(1)医療 薬 学
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(2) 医 療 薬 学. Vol.29,. No.3. (2003). 271 Keywords•\safety. management,. human. factors. engineering,. pre-filled. syringe,. injectable. drug,. admix-. ture. した もの で,医 療 用 機 器 ・器 具 の誤 使 用 に よ る医 療 事 故 緒. 言. 防 止 の た め に は,こ の 手 順 に従 い,医 療 用 機 器 ・器 具 を. 厚 生 科 学研 究 「医 療 の リス クマ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム 構. 評 価 す る必 要 が あ る.本 研 究 で は,こ. の考 え方 を,医 療. 築 に 関 す る研 究(主 任 研 究 者: 川 村 治 子)」 に よ る と,分. 現 場 で 日常 的 に行 わ れ る輸 液 剤 へ の 薬 剤 混 合 作 業 を例 に. 析 対 象 の イ ン シ デ ン トの うち,処 方,薬. 当 て は め た.ま ず,従. 剤 投 与 に 関係 し. 来 か ら行 わ れ て い る ア ン プ ル を用. た もの(メ デ ィケ ー シ ョン ・エ ラ ー: medication error)は. い る方 法 と医 療 事 故 の リス ク低 減 を 目 的 の1つ. 全 体 の 約50%を. 発 さ れ た プ レ フ ィル ド ・シ リ ン ジ(pre‑fiiied syringe.以. 占 め,さ. ら に,そ の半 数 が 注 射 剤 の 投 与. と して 開. に 関連 して い る こ とか ら,薬 物 療 法 にお け る安 全 性 確 保. 下,PFSと. が 最 も重 要 な課 題 で あ る と指 摘 さ れ て い る1).. り リス ク低 減 効 果 を比 較 した.さ. らに,実 際 に看 護 師 と. 薬 剤 師 が 混 合 作 業 実 験 を行 い,リ. ス ク抑 制 に対 す る実 施. 誰 もが 完 全 で は な く,人 間 で あ る が ゆ え に エ ラー を引 き起 こ す2).一 般 に,エ. ラ ー は複 雑 さ に比 例 して 増 加 す. 略 す)に つ い て 作 業 手 順 分 析 を行 う こ と に よ. 者 の 主 観 お よ び操 作 時 間 的 な側 面 か ら検 討 し,こ れ らを. る と言 わ れ て い る.治 療 に つ い て の 知 識 と情 報 量 の 増. 通 じ て,医 療 事 故 防 止 の た め のPFSの. 加,処. 方,調 剤 お よ び投 与 の 各 プ ロセ ス に お け る理 解 不. 人 間工 学 的 に評 価 した.. 足,判. 断 エ ラ ー,作 業 エ ラ ーや 各 プ ロ セ ス 問 の 情 報 伝 達. エ ラー が,薬. 目. 物 療 法 に 関 連 した 医 療 事 故 の原 因 と な っ て. い る3).エ ラ ー 防 止 の た め に は,エ. ラ ー事 例 か ら学 び,. 1.. 「To Err Is Human」. は,人. 模 擬 処 方 に対 す る混 合 作 業 プ ロ セ ス を ア ン プ. ル 法 とPFS法. ア メ リ カ合 衆 国 医 療 の 質 委 員 会/医 学 研 究 所 の 報 告 書 間 が 持 つ 限界 に配 慮 した シス. テ ム設 計 の 原 則 と して,(1)記 憶 へ の依 存 をや め る,(2)人. 的. 注 射 剤 の 混 合 操 作 に お け る リス ク評 価 IVH用. 分 析 だ け に と ど ま る こ と な く再 発 防 止 に 向 け て 行 動 に 移 す こ とが 重 要 で あ る4).. 有用 性 につ い て. の 両 方 で 作 成 し た.