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剤型別の分類 農薬の毒性評価 粉剤 粒剤 乳剤 水和剤 油剤 燻蒸剤 ( くんじょうざい ) 日本における農薬の製剤年間生産量 1974 年 75 万 t をピークに現在 30 万 t にまで減少原因全国的な水稲 ( すいとう ) 栽培の減少最少の散布量で最大の効果を維持する低用量化技術の開発殺虫剤

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第9回物質環境科学

• 化学物質による汚染 • P69から86

化学物質

• 2009年 CAS登録数 約4000万種 • 化学物質のリスク評価 因果関係はっきりし ている物質(ある生物の障害や致死状況と原 因物質が明らかなもの) 少ない • 予防原則、慎重さの原則(precautionary  principle) • 代表的な環境汚染物質 – 農薬、有機塩素系化合物、有機リン化合物、界 面活性剤、有機フッ素系化合物 – 各物質の特徴と汚染の現状

P69

農薬

• 農薬物に被害を与える生物を防除するための薬 剤 • 世界人口の増大、農作物の生産量増大の必要 性→農薬の使用不可欠 • 殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調 整剤、誘引剤に分類 • 現在使用されている農薬の大部分は合成化学 物質である化学農薬 • 化学農薬の呼び名には、化学名、一般名、国際 標準名、商品名などさまざま • 特定農薬と呼ばれる除虫菊や木酢液などの天 然成分を用いたものはわずか

P69

化学農薬の呼び名の例

• 一般名: MEP • 国際標準名:フェニトロチオン • 化学名:O,O‐ジメチルO‐4‐ニトロ‐m‐トリルホス ホロチオエート • 商品名:スミチオン

P70

特定農薬

• 原材料に照らし、農作物や人畜および水産動 植物に害を及ぼす恐れがないことが明らかな もの。 • 特定防除資材ともよばれる。

P70

化学農薬の化学構造による分類

• カルバメート系 • ジチオカルバメート系 • ジフェニルエーテル系 • 天然物系 • トリクロルピリジル系 • トリアジン系 • ピレステロイド系 • フェノキシ系 • 有機塩素系 • 有機水銀系 • 有機スズ系 • 有機リン系の各薬剤 • 抗生物質 • 生物農薬

P70

(2)

剤型別の分類

• 粉剤 • 粒剤 • 乳剤 • 水和剤 • 油剤 • 燻蒸剤(くんじょうざい)

農薬の毒性評価

日本における農薬の製剤年間生産量 1974年 75万tをピークに現在30万tにまで減少 原因 全国的な水稲(すいとう)栽培の減少 最少の散布量で最大の効果を維持する低用量化 技術の開発 殺虫剤は農作物の害虫駆除のために用いられる が、目的とする害虫以外の生物(ヒトも含めて)の 生存を脅かすために、多くの問題を引き起こした 選択毒性を重視した殺虫剤の開発

LD

50 • 半数致死量(50% lethal dose) • 物質の急性毒性の強さの指標で、その物質 をある状態の動物に与えた場合にその半数 が死に至る量(体重1 kgあたり)を示す。

P70

LC

50 • 50% lethal concentration • 物質の急性毒性の強さの指標で、その物質 をある状態の水生生物に与えた場合にその 半数が死に至る水中の濃度を示す。

P71

有機リン系殺虫剤の選択毒性係数

哺乳動物(マウスやラット)に対するLD50値を昆虫(イエバエ)に対す るLD50値で割った数値。この係数が大きければおきいほど、(急性 毒性に関して))ヒトを含めた哺乳動物にとって安全な殺虫剤といえ る。 農薬は害虫の天敵や農作物に被害を与えない昆虫にも影響する

P70

化合物名 選択毒性係数 (マウスLD50/イエバエLD50) シュラーダン[(CH3)2N)2PO]2O 0.0007 テップ 0.2 パラチオン 5 マラチオン 100 フェニトロチオン(スミチオン) 150 (数値大きいほど安全)

