はじめに
医療技術の高度化・専門化,患者の高齢化や重症化 などに伴い保健医療ニーズは複雑,多様化しており,
医療現場で働く専門職業人はより一層ストレスフルな 状態におかれていることが予測される。特に,救急医 療に携わる看護師(以下,救急看護師と略す)は職務 上の特徴から衝撃的な出来事を体験することも多く,
職務継続が困難となることが知られている 1)。そのよ うな状態のなかで,救急看護師の専門性や経験知の蓄
積が求められているが,前述したようなストレスや心 的外傷により離職する看護師が多く,救急看護の専門 性の構築や質の確保が難しいという現状がある。
一方で,救急看護師はストレスフルな環境下でもそ の仕事に魅力を感じ,個々にやりがいを持ち仕事に励 んでいることが報告されている 2)。看護師が職務を遂 行する際にポジティブな感情を持ちストレスに対応し ていくことは,内発的な動機づけにつながり,職務継 続への重要な資質となると考える。
近年,ストレス対処能力のなかでも健康の起源に着 目した首尾一貫感覚(Sense of Coherence,以下 SOC と略す)が注目されている。SOC はストレス下でも健 康を保つ能力,すなわちストレス対処能力概念を発展 させた健康保持能力で,健康状態を悪化させるスト レッサーの影響を緩衝し,その結果として健康状態を 良好にする働きをすると考えられている 3)。SOC に関 する看護研究を概観すると,患者を対象とした研究で は,患者の健康水準や年齢と SOC との相関を調査し たもの 4) や患者と家族の関係性と SOC との関連を調査 したもの 5) などが報告されている。看護学生を対象と した研究では,看護学生の不安特性と SOC の関連を
【要旨】 目的:救急看護師の職務継続の基礎資料として,救命救急センター 4 施設に勤務する 看護師を対象に,ストレス対処能力を測定する首尾一貫感覚(Sense of Coherence,以下 SOC と略す)を調査し,その特徴と関連要因を明らかにする。方法:救命救急センター 4 施設に勤 務する看護師 190 人に郵送法で無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本的属性と 救急看護に携わることへの希望の有無,救急看護に対するやりがいの有無,SOC で構成し,
比較検討した。結果:SOC 総得点および SOC の下位概念は,年齢,経験年数,性別,職位,
所属部署,救急看護に携わることへの希望の有無による差異は認めなかった。一方,救急看護 にやりがいを感じている看護師は SOC の下位概念である「有意味感」が高値であった。結論:
救急看護師の SOC は,救急看護に対するやりがいの有無が SOC に関連していることが明らか になり,救急看護に対するやりがいやストレス対処能力の形成,強化ができるような体制構築 の必要性が示唆された。
索引用語:Sense of Coherence,救急看護師,特徴,関連要因
Sense of coherence of emergency nurses - characteristics and correlated factors
Natsuko MAKINO 1, Michiko ITOH 2, Masako MOMMA 3, Miho NAKAMURA 4
1 Nursing Department, School of Health Sciences, Sapporo Medical University, 2 Gifu University School of Medicine Nursing Course, 3 Japan Health Care College, Faculty of Health Sciences, Department of Nursing, 4 Senshu Trauma and Critical Care Center
1 札幌医科大学保健医療学部看護学科,2 岐阜大学医学部看 護学科,3 日本医療大学保健医療学部看護学科,4 りんく う総合医療センター大阪府泉州救命救急センター
〔原稿受付日:2014年9月22日 原稿受理日:2015年2月10日〕
救急看護師の首尾一貫感覚(Sense of Coherence)の 特徴とその関連要因
牧野 夏子1 伊藤美智子2 門間 正子3 中村 美穂4 調査・報告
3. 調査項目
調査項目は,1)基本的属性,2)救急看護に携わる ことへの希望の有無,3)救急看護に対するやりがい の有無,4)SOC で構成した。
1)基本的属性は,性別,年齢,看護師経験年数,救 急看護領域での経験年数(以下,救急看護師経験年数 と略す),職位,所属部署で構成し,2)救急看護に携 わることへの希望の有無は,「配属または異動した当初,
救急看護に携わることを希望していたか」という問い に「希望していた」「希望していなかった」の 2 件法で 回答を求めた。3)救急看護に対するやりがいの有無は,
