• 検索結果がありません。

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題 一一四八同志社法学六〇巻七号一はじめに性同一性障害とは 医学上 生物学的な性別と心理的な性別(性の自己意識)が一致しない状態を指す(1 ) このような医学的疾患を有する性同一性障害者は 諸外国の統計等から推測し おおよそ男性三万人に一人 女性十万人に

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題 一一四八同志社法学六〇巻七号一はじめに性同一性障害とは 医学上 生物学的な性別と心理的な性別(性の自己意識)が一致しない状態を指す(1 ) このような医学的疾患を有する性同一性障害者は 諸外国の統計等から推測し おおよそ男性三万人に一人 女性十万人に"

Copied!
29
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一四七 同志社法学   六〇巻七号

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題

 

  (四一六五)     目   次 一   は じ め に 二   ド イ ツ 性 転 換 法   ⑴   性 転 換 法 と 請 求 権 者   ⑵   違 憲 決 定 前 の 学 説   ⑶   違 憲 決 定 前 の 裁 判 例 三   連 邦 憲 法 裁 判 所 二 〇 〇 六 年 違 憲 決 定   ⑴   規 範 統 制 手 続   ⑵   マ ッ ク ス プ ラ ン ク 研 究 所 の 答 申   ⑶   違 憲 決 定 要 旨   ⑷   改 正 法   ⑸   小 括 四   検 討 五   お わ り に

(2)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一四八 同志社法学   六〇巻七号 一   はじめに   性 同 一 性 障 害 と は 、 医 学 上 、 生 物 学 的 な 性 別 と 心 理 的 な 性 別 ( 性 の 自 己 意 識 ) が 一 致 し な い 状 態 を 指 す ( 1) 。 こ の よ う な 医 学 的 疾 患 を 有 す る 性 同 一 性 障 害 者 は 、 諸 外 国 の 統 計 等 か ら 推 測 し 、 お お よ そ 男 性 三 万 人 に 一 人 、 女 性 十 万 人 に 一 人 の 割 合 で 存 在 す る と も 言 わ れ て い る ( 2) 。   日 本 で は 、 一 九 九 七 年 に 日 本 精 神 神 経 学 会 に お い て ﹁ 性 同 一 性 障 害 に 関 す る 診 断 と 治 療 の ガ イ ド ラ イ ン ﹂ が と り ま と め ら れ 、 そ の 翌 年 に は 埼 玉 医 科 大 学 で 性 別 適 合 手 術 が 初 め て 公 に 実 施 さ れ た 。 こ の よ う な 性 別 適 合 手 術 を は じ め と す る 性 同 一 性 障 害 者 に 対 す る 治 療 が 正 当 な 医 療 行 為 と し て 行 わ れ る よ う に な っ た も の の ( 3) 、 性 同 一 性 障 害 の 社 会 生 活 上 の 問 題 は な お も 改 善 さ れ て い な か っ た 。そ こ で 、治 療 の 効 果 を 高 め 、そ の 社 会 的 な 不 利 益 を 解 消 す る た め に 制 定 さ れ た の が 、﹁ 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 い の 特 例 に 関 す る 法 律 ﹂ ( 平 成 一 五 年 七 月 一 六 日 法 律 第 一 一 一 号 、 平 成 一 六 年 七 月 一 六 日 施 行 、 以 下 特 例 法 と 略 す 。) で あ っ た 。 こ れ に よ り 、 特 例 法 上 の 一 定 の 要 件 ( 4) を 満 た す 者 に つ い て は 、 家 庭 裁 判 所 の 審 判 を 経 る こ と に よ り 法 令 上 の 性 別 の 取 扱 い を 性 自 認 に 合 致 す る も の に 変 更 す る こ と が 認 め ら れ 、 戸 籍 上 の 性 別 の 表 記 も 変 更 で き る こ と に な っ た 。   国 際 私 法 的 観 点 か ら 性 別 の 問 題 を 考 え る と 、 多 様 な 形 で 問 題 が 生 じ 得 る が ( 5) 、 特 例 法 施 行 前 後 を 通 し て 公 刊 さ れ た 裁 判 例 を 見 る 限 り 、 い ま だ こ れ に 関 す る 問 題 が 裁 判 で 争 わ れ た こ と は な い よ う で あ る ( 6) 。 し か し 、 欧 米 諸 国 に 目 を 転 じ る と 、 外 国 人 の 性 別 変 更 手 続 の 可 否 や 、 本 国 で の 性 別 変 更 手 続 が 不 可 能 な 外 国 籍 の 性 同 一 性 障 害 者 の 婚 姻 の 可 否 が 裁 判 上 で 問 題 と な っ て い る 。 特 に ド イ ツ で は 、一 九 八 〇 年 に 成 立 し た ﹁ 特 定 の 場 合 に お け る 名 の 変 更 及 び 性 別 の 確 認 に 関 す る 法 律 ﹂ ( 以 下 、 性 転 換 法 と 略 す ( 7) 。) に よ り 、 性 同 一 性 障 害 者 で あ る 外 国 人 が ド イ ツ 裁 判 所 で 自 認 す る 性 別 に 属 す る こ と の 確 認 の 裁   (四一六六)

(3)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一四九 同志社法学   六〇巻七号 判 を 求 め ら れ る か が 問 題 と な っ た 。 判 断 を 仰 が れ た 連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 近 時 の 国 際 的 動 向 等 を 考 慮 し た う え で 、 ド イ ツ 法 を 属 人 法 と す る 者 の み に 請 求 権 限 を 限 定 す る 性 転 換 法 の 規 定 を 違 憲 で あ る と す る 決 定 を 二 〇 〇 六 年 に 下 し て い る 。   で は 、 日 本 の 裁 判 所 に お い て 性 同 一 性 障 害 者 で あ る 在 日 外 国 人 が そ の 性 別 を 変 更 す る こ と は で き る だ ろ う か 。 い か な る 場 合 に 日 本 の 裁 判 所 が 管 轄 を 有 し 、 い か な る 法 に 基 づ き こ れ を 判 断 す べ き で あ ろ う か 。 こ の 問 題 を 考 え る に あ た っ て は 、 性 別 が 公 的 な 身 分 登 録 簿 の 記 載 事 項 で あ る こ と か ら 、 氏 名 に つ い て 議 論 さ れ る よ う に ( 8) 、 性 別 の 変 更 と い う 問 題 が そ も そ も 双 方 的 抵 触 規 定 に よ る 規 律 と い っ た 国 際 私 法 上 の 通 常 の 処 理 に 適 す る か と い う 問 題 も 絡 ん で こ よ う 。   ま た 、 そ も そ も 特 例 法 に 基 づ い て 在 日 外 国 人 が 日 本 の 家 庭 裁 判 所 で 性 別 の 取 扱 い に 関 す る 審 判 を 請 求 す る こ と は で き る の だ ろ う か 。 特 例 法 に は 、 日 本 国 籍 を 有 す る 者 の み に そ の 適 用 対 象 を 限 定 す る 規 定 は な い 。 し か も 、 同 法 四 条 は 、 審 判 の 効 果 と し て 、 戸 籍 の 記 載 の 変 更 を 中 心 と し た 手 続 法 的 な 定 め を す る の で は な く 、 実 体 法 的 に 性 別 の 取 扱 い が 変 更 さ れ る 旨 規 定 し て い る 。 こ の 実 体 法 上 の 取 扱 い の 変 更 を 反 映 さ せ る た め に 、 戸 籍 の 記 載 が 変 更 さ れ る に す ぎ な い の で あ る ( 9) 。 こ の よ う に 戸 籍 の 記 載 の 変 更 に 直 結 し た 規 定 に な っ て い な い こ と か ら 、 戸 籍 が 編 製 さ れ な い 外 国 人 に も 特 例 法 を 適 用 す る こ と は で き る と 解 す る こ と も 可 能 で あ る よ う に 思 わ れ る 。   同 法 の 立 法 関 係 者 に よ る 解 説 で は 、 外 国 人 が 同 法 の 対 象 と な り 得 る か に つ い て は 、﹁ 明 文 の 規 定 も な く 、 解 釈 に 委 ね ら れ て い る も の と 考 え る が 、 ① 外 国 人 の 性 別 の 取 扱 い の 変 更 に つ い て 国 際 裁 判 管 轄 権 が 我 が 国 の 裁 判 所 に あ る と い え る か 、 ② 仮 に 、 日 本 の 裁 判 所 に 裁 判 管 轄 権 が 認 め ら れ 得 る と し て も 、 そ の 場 合 の 適 用 法 規 あ る い は 準 拠 法 は ど う な る の か 、 ③ 我 が 国 に お い て 性 別 の 取 扱 い を 変 更 し た と し て も 、 外 国 人 の 本 国 に お い て そ の 変 更 が 承 認 さ れ な い 場 合 に は 、 国 際 的 に 性 別 の 取 扱 い に 齟 齬 を 来 た し 、 本 人 の 同 一 性 の 識 別 に 問 題 が 生 じ 得 る 、 な ど の 諸 点 を 考 慮 し 、 十 分 な 検 討 を 行 っ た 上 で 判 断 さ れ る 必 要 が あ ろ う ﹂ と 述 べ ら れ て い る ( 10) 。 ま た 、 別 の 解 説 で は 、 こ れ ら 三 つ の 問 題 に 加 え 、 本 国 に お い て 出 生 証   (四一六七)

