れて撫熱,前と同様に沸騰後玉0分染色を続け,一その間3回液から引 きあげてしぼる。終了後,放冷した布は一旦乾燥してから水洗いし,乾燥する。
3.堅牢度試験とその判定
丑S規格に準じ,実用牲も加味して次のように行つた。
a.一耐光堅牢度(J工SL1044に準じた。).
上記の方法によつて染色した布をキセ〃フtドテスターXF−2eo(SHIMAZU)にかけて,定 絡出力L5KW(62V・24A)試験温湿度40°C,50%で20時問照射した。(より以上の照射の必要が 認められなかつたので,そこまでで試験を終えた)
結果の判定は標準灰色色票甲(変槌色用グレースケール)により照射した部分としない都分の色 の開きをみて,1級〜ヰ級までの表示をもつて変槌色の判定を行つたo
なお,判定の規準はいつれも∫IS規格の示す逓りで,敬字の多い等級ぼど堅牢度が高い。
b・洗濯堅牢度試験(J王SL1045に準じた) r 、
前述の染色叡こ,いつれも同じ大きさの添布貞奄綿布(ヵナキソ3号綿2003番),・網布(6匁 付平織絹布)をはさみ,絹を内側にして半折し,軽く斜めに縫いつけた。それをラウソダオt ・一・タ ー(SHIMAZU)によウ,1分問42±2回の速度で運転操作した。石けん(固形洗覆石けんU>は
10_
いつれも0.5%液で,綿布,絹布はステソレス鋼球で50±2°Cで10分間,羊毛布は硬質ゴム球を 入れ40℃±2℃で30分間洗浄し,試験後,直ちに,温水(斗0℃±2°C)で2園,26℃±2°Cの 希酷酸溶液(O.01g/l)で1鳳さらに冷水で洗浸してから遠心脱水機に項・けて余分の水分を除いた のち,70℃〜75°Cの乾燥機で乾燥した。
判定は,天然染料のため汚染度と変槌色の結果に差があり判定しにくいため,標準灰色々票乙
(汚染用グレースケール)のみにより,試験前後の添布白布(綿布,絹布)の汚染度を1−5段階に わけて等級をきめた。
c・ 摩擦堅牢度試験(JIS Llo48に準じたo) 一
添布白布としてカナキソ3号綿2003番を用い,学振型摩擦試験機(HOKUDA)で2009の荷 重をかけ,乾燥状態にて毎分30回の速度で100回往復摩擦した。
その結果は標準灰色々票乙(汚染用グレースケ・一ル)で,摩擦白綿布の試験前後の色の開きをみ て,1〜5級までの衰示をもつて汚染の判定を行つた。
実験成績と考察
染色堅牢度試験の結果は第1表〜第3表の通りである。なお,その分散分析の結果は第4〜6表
に示した。
表1耐光堅牢度試験判定結果
(数字は等級を示す)
楊一珪孝
柘撫矢丁 五カゲタロ蘇
テ グ レ ソ
桐 衡 魂茶倍キ ウ
ツ ガ ツ
1留=J:,車子 子1プラド.芳
よ 苅
も
ぎ 安
茜げんのしようこ
紫
根
{・・木 圭﹁恥 畠
未媒染
Al
Sn Ca Cr Cu Fe
ユユ21333112334222312223223344222233423224342213334123334︐を 3443444434333441・21︼22う輪233343333224432324444 2 3 3 』2 1 2 3 3 2 1 2 1 2 2 1 2 3 3 1 1 2 3 4 3 1 4 .3 4 3 2 4 3 .4 4 1
b. 網
未媒染 Al
Sn
Ca Cr Cu
Fe .
333444433323−33233444443234442222344 3312333433334444444連号4 2・ 3 3 3 3
3 3 3 3 3 3 3 2 4、 4 3 2 3 2 4 4 3 3 3 3 4・ a 4 3 4 4 巳 4 3 4
2343224 3334畠4・4・直唾3322︵03︵O4432444 111・︑臨2323332333
一11_
Ψ・ ●
噛 .﹈IIl°2°l1
3a3L°3∴3∴3°・
⁝ 2°22836・4° .一 ゜・2貫22L.β・.8 °凸. 3旨2・2ガ塩.ピ街
﹃営②︑443・
3°︸−分3β4°. 一 一 3・3.32222.3°312344・
22L︐243・4 闇.°33・3°334..3 2212234..33°33331
∠・4 83434
.﹁ ︸ 433.34.44 .且2°−r232°
°.E1214442
毛433㌔β344・. . . . . ..・﹁ .322β2ユ3 一 ..°
羊.. .C=㌃In血rUε゜. °・h °
未鮎翼
幽
k
、
A
S C
C C
.F
1
︐
(数字は等級を示す)
衷2洗濯堅ド度試験判定結果
1
紫
茜 一
根
げんのしようこ
苅゜ 安よ.もぎ蘇
芳
算.グウツド
タゾガテゲゾツプ
カテキユー五︐倍子
参 珪 茶
柘 楓矢丁
榔
楊..