こ. の両 者 の混 合 操作. の作 業 手 順 を分 析 し,そ れ ら を比 較 す る こ と に よ り,混 合 作 業 の各 プ ロセ ス に お け る行 動 内 に潜 在 す る リ ス ク を 明 確 にす る.. 的 監 視 に 依 存 しな い,(3)重 要 プ ロ セ ス は 簡 素 化 す る,(4) 作 業 プ ロ セ ス を標 準 化 す る な どの 点 を あ げ て い る2).. 2.. リ ス ク を減 じる た め に は,リ ス ク源(ハ ザ ー ド)を 除 去 す る か,あ. る い は 隔 離 す る こ と に よ り,リ ス ク発 生 の 可. 能 性(確 率)を 減 じ るか,あ. るい は,そ れ に よ り生 じる被. 害 の程 度 を緩 和 す る必 要 が あ る.と の た め の 新 しい 工 夫 が,ま. こ ろが,エ. ラー 対 策. た 新 た な 別 の エ ラ ー を生 み 出. ア ンプ ル 法 とPFS法. との 比 較 実 験. リ ス ク 評価 に よ り得 られ た結 果 が,実. 際の医療現 場 に. お い て支 持 され る もの で あ る か ど う か を 以 下 の3点 か ら 確 認 す る た め に,看 護 師 と薬 剤 師 に よる 薬 剤 混 合 の 作 業 実 験 を通 して,作 業 行 動 分 析 と実 験 実 施 者 へ の ヒ ア リ ン グ調 査 に よ っ て検 討 す る.. す 原 因 に もな る こ とが 知 られ て い る.処 方 オ ー ダ リ ング. (1)実 際 の 医 療 現 場 にお い て は,先 の リス ク評 価 で 前 提. シス テ ムの誤 操作 に よる薬剤 選択 エ ラ ーが 良 い例 で あ. と した 作 業 手 順 と 同 じ手 順 で 作 業 が 行 わ れ て い る. る5).し た が っ て,実 施 し た エ ラ ー対 策 の効 果 を慎 重 に. か?. フ ォ ロ ー し,そ の 有 効 性 を評 価 す る こ とは大 切 で あ る.. (2)リス ク評 価 に よ る ア ン プ ル 法 とPFS法. の それ ぞ れ. の リス ク状 態 を,医 療 従 事 者 が 実 感 して い るか?. 誤 操 作 を リス ク源 とす る場 合 に は,第 一 義 的 に は,誤. (3)両 者 の作 業 時 間 の 比 較(リ ス ク低 減 目 的 で 開 発 さ れ. 操 作 自体 を生 じさ せ な い こ と を考 え る必 要 が あ る6).そ の た め に は,次 の 検 討 を行 う必 要 が あ る と考 え ら れ る.. たPFS法. (1)機 器 ・器 具 操 作 の どの ス テ ッ プで 誤 操 作(リ ス ク)が. は,作 業 時 間 が ア ン プ ル 法 に比 べ て 同 等. 以 下 で な け れ ば現 場 で は採 用 され ない た め). 発 生 す る 可 能 性 が あ る か を 同 定 す る. 方. (2)誤 操 作(リ ス ク)の 発 生 す る心 配 の あ る ス テ ップ の 除 1.. 去 を検 討 す る. (3)除 去 で き ない ス テ ッ プ に つ い て は,そ の ス テ ップ を "や りや す く"す る .す な わ ち,人 間 工 学 的 改 善 を 行 う こ とで,誤 操 作 の 発 生 を抑 止 す る. こ の考 え方 はISO/TR12100(機. 械 類 の安 全 性)7)を基 に. 法. 混 合 作 業 の リス ク 評 価 塩 化 ナ トリ ウ ム10%を. (Fig.1)を. 混 合 す る 際 に必 要 な作 業 手順. 標 準 手 順 と し て,以. 方 に お け るPFS法. 下 に 示 すIVH用. 模 擬処. とア ンプル法 の一 般 的 な混合 作 業 の. 手 順 を,混 合 業 務 に従 事 して い る看 護 師 と薬 剤 師 に聴 取.