(4)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五〇 同志社法学   六〇巻七号 明 書 等 に 登 録 さ れ 、 そ れ ら を 通 じ て 管 理 の 対 象 に な っ て い る 性 別 を 他 国 が 変 更 す る こ と は 、 本 国 の 国 家 主 権 等 を 侵 害 す る こ と に な ら な い か と い う 問 題 も あ げ ら れ て い る ( 11) 。 結 局 、 裁 判 所 の 判 断 に 委 ね ら れ た わ け で あ る が 、 既 述 の と お り 、 同 法 施 行 後 、 外 国 人 が 性 別 の 取 扱 い の 変 更 の 審 判 を 請 求 し た も の は 見 受 け ら れ な い 。   本 稿 で は 、 こ の よ う な 問 題 の 解 釈 の 一 助 と な る こ と を 目 的 に 、 性 同 一 性 障 害 者 で あ る 在 日 外 国 人 が 日 本 に お い て 性 別 の 変 更 を 行 う こ と が 可 能 か と い う 問 題 を 検 討 す る 。 こ の 検 討 に あ た り 、 ま ず ド イ ツ で の 議 論 を 紹 介 し 、 そ こ か ら 得 ら れ た 示 唆 を 手 が か り に 日 本 法 に お け る 解 釈 論 の 展 開 を 試 み た い と 考 え る 。 な お 、 本 稿 で は ﹁ 性 別 の 変 更 ﹂ と い っ た 表 現 を 用 い る が 、 こ れ は 、 性 別 の 取 扱 い の 変 更 な い し は 訂 正 の 意 味 で 用 い る こ と を 最 初 に 述 べ て お く 。 二   ドイツ性転換法 ⑴   性 転 換 法 と 請 求 権 者   ド イ ツ に お い て は 一 九 八 〇 年 に 性 転 換 法 ( 12) が 制 定 さ れ 、 こ れ に よ り 性 同 一 性 障 害 者 は 名 の 変 更 の 許 可 ( 一 条 ) や 他 の 性 別 に 属 す る こ と の 確 認 ( 八 条 ) を ド イ ツ 裁 判 所 に 請 求 す る こ と が 可 能 と な っ た 。   性 転 換 法 は わ ず か 一 八 か 条 の み か ら な る 法 律 で あ る が 、 一 九 八 二 年 、 一 九 九 三 年 、 二 〇 〇 五 年 、 二 〇 〇 六 年 そ し て 二 〇 〇 八 年 と 成 立 か ら 四 半 世 紀 余 り の 間 に す で に 五 度 も 連 邦 憲 法 裁 判 所 に よ り 違 憲 決 定 が 下 さ れ て い る ( 13) 。 こ の う ち の 四 番 目 に あ た る 二 〇 〇 六 年 違 憲 決 定 が 本 稿 の テ ー マ に 関 わ る も の で あ る 。   性 転 換 法 一 条 一 項 一 号 及 び そ れ を 準 用 す る 八 条 一 項 一 号 は 、 名 の 変 更 及 び 他 の 性 に 属 す る こ と の 確 認 を 求 め る 裁 判 の 請 求 権 者 を 、 ド イ ツ 人 、 ド イ ツ に 常 居 所 を 有 す る 無 国 籍 者 ま た は ド イ ツ に 住 所 を 有 す る 庇 護 請 求 権 者 ( A sy lb er ec ht ig te )   (四一六八)

(5)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五一 同志社法学   六〇巻七号 も し く は 難 民 に 明 文 で 限 定 し て い る ( 14) 。 そ の た め 、 実 務 上 、 性 転 換 法 に よ り 請 求 権 限 を 有 さ な い 者 、 す な わ ち ド イ ツ 法 が 属 人 法 と な ら な い 外 国 人 は 、 ド イ ツ 裁 判 所 で 性 別 確 認 手 続 を す る こ と が で き な い 。 こ の よ う な 性 転 換 法 の 請 求 権 者 を 限 定 す る 同 法 の 規 定 に 違 憲 の 疑 い が あ る と し て 、 二 〇 〇 六 年 の 裁 判 で 問 題 と さ れ た の で あ る 。   立 法 理 由 書 で は 、 請 求 権 者 を 限 定 す る の は 、 外 国 籍 を 有 す る 性 同 一 性 障 害 者 の 名 及 び 性 別 に 関 す る 裁 判 は 、 当 事 者 の 本 国 に 留 保 さ れ る べ き で あ る 、 と い う 考 え に 基 づ い て い る と 説 明 さ れ て い る ( 15) 。   以 下 で は 、 ま ず 二 〇 〇 六 年 違 憲 決 定 前 の ド イ ツ の 学 説 、 裁 判 例 を 紹 介 し 、 次 に 二 〇 〇 六 年 違 憲 決 定 、 そ し て こ れ を 受 け て 改 正 さ れ た 性 転 換 法 を 順 に と り あ げ る こ と に す る 。 ⑵   違 憲 決 定 前 の 学 説 ( 16)   ド イ ツ で は 、 教 科 書 や 注 釈 書 で も ﹁ 性 別 ﹂ や ﹁ 性 別 の 変 更 ﹂ と い っ た 項 目 を も う け て い る も の が 多 く 、 性 別 や そ の 変 更 は 当 事 者 の 属 人 法 に 依 ら し め る べ き 問 題 と 考 え ら れ て い る 。 性 転 換 法 の 請 求 権 限 に 関 す る 規 定 ( 一 条 一 項 一 号 及 び 八 条 一 項 一 号 ) を 一 方 的 抵 触 規 定 と 解 し 、 こ れ を 双 方 化 す る こ と か ら 前 記 の 帰 結 を 導 く 見 解 も あ る が ( 17) 、 権 利 能 力 及 び 行 為 能 力 に 関 す る 民 法 施 行 法 七 条 ま た は 同 条 を 類 推 し て 本 国 法 に 依 拠 さ せ る 見 解 が 多 数 説 で あ る ( 18) 。   け れ ど も 、 本 国 法 上 の 性 別 の 変 更 の 要 件 を み た す 外 国 人 で あ る と し て も 、 ド イ ツ 裁 判 所 で そ の 手 続 き を す る こ と は で き な い と さ れ る 。 な ぜ な ら 、 性 転 換 法 が 原 則 と し て ド イ ツ 法 を 属 人 法 と す る 者 に 請 求 権 限 を 限 定 し て い る か ら で あ る 。 外 国 人 の 性 別 の 変 更 は 、 そ の 本 国 に お い て す べ き で あ り 、 ド イ ツ 裁 判 所 に そ の 管 轄 は な い と す る 立 法 趣 旨 に 賛 同 し て い る よ う で あ る 。   む し ろ 、 問 題 が あ る と 考 え ら れ て い る の は 、 本 国 に 性 別 の 変 更 手 続 が な い よ う な 外 国 人 に つ い て で あ る 。 た と え ば 、   (四一六九)

(6)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五二 同志社法学   六〇巻七号 本 国 に 性 別 の 変 更 手 続 が な い よ う な 外 国 人 が 女 性 と し て 本 国 で 身 分 登 録 さ れ て い る が 、 他 国 で 性 別 適 合 手 術 を 受 け 、 男 性 と し て 社 会 生 活 を 送 り 、 ド イ ツ 人 女 性 と ド イ ツ で 婚 姻 し よ う と し た 場 合 で あ る 。 こ の よ う な 場 合 、 ド イ ツ 国 際 私 法 上 婚 姻 の 実 質 的 成 立 要 件 に つ い て は 当 事 者 の 本 国 法 が 配 分 的 に 適 用 さ れ 、 当 該 外 国 人 は 本 国 法 上 な お も 女 性 と 扱 わ れ る こ と か ら 、 同 性 婚 を 認 め な い ド イ ツ で は 婚 姻 す る こ と が で き な い こ と に な る 。 当 該 外 国 人 は 、 本 国 で は 当 然 の こ と な が ら 性 別 変 更 手 続 を す る こ と は 不 可 能 で あ る し 、 性 転 換 法 八 条 一 項 一 号 及 び 一 条 一 項 一 号 に よ り ド イ ツ で の 性 別 変 更 の た め の 裁 判 の 請 求 権 限 も 有 さ な い 。 学 説 に お い て は 、 こ の よ う な 場 合 に は 公 序 に よ り 当 該 外 国 人 の 本 国 法 の 適 用 を 排 斥 し 、 婚 姻 の 成 立 を 認 め る べ き で あ る と 有 力 に 主 張 さ れ て い る ( 19) 。 ⑶   違 憲 決 定 前 の 裁 判 例 ( 20)   性 別 の 帰 属 の 問 題 を 当 事 者 の 属 人 法 に 依 拠 さ せ る こ と に 関 し て は 、 裁 判 例 は 一 致 し て い る ( 21) 。 性 別 適 合 手 術 を 受 け た 外 国 人 の 本 国 法 が 性 別 の 変 更 を 認 め な い 場 合 に つ い て は 、 公 序 則 を 発 動 し 、 婚 姻 の 成 立 を 認 め た 裁 判 例 も 一 件 あ る ( 22) 。 し か し 、 本 国 法 上 性 別 の 変 更 が 認 め ら れ な い 以 上 、 性 別 は 出 生 時 に 登 録 さ れ た 性 別 の ま ま で あ り 、 当 事 者 ら の 婚 姻 は 同 性 婚 と な る と し て 、 婚 姻 成 立 を 認 め な か っ た 裁 判 例 も 散 見 さ れ る ( 23) 。 三   連邦憲法裁判所二〇〇六年違憲決定 ⑴   規 範 統 制 手 続   こ の よ う な な か 、 二 〇 〇 三 年 一 二 月 八 日 に バ イ エ ル ン 高 等 裁 判 所 ( 24) が 、 そ し て 二 〇 〇 四 年 一 一 月 一 二 日 に フ ラ ン ク フ ル   (四一七〇)

