別紙 1 論 文 審 査 の 要 旨
報告番号|甲第メ
β
号l
氏名| 菊池 真理子主 査 歯 科 補 綴 学 馬 場 一 美 教 授 論 文 審 査 担 当 者 | 副 査 口 腔 微 生 物 学 桑 田 啓 貴 教 授 高jl査 歯 科 理 工 学 宮 崎 隆 教授
(論文審査の要旨)
学位申請論文「Applicationof ca vi tating jet to remove oral biofilms on titanium surface.
(キャピテーションジェットによるチタン表面のバイオフィルム除去効果)」について,上記の主 査l名,;1J査2名が個別に審査を行った
[目的]インプラント粘膜炎・インプラント周囲炎の発症には、インプラント周囲のデンタ ルバイオフィルムが関与していることが知られている。日常のブラッシングによってインプ
ラント周囲からデンタノレプラークを除去することは、天然歯の歯肉炎・歯周炎における予防
・治療と同様に、欠くことはできない。ところが、インプラント周囲炎が進行し、フィクス チャーが露出すると、多孔質に加工された表面性状によって、表面に付着している微生物を 除去することは極めて困難である。付着しているプラークはバイオフィルムの構造を持って いるために、含験剤や抗菌薬などを用いても十分に除去できず、電動歯ブラシや歯間ブラシ では直径数μ mの小簡に入り込んだ微生物を擦り落とすことはできない。そのため、インプ ラント周囲炎に対する予防や治療法は十分とは言えず、いまだ改良の余地がある。一方で、
水中に高速水噴流を噴射したときの急速な減圧に伴いキヤピテーションが発生し、キャピ テーション気泡の崩壊時衝撃力は金属材料の表面改質等に使用されている。キャビテーショ ン噴流を用いた場合のバイオフィルム除去効果を評価した。
【方法]キャピテーションの条件についてプレスケール・による衝撃カの強さと分布をもと に、ノズルの直径.ゅ,圧力:p,ノズルの長さ・λ,スタンドオフ距離.s.,時間:tの検討を行った。
5人の研究協力者の上顎小臼歯頬側部にレジンでステントを作製した。ステント上にチタン試 験片を装着し、 72時間後に形成されたバイオフィルムを実験に供した。キャビテーション照 射前後のバイオフィルムの状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)(S‑4 700, Hitachi, Japan)とデジ タルマイクロスコープ(VHX‑2000,KEYENCE, Japan)にて観察・評価し、残存細菌数は細菌 数測定装置を用いて計測した。
[結果・結論]キャピテーションの最適条件は,中=0.56mm,p=0.5Mpa,λ=5mm,s=2mm, t這3分 であった。キャビテーションの分布パターンは分散的で、チタン表面のバイオフィルムがキ ヤビテーション気泡によってスポット状に剥離することも観察された。残存バイオフィルム の割合、残存細菌数、 SEM画像によるチタン表面の観察の、いずれにおいても照射時間3分以 上で除去効果が認められた。本研究からキャビテーション噴流がチタン表面からバイオフィ ルムを除去するための有力な方法であることが明らかになった。
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本論文の審査にあたり国l査から多くの質問があり,その一部と回答を以下に示す
宮 崎 委 員 の 質 問 と そ れ に 対 す る 回 答 :
1.キャピテーション噴流を用いた本装置の新規性は何か。
(金属表面の疲労強度向上などに工業系で使用されている本技術を、生体内(口腔内)への応用は本研究 が初めてである。超音波でのキヤピテーション発生の原理は振動子が水中で振幅した時に振動子の周り の圧力が上下し、気泡を発生させその気泡が壊れた時にキャピテーションが発生する。しかし、今日 臨床で使用されている超音波スケーラーでは、キャピテーションの発生は確認できたものの、ごくわず かであった。超音波スケーラーで本実験のようにバイオフィルムを除去するためには、振動子の大きさ や電力(W)を大きくする必要があると考えられ、このことからも本実験装置の有用性が高いと言える。
また、本技術はレーザー等の電磁波を発生することもないため、医療機器としても高度な管理をする 必要がないことと、さらには薬剤を一切使用しないことが、新規性と実用性が高いと言える。)
2.本技術は工業系では金属表面の疲労強度向上させる表面改質に使用されているが、粘膜への安全性や インプラント金属表面への影響はあるのか。
(ミニ7'タの口腔内を用いた照射実験で確認したが、歯肉組織に嬢死・浮腫等の障害は観察されていな い。また、 1日30秒間1年間照射したことを想定し180分間照射実験を行ったところ、鏡面加工・
粗面加工の両試験片とも表面性状はSEMレベルでは実験前後を比較して同等であったので、本実験の 条件ではインプラント金属表面への影響は無いと考えられる。)
3. Water jetと比較結果について。
(Water jetとの比較では、プレスケールを用いた実験にて、水流のみの場合とキャピテーションによる 衝撃力との違いが明確になった。実際にバイオフィノレムを染色した試験片へのWaterjetによる噴射実 験では、試験片上のバイオフィノレムは薄くはなったが、完全に除去されチタン表面が露出することはな かった。一方、本研究装置では、キャビテーションの衝撃力でバイオフィノレムを破壊し剥がし、水流に よって洗い流すもので、 Waterjetよりも除去効果が高かった。)
桑 田 委 員 の 質 問 と そ れ に 対 す る 回 答 : lバイオフィノレム除去の結果のパラつきが出た原因。
(5人の研究協力者のバイオフィノレムを用いたが、個人やその日の食事等によりバイオフィルムの性状が 異なるためJ結果にパラつきが出たと考えられる。)
2.口腔内への応用方法、今後の展望。
(本実験は水中での実験のため、口腔内でも水中の環境を作る必要がある。現在ステントを作成し再現し ているが、ノズノレ内部に水中環境が再現できステントが不要なノズノレも開発中である。また、実際に 天然歯で使用したが痛みなどの症状は無かったことから、歯間部や大臼歯の分岐部への応用も可能であ ると推察している。最終目標は、実際の臨床現場での医療機器であるが、チェアサイドでの使用のみな らず訪問診療における口腔ケアでの使用も有効であると考え、幅広い応用が可能であると考えている。)
I これらの試問に対する回答は,適切かっ明解であった また,馬場委員は主査の立場から,両 副査の質問に対する回答の妥当性を確認した
以上の審査結果から,本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判定した.