毒物および劇物取締法

• 農薬の毒性による分類 – 特定毒物 – 毒物 – 劇物 – それ以外の普通物 • 毒物:経口投与で、LD50 =50 mg/kg以下程度 • 劇物:経口投与で、LD50 =300 mg/kg以下程度

P71

(3)

農薬取締法で決められたコイとミジン

コを用いた急性毒性試験

毒性弱い 毒性強い

P71

分類 コイ ミジンコ A類 10mg/L以上 0.5mg/L以上 B類 10~0.5mg/L以上 0.5mg/L以下 B‐s類 2mg/L以下で、B類の中 でも注意を要するもの C類 0.5mg/L以下 D類 0.1mg/L以下

有機塩素系化合物

• 化合物中の一つ以上の水素が塩素に置換さ れた炭化水素であり、PCB、DDT、HCHなどの 農薬、ダイオキシン類および揮発性有機塩素 化合物

P71

代表的な有機塩素系化合物

P71

カネミ油症事件

• 熱媒体として使用されていたPCBが食用油に 混入し、それを摂取した人々に障害が生じた 事件 • 患者数1万3千人 • 1974年 PCB製造・輸入・使用禁止 • 現在 PCBを使用した製品が廃棄物として放 置、未使用のPCBそのものも倉庫などに保管

P72

大阪市内河川域でのPCB濃度の減衰

減少はしているものの現在でも検出され続けている。過去に蓄 積したPCBが分解されずに底泥に残留

P72

五大湖におけるPCBの生物濃縮の例

PCBは底泥のみでなく、二枚貝、魚類、鯨類などからも検出 高次生物になるほど水からの濃縮率が高い 先進国、旧社会主義国 PCB汚染 母乳からもPCB検出

P73

(4)

DDTとHCH

• ウンカ病、メイガ病の防除、シラミの防除など農薬およ び衛生害虫駆除のために使用 • 長期間における環境中での残留,食物連鎖を通じて の生物濃縮,水生生物や人間に対する高い毒性 • 1971年12月農薬登録失効し,使用禁止(開発途上国 の一部では,マラリア防除のために現在でもDDTが 使用) • 環境中に地球的規模で拡散しており,かつては日本 のような先進国でも高濃度に検出、現在では多くの開 発達上国が存在する熱帯および亜熱帯地方で濃度 が高い. • 開発途上国から排出されたDDTやHCHはその地域 だけにとどまらず,偏西風にのって極地にまで移動し, ホッキョクグマなどの生物を脅かしている.

ダイオキシン

• ごみの焼却時や農薬などの合成において副 生成物として生成する。毒性の非常に高い有 機塩素化合物.塩素の付く位置によって75種 類の異性体があり,そのなかでも2,3,7,8‐ダイ オキシンの毒性が最も強い • 1990~2000年ダイオキシンという言葉が報道 番組をにぎわせていた.

ダイオキシン類

• ダイオキシン(PCDD),ジベンゾフラン(PCDF)およびコプ ラナーPCB を含めての総称を意味する • ダイオキシンには,塩素のつく位置によって75の異性 体があり,そのなかでも最も毒性が強いのが2,3,7,8‐ テトラクロロジベンゾ‐p‐ダイオキシン(2,3,7,8‐TeCDD)で ある • ジベンゾフランは135種類の異性体,コプラナーPCB ( PCBのなかで,ビフェニル基に置換する塩素の位置 により、2個のベンゼン環が同一平面上に揃っている 分子)は十数種類の異性体を有し、そのなかに毒性 をもつものは12種類 • ダイオキシン類は数多くの異性体→ダイオキシン類と して毒性を総合的に評価することはたいへん困難

P73

毒性等量(TEQ)

• ダイオキシン類の毒性評価 • TEQとは,2,3,7,8‐TeCDDの毒性を1とした係数である • 毒性等価係数(TEF値)に検出された濃度を乗じたもの 毒性等量(TEQ)=ダイオキシン類の濃度×毒性等価係 数(TEF値) • ダイオキシンの汚染実態および毒性評価→濃度また はTEQで表される場合の二つがある

