鉄道沿線設備のレーザ位置計測装置の開発
吉川 悟,宮土 忠祐,徳田 浩一郎,中山 忠雅,清水 智弘,辻 求,最勝寺 進,佐藤 秀人
Development of a position measuring instrument using 3Dlaser scanner for the equipments along railway lines.
Satoru YOSHIKAWA,Tadasuke MIYATSUCHI,Kouichirou TOKUDA,Tadamasa NAKAYAMA, Tomohiro SHIMIZU,Kyu TSUJI,Susumu SAISHOJI and Hideto SATO
Abstract: It is one of the important issues to recognize precise location of the railway equipment to keep safety train operation. We developed position measuring instrument using rack-and-ground dual service trolley with 3D laser scanner. The system makes us possible to efficiently measure a lot of equipment along railway lines safely both day and night. The created point data cloud is converted into 3D spatial information through some processes. This paper reports some issues and precision of data, and future extensibility of the system.
Keywords: 3 次 元 レ ー ザ ( 3Dlaser scanner ) , 赤 外 線 カ メ ラ ( infrared camera),設備管理(equipment management),鉄道(railway)
1.はじめに
鉄道沿線設備の位置情報として、新たに緯度経度を 取り入れると共に、管理は地図機能と連携した設備管理 システムを活用することで、保守管理の高度化が実現で きる。一方で、鉄道沿線設備の位置情報をデータベース 化して車両に搭載すれば、乗務員の運転取扱などに対 する業務支援システムや列車制御システムへの活用が 期待できる。そこで、鉄道沿線設備の正確かつ効率的な 緯度経度の計測技術が必要となる.
JR 西日本では鉄道沿線の設備位置を安全かつ効率 的に把握するため軌陸両用車に3次元レーザと赤外線
カメラを搭載した設備位置計測装置の開発を行った.
なお,計測装置で得られる精度を列車制御に必要な精 度として 50cm を開発目標として設定している.
2.計測システムの構成検討 2.1.計測手法の選定
計測装置を構築するに当たり「安全性が高い」,「大量 に効率よく作業を進められる」の観点から比較的列車間 合の長い夜間作業が可能な構成で検討を進めた.その ため夜間でも設備位置を把握することができる 3 次元レ ーザを採用し,点群だけでは判読性が十分でないことが 想定されたため補足情報として夜間撮影が可能な赤外 線ビデオカメラを併用する機構を選定した.
計測した点群データを展開する手法としては通常 吉川:〒532-0011 大阪市淀川区西中島 5-4-20
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GPS/IMU といった機器を使用するが鉄道では長大トン ネルや駅の橋上化といった構造物,山間部といった地形 的要因により安定した計測を行うことが困難であることが 想定された.そのため,JR西日本で平成 18 年度に整備 した「航空測量により図化した軌道中心線」を利用する事 とした.この軌道中心線の位置精度は最大でも 50cm以 内,標準偏差で20cm以内で整備されており,JR西日本 管内全域が整備されていることから本件では軌道中心線 を採用した仕組みを選定した.
2.2.レーザ機器のスペック検証
軌陸両用車に計測装置を搭載する前にレーザ機器の 設置に関して「照射方向」「台数」の項目を検討する必要 があった.そのため,単一レーザを使用し低速度での計 測を実施すべく軌道自転車にて計測できる簡易計測装 置を開発し,その精度検証を行った.
図-1 レーザスペック検証装置
1)照射方向
照射方向は,レーザ照射角度が「鉛直」「45°」
「60°」,照射角度「鉛直」における照射方向「右 45°」
「左45°」の計 5 パターンについて検討を行った.
図-2 レーザの照射方向パターン
2)設置台数
設置台数については1)の照射方向とレーザ計測機 器のスキャンスペックにより適切な台数を検討した.