(3) 医療 薬 学. Vol.29,. No.3. (2003). 272. Fig.1.. す る こ と に よ り分 析 記 述 し た.た PFS製. だ し,微. 剤 は 市 販 さ れ て い な い の で,両. 作 業 手 順 の 例(最 初PNa10%混. 量元 素製剤 の. 方法 ともア ンプル. 合 プ ロ セ ス). 常 と 同 じ よ う な 混 合 作 業 を 行 っ て も ら い,そ VTR撮. の様 子 を. 影 し,作 業 時 間 と作 業 行 動 の 分 析 を 行 っ た.ま. を使 用 し た.. た,実 験 終 了 後 に,実 施 者 に対 して ヒ ア リ ン グ調 査 を. 〈 アンプル法 〉. 行 っ た.実 施 者 は ア ン プ ル 法 とPFS法. ・10%塩. の両 方 の混 合 経. 化 ナ ト リ ウ ム 注(20mL). 験 が 十 分 あ る看 護 師,薬 剤 師各5人. の計10人 と した.作. ・微 量 元 素 製 剤 エ レ ミ ン ミ ッ ク 注(2mL). 業 時 間 につ い て は,作 業 要 素 別,お. よ び,作 業 時 間 の 合. ・高 カ ロ リ ー 輸 液 用 総 合 ビ タ ミ ン剤(凍 結 乾 燥 製 剤). 計 に つ い て,被 験 者 につ い て対 応 の あ る平 均 値 の 差 の検. ・50%ブ. 定(t検 定)を 行 っ た.. ド ウ 糖 液(20mL). 以 上 各1を 〈PFS法. ユ ニ カ リ ッ クL(1000mL)に. 混合 す る. 〉. 実 験 環 境 を コ ン トロ ー ル す る た め 実 験 場 所 を設 け て 行 っ た が,混 合 作 業 の や り方 は,可 能 な 限 り通 常 通 りと. ・メ デ ィ ジ ェ ク トNa10%(20mL). した.そ の た め,医 療 器 具 な どの 配 置 や 作 業 姿 勢 等 は 実. ・微 量 元 素 製 剤 エ レ ミ ン ミ ッ ク 注(2mL). 施 者 の 自由 に任 せ た.. ・ビ タ ジ ェ ク ト(A液. ,B液. 各5mL). 結. ・メ デ ィ ジ ェ ク トG50(20mL) 以 上 各1を. ユ ニ カ リ ッ クL(1000mL)に. ※ 両 方 法 と も,シ. リ ン ジ(5mL,10mL,20mL),注. 1.. 混合 する 射 針,. 果. リス ク事 象 の 抽 出 作 業 手 順 の ス テ ッ プ ご とに,患 者 へ の リス ク と混 合 作. 業 者 へ の リス ク に な り得 る作 業 内 容(リ ス ク事 象)を,医. アル コール綿の使用 制限 な し. 療 従 事 者 の 主 観 評 価 に よ り評 価 した.そ 2.. ア ン プ ル 法 とPFS法. との 比 較 実 験. リ ス ク 評 価 と 同 じ 模 擬 処 方 で,看. 護 師 と薬 剤 師 に,通. ク の特 性 要 因 図 に ま とめ て示 す(Fig.2).. の結 果 を,リ ス.
(4) 医療 薬 学. Vol.29,. No.3. (2003). 273. Fig.2.. 1). 混 合 作 業 にお け る リス ク 事 象 の 特 性 要 因 図. の被 害 を及 ぼ す もの で あ り,今 回 の 実 験 で は 混 合 作 業 時. 患者へ の リスク. 患 者 へ の リス ク とは,そ. の事 象 が 発 生 した 場 合,何. ら. の"け が"が. あ げ ら れ た.具 体 的 に は,"ア ン プル 法 に お. か の 形 で患 者 に対 して 影 響 を及 ぼ す もの で,以 下 の もの. い て 開 封 し た ガ ラ ス で 手 を 切 る","ア. が あ げ られ た.. て,ア. (1)取 り違 い: 計 数 調 剤 さ れ て い る ア ン プ ル,PFSの. 各. ン プル法 にお い. ン プ ル に 針 を挿 入 す る と き に針 先 を手 に刺 す",. ま た,"ア ン プ ル 法 とPFS法. と も に,輸 液 バ ッ クへ の 針. 実 物 と,処 方 せ ん の 記 載 内 容 との確 認 を誤 り,別 の. 刺 時 に誤 っ て 針 を手 に刺 す"こ. 薬 剤 を混 合 す る.. る.. と に起 因 す る も の で あ. (2)治 療 薬 剤 名 の 記 名 ミス ニア ン プ ル 法 で は,安 全 管 理 上,治. 療 薬 剤 を吸 い取 っ た際 に シ リ ン ジ に 当 該 薬 剤. 2.. 