(7)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五三 同志社法学   六〇巻七号 ト 高 等 裁 判 所 ( 25) が 、 そ れ ぞ れ 本 国 で 性 別 変 更 手 続 が 不 可 能 な タ イ 人 と エ チ オ ピ ア 人 が 関 わ る 事 件 で あ っ た が 、 性 転 換 法 八 条 一 項 一 号 及 び こ れ に よ り 準 用 さ れ る 一 条 一 項 一 号 に よ り 、 性 別 確 認 手 続 の 請 求 権 限 を ド イ ツ 法 を 属 人 法 と す る 者 に 限 定 す る こ と は 、 基 本 法 三 条 の 平 等 原 則 に 反 す る 可 能 性 が あ る と し て 、 規 範 統 制 手 続 に 付 し 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 判 断 を 仰 い だ 。   内 務 省 は 、 性 転 換 法 に お け る 請 求 権 限 の 限 定 は 合 憲 で あ る と 一 貫 し て 主 張 し て い た ( 26) 。 そ の 根 拠 と し て は 、 外 国 人 の 身 分 登 録 の 変 更 は 公 的 利 益 と 関 わ る も の で あ り 、 そ の 国 の 法 秩 序 に 委 ね る べ き で あ る こ と や 、 本 国 と は 異 な る 性 別 や 名 を ド イ ツ で 認 め る と 同 一 人 物 と し て 本 国 で 取 り 扱 わ れ ず 、 実 務 上 困 難 な 問 題 が 発 生 し 、 法 的 安 定 性 と 法 的 明 確 性 の 観 点 か ら 当 事 者 の た め に こ の よ う な 事 態 は 回 避 す べ き で あ る こ と 、 そ し て 、 性 別 や 名 へ の 本 国 法 の 適 用 は 民 法 施 行 法 六 条 の 公 序 条 項 の 適 用 が 考 え ら れ な い ほ ど 原 則 的 な も の で あ る こ と な ど を あ げ て い た 。 ⑵   マ ッ ク ス プ ラ ン ク 研 究 所 の 答 申   連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 こ の 問 題 の 結 論 を だ す に あ た り 、 マ ッ ク ス プ ラ ン ク 研 究 所 に 諮 問 し た 。 同 研 究 所 は 、 こ れ を 受 け て 欧 米 を 中 心 と し た 一 八 の 法 域 ( 27) 及 び E U 法 の 状 況 に つ い て 詳 細 な 調 査 を 行 い 、 最 終 的 に 問 題 と さ れ た 性 転 換 法 の 規 定 の 合 憲 性 に 疑 問 を 示 し た 。   研 究 所 の 調 査 に よ る と 、 調 査 対 象 と さ れ た 一 八 法 域 ほ ぼ す べ て で 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 に 関 す る 法 的 な 問 題 に 取 り 組 ま な け れ ば な ら な い 状 況 に あ っ た と い う 。 こ の う ち 、 純 国 内 的 な 性 別 変 更 に つ い て な お も 明 確 な 結 論 が 出 さ れ て い な い の は ポ ル ト ガ ル の み で あ っ た ( 28) 。 そ し て 、 調 査 さ れ た 一 八 法 域 中 、 性 別 変 更 を 認 め な い と い う 姿 勢 を 示 し て い る の は 唯 一 ア イ ル ラ ン ド の み で あ っ た ( 29) 。 こ の 二 国 を 除 き 、 立 法 ( 30) 、 判 例 ( 31) ま た は 行 政 実 務 ( 32) で 、 実 体 法 的 な 性 別 の 変 更 や 手 続 法 的 な 出 生   (四一七一)

(8)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五四 同志社法学   六〇巻七号 証 書 等 の 身 分 登 録 簿 上 の 性 別 の 記 載 の 変 更 が 認 め ら れ て い る 。   で は 、 こ れ ら の 国 々 で は 自 国 民 以 外 の 者 の 性 別 の 変 更 に つ き 、 ど の よ う な 対 応 を し て い る の で あ ろ う か 。 ア   外国人を手続から排除する法域   ま ず 、 ス ウ ェ ー デ ン と カ ナ ダ の ケ ベ ッ ク 州 で は 、 自 国 籍 を 有 す る こ と を 性 別 の 変 更 手 続 の 要 件 の 一 つ と す る た め 、 外 国 籍 を 有 す る 者 が 性 別 の 変 更 手 続 を す る こ と は で き な い ( 33) 。 イ   外国人にも手続を認める法域   こ れ に 対 し て 、 オ ラ ン ダ で は 、 一 九 八 五 年 の 民 法 改 正 で 出 生 証 書 中 の 性 別 と 名 の 変 更 に 関 す る 規 定 が 挿 入 さ れ た が 、 こ れ に よ る と 、 申 立 時 点 ま で オ ラ ン ダ に 一 年 以 上 住 所 を 有 し 、 か つ 、 有 効 な 滞 在 許 可 を 有 す れ ば 、 出 生 証 書 の 性 別 と 名 の 記 載 の 変 更 を 請 求 す る こ と が 可 能 で あ る ( 34) 。   フ ィ ン ラ ン ド で は 、 二 〇 〇 三 年 に 性 転 換 に 関 す る 特 別 法 が 施 行 さ れ た が 、 同 法 に よ る と 、 フ ィ ン ラ ン ド 国 民 ま た は フ ィ ン ラ ン ド に 居 住 し て い る 者 で あ れ ば 、 性 別 の 確 認 を 裁 判 所 に 請 求 す る こ と が 可 能 で あ る ( 35) 。 な お 、 フ ィ ン ラ ン ド 法 は 、 オ ラ ン ダ 法 と 異 な り 、 最 低 滞 在 期 間 を 要 件 と し て 定 め て い な い 。   判 例 に よ り 性 別 の 変 更 を 認 め る ス イ ス は 、 性 別 や 名 の 変 更 も 属 人 法 と し て 当 事 者 の 住 所 地 法 が 適 用 さ れ る 問 題 と 解 釈 さ れ て お り 、 ス イ ス に 住 所 を 有 す る 外 国 人 で あ れ ば 、 ス イ ス に お い て 性 別 の 変 更 確 認 訴 訟 を す る こ と が 可 能 で あ る と さ れ る ( 36) 。   イ タ リ ア で は 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 変 更 に 関 す る 特 別 法 を 一 九 八 二 年 に 制 定 し た が 、 同 法 で は そ の 適 用 を 自 国 民 に   (四一七二)

(9)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五五 同志社法学   六〇巻七号 の み 限 定 す る の か 、 そ れ と も 外 国 人 に も 認 め る か に つ い て は 規 定 さ れ て い な い 。 そ の た め 、 性 別 の 変 更 が 可 能 か 否 か は 、 一 般 原 則 に 立 ち 戻 り 、 当 事 者 の 属 人 法 で あ る 本 国 法 に よ る と 解 さ れ て い る ( 37) 。 し か し 、 本 国 法 が 性 別 の 変 更 に 関 す る 規 律 を 有 さ ず 、 あ る い は 性 別 の 変 更 を 禁 止 す る よ う な 場 合 に は 、 公 序 の 観 点 か ら イ タ リ ア 法 に よ り 性 別 の 変 更 を 認 め る べ き で あ る と い っ た 見 解 は 、 学 説 上 す で に 特 別 法 制 定 当 時 か ら 主 張 さ れ て い た ( 38) 。 二 〇 〇 〇 年 に は 、 こ れ に 追 随 す る 形 で 、 ミ ラ ノ 第 一 審 裁 判 所 ( T rib un ale d i M ila no が 、ミ ラ ノ に 住 所 を 有 す る ペ ル ー 人 か ら の 性 別 の 変 更 が 請 求 さ れ た 事 件 に お い て 、 ペ ル ー 法 上 性 別 の 変 更 の 可 否 や そ れ に 関 す る 規 定 の 有 無 は 不 明 で あ る が 、 当 事 者 の 本 国 法 が 性 別 の 変 更 に 関 す る 規 定 を 有 さ ず 、 ま た は こ れ を 認 め な い よ う な 場 合 に は 、 本 国 法 は 適 用 せ ず 、 イ タ リ ア 法 を 優 先 す べ き で あ る と 判 示 し 、 当 該 請 求 を 認 め て い る ( 39) 。   一 九 九 二 年 の 破 棄 院 判 決 で 自 国 民 の 性 別 の 変 更 を 許 容 す る に 至 っ た フ ラ ン ス ( 40) で も 、 一 九 九 四 年 の パ リ 控 訴 院 判 決 ( 41) で 、 フ ラ ン ス で の 身 分 登 録 の 性 別 表 記 の 訂 正 を 申 し 立 て た ア ル ゼ ン チ ン 人 に つ い て 、 ア ル ゼ ン チ ン 法 に は 性 別 の 変 更 に 関 す る 規 律 が な く 、 同 法 を 適 用 す る こ と は フ ラ ン ス の 公 序 に 反 す る と し て 、 同 法 を 適 用 せ ず 、 フ ラ ン ス で の 性 別 の 変 更 を 認 め た 。   オ ー ス ト リ ア で は 、 連 邦 内 務 省 の 一 九 八 三 年 の 通 達 に よ り 、 出 生 登 録 簿 上 の 性 別 の 変 更 や 名 の 変 更 が 実 務 上 可 能 と な っ た ( 42) 。 出 生 登 録 は オ ー ス ト リ ア 国 籍 を 有 す る 者 に 加 え 、 オ ー ス ト リ ア で 出 生 し た 外 国 籍 の 者 も 対 象 と さ れ る 。 連 邦 内 務 省 の 見 解 に よ れ ば 、 外 国 人 の 性 別 変 更 に つ い て は 原 則 と し て そ の 本 国 法 を 適 用 し て 検 討 す る よ う で あ る が 、 オ ー ス ト リ ア で 出 生 登 録 さ れ て い る 外 国 人 に つ い て そ の 本 国 法 が 性 別 変 更 を 認 め な い よ う な 場 合 に は 、 オ ー ス ト リ ア の 公 序 に 反 す る と し て 外 国 法 の 適 用 を 排 除 し 、 性 別 変 更 手 続 を す る と の こ と で あ る ( 43) 。 さ ら に 、 オ ー ス ト リ ア で 出 生 登 録 さ れ て い な い タ イ 人 ( 女 性 へ の 性 別 適 合 手 術 を 受 け て い る ) と オ ー ス ト リ ア 人 男 性 と の 婚 姻 申 請 に つ い て 、 オ ー ス ト リ ア 行 政 裁 判 所 は 、   (四一七三)