P74

ダイオキシン類の毒性等価係数

PCDD

P74

化合物名 TEF値 (WHO1998TEF) TEF値 (WHO2006TEF) 2,3,7,8-TeCDD 1 1 1,2,3,7,8-PeCDD 1 1 1,2,3,4,7,8-HxCDD 0.1 0.1 1,2,3,6,7,8-HxCDD 0.1 0.1 1,2,3,7,8,9-HxCDD 0.1 0.1 1,2,3,4,6,7,8-HpCDD 0.01 0.1 OCDD 0.0001 0.0003

ダイオキシン類の毒性等価係数

PCDF

P74

化合物名 TEF値 (WHO1998TEF) TEF値 (WHO2006TEF) 2,3,7,8‐TeCDF 0.1 0.1 1,2,3,7,8‐PeCDF 0.05 0.03 2,3,4,7,8‐PeCDF 0.5 0.3 2,3,4,7,8‐HxCDF 0.1 0.1 1,2,3,4,7,8‐HxCDF 0.1 0.1 1,2,3,6,7,8‐HxCDF 0.1 0.1 1,2,3,7,8,9‐HxCDF 0.1 0.1 1,2,3,4,6,7,8‐HpCDF 0.01 0.01 1,2,3,4,7,8,9‐HpCDF 0.01 0.01 OCDD 0.0001 0.0003

(5)

ダイオキシン類の毒性等価係数

コプラナーPCB

P74

化合物名 TEF値 (WHO1998TEF) TEF値 (WHO2006TEF) 3,4,4’,5‐TeCB 0.0001 0.0003 3,3’,4,4’‐TeCB 0.0001 0.0001 3,3’,4,4’,5‐PeCB 0.1 0.1 3,3’,4,4’,5,5’‐HxCB 0.01 0.03 3,3’,4,4’,5‐PeCB 0.0001 0.00003 2,3,4,4’,5‐PeCB 0.0005 0.00003 2’,3’,4,4’,5‐PeCB 0.0001 0.00003 2’,3,4,4’,5‐PeCB 0.0001 0.00003 2’,3,3’,4,4’,5‐HxCB 0.0005 0.00003 2’,3,3’,4,4’,5’‐HxCB 0.0005 0.00003 2’,3,4,4’,5,5’‐HxCB 0.00001 0.00003 2’,3,3’,4,4’,5,5’‐HpCB 0.0001 0.00003

ダイオキシン類の性質

• ダイオキシン類は水に溶けにくい反面,油には溶けや すい無色の固体で,化学的には非常に安定な物質で ある. • PCDDは,アメリカの農薬メーカーが製造した2,4,5‐Tの 不純物として発見 • ベトナム戦争でのアメリカ軍による枯葉剤(ダイオキシ ンを含む)の散布や,イタリア・セベソやアメリカ・ラブ キャナルの化学工場爆発によるダイオキシンの飛散 後の早産や奇形児の多発→ダイオキシンの猛毒性を 世界に • 燃焼,製鋼用電気炉,パルプ製造,たばこの煙,自動 車排ガスなどの人為的要因や,森林火災,火山活動 などの自然要因でもダイオキシン類は発生

P75

ダイオキシン類の環境中の濃度評価

• 「ダイオキシン類対策特別措置法(1999年)」に 基づき,各媒体に基準値が設定 日本国内1960~1970年代 水田除草剤として大量に使用されたペンタクロロフェ ノールPCPやクロルニトロフェンCNPに不純物として含まれていたダイオキシンが, 環境中に大量に放出 ごみ焼却にともなって発生するダイオキシンが増加 ダイオキシン類対策特別措置法に基づく対策によってダイオキシンを急減

P75

耐用一日摂取量[TDI]  4pg‐TEQ/体重kg/日 環境基準 大気 年平均値 0.6pg‐TEQ/m3以下 水質 年平均値 1pg‐TEQ/L以下 p(ピコ) 10‐12 底質 150 pg‐TEQ/g以下 底質 1000 pg‐TEQ/g以下(調査指標250 pg‐TEQ/g以下)