「ここ最近,救急看護に携わることにやりがいを感じて いるか」という問いに「とても感じている」「やや感じ ている」「あまり感じていない」「まったく感じていない」
の 4 件法で回答を求めた。4)SOC は,山崎らによって 翻訳された日本語版 SOC スケール 13 項目を用いた 3)。
なお,上記の調査項目の選定は,先行研究において SOC と関連していた項目および研究者らが以前に 行った研究 14) において職務継続の阻害要因である疲 労の関連要因であった項目を採用した。
4. 首尾一貫感覚(SOC)について
Aaron Antonovsky が健康生成論として提唱した健 康状態を悪化させるストレッサーの影響を緩衝し,そ の結果として健康状態を維持,増進させる要因に着目 した概念である 15)。本研究で使用した日本語版 SOC スケール 13 項目の回答形式は 7 段階法でスケールの 信頼性,妥当性はすでに検証されており 3),「把握可 能感」「処理可能感」「有意味感」の 3 つの下位概念で 構成されている。それぞれの 3 つの下位概念尺度を点 数化し,すべての項目の合計点を算出したものを SOC 総得点とし 91 点が満点である。得点が高いほどスト レス対処能力が高いとされる。「把握可能感」とは,
人が内的および外的環境からの刺激に直面したとき に,どの程度その刺激を認知的に理解把握できるか,
「処理可能感」とは,人に降り注ぐ刺激に見合う十分な 資源を自分がどの程度自由に使えると感じているか,
「有意味感」とは,人が人生をどの程度意味あると感じ ているかである。
5. 分析方法
基本的属性,SOC 総得点および下位概念はそれぞれ 記述統計を求めた。SOC に関連する要因については,
① SOC 総得点および SOC の下位概念と年齢,看護師 調査したもの 6) や実習における SOC の変化を調査した
もの 7) が報告されている。看護師を対象とした研究で は,看護師経験 5 年目以上の者は SOC 得点が高かっ たこと 8) や,特定の分野に勤務する看護師を対象とし SOC の特徴 9) を報告したものが見受けられる。なかで も,救急看護師を対象とした研究 10-12) では,SOC と精 神健康調査票(The General Health Questionnaire)や バーンアウトとの関連について調査した研究が報告さ れているが,その数は十分ではなく,当該領域の看護 師を対象とした SOC に関する実証的研究の蓄積が求 められていると考える。
そこで,本研究では,救急看護師の職務継続の基礎 資料として,救急医療に携わる看護師を対象に,人生 の困難にいかに対応できるかという個人の持つストレス 対処能力を測定する SOC の特徴とその関連要因につい て調査を実施した。
目 的
本研究の目的は,救急医療に携わる看護師の SOC の 特徴とその関連要因について明らかにすることである。
用語の定義
救急看護師 :
本研究では高橋ら 13) の定義に準じて,救急看護師を
「全次または三次救急医療施設で働く看護師で,救急 医療を必要とする患者に対してプレホスピタルケア,
初療外来ケア,集中治療ケア,緊急手術および後方病 棟ケアを行う看護師」と定義する。
方 法
1. 対象施設および対象者
日本救急医学会のホームページ「全国救命救急セン ター一覧」に掲載されている救命救急センターのうち,
便宜上抽出法によって抽出した関西圏の救命救急セン ター 4 施設に勤務する看護師 190 人。
2. 調査方法
調査は郵送法による無記名自記式質問紙調査を行っ た。対象施設の看護管理責任者に文書を用いて研究の 目的・趣旨を説明し同意の得られた施設に質問紙を郵 送した。質問紙の配布は当該施設救命救急センターの 看護管理者に依頼し,回収は同封した返信用封筒を用 いて個人より返送するよう依頼した。
経験年数,救急看護師経験年数について Spearman の 順位相関検定を行い相関係数を求めた。②性別を男性 群,女性群に,職位を副師長・主任群,スタッフ群に,
所属部署を ICU 群,HCU・病棟群,救急外来群に,
救急看護に携わることへの希望の有無は「希望してい た」と回答した者を希望群,「希望していなかった」
と回答した者を希望無群,救急看護に対するやりがい の有無は,「とても感じている」「やや感じている」を やりがい群,「あまり感じていない」「まったく感じて いない」をやりがい無群の 2 群に分け,SOC 総得点お よび SOC の下位概念の比較は 2 群間のものは Mann- Whitney の U 検定を,3 群間のものは Kruskal-Wallis の検定を行った。なお,これらの検定は中央値で比較 することが望ましいが,点数の差の幅が少なかったた め本研究では平均値を用いて比較した。
データの集計・分析は統計解析ソフトウェア PASW Statistics ver.20 を用いた。