名 や 濃 度 等 を記 入 し,輸 液 バ ッ クへ の 混 合 時 に は そ れ を確 認 す る こ とが推 奨 さ れ て い るが,こ 忘 れ,あ. の記入 の. る い は誤 記 入 に よ り,誤 っ て混 合 され る.. (3)異 物 混 入:. ア ンプ ル 法 にお い て,ア. ンプ ル カ ッ トに. よ る ガ ラ ス 片 な どの 異 物 が 混 入 す る.ま た,両 方 法. で の リス ク評 価. 明 らか にす る た め,各. リスクの発生 する可能性 の機会数. を カ ウ ン トし,ア ン プ ル1本. れ ぞ れFig.3とFig.4に 1). さ れ て 落 下 菌 が 混 入 す る.ま. た,ア. 液 が 大 気 に 開放 ン プ ル 法,PFS. 法 と も に,輸 液 バ ック の針 刺 部 ま た は 針 が 菌 で 汚 染. 患 者 へ の リス ク発 生 す る可 能性 の 機 会 数. ン プ ル法 で シ リ ンジ の 気 泡 を押 し出 す. ン プ ル法 に比 べ て リス. あ る(Fig.3)し. か し,薬 剤. の 取 り違 い,細 菌 混 入 につ い て の リス ク は,PFS法. でも. 完全 に は 除 去 で きな い. 2). 医療 作 業 者 へ の リス ク発 生 す る可 能性 の 機 会 数. リス ク評 価 で は,PFS法. (5)薬 液 残 留 ニア ン プ ル法 に お い て,薬 液 を全 量 シ リ ン. (6)内容 物 流 出: ア ン プ ル 法 にお い て,開 封 した ア ン プ. は,ア. ク の発 生 機 会 数 が 約1/4で. さ れ て い て,針 刺 時 に菌 が 輸 液 剤 に侵 入 す る.. ジ に 吸 い 取 らず,所 定 量 の 薬 剤 混 合 が 行 わ れ な い.. あ た りに換. 示 す.. リス ク評 価 で は,PFS法. 性 が あ る. (4)細 菌 混 入: ア ンプ ル 法 に お い て,薬. ま た はPFS1本. 算 した.患 者 へ の ハ ザ ー ドと作 業 者 へ の ハ ザ ー ドを,そ. に共 通 して,輸 液 バ ックへ 混 合 時 の コア 混 入 の可 能. ル を倒 す.ア. ア ンプ ル 法 とPFS法. リス クが,標 準 作 業 手 順 中 に どれ だ け 潜 在 す る の か を. は,ア. ス ク の発 生 機 会 数 が 約1/3で. ン プ ル 法 に 比 べ て,リ. あ る(Fig.4).し. か し,輸. 液 バ ックへ の 針 刺 時 に誤 っ て注 射 針 を手 に 刺 す とい う リ ス ク は,PFS法. で も除 去 で きな い.. と き,ま た,輸 液 バ ッ クへ の針 刺 前 に内 筒 を誤 っ て 押 す こ とに よ り,混 合 す る薬 剤 量 が 不 足 とな る. 2). 作 業 者 へ の リス ク. 作 業 者 へ の リス ク とは,そ の 事 象 が発 生 した場 合,何 ら か の 形 で 混 合 作 業 者(看 護 師,薬 剤 師)に 対 して健 康 上. 3.. ア ンプ ル 法 とPFS法 1). と の比 較 実 験. 医 療 現 場 で行 わ れ て い る 実 際 の操 作. VTRに. よ り作 業 行 動 を記 録 し,特 に リ ス ク 評 価 の 前. 提 と した作 業 手 順 との 相 違 を確 認 した.実 験 環 境 の 模 式.
(5) 医 療 薬 学. 274. Fig.3.. 当 た り). 当 た り). 実験 環境. Fig.6.. 図 と看 護 師 の 実 験 の 様 子 を そ れ ぞ れFig.5とFig.6に 示 す.実 験 の 結 果,両 た.. (2003). 混 合作 業 で の作 業 者 リス ク発 生 可 能性 の 機 会 数 (ア ン プ ル ・PFS各1本. Fig.5.. No.3. 混 合 作 業 で の 患 者 リ ス ク発 生 可 能 性 の 機 会 数 (ア ン プ ル ・PFS各1本. Fig.4.. Vol.29,. 方 法 の 間 に以 下 の相 違 が 認 め られ. 実 験 風 景(看 護 師). (1)ア ンプ ル 法 で は,安 全 管 理 上,シ. リ ン ジ に薬 剤 を吸. い 取 っ た 後 に,薬 剤 名 を記 載 す る こ とが 推 奨 され て い る が,ほ. とん どの被 験 者 が そ の 作 業 を ス キ ップ し.