ダイオキシン類の毒性

• ダイオキシン類の毒性は,もっとも高い2,3,7,8‐ TeCDDでは青酸カリやサリンなどより高いが,実 験動物による種間差が大きい • 一般毒性のほか,発がん性,体重減少,胸腺萎 縮,肝臓代謝障害,心筋障害,性ホルモンや甲 状腺ホルモン代謝への影響,さらに学習能力の 低下などの症状も報告 • ヒトに対する安全性の評価基準となる,ダイオキ シンの耐容一日摂取量(TDI)は,4 pg‐TEQ/体重 kg/日と設定

P75

ダイオキシンの毒性

P76

動物種 系統 LD50(μg/kg) 雄 雌 雌雄 モルモット Hartley 0.6‐2.1 2.5‐19 ミンク NR 4.2 ラット Sherman 22 13‐43 ラット Fish334N 164‐340 ラット CD 297 サル Macaca mulata 50‐70 ウサギ New Zealand 115 マウス C57/BL 114‐284 マウス B2D2F1 296 マウス D2A/2J 2570 マウス Han/Wister >3000 ハムスター Golden Syriar 1157‐5051

耐容一日摂取量

• ヒトが一生涯にわたり摂取しても有害な影響が 現れない,1日あたりの摂取量、動物試験を行 い,影響が認められる最少の体内負荷量に,個 体や種類による感受性の違いを考慮した不確実 係数をかけることにより求められる. 現在(2010年),平均的な人間が食事や呼吸を通じ て摂取しているダイオキシンの量を,食品や水,大 気環境中のダイオキシンの濃度から算出 1.06 pg‐TEQ/体重kg/日 TDT以下.

P75

(6)

ダイオキシン類の体内への蓄積

• 体内に入ったダイオキシン類は脂肪組織に 残留しやすく,一度体内に取り込まれると,半 減するには約7年かかる • 環境中での濃度の減少にともない、1990~ 2010年の間に食品からのダイオキシン類の 摂取量が3分の1程度に減少 • 母乳中のダイオ午シン類濃度も,1980年頃と 比べると5分の1程度に減少

POPs

• 環地中で分解しにくいこと(難分解性)、食物 連鎖を介して生体濃縮しやすいこと(高蓄積 性)、長距離を移動して極地などに蓄積しやす いこと(長距離移動性)、人の健康や生態系に 対して有害であること(生態毒性)という条件を 満たす物質を,残留性有機汚染物質(POPs,  persistent organic pollutants)とよぶ

POPsとストックホルム条約(POPs条約)

• 2001年5月には,POPsの全廃を目標としたストックホ ルム条約(POPs条約)採択 12種の物質群が規制対 象 • 2009年5月に行われた第4回締結国会議 新規9物 質が加えられることが決定 • 人の健康と環境を保護することを目的 – ①PCBなど9物質(附属書A掲載物質)の製造・使用・輸出 入の禁止 – ②DDT(附属書B掲載物質)の製造・使用・輸出入の制限 – ③非意図的に生成されるダイオキシンなど4物質(附属書 C掲載物質)の放出削減,およびこれらの附属書掲載物 質を含む廃棄物の適正な管理などを定めている

P77

POPs条約で対象となっている物質

P77

条約発効じからの附属書掲載物質 附属書A掲載物質 アルドリン クロルデン ディルドリン エンドリン ヘプタクロル ヘキサクロロベンゼン マイレックス トキサフェン ポリ塩化ビフェニル(PCB) 附属書B掲載物質 DDT 附属書C掲載物質 ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン及びポリ塩化 ジベンゾフラン ポリ塩化ビフェニル(PCB) ヘキサクロロベンゼン 第4回締約国会議で附属書に使いさ れた物質 テトラブロモジフェニルエーテルおよびペ ンタブロモジフェニルエーテル ペンタクロロベンゼン クロルデコン ヘキサブロモビフェニル リンデン(γ-HCH) α-ヘキサクロロシクロヘキサン(α-HCH) β-ヘキサクロロシクロヘキサン(β-HCH) パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS) とその塩およびパーフルオロオクタンスル ホン酸フルオリド(PFOSF) ペンタクロロベンゼン