6. 倫理的配慮
本研究は,研究者らが所属する複数施設の倫理審査 委員会の承認を得て行った。調査に際し,対象施設に 文書で研究の目的・趣旨,倫理的配慮を説明し研究の 可否を確認した。研究に協力の得られた施設の対象者 に対し,文書で研究の目的・趣旨,研究参加の自由意 思,匿名性と守秘義務の遵守,データの秘匿,データ
の保管方法および破棄方法,質問紙の返送をもって同 意が得られたものとすること,結果の公表方法等を説 明した。
結 果
本研究に同意の得られた 4 施設に勤務する看護師 60 人より回答が得られ(回答率 31.6%),SOC の項目 すべてに回答した 58 人(有効回答率 96.7%)を分析 対象とした。
対象の概要を表 1に示した。対象は男性 11 人(19.0
%),女性 47 人(81.0%),年齢 32.4 ± 6.7 歳(23 〜 53 歳,無回答 1 人),看護師経験年数 10.4 ± 5.9 年(2 〜 25 年,無回答 1 人),救急看護師経験年数 6.4 ± 5.5 年
(1 〜 19 年,無回答 1 人)であった。職位はスタッフ 看護師が 49 人(84.5%)と最も多く,救急看護に対す るやりがいを「とても感じている」「やや感じている」
と回答した者は 30 人(51.7%)であった。なお,各群 の年齢,看護師経験年数,救急看護師経験年数に有意 差は認められなかった。
SOC 総得点および SOC の下位概念と年齢,看護師 経験年数,救急看護師経験年数との関連を表 2に示し た。SOC と年齢,経験年数のいずれにおいても相関は 認められなかった。
全体および各群の SOC 総得点および SOC の下位概 念を表 3に示した。対象全体の SOC 総得点の平均値 表 1 対象の概要
項目 内訳 全体(n=58)
人数 %
性別 男性 11 19.0
女性 47 81.0
年齢 全体平均 32.4 ± 6.7 歳
看護師経験年数 全体平均 10.4 ± 5.9 年
救急看護師経験年数 全体平均 6.4 ± 5.5 年
職位 副師長・主任 9 15.5
スタッフ 49 84.5
所属部署 ICU 28 48.3
HCU・病棟 17 29.3
救急外来 13 22.4
救急看護に携わることへの希望の有無 希望あり 50 86.2
希望なし 8 13.8
救急看護に対するやりがいの有無 とても感じる 4 6.9
やや感じる 26 44.8
あまり感じていない 21 36.2
まったく感じていない 6 10.3
は 50.6 ± 11.3 点,下位概念である「把握可能感」の 平均値は 18.6 ± 5.6 点,「処理可能感」の平均値は 14.5 ± 4.5 点,「有意味感」の平均値は 17.5 ± 3.7 点で あった。各群の比較では,SOC 総得点と性別,職位,
所属部署,救急看護に携わることについての希望の有 無,救急看護に対するやりがいの有無のいずれにおい ても有意差を認めなかったが,下位概念ではやりがい 無群よりやりがい群で有意に「有意味感」が高値で あった(p=.000)。
考 察
救急医療に携わる看護師を対象に SOC について調 査し基本的属性との関連性を検討した。
1. SOC 総得点および下位概念の特徴
対象全体の SOC 総得点の平均値は 50.6 ± 11.3 点で あった。高橋ら 16) は臨床看護師を対象に SOC-13 件法 を用いて調査を行った結果,SOC 総得点の平均得点
は 62.0 ± 8.1 点であったと報告している。また,渡辺 ら 17) は,がん看護領域,呼吸循環器領域,リハビリ看 護領域で働く看護師を対象に SOC を用いて調査を行 い,専門看護領域による差異はなかったことを報告し ており,本研究の SOC 総得点の平均値はこれらの専 門領域と近似であった。渡辺ら 17) は,専門領域に関わ らず SOC 総得点に大きな差異を認めなかった理由は,
看護という複雑で長時間の緊張を伴う業務を心身の健 康を損ねることなく継続していくためには,専門領域 を超えて必要なことに対処する能力が求められるため と述べている。救急看護領域において SOC を用いて 調査した研究は少なく,先行研究では SOC-29 項目を 用いて調査していることから総得点の比較は行うこと はできないが,看護という専門性を有する職業を継続 するためには,専門領域を問わず,ある一定程度のス トレス対処能力が必要なのではないかと考える。
対象全体の下位概念の平均値をみると,最も高値で あったのは「把握可能感」であり,次いで「有意味感」
表 2 年齢,経験年数と SOC の関連
SOC 総得点 把握可能感 処理可能感 有意味感
年齢 0.148 0.155 0.073 0.133
看護師経験年数 0.162 0.178 0.065 0.152
救急看護師経験年数 0.045 0.172 − 0.071 − 0.031
n=58 Spearman の相関係数 n.s.