(10)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五六 同志社法学   六〇巻七号 性 別 の 変 更 を 認 め な い タ イ 法 を 適 用 し て 婚 姻 の 成 立 を 認 め な い こ と は オ ー ス ト リ ア の 公 序 に 反 す る と し て 、 タ イ 法 の 適 用 を 排 除 し 、 婚 姻 の 成 立 を 認 め た ( 44) 。   米 国 で は 、 約 半 分 に あ た る 二 五 州 が 性 別 変 更 の た め の 登 録 等 の 変 更 の た め の 明 文 の 規 定 を 有 し て お り 、 残 り の 半 分 の 州 は 一 般 的 な 出 生 証 書 等 の 変 更 手 続 規 定 を 性 別 の 変 更 に も 類 推 適 用 し 対 処 し て い る ( 45) 。 つ ま り 、 米 国 で は 、 性 別 の 変 更 に 関 し て こ れ を 実 体 法 的 に 確 認 す る と い っ た 手 続 は な く 、 各 州 が 管 理 す る 出 生 証 書 等 の 登 録 の 記 載 変 更 を 裁 判 所 ま た は 直 接 行 政 機 関 に 請 求 す る 形 式 と な っ て い る 。 で は 、 た と え ば X が A 州 で 出 生 登 録 さ れ 、 そ の 後 B 州 に 居 住 し て い る 場 合 、 B 州 で 性 別 の 変 更 手 続 は で き る だ ろ う か 。 こ の 点 、 こ れ を 認 め る 州 も あ れ ば 、 B 州 に は A 州 に 対 し そ の 登 録 を 変 更 す る こ と を 命 じ る 権 限 は な い と し て こ れ を 認 め な い 州 も あ る よ う で あ る ( 46) 。 後 者 の 立 場 を と る と し て も 、 X が B 州 で 求 め て い る の は 、 A 州 で の 出 生 登 録 簿 や 出 生 証 書 の 記 載 の 変 更 で は な く 、 B 州 で の 性 別 の 確 認 に す ぎ ず 、 B 州 で は そ の よ う な 手 続 に 関 す る 規 定 は な い け れ ど も 、 エ ク ィ テ ィ に 基 づ き そ の 性 別 の 確 認 と 名 の 変 更 を 認 め る こ と が で き る と し た メ リ ー ラ ン ド 州 控 訴 裁 判 所 二 〇 〇 三 年 二 月 一 一 日 判 決 が あ る ( 47) 。   そ の 他 の 法 域 で も 、 特 に 外 国 人 に 性 別 変 更 手 続 を 制 限 す る よ う な 規 律 は な い よ う で あ る 。 前 述 の 米 国 や デ ン マ ー ク ( 48) の よ う に 、 性 別 の 変 更 と い う 問 題 の 対 処 が 登 録 法 や 氏 名 法 の 規 定 を 活 用 す る こ と で な さ れ て き た 法 域 で は 、 そ の 地 に 登 録 が あ る こ と を 前 提 と し て 手 続 が 考 え ら れ て お り 、 そ の 地 に 登 録 が な い 者 に は 手 続 へ の 途 が 閉 ざ さ れ る 可 能 性 が あ る 。 し か し 、 こ れ は 国 籍 を 理 由 に 制 限 し て い る の で は な く 、 単 に 管 轄 が 欠 如 し て い る か ら に す ぎ な い と 研 究 所 は 評 価 す る ( 49) 。 ウ   研究所の結論 ( 50)   性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 変 更 は 、 ド イ ツ 性 転 換 法 が 施 行 さ れ た 二 〇 年 前 よ り 国 際 的 に 広 く 認 め ら れ る よ う に な っ た 。   (四一七四)

(11)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五七 同志社法学   六〇巻七号 立 法 者 は 、 性 転 換 法 の 立 法 時 に 、 性 別 変 更 の み を 目 的 に 外 国 人 が ド イ ツ を 訪 れ る と い う い わ ゆ る 性 転 換 ツ ア ー を 危 惧 し た と 思 わ れ る が 、 そ の よ う な こ と は 今 日 で は 考 え ら れ な い 状 況 と な っ て い る 。 こ の よ う な 観 点 か ら ド イ ツ 国 民 と ド イ ツ 法 を 属 人 法 と す る 者 の み に 性 別 確 認 手 続 き を 限 定 す る こ と は 、 も は や そ の 根 拠 を 失 っ て い る 。   ま た 、 立 法 者 は 跛 行 的 な 法 律 関 係 の 発 生 の 回 避 も 重 視 し た が 、 多 く の 国 で 性 別 の 変 更 が 認 め ら れ る よ う に な っ た 以 上 、 請 求 権 限 の 制 限 を こ の 理 由 で 正 当 化 す る こ と は で き な い 。 す で に 隣 国 の 一 部 で は 、 こ の 問 題 に つ い て 本 国 法 主 義 が 放 棄 さ れ て お り 、 ド イ ツ の み が 本 国 法 主 義 を 維 持 し た と こ ろ で 跛 行 的 法 律 関 係 の 発 生 を 回 避 す る こ と は で き ず 、 性 別 の 変 更 に 関 す る 外 国 裁 判 の 承 認 を 広 く 認 め る こ と に よ っ て の み 跛 行 的 法 律 関 係 は 回 避 す る こ と が で き る 。   以 上 の よ う な 見 地 か ら 、 研 究 所 は 、 次 の 三 つ の 改 正 案 を 提 示 す る 。   第 一 案 は 、 双 方 的 抵 触 規 定 を 新 設 す る 案 で あ る 。 立 法 者 は 、 外 国 人 の 身 分 に 関 す る 事 柄 に つ い て は 本 来 そ の 本 国 で 扱 わ れ る べ き で あ る と の 見 解 か ら 、 ド イ ツ 国 民 と ド イ ツ 法 を 属 人 法 と す る 者 を 請 求 権 者 と し た 。 し か し 、 そ れ は 、 性 別 と 名 の 変 更 を そ の 者 の 本 国 法 に 依 拠 さ せ る と い っ た 双 方 的 抵 触 規 則 と す る こ と に よ っ て も 可 能 で あ る 。 研 究 所 の 見 解 に よ れ ば 、 性 転 換 法 八 条 一 項 一 号 及 び 一 条 一 項 一 号 は 外 国 実 質 法 を 指 定 し な い こ と か ら 抵 触 規 則 と は 言 え ず 、 単 に 請 求 権 限 を 定 め て い る に す ぎ な い 。 そ の た め 、 民 法 施 行 法 六 条 の 公 序 則 の 適 用 は 不 可 能 で あ る 。 し か し 、 こ れ ら の 規 定 を 双 方 的 抵 触 規 定 に 改 め れ ば 、 準 拠 外 国 法 が 性 別 の 変 更 を 認 め な い よ う な 場 合 に は 、 公 序 則 を 発 動 し 、 そ の 適 用 を 回 避 す る こ と が 可 能 と な る 。   第 二 案 は 、 国 籍 に 代 わ り 、 最 低 滞 在 期 間 を 要 件 化 す る 案 で あ る 。 性 転 換 法 立 法 時 に は 同 様 の 立 法 を 有 す る 国 は な お も 少 な か っ た 。 世 界 で 一 番 最 初 に 性 転 換 法 を 制 定 し た ス ウ ェ ー デ ン は 、 自 国 籍 を 有 す る こ と を 要 件 と す る こ と で い わ ゆ る 性 転 換 ツ ア ー を 回 避 す る こ と を 意 図 し 、 ド イ ツ の 立 法 者 も ま た こ れ に 倣 っ た と 思 わ れ る 。 立 法 者 が 危 惧 し た 性 転 換 ツ ア   (四一七五)