有機リン化合物

• リンを含む有機化合物の総称であり, • 有機リン系農薬、有機リン酸トリエステル類に 分類 • 有機リン系農薬:生物に対しアセチルコリンエ ステラーゼ阻害 • 有機リン酸トリエステル類:シックハウス症候 群の原因物質

P76

有機リン系農薬

• DDTやHCHの代替物質 • 殺菌剤のイプロベンホスと殺虫剤のダイアジノンはいずれ も,使用時期である夏季に濃度が上昇し,冬季に低下す るという傾向 • 2007年に年間680 tが使用されていた殺虫剤フェニトロチ オンには,明瞭な季節変化なし。農薬としての用途だけで なく,衛生害虫の駆除や都市防疫用(カ,ハエ,ゴキブリの 防除)としても使用されているため 有機塩素系農薬に比べて,環境中での残留性が低く,生分解性が高い 水生生物への影響が危惧

P76

イプロベンホス (C3H7O)OP=S(CH2)(C6H5)      殺菌剤 ダイアジノン C4HN2CH3CH(CH3)2OP=S(OCH2CH3)2 殺虫剤 フェニトロチオン C6H3CH3NO2OP=S(OCH3)2 殺虫剤 DDVP (CH3O)2(CCl2=CHO)P=O 殺虫剤

(7)

有機リン酸トリエステル類(OPE)

• 有機物の構造中にリンを含む化合物 • おもにプラスチックの可塑剤,難燃剤,溶剤,重合触媒, 燃料,潤滑油添加剤,消泡剤として使用 • 工場排水,下水処理場排水,河川水,海水および家庭ゴ ミなど至る所から検出

P78

アルキル系トリエステル類(OPE) TMP(リン酸トリメチル) (CH3O)3P=O 可塑剤、溶剤、潤滑油添加剤 TEP(リン酸トリエチル) (C2H5O)3P=O 溶剤、難燃剤 TBP (リン酸トリ‐n‐ブチル) (C4H9O)3P=O 可塑剤、触媒安定剤、殺虫剤 TBXP(リン酸トリス(ブトキシエチル) (C4H9OC2H5O)3P=O 可塑剤、消泡剤、ワックス添加剤

TOP(リン酸トリオクチル) (C5H11C2H5CHO)3P=O 電線被膜、塩ビ合成ゴム用可塑剤

ハロアルキル系トリエステル類

TDCPP(リン酸トリス(1,3‐ジクロロ‐2‐プロピル) ((CH2Cl)2CHO)3P=O 難燃剤、潤滑油添加剤

TCEP(リン酸トリス(2‐クロロエチル)  (C2H4ClO)3P=O 難燃剤、安定剤、潤滑油添加剤

アリール系トリエステル類 TPP(リン酸トリフェニル) (C6H5O)3P=O 難燃性可塑剤、ゴム添加剤 TCP(リン酸トリクレジル) (CH3C6H4O)3P=O 可塑剤、ラッカー添加剤 TXP(リン酸トリキシリル) (CH3)2(C6H3O)3P=O 可塑剤、難燃剤 CDP(リン酸クレジルジフェニル) (CH3C6H4O)(C6H5O)2P=O 可塑剤、難燃剤

有機リン酸トリエステル類(OPE)

• 油によく溶ける性質(脂溶性)をもつ→水環境 中に放出されると,魚介類に蓄積する可能性 • ヒトに対し,多発性神経障害や遅発性神経毒 性を発現 • TCEPなどがラットに対する発がん性をもつ • 0PEの魚類に対する急性毒性値1mg/L以上 • 0PEを含む水槽でワキン(金魚)やメダカ飼育 – 脊椎骨の異常や方向感覚の欠如,神経伝達系 のアセチルコリンエステラーゼ活性の低下

P78

有機スズ化合物

• スズから4本の結合の手が伸び,それらにブ チル基やフェニル基のような有機官能基が結 合したものの総称である。 – 金属と有機物の両方の性質 – 環境中に放出された有機スズ化合物 水中で分 解(トリ体→ジ体→モノ体)へと

