広島大学病院 総合医療研究推進センター
川上 由育
2016/7/30
平成28年度 赤十字血液シンポジウム
臨床現場における抗HCV療法の変遷
~DAA治療によりどのようにかわったか~
C型肝炎ウイルス
1989年に初めて発見された.
多くの原因不明の肝炎は
C型慢性肝炎であることがわかった.
以前はnonA, nonB肝炎として扱われていた.
2
治療はインターフェロンの単独療法 1990年〜
都道府県別のHCV感染者率(節目検診)
0.9%未満
0.9以上1.1%未満
1.1以上1.2%未満
1.2以上1.4%未満
1.4%以上
田中 隆ほか:日本臨牀 2004;62(増刊号7):611より作成
平成14年度節目検診で
「現在、C型肝炎に感染して
いる可能性が極めて高い」と
判定された者の割合
西日本でHCV感染者が多い
男性
佐賀県
愛媛県
福岡県
広島県
鳥取県
和歌山県
山梨県
大分県
徳島県
青森県
女性
佐賀県
福岡県
和歌山県
広島県
熊本県
愛媛県
徳島県
大阪府
大分県
鳥取県
都道府県別の肝臓癌による死亡率(
2012年)
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
男性
女性
国立がん研究センターがん対策情報センター
西日本で肝癌の死亡率が高い
C型肝炎に対するIFN効果別の肝発癌率
p<0.0001
5
10
15
20(年)
IFNなし
肝
発
が
ん
率
(%)
IFNにてSVR
IFNにて非SVR
Ikeda, et al. Hepatology 1999より引用改変
5
IFNでウイルスを排除できれば
肝発がんのリスクを減らせる
0
20
50
40
30
10
軽度
中等度
肝硬変
F1
F2
F3
F4
高度
ウイルス駆除
0.5% 1.5% 5.0%
8.0%
年率発癌率
肝病変の進行度と発癌率
肝線維化の程度により発がん率が違う
ウイルス駆除(肝炎沈静)
できれば肝線維化の程度
は改善される
(約5年で1段階改善)
ALT高値持続
ALT*基準値内
ALT値により肝線維化
の進行速度が違う
6
*ALT基準値
個々のALT正常値
血小板数
20万 15万 12万 8万未満
本日のお話の内容
• インターフェロン(IFN)ベース時代
• ウイルス複製抑制剤(DAA))時代
(IFNフリー時代)
• DAA治療の問題点
• 今後の抗HCV治療
本日のお話の内容
• インターフェロン(IFN)ベース時代
• ウイルス複製抑制剤(DAA))時代
(IFNフリー時代)
• DAA治療の問題点
• 今後の抗HCV治療
インターフェロンの役割
インターフェロン
抗ウイルス蛋白誘導
免疫賦活
人間がもともと持ち合わせている
免疫力を増強させることにより
感染した肝細胞をやっつける
人間がもつサイトカイン(蛋白質)を
誘導してウイスルをやっつける
人間がもともと持ち合わせている力を利用した治
療法
→よく効く人と効かない人がいる(個人差)
問題点
初期(治療開始~2週間以内)
・風邪の様な症状(しだいに軽快):
発熱
、
全身倦怠感
、
頭痛
、筋肉痛、関節痛など
・発疹
中期(治療2週~3か月以内)
・食欲不振、不眠、
うつ状態
、視力障害
後期(治療3か月以降)
・脱毛(治療終了後に回復)
・
間質性肺炎
:から咳、運動時の息切れ
・甲状腺機能異常
・
糖尿病の悪化
インターフェロンの副
作用
副作用が多い
問題点
0
20
40
60
80
100
(%)
1b型
2a型
その他
70%
20%
Genotype2に対する治療
10%
2b型
IFN治療ベースの治療でも高い治療効果がある
IFN/RBV
PegIFN/RBV
24週
74%
84%
24週
genotype1b型高ウイルスに対する
IFN 単独治療成績
IFN-
単独
IFN-
単独
0
20
40
60
10.3%
(36/349)
80
100
(%)
24週
(治療法)
(治療期間)
12
IFN単独治療は効果が
非常に悪かった
インターフェロン
リバビリン
免疫調整作用
抗ウイルス蛋白誘導