(12)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五八 同志社法学   六〇巻七号 ー を 回 避 す る に は 、 請 求 権 限 を 国 籍 に よ り 制 限 す る 手 法 を と る の で は な く 、 オ ラ ン ダ の よ う に 、 た と え ば 一 年 と い っ た 最 低 滞 在 期 間 を 定 め る 手 法 が よ い で あ ろ う 。 結 果 的 に 、 こ の 期 間 経 過 後 は 本 国 法 主 義 か ら 常 居 所 地 法 主 義 に 移 行 す る こ と に な ろ う 。   第 三 案 は 、 常 居 所 ま た は 住 所 を 連 結 点 と す る 案 で あ る 。   結 論 と し て 、 性 転 換 法 八 条 一 項 一 号 は 、 研 究 所 が 提 案 す る よ う な 規 律 方 法 が 他 に あ る に も か か わ ら ず 、 ド イ ツ 人 と ド イ ツ 国 内 に 居 住 す る 外 国 人 と を 同 等 に 扱 っ て い な い 。 こ の 不 等 な 取 扱 い に は 合 理 的 な 理 由 が 認 め ら れ な い 。 す な わ ち 、 同 規 定 は 、 自 認 す る 性 別 で 差 別 さ れ ず に ド イ ツ で 日 常 生 活 を 送 る 可 能 性 を 奪 う も の で あ り 、 憲 法 上 保 護 さ れ る 人 格 の 自 由 な 発 展 ( 基 本 法 二 条 一 項 )、 人 間 の 尊 厳 ( 同 一 条 一 項 ) の 侵 害 で あ り 、 婚 姻 の 自 由 ( 同 六 条 一 項 ) も 事 実 上 否 定 す る こ と に な る 。 そ し て こ れ は 、 欧 州 人 権 条 約 八 条 と 一 二 条 に も 違 反 す る 。 国 際 的 な 動 向 や 欧 州 人 権 裁 判 所 の 判 例 ( 51) か ら す れ ば 、 第 一 案 よ り も 、 第 三 案 を 選 択 し 、 場 合 に よ っ て は 最 低 滞 在 期 間 の 要 件 な ど を 加 味 す る ほ う が よ い で あ ろ う 、 と し め く く ら れ て い る 。 ⑶   違 憲 決 定 要 旨 ( 52)   連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 二 〇 〇 六 年 七 月 一 八 日 決 定 で 、 申 請 権 限 を 限 定 す る 性 転 換 法 八 条 一 項 一 号 が 準 用 す る 一 条 一 項 一 号 を 違 憲 で あ る と 判 断 し た 。 そ の 理 由 を 要 約 し て 紹 介 す る こ と に し よ う 。   ま ず 、 立 法 者 は 、 性 転 換 法 一 条 一 項 一 号 を 公 序 則 の 介 入 の 可 能 性 の あ る 抵 触 規 定 に し な い こ と を 意 図 し た わ け で あ る が 、 そ の 結 果 、 ド イ ツ に 合 法 的 に 一 時 的 で な く 滞 在 し て い る 外 国 籍 の 性 同 一 性 障 害 者 に そ の 属 人 法 を 例 外 な く 適 用 す る こ と に な る 。 こ の 例 外 の な い 本 国 法 の 適 用 は 、当 該 法 に 性 別 や 名 の 変 更 に 関 す る ド イ ツ 法 と 同 様 の 規 定 が な い 場 合 に は 、   (四一七六)

(13)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一五九 同志社法学   六〇巻七号 ド イ ツ 人 や ド イ ツ 法 を 属 人 法 と す る 者 と 比 し て 、 当 該 外 国 人 を 不 利 に 扱 い 違 憲 で あ る 。   身 分 に 関 わ る 事 柄 に つ い て は ド イ ツ で は 確 か に 本 国 法 が 妥 当 す る 領 域 と さ れ る が 、 登 録 パ ー ト ナ ー シ ッ プ に つ い て は 、 本 国 法 が ド イ ツ 法 の よ う に こ れ を 認 め る 規 定 を 有 さ な い こ と を 想 定 し 、 ド イ ツ 法 が 適 用 さ れ る と い う こ と を 定 め て い る 。 こ れ は 、 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 変 更 に つ い て も 同 様 で あ る 。   ま た 、 立 法 者 は 請 求 権 限 を 限 定 す る こ と で 跛 行 的 法 律 関 係 の 発 生 を 回 避 し よ う と し た が 、 こ の よ う な 理 由 で 当 事 者 の 基 本 権 を 侵 害 す る よ う な 規 律 が 正 当 化 さ れ る わ け で は な い 。 跛 行 的 な 法 律 関 係 は 、 今 や よ り 多 く の 国 が 厳 格 な 本 国 法 主 義 の 適 用 か ら 距 離 を と ろ う と し て い る こ と に よ っ て も 生 じ る 。 跛 行 的 法 律 関 係 に よ る 当 事 者 へ の 不 利 益 は 、 少 な く と も ド イ ツ に お い て 彼 ら が 自 認 す る 性 で 法 的 に も 認 め ら れ 生 き て い く こ と と 比 較 し て 当 事 者 自 身 が 判 断 す べ き 事 柄 で あ る 。   連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 以 上 の よ う に 述 べ 、 性 転 換 法 一 条 一 項 一 号 が 違 憲 で あ る と 判 断 し た 。 し か し な が ら 、 本 決 定 に お い て 当 該 規 定 を 無 効 と は 宣 言 し て い な い 。 違 憲 状 態 を 回 避 す る た め の 方 法 と し て は い く つ か あ り 、 ど れ を 選 択 す る か は 立 法 府 に 委 ね ら れ て い る と し 、 二 〇 〇 七 年 六 月 三 〇 日 ま で に 憲 法 に 合 致 す る 規 定 を 制 定 す る こ と が 立 法 府 に 課 さ れ た 。 も っ と も 、 採 り 得 る 方 法 と し て 次 の 二 つ が 提 示 さ れ た 。   第 一 案 は 、﹁ 名 の 変 更 に 関 す る 権 利 及 び 性 別 の 変 更 に 関 す る 権 利 に つ い て 請 求 者 が 属 す る 国 の 法 を 適 用 す る ﹂ と い っ た 双 方 的 抵 触 規 定 に 性 転 換 法 一 条 一 項 一 号 を 変 更 な い し は 国 際 私 法 典 ( 民 法 施 行 法 ) に 取 り 込 む 方 法 で あ る 。 こ の 方 法 を 採 用 し た 場 合 、 本 国 法 上 同 様 の 権 利 が 認 め ら れ な い 外 国 籍 の 性 転 換 者 に つ い て は 、 民 法 施 行 法 六 条 が 発 動 さ れ る 、 と 明 言 し て い る 点 が 注 目 さ れ る 。 第 二 案 は 、 請 求 権 限 を 認 め る た め の 合 法 的 な 滞 在 期 間 を 定 め る こ と に よ り 、 性 転 換 法 の 権 利 を 外 国 人 に も 認 め る 方 法 で あ る 。   本 決 定 に は 二 つ の 評 釈 が 公 刊 さ れ て い る 。 R ot h は 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 第 二 案 は 、 一 時 的 で な い 、 と か 、 違 法 な 滞 在   (四一七七)

(14)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六〇 同志社法学   六〇巻七号 で な い 外 国 人 を 念 頭 に お い て い る が 、 基 本 的 に 締 約 国 で 暮 ら す す べ て の 者 は 欧 州 人 権 条 約 の 保 護 下 に あ る の で 、 抽 象 的 な 制 限 は な お も こ の 観 点 か ら 問 題 が あ る と 指 摘 し 、 第 一 案 に 賛 成 す る ( 53) 。 他 方 、 R öt he l は 、 第 一 案 は 性 別 変 更 の 承 認 を 裁 判 官 の 公 序 則 発 動 に よ る 実 現 と い う 法 的 に 不 安 定 な も の に 委 ね る こ と に 問 題 が あ る と 指 摘 し 、 原 則 的 な 本 国 法 主 義 と と も に 補 充 的 に 常 居 所 地 法 で あ る ド イ ツ 法 を 適 用 す る と い う 折 衷 的 な 方 法 を 提 案 し て い る ( 54) 。 ⑷   改 正 法   そ の 後 性 転 法 の 改 正 に 関 す る 議 論 が 公 に な さ れ る こ と が な い ま ま 、 二 〇 〇 七 年 一 月 三 〇 日 の 連 邦 議 会 で 立 法 案 が 提 出 さ れ て い る ( 55) 。 そ こ で は 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 が 提 示 し た 第 二 案 を 選 択 し た と だ け で そ れ 以 上 理 由 は 付 さ ず 、 次 の よ う な 規 定 が 提 案 さ れ た ( 56) 。 性転換法一条一項一号 「 そ の 者 が 基 本 法 の 意 味 に お け る ド イ ツ 人 で あ る と き、 又 は そ の 者 が 外 国 人 と し て 一 年 以 上 合 法 的 に ド イ ツ に 滞 在 し て い る 場 合 に お いて、その本国に同等の規定がないとき」   そ し て そ の 後 突 如 と し て 、 内 務 委 員 会 の 決 定 で 、 性 転 換 法 の 改 正 も 旅 券 法 の 改 正 と 同 時 に 行 わ れ る こ と に な り 、 下 記 の よ う な 性 転 換 法 の 改 正 案 が 含 め ら れ 、 二 〇 〇 七 年 五 月 二 三 日 に 連 邦 議 会 で 提 案 さ れ た ( 57) 。   (四一七八)