柄
車 子
゜子梅
、\摯
.\料 娯 染剤 \
i \
a.木 綿
55 5.5555.5555555
5.一む一〇一〇一〇一〇4・5555544555555544242244ざ4543°4
b . 一5555555
rO4・罵り534・4..545454︑4⁝55555545555555・55555555.555555 4.5555.54°5555石5.5°
5545・・555.55555憾.h5
5一5.5・5555 F
未媒染 Al Sn
Ca
Cr Cu Fe
5555555 5445434
5一〇一む55一〇4噂 445后555 5555555 4335423
直昌 4︵ 凶釜 ム一 凸Q 4・ 4・ .5555555
.54・.4一弓り印尊4・一〇 4444444 5555555 °545554.5
︐直畠4幽4一4一5五・五 555555ず 5555.555 55 55°5 5 5 5544﹂°555
55・334五.5°毛
羊. 弓゜与石4555絹
b.
未媒染
・ムl
Sn Ca Cr Cu Fe
C. ゜3444°444 3°4↑五一4冊4虚゜3ム晶 4444・4.44 4△.4一4﹂44辱五骨 君一ム.4鼻五.4山4占4辱゜ 4444444. 4.334433° ..一゜° 44些4444. 444444.4 β.4.44444 4︐4﹂qり44・4一〇〇 4一4︐4・4.五五幽4︐ 44ヰ2234 2432322 444444.4 4444444 44な4444 且凸△一4︵4^ム引44幽 4444444
未媒染
.A1.
Sn Ca
Cr
Cu
Fe
一12一
表3 摩諺ミ堅巧芒度諄鵡影ミ半ti定結:果
(数字は等級を示す)
\染
\料 媒\
モ瀦\
楊
梅
カテキユー五倍子
.茶
.糖゜丁
子
矢 車穣榔︑子柘
榴
..柄・ タンガラゲレツプ 茜げんのしようこ苅. 安よ も ぎ.蘇・ .芳ログウツド 紫
根
乱.木 綿
未媒染
A亙 Sll
Ca Cr Cu Fe
5 5 5 5 3 5 2〜3 5 5 4 5 ・ 5 4 3 5 5 4 4 4 5 5 5 5 4 4 4 2〜3 2 4 2〜3 3 2〜3 3 3〜4 4 2〜3 4 2{甲3 3 ・ 2 1 1 3 3【一4 3 2{〕3 32〜3. 4 2{》3 4 . 3 4 2〜3 3 2
53{一.45 334.48ん4 33−}33〜43 1 1
4 R〜
S53一D・ 4 S3〜4・2 ̀34.3〜・21
5 ャ≧二45・444 4 3 4 4 4・3 2.2
5 5 5 5 5 5 4 5 5 5
5 ・4 4 53〜4 4 2 4 4
5 4 5 4 5噛
5: 4 5 5 5
3 4.4 4 5 b. 網
ムコヨ4.4.〜〜4.34. 32 ムコ4.4︐4︒〜4.34. 3.適432・三︑2
与54^呵5⁝. 2 ム 55435〜5 3.43L°221141・rl112
3 3 3ム.2〜1〜2〜 °ウ4 2 ︵4 483454〜〜〜〜4︑ 3223 ぬロ44.322〜4 q冒 ムコ お44〜°−〜4.3 3 2 ぬロ4.53﹈3〜4. 3 五︑°4 4. 4. 4.3ヱ.脳゜脳脳脳脳 4 4554〜5〜2 ︑3 33 3 3 4骨 4︐ 4 4 ユ ・酒.誕.423〜3 34332355 ヨ.4..4223〜2 2 4.5ム︑32〜33 −3
ヨ 諜親翫㏄αα恥 染
一 一
一 一
c・.羊毛
ム ユナ4・〜〜.34︑4乙.. 33 4.五.4.°〜°〜343°^︒ 3 ﹃︾ ぬも5°4・〜.3444 3 ヰムロ ハこ55°.〜〜4.〜4 3脅り 2554岨4を.磁. 3 . 3°
ユロ〜22°°2ユ2ユ
︵03211322.
ムロ リ ヨヨ ロ2〜〜2〜〜〜 32 2.22 4
a
4.・4.五.〜3〜3 ︐ ・ 3. 2° ゑコ コリ4.4.〜3〜33・ °3° 2 4444.3.43・
ユロ 4.〜 〜2333・ 3°2 ° ムコ24・・〜五.°4.4.4. .β ..4. 3°曙.54.〜2.4.3〜. 3・° °24 3 3.3 4・ 4曹 五.