(6) 医療 薬 学. Vol.29,. No.3. た.こ れ は,今. (2003). 275. 回 の場 合,シ. リ ンジ に薬 剤 を吸 い 取. (1ア. る た び に 混 合 が な さ れ た こ と か ら,薬 剤 名 の 記 載. ンプ ル1シ. リ ン ジ の原 則 を 守 ら な い こ と に よ. り配 合 変 化 の リス ク は増 加).. は,薬 剤 の 取 り違 い 防 止 に意 味 が な い 作 業 で あ る. 2). (薬剤 名 を シ リ ン ジ に 記 入 し な い こ とに よ り記 入 ミ. 各 者 の 混 合 作 業 手 順 と時 間値 を分 析 し,作 業 要 素 別 に. ス の リ ス クは 消 失).. 平 均 作 業 時 間結 果 を求 め た.作. (2)薬 剤 の 配 合 変 化 を 防 ぐた め,1つ. の シ リ ンジ に は2. つ 以 上 の 薬 剤 を吸 い 取 ら な い と い う原 則(1ア ル1シ. リ ン ジ の原 則)が. 混合作 業 の時間分析. ンプ. あ る が,薬 剤 師 は す べ て の. ble 1に,ま. 業 要 素 の 分 類 基 準 をTa‑. た,看 護 師 と薬 剤 師 の 平 均 混 合 作 業 時 間 を,. そ れ ぞ れFig.7とFig.8に 本 院 で は,通 常,看. 示 す. 護 師 は ナ ー ス ス テ ー シ ョ ンの 作 業. 作 業 手 順 を遵 守 して い た の に対 し,看 護 師 にお い て. テ ー ブ ル に お い て 立 位 で 定 型 的 な 混 合 を行 う の に対 し. 守 られ て い な い ケ ー ス が 見 られ た.看 護 師 は薬 剤 の. て,薬 剤 師 は ク リー ンベ ンチ を用 い て複 雑 な処 方 の 混 合. 配 合 変 化 問 題 が な い 組 み 合 わ せ を経 験 的 に知 っ て い. を行 って い る.今 回 の実 験 にお い て も,看 護 師 は立 位 で. る た め,作 業 効 率 を重 視 した結 果,こ の原 則 を ス キ ッ. 手 際 よ く作 業 を進 め た の に対 して,薬 剤 師 は座 位 で,各. プ した もの と考 え られ る.し か し,看 護 師 の 思 い 違. 作 業 を丁 寧 に行 う な どの違 い が 認 め られ,こ. い に よ り配 合 変 化 を起 こす 薬 剤 を 同 じ シ リ ン ジ に 吸. と薬 剤 師 で の作 業 時 間 の 違 い に現 れ た.. い 取 っ て しま う こ と も考 え られ,こ. の原 則 が 守 られ. な い こ と に よ る リス ク を見 過 ご す こ と は で き な い. ア ン プ ル 法 とPFS法 回 の 処 方 で は,ア. Table 1. 薬 剤 混 注 作 業 要 素 の 分 類 基 準. Fig.7.. 看 護 師 の 平 均 作 業 時 間(n=5). れが看護 師. との 作 業 時 間 を 比 較 す る と,今. ン プ ル 法 で は凍 結 乾 燥 製 剤 の 溶 解 が必.