(15)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六一 同志社法学   六〇巻七号 性転換法一条一項三号   「その者が、  a)  基本法の意味におけるドイツ人であるとき、           b)  無国籍もしくは祖国のない外国人でその常居所を国内に有するとき           c)  庇護権者または外国の難民でその住所を国内に有するとき、又は           d)  本国法に本法と同等の規定がない外国人が             aa)  無期限の滞在権を有するとき、もしくは             bb)  延長可能な滞在許可を有し、かつ、長期間にわたり( dauerhaft )合法的に国内に滞在しているとき」   こ れ が 承 認 さ れ ( 58) 、 二 〇 〇 七 年 七 月 二 〇 日 に 成 立 ( 同 年 一 一 月 一 日 施 行 ) し て い る ( 59) 。 ⑸   小 括   請 求 権 限 に 関 す る 新 規 定 は 、 二 〇 〇 七 年 一 月 三 〇 日 の 連 邦 議 会 に 提 案 さ れ た 案 に 則 っ た も の と い え る 。 そ う す る と 、 そ れ が 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 第 二 案 を 採 用 し た と 述 べ ら れ て い る こ と か ら 、 新 規 定 も こ の 第 二 案 が 基 礎 と な っ て い る こ と に な ろ う 。 し か し 、 新 規 定 が 第 二 案 を 採 用 し た も の と 評 価 す る こ と は 難 し い の で は な い だ ろ う か 。   連 邦 憲 法 裁 判 所 決 定 で は 明 確 に は 述 べ ら れ て い な い が 、 こ の 第 二 案 は 、 マ ッ ク ス プ ラ ン ク 研 究 所 の 第 二 案 を ほ ぼ そ の ま ま 採 用 し た も の で あ る よ う に 思 わ れ る 。 研 究 所 は 、 第 一 案 と し て 本 国 法 主 義 を と っ た 双 方 的 抵 触 規 定 を 提 案 し た 。 し か し 、 第 二 案 と し て 、 第 一 案 よ り も さ ら に 一 歩 進 め 、 本 国 法 主 義 を 放 棄 し 、 本 国 法 上 性 別 の 変 更 が 認 め ら れ な い 外 国 人 だ け な く 、 一 定 期 間 ド イ ツ に 滞 在 し て い る 外 国 人 す べ て に ド イ ツ で の ド イ ツ 法 に よ る 性 別 変 更 手 続 を 可 能 に す る 案 を 提   (四一七九)

(16)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六二 同志社法学   六〇巻七号 案 し た の で あ る 。   と こ ろ が 、 新 規 定 に 目 を 転 じ れ ば 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 第 一 案 よ り も 後 退 し て い る よ う に も 思 わ れ る 。 新 規 定 で は 、 性 転 換 法 一 条 一 項 一 号 及 び 八 条 一 項 一 号 を 基 本 的 に そ の ま ま 維 持 し て い る か ら で あ る 。 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 違 憲 決 定 で は 、 ド イ ツ 法 の 適 用 の み を 命 ず る 性 転 換 法 一 条 一 項 一 号 及 び 八 条 一 項 一 号 は 抵 触 規 定 で は な い こ と か ら 、 民 法 施 行 法 六 条 の 公 序 則 を 適 用 す る 余 地 は な く 、 そ の 結 果 、 本 国 で 性 別 変 更 手 続 を す る こ と が で き な い 外 国 人 を 不 当 に 害 す る と 判 断 さ れ た 。 新 規 定 で は 、 こ の 問 題 を 回 避 す る た め だ け に 、﹁ 本 法 と 同 等 の 規 定 が 本 国 法 に な い ﹂ 場 合 に 滞 在 許 可 や 滞 在 期 間 と い う 要 件 を 加 味 し て 一 部 の 外 国 人 に 門 戸 を 広 げ る と い う 方 法 を と っ た の で あ る 。 時 間 を か け て 検 討 し 抜 本 的 な 解 決 策 を 提 示 し た 研 究 所 や 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 改 正 案 に 比 べ 、 新 規 定 で と ら れ た 方 法 は 、 付 焼 刃 の よ う に 思 わ れ る 。   結 局 の と こ ろ 、 性 別 の 変 更 の 問 題 は 、 従 前 と 同 様 に 原 則 と し て 本 国 法 に よ っ て 判 断 す べ き で あ り 、 外 国 人 は そ の 本 国 で 手 続 を す べ き で あ る と い う 考 え 方 で あ る の は 確 か で あ ろ う 。   二 〇 〇 〇 年 に 民 事 上 の 身 分 に 関 す る 国 際 委 員 会 ( C om m iss io n In te rn at io na le d e l ’ É ta t C iv il 60)( で 採 択 さ れ た ﹁ 性 別 の 変 更 に 関 す る 決 定 の 承 認 に 関 す る 条 約 ( 61) ﹂ 一 条 は 、﹁ 締 約 国 の 管 轄 当 局 に よ る 性 別 の 変 更 に 関 す る 終 局 的 な 司 法 上 又 は 行 政 上 の 決 定 は 、 そ の 決 定 の 時 点 に お い て 当 事 者 が 当 該 国 の 国 籍 を 有 し 、 又 は 当 該 国 に 常 居 所 を 有 す る と き は 、 他 の 締 約 国 に お い て 承 認 さ れ る ﹂ 旨 規 定 す る ( 62) 。 つ ま り 、 こ の 条 約 で は 、 本 国 の み で な く 、 常 居 所 地 国 に お け る 性 別 の 変 更 手 続 も 可 能 で あ る こ と を 前 提 と し て い る 。 目 下 の と こ ろ 本 条 約 を 批 准 し た 国 は な く 発 効 す る に 至 っ て い な い が 、 オ ー ス ト リ ア 、 ギ リ シ ャ 、 オ ラ ン ダ に 加 え て ド イ ツ も こ れ に 署 名 し て い る 。 つ ま り 、 ド イ ツ は 、 当 事 者 の 本 国 で 下 さ れ た 決 定 の み な ら ず 、 常 居 所 地 国 で の 決 定 も 承 認 す る と い う 意 思 を こ の 委 員 会 で 表 明 し て い る の で あ る ( 63) 。 現 時 点 で は 、 ド イ ツ に お い て は 、 外 国 で な さ れ た 性 別 変 更 裁 判 に つ い て は F G G 一 六 条 a で 処 理 さ れ る 。 同 規 定 で は 、 当 該 外 国 裁 判 所 が ド イ ツ 法 の 観 点 か   (四一八〇)

(17)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六三 同志社法学   六〇巻七号 ら 管 轄 を 有 す る こ と を 承 認 要 件 の 一 つ と し て あ げ て い る が 、 現 行 法 の も と で 管 轄 を 有 す る の は 外 国 人 の 本 国 の み と い う こ と に な る 。 国 内 法 と 条 約 に よ り 課 さ れ 得 る 承 認 義 務 に は 大 き な 隔 た り が あ る ( 64) 。 性 転 換 法 の 改 正 は 、 こ の よ う な 観 点 か ら も 問 題 が 残 る も の で あ ろ う 。 四   検討   日 本 に お い て は 、 国 際 私 法 的 観 点 か ら 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 問 題 を 取 り 扱 う 文 献 は ま だ 数 少 な い が ( 65) 、 二 つ の ア プ ロ ー チ が 考 え ら れ る こ と が す で に 指 摘 さ れ て い る ( 66) 。   ま ず 一 方 は 、 性 別 が 通 常 公 的 な 身 分 登 録 簿 へ の 記 載 事 項 で あ り 、 公 的 権 利 義 務 ( 年 金 受 給 年 齢 、 徴 兵 制 な ど ) が 性 別 に 従 い 異 な っ て 定 め ら れ る こ と か ら 、 そ の 公 法 的 側 面 を 重 視 し 、 国 際 私 法 の 適 用 範 囲 外 の 問 題 と し て 捉 え る 考 え 方 で あ る 。 こ れ に よ れ ば 、 性 別 の 変 更 も 、 原 則 と し て 本 国 に お い て 本 国 法 の 要 件 の 下 で の み 可 能 で あ る こ と に な ろ う 。 他 方 、 性 別 は 国 際 的 私 法 関 係 で も 問 題 と な り う る の で 、 抵 触 法 的 処 理 が 可 能 で あ る と す る 考 え 方 が あ る ( 67) 。 当 事 者 の 自 己 決 定 権 が 性 に つ い て も 重 視 さ れ る と き は 、 性 の 決 定 が 私 法 上 の 問 題 と し て 検 討 さ れ る 余 地 が あ る と の 指 摘 も み ら れ る ( 68) 。   こ の よ う な 議 論 は 、 氏 名 に 関 す る 見 解 の 対 立 を 想 起 さ せ る 。 い わ ゆ る 氏 名 公 法 権 説 は 、 氏 名 が ﹁ 個 人 の 特 定 と い う 公 法 的 要 請 ( 69) ﹂ と 強 く 関 係 す る こ と を 根 拠 と し て 、 氏 名 の 問 題 を 国 際 私 法 の 適 用 範 囲 外 と 位 置 づ け る 。 こ の 学 説 に 対 す る 評 価 を 本 稿 で 述 べ る こ と は で き な い が 、 氏 名 公 法 権 説 の 指 摘 は 、 氏 名 の み な ら ず 、 性 別 に も 妥 当 す る も の で あ ろ う 。 な ぜ な ら 、 性 別 も 身 分 登 録 簿 に 記 載 さ れ 、 個 人 の 特 定 に 資 す る も の だ か ら で あ る 。   抵 触 法 的 処 理 が 妥 当 す る 領 域 か 否 か の 判 断 を な に を も っ て す る か と い う 問 に 答 え る に は 、 多 角 的 な 検 討 が 必 要 で あ   (四一八一)