表 3 基本的属性と SOC との関連
SOC 総得点 把握可能感 処理可能感 有意味感
全体 (n=58) 50.6±11.3 18.6±5.6 14.5±4.5 17.5±3.7
性別
男性群 (n=11) 51.4±9.9 17.6±5.6 15.9±5.5 17.9±3.1
女性群 (n=47) 50.4±11.7 18.8±5.6 14.2±4.3 17.4±3.8
職位
副師長・主任群 (n=9) 54.4±12.1 20.8±7.0 14.9±4.4 18.7±3.2
スタッフ群 (n=49) 49.9±11.1 18.1±5.3 14.5±4.6 17.3±3.7
所属部署
ICU 群 (n=28) 53.6±10.8 19.4±5.2 15.8±4.2 18.5±3.6
HCU・病棟群 (n=17) 46.8±11.0 16.1±4.4 14.2±4.9 16.5±3.8
救急外来群 (n=13) 48.9±11.9 20.1±6.8 12.2±4.0 16.6±3.3
救急看護に携わることへの希望の有無
希望群 (n=50) 55.2±11.9 18.5±5.8 14.2±4.5 17.5±3.7
希望無群 (n=8) 52.6±7.1 18.6±4.0 16.5±4.5 17.5±3.5
救急看護へのやりがいの有無
やりがい群 (n=30) 53.6±10.8 19.1±5.2 15.2±4.6 19.3±3.1
やりがい無群 (n=27) 47.3±11.4 18.1±6.1 13.8±4.5 15.4±3.3
*<0.05
*
レス等の差異は多く報告されているところである。な かでも,救急外来では複雑多岐にわたり煩雑さも兼ね 備えたなかで,観察力や柔軟な対応力を要求されるこ とから看護師の負担は大きいことが報告されている 18)。 そのため,われわれは救急外来に所属する看護師は SOC が高いのではないかと考えていたが異なる結果で あった。SOC は仕事の裁量度が高いほど向上の可能性 が示唆されている 19) ことから,本研究の対象者は救急 医療の場において所属部署に関係なく主体的,能動的 に仕事を行い,役割の適応,環境への適応をしている のではないかと推察され,このため所属部署による差 異が認められなかったものと考える。
SOC との関連において有意な差異を認めたのは,
下位概念の「有意味感」と救急看護に対するやりがい の有無であった。「有意味感」とは前述したとおり,
人が人生をどの程度意味あるものであると感じている かを示している。看護研究においてやりがいの定義は さまざまであるが,先行研究においては「仕事を達成 していく過程で感じる喜びや心のはりあい,手ごた え」 20) などの定義がなされている。SOC はストレッ サーに対し,ストレッサーの見方,考え方や受け止め 方によって変化すること,SOC の高い人はストレッ サーを意味づけし直すといったリフレイミングや,物 事の明るい面を取り入れ肯定的な視点をもつという特 徴があることから,救急看護に対してやりがいを感じ ている者は人生のなかで仕事に意味を見出し,喜びや 手ごたえなどの肯定的な感情を抱いていたことが推察 され,そのため「有意味感」が高値であったものと考 えられる。このことから,救急看護にやりがいを持て るような支援の在り方を検討する必要があることが示 唆された。しかし,救急看護に携わる看護師のなかで も救急看護にやりがいを感じている者が SOC の高い 集団なのか,SOC が高いためにやりがいを持つのか は定かではないため,継続した調査が必要であると考 える。
研究の限界と今後の課題
本研究では救急医療に携わる看護師の SOC の特徴 とその関連について明らかにすることを試みたが,対 象施設が限定されていることや対象数が少ないことか ら,本研究で得られた結果が一般的な結果であるとは 言い切れない。また,協力施設の背景については調査 していないことから施設の特徴が影響していることは 否定できない。
であった。先行研究では下位概念の値を提示している ものは少なく比較はできないが,本研究の対象者は緊 急性が高く重症な幅広い年齢層の救急患者に対応する 能力が求められ,人的,物的資源の調整を常に余儀な くされる厳しい状況下で勤務していることが推察され る。そのため,問題に対して有効な資源をいつでも動 員でき,問題を処理できる特徴を有する「処理可能 感」が低値だったのではないかと考えられる。しかし,