P79

有機スズ化合物

• 1960年頃より船底や漁網などの防汚塗料、 動物や植物に対しても高い毒性、溶出量が 制御でき,持続性も高い • カキの形態異常やイボニシガイやバイガイな どの新腹足類に対するインポセックス(メスに ペニスが生じる現象)作用など環境ホルモン 様の作用を生じさせた→,水産資源の減少

P79

有機スズ化合物の規制と法律

アメリカ,イギリスなどの先進国 1980年頃より各国独白で環境目標値の設定,25m 以下の船舶への使用禁止,溶出量の制限などの 規制 日本 「化学物質による審査および規制に関する法律」に 基づき,1990年1月にトリブチルスズオキシド (TBTO)は第一種指定化学物質に、同年に7種の TPT(トリフェニルスズ化合物)と13種のTBT(トリブ チルスズ化合物)が第二種指定化学物質に指定

P79

貝類に含まれているブチルスズの組成

水中に生息する貝よりも底泥中に生息する貝で蓄積量多い傾向 底泥に生息する種のなかでも、オオノガイがTBTを蓄積しやすく、 TBTが、その代謝産物であるDBTやMBTよりも優占

P81

(8)

界面活性剤

• 合成洗剤に洗浄力を付加する主要な成分 • 陰イオン界面活性剤陽イオン界面活性剤,非イオン 界面活性剤および両性イオン界面活性剤に分類 • 生産量 非イオン界面活性剤がもっとも多く,ついで 陰イオン界面活性剤の直鎖アルキルベンゼンスル ホン酸(LAS)、 両者を合わせると,全体の90%以上 • 近年 LASの割合加減少,非イオン界面活性剤のポ リオキシエチレンアルキルエーテル(AE)の生産量が 増加 • かつての界面活性剤トリポリリン酸ナトリウムが配 合(富栄養化)→現在 無リン洗剤

界面活性剤の水生生物(メダカ)に対

する毒性 6,24, 48時間LC

50

界面活性剤 LC50(mg/L) 6時間 24時間 48時間 C12‐LAS >15 13 12 C13/12/11/10‐LAS 15 10 10 C14‐AES(3) 9.2 6.1 6.0 C18/16‐AES(3) >6.0 2.1 1.5 C18/C16/C14‐AOS 6.2 2.8 1.8 C18/C16/C14‐AOS 2.7 1.2 0.81 C12‐AS 67 46 46 C14‐AS 5.7 3.3 2.5 C16‐AS >2.0 >2.0 0.61 C12‐AES(1) 73 47 42 C12‐AES(3) 110 69 68 - -

界面活性剤の水生生物(メダカ)に対

する毒性 6,24, 48時間LC

50

P82

界面活性剤 8.0LC50(mg/L) 6時間 24時間 48時間 C12‐AE(3) 4.2 3.2 2.4 C12‐AE(4) 5.0 3.6 3.0 C12‐AE(8) 6.8 5.3 3.5 C12‐AE(16) 28 27 25 C12‐AE(6.5) 5.3 4.8 3.3 C12‐AE(13) >14 12 12 C12‐AE(25) 100 82 82 C18/16‐AE(10) >8.0 4.0 3.5 C18/16‐AE(20) >8.0 4.0 4.5 C18/16‐AE(30) >15 6.6 4.6 - - - - - -

略号

LAS 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩 AES ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩 AOS アルファオレフィンスルホン酸塩 AS アルキル硫酸塩 AE ポリオキシエチレンアルキルエーテル

P82

C12‐AES(3)

アルキル基の 炭素数 18/16 は混合物 エチレンオキシド 基の付加モル数 3 は平均値

界面活性剤の水生生物に対する毒性

• アルキル基の炭素数が多く,エチレンオキシド基 の付加モル数が少ないほど,急性毒性が強くなる • 蓄積性についても同様,アルキル基が長く,また エチレンオキシド基が短くなるほど蓄積性が増す • 界面活性剤は生分解性が高く,下水処理場でほと んど除去される • 下水処理場が完備された地域では問題はないが, 下水道の未普及地域では魚類への影響か大きい – そのような地域では,合成洗剤ではなく,石鹸の使用 が推奨されている.