(18)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六四 同志社法学   六〇巻七号 り 、 本 稿 に お い て そ の 答 え を 提 示 す る こ と は で き な い 。 し か し 、 い ず れ の 性 別 に 属 す る か と い う 問 題 は 、 そ の 者 が 自 ら の 属 す る 社 会 に お い て ど の よ う に 社 会 生 活 を 送 る こ と が で き る か と い う こ と と 根 本 的 に 関 わ っ て お り 、 法 的 に も 婚 姻 の 問 題 と 直 結 し て い る 。﹁ 個 人 の 特 定 と い う 公 法 的 要 請 ﹂ は 、 別 途 実 務 上 対 処 可 能 な 問 題 と も 思 わ れ 、 こ れ の み を 理 由 に し て 抵 触 法 的 処 理 を 排 除 す る こ と は 妥 当 で な い で あ ろ う 。   で は 、 性 別 の 変 更 手 続 の 国 際 裁 判 管 轄 は ど の よ う に し て 決 定 さ れ る べ き か 。 こ れ に つ い て は 、 当 事 者 の 本 国 と 住 所 地 に 管 轄 を 認 め る べ き で あ る と い う 見 解 が 主 張 さ れ て い る ( 70) 。 ま た 、 ま だ 日 本 で 特 例 法 が 成 立 し て お ら ず 性 別 変 更 が 不 可 能 な 時 点 で の も の で あ る が 、 性 別 変 更 に 否 定 的 な 態 度 を と る の な ら 外 国 人 当 事 者 の 国 籍 を 管 轄 原 因 と し て 日 本 の 裁 判 管 轄 権 を 否 定 し 、 逆 の 態 度 を と る の な ら 管 轄 原 因 と し て 当 事 者 の 住 所 地 を 考 え る こ と に 意 味 が あ る と 指 摘 す る も の が あ る ( 71) 。   性 別 が 公 的 身 分 登 録 簿 の 記 載 事 項 で あ る こ と か ら 考 え る と 、 そ れ を 管 理 す る 本 国 に 管 轄 が 認 め ら れ る べ き で あ ろ う 。 し か し 、 性 同 一 性 障 害 者 に と っ て い ず れ の 性 別 で 生 き て い く か と い う 問 題 が 、 当 事 者 が 社 会 生 活 を 送 る 場 所 と 非 常 に 密 接 な 関 係 が あ る こ と を 顧 慮 す る と 、 そ の 住 所 地 に も 管 轄 を 認 め て し か る べ き で あ る と 思 わ れ る 。 性 別 の 変 更 の 裁 判 の た め に は 、 特 例 法 の よ う に 、 性 同 一 性 障 害 で あ る こ と や 一 定 の 医 学 的 な 要 件 を み た し て い る こ と を 証 明 す る た め に 医 師 に よ る 診 断 ・ 鑑 定 を 必 要 と す る 法 制 が 多 い 。 し か も 日 本 の 場 合 に は 、 日 本 の 医 師 免 許 を 持 っ て い る 医 師 に よ る 診 断 書 が 必 要 で あ る と さ れ 、 海 外 に 生 活 の 本 拠 を 有 す る 場 合 、 こ れ ら を 取 得 す る に は 困 難 を 伴 う こ と も あ ろ う ( 72) 。 自 認 す る 性 別 で 生 き て い こ う と し て い る そ の 地 に お い て も そ の よ う な 手 続 へ の 道 が 開 か れ る べ き で あ る と 考 え る 。   で は 、 次 に そ の 準 拠 法 は ど の よ う に 考 え る べ き だ ろ う か 。 条 理 に よ り 、 本 国 法 あ る い は 住 所 地 法 ・ 常 居 所 地 法 と い っ た 準 拠 法 が 考 え ら れ う る と 指 摘 す る も の も あ れ ば ( 73) 、 法 例 二 三 条 ( 通 則 法 三 三 条 ) ま た は 条 理 で 本 国 法 主 義 を 導 き 出 す 見 解 も 主 張 さ れ て い る ( 74) 。 イ タ リ ア 、 オ ー ス ト リ ア 、 フ ラ ン ス 、 ド イ ツ で は 性 別 の 決 定 を い ず れ も 属 人 法 で あ る 本 国 法 に よ ら   (四一八二)

(19)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六五 同志社法学   六〇巻七号 し め て い る 。 人 自 身 に 関 わ る 問 題 で あ る か ら そ の 者 の 属 す る 法 に 依 拠 さ せ る べ き で あ る と 考 え ら れ て い る か ら で あ ろ う ( 75) 。   し か し 、 現 実 に は 外 国 法 上 の 性 別 の 取 扱 い の 変 更 手 続 を 日 本 裁 判 所 で す る こ と に は 様 々 な 問 題 が 生 じ る よ う に 思 わ れ る 。 マ ッ ク ス プ ラ ン ク 研 究 所 に よ る 比 較 法 調 査 か ら も 明 ら か な よ う に 、 日 本 の 特 例 法 と は 異 な り 、 公 簿 や 出 生 証 書 の 記 載 の 変 更 な い し は 訂 正 を 主 眼 と し た 規 定 し か 有 し て い な い 国 も あ る 。 た と え ば 、 韓 国 に お い て は 、 大 法 院 二 〇 〇 六 年 六 月 二 二 日 決 定 で 、 性 同 一 性 障 害 者 の 戸 籍 上 の 性 別 記 載 の 訂 正 を 認 め る 決 定 が 下 さ れ て い る ( 76) 。 こ の 決 定 に よ り 、 性 同 一 性 障 害 者 に 認 め ら れ た の は 、 戸 籍 記 載 の 当 時 か ら 存 在 す る 瑕 疵 を 是 正 す る た め の 規 定 で あ る 韓 国 戸 籍 法 一 二 〇 条 に よ る 戸 籍 訂 正 許 可 申 請 で あ っ た 。 周 知 の と お り 、 韓 国 で は そ の 後 戸 籍 制 度 が 廃 止 さ れ 、 家 族 関 係 登 録 簿 制 度 が 導 入 さ れ た た め 、 現 在 で は 、﹁ 家 族 関 係 の 登 録 等 に 関 す る 法 律 ﹂ 一 〇 四 条 に よ り 、 家 族 関 係 登 録 簿 の 訂 正 許 可 申 請 を す る こ と に な る ( 77) 。 性 同 一 性 障 害 者 で あ る 在 日 韓 国 人 が 日 本 で 性 別 の 取 扱 い の 変 更 手 続 を し よ う と す る 場 合 、 本 国 法 で あ る 韓 国 法 上 認 め ら れ て い る の は 実 体 的 な 性 別 の 確 認 で は な く 、 家 族 関 係 登 録 簿 の 訂 正 許 可 申 請 の み で あ る 。 日 本 裁 判 所 が 韓 国 の 公 簿 訂 正 を 許 可 す る こ と は で き ず 、 ど の よ う に 審 判 す べ き か が 問 題 と な ろ う 。   ま た 、 こ の 問 題 を 本 国 法 に 依 拠 さ せ た 場 合 、 公 序 と の 関 係 で も 問 題 が 生 じ る こ と が 考 え ら れ る 。 長 年 日 本 で 暮 ら す 外 国 人 の 本 国 法 が 性 別 の 変 更 を 認 め な い 場 合 に は 、 こ れ を 公 序 に よ り 排 斥 す る こ と で 、 日 本 裁 判 所 で の 性 別 の 変 更 を 認 め る こ と は で き よ う ( 78) 。 し か し 、 当 該 外 国 人 の 本 国 法 上 の 性 別 変 更 の 要 件 が 日 本 と 異 な る 場 合 に は ど う で あ ろ う か ( 79) 。 本 国 法 上 の 要 件 を 満 た し て い て も 、 日 本 特 例 法 の 要 件 を 満 た し て い な い 場 合 に 、 は た し て 日 本 裁 判 所 で 本 国 法 に 従 い 性 別 変 更 を 認 め る こ と が で き る だ ろ う か 。 た と え ば 特 例 法 上 は 成 年 年 齢 で あ る 二 〇 歳 を 申 立 要 件 と す る が 、 一 八 歳 で 申 立 て を 認 め る 法 が 本 国 法 で あ る 場 合 、 こ れ は 公 序 に 反 す る の で あ ろ う か ( 80) 。 ま た 特 例 法 上 の ﹁ 子 な し 要 件 ﹂ は 、 こ れ を 要 求 す る 国 が 比 較 法 的 に も な く 、 批 判 が 強 か っ た た め ( 81) 、 二 〇 〇 八 年 に ﹁ 未 成 年 の 子 が い な い と き ﹂ と い う よ う に 要 件 を 緩 和 す る 方   (四一八三)