救急看護師を対象とした研究結果は少なく,本研究結 果が施設の特徴によるものか,救急看護師の特徴か,
または別の要因によるものか断定できない。そのため,
今後も救急看護師の SOC の特徴について検討を重ね る必要があると考える。
2. 首尾一貫感覚(SOC)との関連要因
対象全体の SOC 総得点および下位概念と年齢,看 護師経験年数,救急看護師経験年数との間に有意な相 関関係は認められなかった。SOC は後天的な資質で あり年齢とともに成長すると考えられているが,本研 究においては関連は認められなかった。一方,救急看 護師を対象とした研究 11, 12) においても年齢と SOC と の相関関係は認められず,本研究と同様の結果であっ た。これは,SOC が青年期である 20 歳代までに形成 され,その後は大きく変動しないが環境の変化によっ て一時的に変化する,職業に就くことが SOC にさら なる変化をもたらす 3) と言われているように,看護師 という職業に就いたことによる影響が大きいのではな いかと推察される。また,救急看護に携わる看護師の ストレス対処能力は単に年齢や臨床経験のみに依存し て発達するものではないことが示唆された。
全体の SOC 総得点および下位概念と性別,職位,
所属部署,救急看護に携わることについての希望の有 無とに有意差は認められなかった。精神科看護師の SOC を性別で比較した研究 9) では男性看護師よりも 女性看護師の方が SOC 総得点が有意に高かったと報 告されているが,本研究においては異なる結果であっ た。救急看護師を対象とした SOC に関する研究にお いて性差や職位,所属希望について調査しているもの は見当たらない。そのため,今回の研究の結果には対 象施設や対象者の特性が反映されていた可能性も否定 できないため,今後も検討を続けていく必要があるも のと考える。
所属部署の結果では,部署間による差異は認められ なかった。救急看護分野において所属部署によるスト
Coherence(SOC). 日看科会誌 2012; 32: 96-9.
5) 中村百合子, 山崎登志子, 糠信憲明, 他: 慢性統合失調症患 者の首尾一貫感覚(Sense of Coherence)の特徴とその関連 要因. 日看研会誌 2008; 31: 41-8.
6) 本江朝美, 高橋ゆかり, 桑田恵子, 他: 看護学生の不安に対 する認知的評価とSense of Coherenceとの関連. 上武大看 紀 2009; 5: 2-11.
7) 大澤優子, 松下年子: 精神看護学実習前後における学生の SOC(首尾一貫感覚)の変化. 埼玉医大看紀 2012; 5: 1-7.
8) 米田照美, 鬼頭泰子, 牧野耕次, 他: A県における臨床看護 師の職業経験・人生経験とストレス対処能力に関する調 査. 日看会論集: 看管理 2013; 43: 351-354.
9) 二宮寿美, 佐藤美幸, 柿並洋子他: 精神科看護師の職業性ス トレスとストレス対処能力(SOC)の実態. 日看会論集: 看 管理 2013; 43: 363-6.
10) 岩谷美貴子, 渡邊久美, 國方弘子: クリティカルケア領域の 看護師のメンタルヘルスに関する研究: 感情労働-Sense of Coherence-ストレス反応の関連-. 日看研会誌 2008; 31: 87- 93.
11) 枝さゆり , 辰巳有紀子 , 野村美紀 : 救急看護師の Sense of Coherenceとストレスのバーンアウトとの関連. 日救急看 会誌 2007; 8: 32-42.
12) 臼井美登里, 庄子和夫, 鈴木はる江: 救急医療現場における 多様な業務体系が看護師の心身に与える影響 . 心身健科 2014; 10: 18-24.
13) 高橋章子, 館山光子, 長谷川陽子, 他: 救急看護師に期待さ れる役割と能力に関する研究 その1. 日救急看会誌 2005;
6: 6-12.
14) 中井夏子, 門間正子: 北海道の救命救急センターに勤務す る看護師の蓄積的疲労に関する横断的調査. 日臨救急医会 誌 2014; 17: 1-10.
15) 山崎喜比古: ストレス対処力SOC(Sense of Coherence)の 概念と定義. 看研 2009; 42: 479-90.