(7) 医 療 薬 学. 276. Fig.8.. 要 で あ り,PFS法. で は,ビ. No.3. (2003). 薬 剤 師 の 平 均 作 業 時 間(n=5). タ ジ ェ ク トがA液,B液. 二 本 に分 か れ て い る な どの 違 い が あ るが,同. Vol.29,. の. 一薬効 を も. 看 護 師 のPFS法. で の 実 作 業 時 間 短 縮 は,ア. ンプ ル法. に比 べ て 全 体 的 に は約16秒 で,実 作 業 分 で も約40秒 と,. つ 混 合 作 業 と して み た場 合 ,両 属 性 と も に,PFSの. 方が. 薬 剤 師 で 認 め ら れ た 差 よ りか な り小 さ い もの で あ っ た. ア ン プ ル に 比 べ,作. 頼限. (Fig.7).実. 界),特. 業 時 間 が 有 意 に 短 か く(95%信. に 薬 剤 師 で は 約60%に. 減 少 した.こ. れ は,ア. ン. 際 の 動 作 を 動 作 時 間研 究 に お け る 正 常 作 業. 速 度 の 考 え方 に合 わ せ て観 察 す る と,今 回 の 実 施 看 護 師. プ ル法 で は 薬 液 を シ リ ンジ に吸 い 取 る 作 業(と 溶 解 す る. は,ア. 作 業)が 必 要 で あ り,PFS法. ン プ ル法 で は動 作 ペ ー ス 的 に は若 干 速 す ぎる との. で は こ れ らの 作 業 が 不 要 な. 印 象 を受 け た.動 作 ペ ー ス が 速 い とい う こ と は作 業 に慣. こ と に よる.作 業 要 素 別 の作 業 時 間 の,平 均 値 の 差 の検. れ て い るた め と考 え られ る が,慣 れ に よ り生 じる リス ク. 定 の 結 果 をTable. 発 生 の 可 能 性 もあ る.. 封 作 業 はPFSで. 2に 示 す.薬 剤 師,看 護 師 と も に,開 有 意 に 時 間 が か か り,実 作 業 で は ア ン. プ ル 法 が 有 意 に 時 間 が か か って い る(95%信 ま た,廃. 棄 に つ い て は,看 護 師 でPFS法. つ い て は薬 剤 師 で ア ン プ ル 法 が,そ が か か る傾 向 が 見 られ た(95%信. 頼 限 界). が,消. 毒に. れ ぞ れ ,有 意 に時 間. 頼 限 界).. 確 認 と開 封 作 業 時 間 は看 護 師 と薬 剤 師 で差 が な い が, 混 合 実 作 業,廃 棄 や 消 毒 に 要 した 時 間 は看 護 師 に比 べ て 薬 剤 師 の 方 が 長 か った.特. 師 の作 業 時 間 は看 護 師 の 約2倍. 較(被 験 者 に つ い て 対 応 の あ る 平 均 値 の 差 の 検 定 結 果t0). で あ っ た の に対 し,PFS. 実 施 者 の意 見. 実 験 後,ア ア ンプ ル の作 業 時 間 の 比. ン プ ル法 の 場 合,薬 剤. 法 で は看 護 師 に近 づ い た. 3). Table 2. 作 業 要 素 別PFSと. に,ア. ン プ ル 法 とPFS法. 利 点 と問題 点 につ い て,ヒ 結 果 をTable. との 医療 現場 にお け る. ア リ ン グ調 査 を行 った.調 査. 3に 示 す.PFS法. 上 が 利 点 と して あ げ られ,リ. は衛 生 面,作. 業効 率 の向. ス ク の 抑 止 効 果 が 実 感 され. て い る こ とが 明 らか と な っ た.一 方,PFSで. は,一 般 的. な シ リ ンジ に比 べ て初 期 摺 動 抵 抗 が 若 干 大 き く混 合 時 に 力 が 必 要 な こ と,包 装 の 開 封 に力 が 必 要 な こ と,包 装 が 大 き く ゴ ミが 多 く排 出 さ れ る な どの 問 題 点 も指 摘 さ れ た.ゴ. ミ と して 排 出 され る包 装 の 量 につ い て は,今. 模 擬 処 方 の場 合,廃 棄 物 の 個 数 と して は,ア は16ア イ テ ム,PFS法 え ばPFSの. ン プ ル法 で. で は8ア イ テ ム とア イ テ ム 数 で い. 方 が 少 な か っ た が,重 量 で は,ア. で は約80g,PFS法. 回の. で は約120gで. あ った.. ンプル法.