免疫賦活
genotype1b型高ウイルスに対する
IFN +リバビリン治療
IFN-
単独
IFN-
単独
IFN-
/RBV PegIFN-
/RBV
0
20
40
60
10.3%
(36/349)
16%
(18/115)
47.6%
(121/)
80
100
(%)
24週
24週
48週
(治療法)
(治療期間)
14
50%まで治療成績が上昇
2010年までの標準治療法となる
genotype1b型高ウイルスに対する
IFN +リバビリン治療成績
インターフェロン
リバビリン
免疫調整作用
抗ウイルス蛋白誘導
免疫賦活
DAA(direct acting antiviral)
ウイルスが増えていくために必要な蛋白質を直接阻害する
個人差はないがウイルスにより効果に違いがある
DAA
ウイルス複製抑制
genotype1b型高ウイルスに対する
IFN +リバビリン+DAA治療
インターフェロン
IFN-
単独
IFN-
単独
IFN-
/RBV PegIFN-
/RBV
0
20
40
60
10.3%
(36/349)
16%
(18/115)
47.6%
(121/)
80
100
(%)
24週
24週
48週
(治療法)
(治療期間)
テラプレビル
/
PegIFN-
/RBV
79.4%
(212/267)
24週
シメプレビル
/
PegIFN/RBV
24週
75.9%
60/79
16
バニプレビル
/
PegIFN/RBV
24週
79.3%
131/165
genotype1b型高ウイルスに対する
IFN +リバビリン+DAA治療成績
80%まで治療成績が上昇
安全性(有害事象)
17
共通
薬剤特有
インターフェロン
リバビリン
テラプレビル
2011
シメプレビル
2013
バニプレビル
2014
肝障害(ALT/AST上昇、ビリルビン上昇)
• 皮膚症状
• 貧血
• 腎機能障害
インターフェロン
リバビリン
インターフェロン
リバビリン
肝障害(ALT/AST上昇、ビリルビン上昇)
後から承認された薬剤は安全性に優れている
プロテアーゼ阻害剤
+PEG-IFN/RBVのSVR率
(国内第3相試験)
(%)
0
20
40
60
80
100
(22/24)
91.7%
96.6%
(28/29)
38.5%
(10/26)
前治療
無効
前治療歴
なし
前治療
再燃
73%
(92/126)
88.1%
(96/109)
34.4%
(11/32)
18
83.7%
(82/98)
92%
(23/25)
#61.9%
(26/42)
#PI:24週
テラプレビル
シメプレビル
バニプレビル
IFN効果が悪い
場合は有効率が低い
(IFNの効果が期待できるgroup) (IFNの効果が期待できないgroup)19
プロテアーゼ阻害剤
+PEG-IFN/RBV
で治療ができない
•有効性が期待できない集団
副作用などでIFNが使用できない
透析や腎障害などでリバビリンが使用できない
肝硬変のため有効性が期待できない
前治療無効あるいはIL28B遺伝子マイナーのた
めIFNの効果が期待できない
20
IFNベース時代の抗HCV療法
患者側:
• 副作用が強く治療期間も長い
• *費用が高いのに治らない
• 通院が大変(仕事の休職や退職など)
*肝炎治療助成制度(2008年より施行)
世帯の市民税
23万5千円以上:自己負担額2万円
23万5千円未満:自己負担額1万円
医師側:
• 副作用が心配
• 効果が期待できない
• 自覚症状がない、肝機能が正常などから
IFNの必要性がないと判断(特に非専門医)
上記理由により抗ウイルス療法があまり積極的にされなかった
本日のお話の内容
• インターフェロン(IFN)ベース時代
• ウイルス複製抑制剤(DAA))時代
(IFNフリー時代)
• DAA治療の問題点
• 今後の抗HCV治療
インターフェロンを用いない
新しいDAA併用療法
C型肝炎ウイルスの構造と複製
翻訳およびプロセッシング
セリン
プロテアーゼ
RNAポリメラーゼ
Core E1
E2
NS2
NS3
NS