16) 高橋ゆかり, 本江朝美, 古市清美, 他: 看護師がストレス場 面で用いるライフスキルとSense of Coherenceとの関連.
日看会論集: 看管理 2012; 42: 383-6.
17) 渡辺孝子, 重久加代子, 小磯玲子, 他: 看護師のストレスと 業務の専門性との関連. 看管理 2007; 17: 871-6.
18) 鳥居孝匡, 杉島寛, 津村紀子: 「命の砦」としての救急外来お よび看護師の役割. 臨看 2013; 39: 1614-7.
19) 竹内朋子, 戸ヶ里泰典, 山崎喜比古:看護師のSOCと職場の あり方. 看研 2009; 42: 517-26.
20) 福岡由紀: N県内における副看護師長のやりがいに関する 看護管理的視点からの分析. 日看管理会誌 2007; 11: 49-56.
さらに,SOC は一時的に変化することがあるため,
今回の調査結果が一過性である可能性を十分考慮しな くてはならない。加えて,SOC に関連する要因につ いては本研究で調査した要因以外にも存在するため,
本研究の結果は救急看護師の SOC の関連要因の一部 についての検討であり,他の要因については検討を重 ねる必要がある。
今後は対象者数を増やすとともに,縦断的に調査を 継続し救急看護師のストレス対処能力の要因について 追跡,探求していくことが課題である。
結 論
本研究では,救急看護師の職務継続の基礎資料とし て,救急医療に携わる看護師の SOC の特徴とその関 連要因の実態を明らかにすることを目的に,関西圏の 救命救急センター 4 施設に勤務する看護師を対象に実 態調査を実施した。その結果,救急看護師の SOC の 特徴は年齢,経験年数,性別,職位,所属部署,救急 看護に携わることへの希望の有無による差異は認めな かったが,救急看護に対するやりがいの有無が SOC に関連していることが明らかになった。このことから,
救急看護師が職務を継続するためには,救急看護に対 するやりがいを持てるような支援の在り方を検討し,
ストレス対処能力の形成,強化ができるような体制の 構築が求められていると考える。
謝 辞:本研究にご協力いただきました病院の看護管理 責任者の皆様,対象者の皆様に心より感謝申し上げます。
文 献
1) 真木佐知子, 笹川真紀子, 廣常秀人, 他: 三次救急医療に従 事する看護師の外傷性ストレス及び精神健康の実態と関連 要因. 日救急看会誌 2007; 8: 43-52.
2) 小野さゆり, 舘野由美, 國井正子: 救命救急看護師が抱く
「良いストレス」の要因. 日救急看会誌 2009; 10: 20-4.
3) アーロン・アントノフスキー著, 山崎喜比古, 吉井清子監 訳: 健康の謎を解く-ストレス対処と健康保持のメカニズ ム-. 有信堂, 東京, 2001, p3-23, 191-212.
4) 永田美奈加 , 鈴木圭子 : 血液透析患者における Sense of
ABSTRACT
Sense of coherence of emergency nurses - characteristics and correlated factors Natsuko MAKINO 1, Michiko ITOH 2, Masako MOMMA 3, Miho NAKAMURA 4
1 Nursing Department, School of Health Sciences, Sapporo Medical University
2 Gifu University School of Medicine Nursing Course
3 Japan Health Care College, Faculty of Health Sciences, Department of Nursing
4 Senshu Trauma and Critical Care Center
Purpose: Sense of coherence (SOC) is used as an indicator of stress manageability. The purpose of this study
was to examine the characteristics and correlated factors of sense of coherence of nurses working at emergency and critical care centers. The outcome of this study would be used as fundamental data for developing strategies to encourage retention of nurses engaged in emergency care.Method: Anonymous self-filled questionnaire forms were posted to 190 nurses working at four emergency and
critical care centers in Japan. Questions consisted of basic attributes, interest in working in emergency nursing, job satisfaction, and SOC questions.Results: No correlation was recognized between the total SOC score/scores of three components and the age,
nursing experience, gender, job title, department or interest in working in emergency nursing. Nurses who found job satisfaction in emergency nursing had a higher meaningfulness score.Conclusion: The study showed that there was a correlation between the SOC score of emergency nurses and
their job satisfaction level. The present findings suggested the need of developing a framework that would help nurses gain and increase job satisfaction in emergency nursing and build and enhance their stress management ability.Key words: Sense of coherence, emergency nurses, characteristics, correlated factors