(8) 医 療 薬 学. Vol.29,. No.3. (2003). 277 Table 3.. 考. ヒ ア リ ン グ の 結 果 得 ら れ た ア ン プ ル とPFSの. 輸 液 バ ック の 針 刺 部 また は針 が 菌 で 汚 染 され て い て,針 察. 刺 時 に 菌 が 輸 液 剤 に 侵 入)の 原 因 に も な る.薬 剤 混 合 方. 本 研 究 で は,医 療 機 器 の誤 使 用 に よ る 医療 事 故 防止 の た め の 評 価 方 法 と して,リ. ス ク に よる評 価 方法 を提 案. し,薬 剤 混 合 作 業 に 当 て は め る こ とで 検 討 した.医 療 事 故 を防 止 す る た め に は,人. 主 な利 点 と問 題 点. 間工 学 的 な意 味 で の 機 器 ・器. 具 の ユ ーザ ビ リ テ ィ 向 上 も重 要 で あ るが,そ. れ 以 前 に,. 式 そ れ 自体 の 形 態 を改 良 した輸 液 バ ック や シ リ ンジ類 の 開発 が 望 ま れ る. あ らか じめ薬 剤 を シ リ ン ジ内 に封 入 し薬 剤 名 が 明記 さ れ て い るPFSと. い う新 しい 製 剤 の 工 夫 は,医 療 現 場 に. 作 業 の 効 率 化 を も た ら した だ け で な く8),医 療 に お け る. リス ク を 内包 す る作 業 行 為 自体 の排 除 が 重 要 で あ る.今. 安 全 管 理 に も貢 献 す る と思 わ れ る.特. 回用 い た 作 業 手 順 分 析 と リス ク評 価 は,リ. の 混 合 業 務 を推 進 し て い か な け れ ば な ら な い 薬 剤 師 に. る作 業 行 為 の抽 出 や,あ. ス ク を内 包 す. る製 品 の 内 包 す る リス ク評 価 に. とっ て は,き. に,今 後,注. 射剤. わ め て 有 用 な 製剤 で あ る と考 え られ る.し. 有 益 で あ る と思 わ れ る.た だ し,リ ス ク評 価 の前 提 とす. か しな が ら,医 療 廃 棄 物 減 量 化 が 望 まれ る 中 で,PFSで. る作 業 手 順 が,現. は,開 封 性 も含 め て 包 装 の簡 素 化 が 課 題 で あ る.安 全 管. 場 の実 際 の 作 業 行 為 を正 し く反 映 して. い る こ とが 重 要 で あ り,現 場 で 行 わ れ て い る作 業 行 為 の. 理 面 で は,予 想 した 通 り,PFS導. 慎 重 な分 析 が 不 可 欠 で あ る.. 薬 剤 名 と外 観 が 異 な る こ とに 起 因 す る 医 療 ス タ ッ フ(特. 今 回,人. 間 工 学 的 な 手 法 を 用 い て ア ン プ ル 法 とPFS. 法 を比 較 し た結 果,医. 療 事 故 を防 止 す る上 で,PFS法. が. 入 後 の 短 期 間 に従 来 の. に,看 護 師 と薬 剤 師)の 混 乱 を本 院 で 経 験 し た.PFSに 限 っ た こ とで は な い が,事 故 対 策 が 新 た な 別 の エ ラー を. ア ン プ ル 法 に比 べ て 有 効 で あ る こ とが 明 らか とな っ た.. 生 み 出 さ な い よ う な注 意 が,新. しか しな が ら,PFS法. 3カ 月 程 度 は 特 に重 要 で あ る と考 え る.. は で きな い.例. で も リス ク は完 全 に除 去 す る こ と. え ば,薬 剤 の取 り違 い は重 大 な医 療 事 故. につ な が りか ね な い が,ア. ン プ ル 法 とPFS法. この リ ス ク の 除 去 は 困 難 で あ る.ア. の両 方 で. ン プ ル で は,限. られ. シス テ ムへ の 移 行 直 後 の. 今 回 は,リ ス ク を単 純 に発 生 機 会 数 と して 比 較 した が,人. 的信 頼 性 係 数(人 的 過 誤 率: エ ラ ー の 発 生 確 率 の. 期 待 値)9)を 用 い,発. 生 確 率 と して 評 価 す る こ と で,よ. た 面 積 に薬 剤 名 ラベ ル が 貼 付 され て い る が,印 刷 文 字 サ. り詳 細 な リス ク評 価 が 可 能 と な る と予 想 さ れ,今 後 の課. イ ズ が 小 さ す ぎ る の に対 して,PFSで. 題 と して あ げ られ る.. は本 体 と包 装 体 に. お け る表 示 面 積 が 大 きい た め 文 字 サ イズ も相 対 的 に大 き く,表 示 表 現 も色 を用 い た 差 別 化 を行 う な どの 人 間 工 学 的 な工 夫 が 認 め られ る.リ ス ク低 減 の た め に は,入. 間工. 学 的 に よ り識 別 性 の 高 い表 示 を採 用 す る な どの検 討 も必 要 で あ る な どの 問 題 の 所 在 が 明 らか と な っ た.今 後,PFS 法 とア ン プ ル法 と も に,よ. り一 層 の識 別 表 示 方 法 の 向 上. を図 る こ とが 望 ま れ る. ま た,針 刺 し とい う プ ロ セ ス は,輸 液 バ ッ ク に シ リ ン ジ の 針 を刺 す ス タ イ ル の 混 合 で は 避 け る こ との 出来 な い 作 業 者 リス クで あ り,同 時 に患 者 へ の リス ク(細 菌 混 入:. 謝辞 実験 に ご協力 いただい た,金 沢大 学医学 部 附属病 院 看護部看 護師各位,薬 剤 部薬剤師各位 に厚 く御礼 申 し上 げま す.ま た,サ ンプル薬剤 を提供 い ただい たテ ルモ株式 会社, 本研 究P実 験 を撮影 しニ ュース報道 してい ただいたNHK金 放送局の原岡英司記者 に深 く感謝 します.. 沢.