表-1 スキャンスペック表
角度分解能 単位:cm スキャン周期 単位:cm
レーザからの
距離 0.125° 0.50° 走行速度 5Hz 10Hz 50Hz
2m 0.4 1.7 1km/h 5.6 2.8 0.6
5m 1.1 4.4 3km/h 16.7 8.3 1.7
10m 2.2 8.7 5km/h 27.8 13.9 2.8
15m 3.3 13.1 10km/h 55.6 27.8 5.6
20m 4.4 17.5 15km/h 83.3 41.7 8.3
20km/h 111.1 55.6 11.1 30km/h 166.7 83.3 16.7
2.3.点群の展開手法の検討
レーザで取得した点群データは軌道中心線に対して展 開するが,その位置を特定するためスリット円盤と非接触 式フォトセンサを組み合わせ,1 パルス約5cmの分解能 の距離計を製作し,取得したパルスを軌道中心線上に展 開して位置を把握する仕組みを検討した.
2.4.計測対象の設備の選定
点群データとして取得する鉄道沿線設備については,
列車の制御に影響する設備を想定し,「信号機」「停止位 置目標」「距離標」,「勾配標」,「曲線標」,「速度制限標 識」,「踏切表示」,「接触限界」,「地上子」,「ホーム」,
「用壁」,「電柱」などの設備を対象として選定した.
図-3 計測対象設備
3.検証・検討結果
3.1.作業時間帯についての評価
昼夜に取得したレーザ点群データを展開し結果を比 較した.当初の予想通り取得されたデータに大きな変化 はなく時間帯に限られないことが確認できた.
3.2.レーザの照射方向の評価
照射角度については「鉛直」の場合,計測速度により 垂直に設置されている信号や看板といった厚みの少な い設備の場合に点群が当たらず抜けてしまう事がある.
そのため設備へレーザが当たる確立を高くすべく角度を つけることが有効であり,照射範囲の角度が少ない
「60°」より「45°」のほうが有効であると判断した.
図-4 レーザ照射方向による違い
また,取得する点群データは 360°全方位が必要で あり,計測中心から 10m 離れた曲線標でも判読を可能 にするため最低 3 点は反射する分解能が必要である.
そのためレーザの設置台数は2台(270°/台)で照射角 度は上下方向 45°とし、角度分解能 0.5°,スキャン周 期50Hz が必要と判断した.更に補足情報として信号の 形状をより明確に取得したい場合は,左右方向に 45°
傾けた鉛直方法のレーザを 2 台追加することが有効で あると判断した.
図-5 レーザ設置パターンの構成
3.3.鉄道沿線設備の認識評価
点群データの設備認識について大きな設備では問題 なく判読可能であるが,設備自体が小さく高さの差が少 ないような接触限界や地上子などについては反射強度 による表現を用いることで判読が可能であった.このよう に判読する設備によって点群の着色表現を変更すること が有効であることがわかった.
赤外線カメラの映像については,内蔵の赤外線LED 照明だけでは中心部の限られた範囲しか確認することが できなかった.200W の白熱照明については周辺まで確 認することができるものの,夜間作業での周辺住民への 配慮から望ましくない.そのため別途赤外線 LED の照 明を準備し広範囲の設備を視認できる仕組みを検討した.
図-6 赤外LED照明(左)と白熱照明(右)の比較
3.4.距離計による誤差評価
設備の絶対位置は VRS 測量により絶対位置を求め点 群で展開した設備判読位置との精度比較を実施した.検 証の結果,計測中心から10m 範囲にある設備について
最大誤差35cm,平均誤差10cmと十分な結果が得られ
た.しかし,比較的計測距離の短い範囲(約 300m)であ り計測開始地点と終了地点の絶対位置を測量で取得し て補正しているが,営業線での長距離計測においても 同様の補正が必要になると想定され地上子による信号を 利用してスリップや累積誤差に対する予防対策が必要で あると考えた.
4.設備位置計測装置の構成 4.1.機器構成
検証結果よりレーザ・エンコーダ・ATS 検出器の構成を 見直し,軌陸両用車に搭載する設備位置計測装置を開 発した.その構成を以下に示す.