P81

有機フッ素化合物

• 従来の界面活性剤に比べて界面活性作用が高 いだけでなく,強い撥水性,撥油性および化学 的安定性を示す • 家庭や産業界で広く使用 • 炭素数および親水性基の違う数十種類の物質 が使用されている • 環境問題:パーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)

P82

(9)

PFOS

• カーペット,紙製品などの撥水,撥油剤,消火 剤,メッキにおける消泡剤,殺虫剤,半導体 などに使用 • 東京多摩川水系,近畿淀川や神埼川:高濃 度 • ミシガン州立大学400検体海棲哺乳動物の分 析:高い検出頻度、広範囲に汚染が進行

P82

PFOA

• フッ素系ポリマーの製造過程で助剤として使用 • 大阪府と兵庫県の聞を流れる神埼川およびその 支流 • の安成川:高濃度,発生源 下水処理センター • 1980~2000年にかけて.ヒト血清中のPFOSと PFOAの濃度が継続的に調査→PFOA増加傾向 PFOSはほとんど変わっていなかった • 2003~2004年の調査→血清中のPFOAおよび PFOSともに京阪神は高い傾向

P83

PFOSとPFOAの毒性

• 動物実験 PFOSとPFOAは肝臓にがんを誘発 し,ラット,マウスの胎児成長を阻害する発生 毒性 • 尿や糞とともに排出されるが,人体内での半 減期はPFOAが3.7年、PFOSが5.4年と長い • PFOSとPFOAの曝露マージン(MOE) –PFOS 450,PFOA 560と,両物質ともに100以上 になり,現時点ではリスク評価の必要はないとい う判定

P83

曝露マージン(MOE)

• NOAEL(無毒性量)とヒトヘの推定曝露量の大 小を比べたものであり,非発がん性の有害影 響リスクの指標として使用されている • 無毒性量を平均一日曝露濃度または平均一 日摂取量で割ることで算出し,値が10未満の ものは危険性が高いとして,詳細なリスク評 価を行う優先種としている

P83

有機フッ素化合物の法規制

• 2009年,PFOSはPOPsに組み込まれた • 日本では化学物質審査規制法により第二種 監視化学物質に指定 • 炭素数11以上のフルオロアルキルカルボン 酸は第一種監視化学物質, • PFOAのアンモニウム塩は化学物質排出把握 促進法第二種指定化学物質に指定 • このようにPFOSやPFOAが規制されたために その代替物質として炭素数の少ない物質が 使用されはじめている

P83

医薬品

• 医療、畜産用の医薬品および個人で使用される家庭 衛生製品類(PPCP)は,体内での代謝産物を含めほと んどが水溶性であるため,一度環境中に排出される と,下水処理場では処理されずに環境中に排出され る 分析機器の著しい進歩により検出感度が向上 →ごく微量(ng/L)のまざまな物質が検出 • 医薬品は治療や予防を目的として,低濃度でも生体 に作用するようにつくられているため,人の代謝系, 内分泌系および神経系に鋭敏に作用する可能性

P84

(10)

医薬品の河川での検出

• 淀川および利根川流域 • 強心剤のカフェイン,鎮痛剤のクロタミトン,消化性潰 傷溶剤のスルピリド,抗生物質のクラリスロマイシン • 下水処理場放流水では人工香料のガラクソリド,スル ピリド,クロタミトン,高脂血栓剤のベザフィブラート,ク ラリスロマイシンの濃度が高く,検出頻度では,クロタミ トン,スルピリド、クラリスロマイシン、抗不整脈剤のジ ソピラミド,抗炎症剤のインドメタシン、昆虫忌避剤のジ エチルトルアミド,胃酸抑制剤ピレンゼピンが高頻度で 検出 環境モニタリングと同時に生態系に対する影響評価急務