4A NS4B
NS5A
NS5B
5‘
P
7
3‘
E1
E2
NS2
NS3
NS
4A
NS4B
NS5A
NS5B
P7
C
NS3/4Aプロテアーゼ
NS5A
NS5Bポリメラーゼ
働
き
HCV非構造蛋白(NS4A、
NS4B、NS5AおよびNS5B)
の境界を切断する
NS5Aを中心として複製
複合体を形成する
RNA依存性RNAポリメラーゼ
(RdRp)を有しておりHCVを増殖
させる
酵素
酵素
宿主因子
23
Liver International February 2013
Tarik Asselah and Patrick Marcellin
25
C型肝炎ウイルスの構造と複製
NS3/4 蛋白の役割:
HCV非構造蛋白(NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5B)の境界を切断する
Nature Reviews Microbiology 11, 482
–496 (2013) doi:10.1038/nrmicro3046
C型肝炎ウイルスの構造と複製
NS
5A 蛋白の役割:NS5Aを中心として複製複合体を形成する
27
C型肝炎ウイルスの構造と複製
NS5B 蛋白の役割:
RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を有しておりHCVを増殖させる
NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤
NS5A阻害剤
NS5Bポリメラーゼ阻害剤
治療間
アスナプレビル
ダクラタスビル
24週
レディパスヴィル
ソフォスブビル(核酸型)
12週
パリタプレビル/
リトナビルオムビタスビル
12週
インターフェロンフリーの経口剤
(2016 年7月時点)
G1に対する治療法
28
ハーボニー
®ヴィキラックス
®NS5A阻害剤がKey drug
2014/9
2015/9
2015/12
29
プロテアーゼ阻害剤
+PEG-IFN/RBV
で治療ができない
•有効性が期待できない集団
に対する
DAA治療
副作用などでIFNが使用できない
透析や腎障害などでリバビリンが使用できない
肝硬変のため有効性が期待できない
前治療無効あるいはIL28B遺伝子マイナーのた
めIFNの効果が期待できない
30
IFN効果不良
(IL28Bマイナー
/IFN前治療無効)
レディパスヴィル+ソフォスブビル
(ハーボニー
®)
パリタプレビル/
リトナビル+オムビタスビル
(ヴィキラックス
® )プロテアーゼ阻害剤
+PEG-IFN/RBV
で治療ができない
•有効性が期待できない集団
に対する
DAA治療の効果
アスナプレビル+ダクラタスビル
IFN不適格•不耐容
肝硬変
84.3%
80.5%(70/87)
87.4%(118/135) 90.9%(20/22)
ND
100%(25/25)
100%(40/40)
93.4%(57/61)
90.5%(38/42)
ND
93.6%(44/47)
100%(19/19)
IFNベース治療が期待できない集団に対しても高い効果が得られる
31
プロテアーゼ阻害剤
+PEG-IFN/RBV
で治療ができない
•有効性が期待できない集団
に対する
DAA治療
副作用などでIFNが使用できない
透析や腎障害などでリバビリンが使用できない
肝硬変のため有効性が期待できない
前治療無効あるいはIL28B遺伝子マイナーのた
めIFNの効果が期待できない
肝外病変(HCV関連腎症)はウイルス排除により改善する
DCV/ASV治療によりHCVが排除されると浮腫および低Alb血症が
改善し、腎機能も正常値まで回復した
0
20
40
60
80
100
120
140
160
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
ALT
ALB
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
0
0.5
1
1.5
2
2.5