説・..嘱忍認魂β・・ヨ ユヨ・・認.認4穿・. う輪2. ぬコ ヨ ぬコ ヤ4.〜︑・〜3〜〜3 ヨ ヨ ・・°一・学三︐ 3°. 3
.皇︑留1°n.arue鋤ASCCCF封
表4耐光堅牢度分散分析表
﹁
要 因 変動 .自由度
繊.. 蓋i筐 S非 拙集 封皐 剤 SE
染 料 So
交二互二f乍J有 SAx・B
〃 .SBxo
〃 SAxc
誤 差 SE
22.2 58.5 107.2
0.3.
62.2 20.3 79.3
不・偏分散
2 11.1
6 9:75
59518
.1 12.. 0.023
108. O.576
36 0.564
216 0.367
分散比 判定
傘変動S。・ 350.0
3。.。2i
26561
.16:2−
.o、0631
ヨ 1,57 i
i l・5Bi 卜 !
豪※※張※※
398
豪.※
L
__ P3_.
茨5 洗濯i騒牢度分散分‡斤表
要 四 変動 1抽度i不偏分散扮敬比}9三理定
1繊 維 s・
隣i{i}
誤 差 s司
5?:;i
61:li
}1:引
44.61
2i 29.7
6{ ・.・・
1ai 3.68
12 レ O.19
1°8 P °・ 6
36 0.41 216 0.26
114.2−・
L29
14.1 0.74 0.6;
1.57
楽楽
※※ t
※
全変動・s・1・。… 3981
表6 摩擦堅牢度分散分析表
要 因隣馴自由劇不偏分劇分散比1 判¶定
i
繊 維
媒染剤
染 料
交互作用
誤
〃〃
差
訓
s。見:!
lll:
SE]
1・・91
119:引
i,1:1
、1:釧
2 6 18 12 108 36 216
8、95 13.8B 8.88 0.73 1.23 0.18 0.129
69.31
107.6 68.a 5.6 9.6 1.4
※※豪※※※※楽※楽
全変動 s・1437・8 398 i
第懐一第6鄭みられ珈く,而S光欝嵐並びに隙堅牢においては殖襯猷き , の
で,繊糊1j,媒獺1j別,翼嚇別の主効果の判定は出来ない・
ただし洗濯堅牢度については,繊維,染料間の交互作用は多少みられるが,わずかであるのでこ 撹繕とti t、すと謀獅澗の堅牢性嵯はないといえる・雛間に蹉があり,木綿が馳強
く,総粍の順鰯くなる.しか吟回の撒方灘離てみると・耗1ま木絡緯嚇間を、
多く滞したのでこの蘇醐たと叛られる謙料別に麟壊の通り・そ瀦れ差があり・例 燃榊隊知工,隔,次いで茶,よもぎ瀧などが高く,低いの1瀟芳・°グゥツドであ る.蘇ラテ醐いのは港別のtls色条件によらないで,他の獅1と同一条件にしたた瞭色法が糊 でなかつたからであろう。摩擦堅牢度についても同様である。
総 J I括
19働渤染縮姻ついて繊維別,撒剤別に染齢をうく弼光・一灘摩擦に対する染色
堅牢度をしらべ基礎資料を作成した。
これをみると,染料,雛謀獺1ゐ間絞互作用があつて一定の餉力礎勘られない・こ れ脚か泌購こよるものか今回翻らS・・vcすることができなかつたので,今後もくり返え峡 験を追撫していく予定であるo
本実験にあたり謝臨徽閲を頂齢した鮒脚搬獅軸羅ゐ御鱒麺きまし瀞肝 代灘甑試搬のNifilを許可甑堅物半励矧受け下さつ漸専掲肛撒術セソター貼獄
_14−一
験場の小林久吉場長,小林登記栄斥s・お手伝い頂いた内田慧,落合順子ご浅野和子の諸氏にP・ ・:s−・く御礼申し上
げます。
参 考 支 献
1)上村 六郎:民族と染色文化,1943」
上村六郎・染色通論1955・
上村 六郎:暮しの染色,1%5.
2)横島直道・植物染料の日光堅牢肱工芸, G8・1937・
3)田中登美・獅膿度による色差と染鰹牢度に?いて鍬学雑玉7回総銃表・1965・
4)松浦 弘子 :植物染料の研究.お茶の水女子大学卒業論文,i963.
5)岡良子,小出厚子,鈴救子・蘇芳染色の堅牢度からみた好適染色条件について・奈良好大弊 i業論文,1964・
6)山崎光子・働}こよる雑弄こ関す碑察・新潟プ・弊業言雌1956・
7)小口忠海植物性染料絶法につい℃染色技術・7①・1955・
8)横島 直道:植物染料・工芸,61・1936・
_15一