その他の化学物質

PBDE

• ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)は.ジフエニルエーテ ル(化学式:C6H5‐O‐C6H5)の水素が臭素に置換した構造をも つ化合物の総称。置換臭素の数や位置によって多数の異 性体が存在。プラスチックや繊維などに添加する難燃剤と して使用。 • 生物に蓄積しやすく,オットセイなどの海榎哺乳類や野生 生物,プラスチック製品を生産する工場で働く人の試料か ら検出。 • PBDEの急性毒性値は低いが,学習,記憶,行動能力の低 下や,雄のラットにおける生殖機能の低下、甲状腺ホルモ ン系への影響 • PBDEを合む素材を燃焼試験すると臭素系ダイオキシン類 が生成→PBDEはEUのRoHS指令における規制対象 • POPsにおいてもペンタブロモジフエニルエーテルとオクタブ ロモジフエニルエーテルが追加候補物質

RoHS指令

• Restriction of Hazardous Substances • 電気・電子製品が使用後に埋め立てられ,焼却され る際の環境負荷の低減と、再生材への有害物質の混 入を防ぐことを目的に制定され,2006年7月から施行 • 対象となるのは,鉛,水銀,カドミウム,六価クロム, ポリ臭化ビフェニル,ポリ臭化ジフェニルエーテルの6 物質 • 2006年7月以降,EU域内で工場出荷,またはEU域外 から通関されるほとんどすべての新品の電気・電子 機器について,これら有害物質の含有が原則禁止

P85

その他の化学物質

• 有機スズ化合物の代替品として使用されてい る物質 • イルガロール1051,ディウロンおよびシーナイ ン211:世界中の水,底泥から検出 • カッパーピリチオンやジンクピリチオンは,有 機スズ化合物に匹敵するほどウニ卵の発生 に対して毒性が高く,さらにアセチルコリンエ ステラーゼ活性の阻害作用ももつ

P85

シックハウス症候群

• 空気を常に入れ換えていないと,室内の二酸化炭素 濃度が上昇したり,ダニ,カビの胞子なども飛散した ままとどまったりする.また,建材,家具,内装品に使 用されている接着剤,塗料,溶剤や,衣類の防虫剤, 殺虫剤などの多くの化学物質が充満する。そこにス トレスが加わると,健康に影響がでることがある。こ れをシックハウス症候群とよぶ。 シックハウス症候群から身を守る ○カビやダニが繁殖しないよう室内の湿度を50%以下に 保つ ○でさるだけじゅうたんや畳よリフローリングを使用し,こ まめに掃除し,ダニの死骸や糞を除去することを心がけ る ○家屋内に使用される化学物質(ホルムアルデヒドや有 機リン酸トリエステル類など)に注意する ○換気に気をつける

P85

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第9 回 環境物質科学 問題集 1. 農薬とは 2. 特定農薬とは 3. LD50 とは 4. LC50 とは 5. 毒物とは経口投与で LC50 値が 1kg あたり何 mg 以下程度のものか? 6. 劇物とは経口投与で LC50 値が 1kg あたり何 mg 以下程度のものか? 7. PCB の名称と構造式を記せ 8. DDT の名称と構造式を記せ 9. HCH の名称と構造式を記せ 10. カネミ油症事件とは 11. ダイオキシンとは 12. ダイオキシン類とは 13. TeCDD (TCDD)の名称と構造式を記せ 14. PCDD の名称と構造式を記せ 15. PCDF の名称と構造式を記せ 16. Co-PCB の名称と構造式を記せ 17. 毒性当量とは 18. ダイオキシン類の性質を記せ 19. POPs とは 20. ストックホルム条約とは 21. 有機リン系農薬であるフェニトロチオンの化学式を記せ 22. 有機スズ化合物である TBT、DBT、MBT の化学式を記せ。ただし、ブチル基は Bu で省略し、ヒド ロキシ基やハロゲンは X で表すこと 23. インポセックス現象とは

24. 界面活性剤の略号の名称を記せ (1) LAS (2) AES (3) AOS (4) AS (5) AE 25. PFOS の名称と構造式を記せ

26. PFOA の名称と構造式を記せ 27. 暴露マージンとは

28. RoHS 指令とは

参照

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