e-GFR
Cr
DCV/ASV
HCV感染による肝外病変
•クリオグロブリン血症
•シェーグレン症候群、乾燥性角結膜炎、唾液腺炎
•糸球体腎炎
•扁平苔癬
•リンパ腫
•筋炎
•関節炎
•肺線維症
•多発性結節性動脈炎
•自己免疫性肝炎
•遅発性皮膚ポルフィリン症
免疫異常と関連して発症し、肝炎の活動性とは無関係
HCVを駆除することにより軽快する
33
HCV抗体陽性率 276/1470(18.8%)
肝硬変による死亡率
HCV抗体陽性 8.8% 陰性 0.4%
肝細胞癌による死亡率
HCV抗体陽性 5.5% 陰性0%
HCV感染が透析患者の重要な生命
予後決定因子である
23.2
33
67
76.8
EIJUN NAKAYAMA et al. JASN 2000;11:1896-1902
HCV抗体陽性透析患者の死亡率
33.0%で、陰性患者の死亡率23.2%
と比較して有意に高率であった。
透析患者の死亡原因(HCV感染vs非肝炎)
循環器疾患
脳血管疾患
感染症
悪性腫瘍
肝硬変・肝癌
その他
臨床透析vol.30.No7.2014
HCV感染透析患者の肝硬変・肝癌による死亡率は
非常に高率である。
40%
死亡率
25.2%
死亡率
36.1%
死亡率
26.4%
6.2%
2006年〜2012年
HCV抗体陽性率(11.4%)
研究
死亡率のHR
95% CI
国
DOPPS
*Pereira
Stehman-Breen
Nakayama
Espinosa
Johnson
Johnson
1.22
1.41
1.97
1.57
1.62
1.37
1.29
1.11-1.33
1.01-1.97
1.16-3.33
1.23-2.00
1.05-2.49
1.15-1.62
1.05-1.58
国際
米国
米国
日本
スペイン
日本
オーストラリア/ニュージーランド
HCV感染透析患者の死亡リスク(海外データ含む)
HCV非感染透析患者と比べ、HCV感染透析患者は死亡リスクが
高いことが多くの臨床試験から報告されている。
HRはHCV感染患者とHCV非感染患者を比較している。
*DOPPSのフェーズ1~3(1996~2008年)。
HCV感染透析患者における
抗ウイルス療法の有無別生存率(海外データ)
HCV感染透析患者は、抗ウイルス療法を施行することで生存率が
高くなる。
Goodkin DA et al. Am J Nephrol 2013; 38: 405-412
100
80
60
40
20
0
累
積
生
存
率
0
2
4
6
8
10
12
14
(年)
抗ウイルス療法施行(n=42)
抗ウイルス療法未施行(n=3,037)
HR(95%CI)=0.47(0.17-1.26)
抗ウイルス療法施行
抗ウイルス療法未施行(調整)
抗ウイルス療法未施行(未調整)
(%)
DOPPS組入れ後の期間
安全性
DCV 60mg 1日1回
ASV 200mg 1日2回
目的:ダクラダスビル+アスナプレビル治療の透析患者に対する
安全性と有効性を
PKにて確認する
デザイン:多施設共同、オープン、単群
日赤:肝臓(辻、森、高木、本田、相坂) 腎臓(心石、横山)
対象:最低5年の生存が見込める透析患者
Genotype1b型、20歳以上 、肝癌なし、肝硬変の場合ChildA
NS5A耐性なし
目標症例数:20例
評価項目:PK(7日目)、SVR12、安全性
24
+12 weeks
0
1
Follow up
PK study
治療開始1週目 投与前、
1、2、3、4、5or6 時間(6ポイント)
ノンコンパートメントモデル解析にダグラタスビル及びアスナプレビルの薬物パラメータ
(AUC、Ctrough)を算出する。
(対照として非透析患者の
PK studyの研究も並行して実施)
有効性
透析患者に対する
DCV+ASVの安全性と有用性をPharmacokineticsより検討し治療が可能
であることを明らかにした
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 0 1 2 3 4 6