(9) 医療 薬 学. Vol.29,. No.3. (2003). 278 ン ト戦 略 に お け る 処 方 オ ー ダ リ ン グ シ ス テ ム の 可. 引 用. 文 献. 能 性 に つ い て の 分 析,医. 6). は 誰 で も 間 違 え る:. 医 療 シ ス テ ム を 目 指 し て),医 本 評 論 社,東. 3) 古 川 裕 之,市. pp.188‑238.. 販 後 安 全 対 策 と病 院 薬 剤 師,医 薬 品. 研 究,32, 432‑452 (2001). 4) 古 川 裕 之,分 校 久 志,宮 本 謙 一,医 療 事 故 防 止 対 策 にお け る 薬 剤 部 の 役 割;金 沢 大 学 医 学 部 附属 病 院 の 場 合,月 刊 薬 事,42, 1107‑1113 (2000). 志,宮 本 謙 一,医. 本 規 格 協 会,東 7). 語 機 械/爆 発/火 災/. 西 久,増 江 俊 子,分 校 久. 薬 品 に 関 連 した リス クマ ネ ジ メ. "JISハ. 京,2002,. pp. 180‑196.. ン ド ブ ッ ク36安 全1(用. 語 機 械/爆 発/火 災/. 建 設/運 搬/交 通/医 療/他)",ISO/TR12100 B0008)機. よ り安 全 な. 学 ジ ャ ー ナ リ ス ト協. 京,2000,. 5) 古 川 裕 之,土 屋 文 人,大. ン ド ブ ッ ク36安 全I(用. 機 械 類 の 安 全 性 一リ ス ク ア セ ス メ ン ト の 原 則,日. 2) L.T. Kohn, J.M. Corrigan, M.S. Donaldson ed., Committee on Quality of Health Care in America, Institute of Medicine. TO ERR IS HUMAN: Building a Safer Health System. USA : National Academy. 会 訳,日. "JISハ. 建 設/運 搬/交 通/医 療/他)",ISO14121(JISB9702). 村 治 子)」 報 告 書,2000年3月.. Press,1999,(人. 69‑76. (2001).. 1) 厚 生 科 学 研 究 費 補 助 金/平 成11年 度 医 療 技 術 評 価 総 合 研 究 事 業 総 括 報 告 書 「医 療 の リス クマ ネ ジ メ ン トシス テ ム構 築 に 関 す る研 究(主 任 研 究 者: 川. 療 情 報 学,21,. 8). の 一 般 原 則 一 第1部. 基 本 用 語,方. 格 協 会,東. pp.385‑402.. 京,2002,. 島 田 慈 彦,平 林 徹,松. (JIS/TR. 械 類 の 安 全 性 一 基 本 概 念,設. 野 公 晟,中. 原 肇,村. 川 義 人,矢. 田 和 也,小. 計 の た め. 法 論,日. 本規. 後 和 夫,東. 川 幸 雄,豊. 海. 口 義 夫,. 輸 液 配 合 剤 を 中 心 と した プ レ フ ィ ル ドシ リ ン ジ シ ス テ ム の 有 用 性 検 討,新. 薬 と 臨 床,48,. 25‑37. (1999). 9) 林 喜 男,"人. 間 信 頼 性 工 学(人. 術)",海. 京,1984,. 文 堂,東. 間エ ラ ー の 防止 技. pp.180‑191..
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