図-7 設備位置計測装置の構成図
機器構成はレーザと赤外線カメラを各2台準備し,分解
能6.2mm(100 パルス/回転)のロータリーエンコーダと
ATS地上子からの信号を分岐させ記録することで各種機 器の同期を取る構成とした.実際に開発した設備位置計 測装置を以下に示す.
図-8 軌陸両用車に搭載した設備位置計測装置 4.2.点群の展開手法
エンコーダ
Hub
赤外線カメラ
赤外照明
車上子
カウンタボード ATS検出器
エンコーダ信号分岐器 Hub
レーザスキャナ ノートPC
ノートPC
ATS地上子 車上子・
エンコーダ用台車
軌陸車
今回GPS/IMUを利用しない点群展開を行うため,展開 に必要な軌道中心線上の絶対位置と進行方向の方位を 算出する.本装置では取得したATS地上子の信号は出 力遅れに対する補正を行いVRS測量により求めた軌道 中心線上の地上子間の累積距離から展開するスケール ファクタ(軌道中心線形距離÷取得パルス数)を求める.
また,レーザ設置位置から計算した軌陸両用車の前後 車輪位置から方位を算出し各パルス断面における点群 データを展開している.
図-9 点群データの展開手法イメージ
4.3.研修線での検証試験
構築した装置を研修線で走行し実際に営業線で作業が 可能か検証した.検討した項目は以下の通り.
1)計測機材の事前準備時間や場所の制限 2)現地での機器設置から計測開始までの時間 3)走行可能な計測速度
4)取得されるデータ容量
5)取得した点群データの位置精度
1)~5)の項目全てにおいて課題となる項目は特に見 受けられなかったが,赤外線カメラの映像でハレーショ ンが発生する,限られた時間で計測回数を増やす必要 がある.などいくつかの課題が確認された.
4.4.営業線での検証試験
ハレーション対策として LED 照明と赤外線カメラの照 射方向を変更し,計測回数は進行方向逆向きでも取得 可能に改修した.また,安全対策として転落防止柵を設 置する改善を加え研修線でその有効性を確認し,営業 線での検討項目や注意点について以下の通り整理した.
1)カント・勾配や線形の影響評価 2)取得した点群データの位置精度評価 3)鉄道沿線設備の判読性評価
4)現地作業の実現性評価
現地の沿線設備は VRS 測量を実施し絶対位置を確定 した.精度検証の結果,カントや勾配による影響はほと んどみられなかったが線形による影響が見られた.本装 置では地上子間で補正を実施しているが約 900m 区間 における設備位置の誤差が最大で 220cm(区間の誤差 率 0.25%),平均値で 37cm が確認された.精度向上のた め約 100m 間隔の電柱等で補正を行うと誤差の最大値 が50cm以内に収まることが確認された.
設備の判読性については点群の取得密度が高く形状 判定は問題ないレベルであったが,赤外線カメラの映像 は速度ブレがありハレーションは低減されているが標識 の種別特定を行うには別途昼間の映像を併用することが 有効であると考えられる.
図-10 点群データと赤外線カメラによる設備判読
作業性について機器の搭載時間は事前に場所を選ば ず設定でき,載線から計測開始までの時間も 10 分と実 用可能な範囲であった.走行時の軌陸両用車は制限速 度が 30km/h であるが実際に運転できる速度は 15km/h 程度である.今回線路閉鎖工事区間の平均作業速度は 約10km/h,保守用車使用区間では約5km/hとなり実際 に全線区を計測する場合の目安となった.また取得した データ容量も1時間の連続計測で約3.5GBと長時間作 業でも特別な装置を必要としない構成で実現できること が確認できた.
5.おわりに
今回,開発した設備位置計測装置により鉄道沿線設備 を夜間作業で安全かつ大量に取得することができるよう になった.今後は地上子による補正で位置精度を向上 すること,取得した点群データを各種設備台帳と照合す る点群設備判読支援ツールを開発することが課題である.
レーザスキャナ 車上子 軌道中心線
走行方向
3269mm 車両位置原点
ATS地上子 (VRS測量)
ATS地上子 (VRS測量)
方位 展開位置