(20)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六六 同志社法学   六〇巻七号 向 で 改 正 さ れ て い る 。 で は 、 本 国 法 上 子 な し 要 件 が 規 定 さ れ て い な い 者 に 未 成 年 の 子 が い る 場 合 、 こ れ も ま た 公 序 に 反 し て 認 め ら れ な い の で あ ろ う か ( 82) 。 多 種 多 様 な 外 国 法 上 の 要 件 が 公 序 に 反 す る か 否 か の 判 断 は 困 難 を 伴 う し 、 こ れ は 当 事 者 に と っ て も 望 ま し く な い で あ ろ う 。   こ の よ う に 考 え る と 、 そ も そ も こ の 問 題 を 本 国 法 に 依 拠 さ せ る こ と が 妥 当 か と い う 疑 念 が わ く ( 83) 。 特 例 法 は 、 ド イ ツ 性 転 換 法 と 異 な り 、 日 本 法 を 属 人 法 と す る 者 に 適 用 対 象 を 限 定 し て お ら ず 、 こ の 部 分 は 解 釈 に 委 ね ら れ て い る 。 そ れ な ら ば 、 特 例 法 の 対 象 を 日 本 人 の み に 限 定 せ ず 、 外 国 人 に も 広 げ 、 外 国 人 か ら 日 本 裁 判 所 に 性 別 の 取 扱 い に 関 す る 審 判 が 申 し 立 て ら れ た 場 合 に も 、 そ の 管 轄 が 認 め ら れ る と き に は 常 に 日 本 法 、 す な わ ち 特 例 法 を 適 用 す る と い う 方 法 も 考 え ら れ 得 る の で は な い だ ろ う か ( 84) 。 特 例 法 上 性 別 の 取 扱 い の 変 更 に あ た っ て は 、 医 師 の 診 断 が 常 に 必 要 と さ れ て お り 、 厳 格 な 手 続 の も と 判 断 さ れ る こ と か ら 、 こ れ が 悪 用 さ れ る お そ れ は 考 え 難 い 。   本 稿 冒 頭 で も 紹 介 し た が 、 立 法 関 係 者 の 解 説 に お い て 、 外 国 人 か ら 特 例 法 に 基 づ い て 性 別 の 取 扱 い の 変 更 の 審 判 の 請 求 が な さ れ た 場 合 の 問 題 と し て 以 下 の 四 つ が あ げ ら れ て い た 。 繰 り 返 し に な る が 、 も う 一 度 そ れ ら を 列 挙 す る 。    ①外国人の性別の取扱いの変更について国際裁判管轄権が我が国の裁判所にあるといえるか。    ②   仮に日本の裁判所に裁判管轄権が認められ得るとしたとしても、その場合の適用法規あるいは準拠法はどうなるか。    ③   我 が 国 に お い て 性 別 の 取 扱 い を 変 更 し た と し て も、 外 国 人 の 本 国 に お い て そ の 変 更 が 承 認 さ れ な い 場 合 に は、 国 際 的 に 性 別 の 取 扱いに齟齬を来たし、本人の同一性の識別に問題が生じ得る。    ④   本 国 に お い て 出 生 証 明 書 等 に 登 録 さ れ、 そ れ ら を 通 じ て 管 理 の 対 象 に な っ て い る 性 別 を 他 国 が 変 更 す る こ と は、 本 国 の 国 家 主 権 等を侵害することにならないか。   ま ず 、 ① に 関 し て は 、 前 述 の と お り 、 当 事 者 の 住 所 が 日 本 に 認 め ら れ れ ば 管 轄 を 肯 定 し て も よ い の で は な い だ ろ う か 。   (四一八四)

(21)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六七 同志社法学   六〇巻七号 ② に 関 し て も 、 前 述 の と お り 、 日 本 特 例 法 を 適 用 す る こ と に な る 。 ③ に つ い て は 、 起 こ り 得 る 深 刻 な 問 題 で あ る 。 ど の 程 度 の 国 々 が 日 本 で の 性 別 変 更 審 判 を 承 認 す る か ど う か は 現 時 点 で は 不 明 で あ る 。 し か し な が ら 、 ド イ ツ 連 邦 憲 法 裁 判 所 違 憲 決 定 で も 述 べ ら れ た よ う に 、 跛 行 的 法 律 関 係 を 回 避 す る た め に 日 本 で の 性 別 の 取 扱 い 変 更 の 手 続 か ら 外 国 人 を 排 除 す べ き で は な い 。 日 本 に 住 所 を 有 す る 外 国 人 が 場 合 に よ っ て は あ り 得 る 本 国 と 日 本 と の 性 別 の 取 り 扱 い の 齟 齬 を 甘 受 し て ま で 日 本 で 手 続 を 開 始 す る か ど う か は 、 当 事 者 の 判 断 に 委 ね る べ き で あ ろ う 。 し た が っ て 、 日 本 で の 裁 判 が 本 国 で 承 認 さ れ な い 可 能 性 が あ る こ と は 日 本 で の 手 続 を 開 始 す る 前 に 十 分 に 当 事 者 に 説 明 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 最 後 に ④ に 関 し て は 、 外 国 人 が 日 本 の 裁 判 で 変 更 で き る の は 、 本 国 が 発 行 す る 公 的 書 類 を 変 更 で は な く 、 あ く ま で も 外 国 人 登 録 原 票 や 運 転 免 許 証 、 保 険 証 な ど 日 本 で 発 行 さ れ る 公 的 書 類 の 記 載 事 項 の 変 更 で あ る 。 し た が っ て 、 本 国 の 国 家 主 権 を 侵 害 す る こ と に は な ら な い 。 五   おわりに   以 上 、 在 日 外 国 人 の 日 本 で の 性 別 変 更 の 可 能 性 に つ い て 論 じ て き た 。 私 見 と し て は 、 外 国 人 に も 日 本 に お い て 特 例 法 に よ り 性 別 の 取 扱 い の 変 更 を 可 能 と す べ き で あ る と 考 え る 。 本 稿 で 比 較 法 と し て と り あ げ た ド イ ツ の 改 正 法 で は 、 最 終 的 に は 採 用 さ れ な か っ た 結 論 で は あ る が 、 ド イ ツ 連 邦 憲 法 裁 判 所 が 提 示 し た 改 正 案 に 近 い も の で あ る 。 外 国 人 に 日 本 で の 性 別 の 取 扱 い の 変 更 の 道 を 開 く と 、 実 務 上 様 々 な 問 題 が 生 じ る こ と が 考 え ら れ 、 こ の 観 点 か ら の 批 判 も あ ろ う 。 し か し 、 特 例 法 は 、 性 同 一 性 障 害 者 が 受 け て い る 社 会 的 不 利 益 を 解 消 す る た め に 制 定 さ れ た 法 律 で あ る 。 こ の 立 法 趣 旨 か ら す れ ば 、 特 例 法 は 、 国 籍 を 問 わ ず 、 そ の 不 利 益 を 受 け て い る 者 す べ て を 対 象 と す べ き で あ る 。 在 日 外 国 人 に 特 例 法 上 の   (四一八五)

(22)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六八 同志社法学   六〇巻七号 恩 恵 を 与 え る こ と は 、 国 境 を 越 え た 人 の 移 動 が 激 し く な り 、 国 籍 所 属 国 で 暮 ら す 者 ば か り で な く な っ て い る 今 日 で は 重 要 で あ る と 思 わ れ る 。   本 稿 で 検 討 し た 問 題 の ほ か に も 、 性 同 一 性 障 害 者 の 名 の 変 更 や 本 国 ま た は 第 三 国 で な さ れ た 司 法 上 あ る い は 行 政 上 の 決 定 を ど の よ う に 取 り 扱 う か と い う 問 題 ( 85) な ど も あ る が 、 こ れ ら は ま た 別 の 機 会 に 検 討 す る こ と と し た い 。 ( 1)   自 見 武 士 ﹁ 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 い の 特 例 に 関 す る 法 律 の 概 要 ﹂ 民 月 五 九 巻 八 号 一 六 五 頁 ( 二 〇 〇 四 )。 ( 2)   自 見 ・ 前 掲 注 ( 1) 一 六 五 頁 。 も っ と も 、 性 同 一 性 障 害 は 、 比 較 的 歴 史 の 浅 い 疾 患 概 念 で 、 医 学 的 に 疾 患 と す べ き か ど う か に つ い て い ま だ 議 論 が あ る よ う で あ る ( 南 野 知 惠 子 監 ﹃︻ 解 説 ︼ 性 同 一 性 障 害 者 性 別 取 扱 特 例 法 ﹄ 七 二 頁 ( 日 本 加 除 出 版 、 二 〇 〇 四 )) 。 ( 3)   こ の 過 程 に 関 し て は 、 自 見 ・ 前 掲 注 ( 1) 一 六 五 頁 以 下 の ほ か 、 針 間 克 己 ﹁ 性 同 一 性 障 害 の 医 学 的 概 念 と 現 況 ﹂ 南 野 監 前 掲 注 ( 2) 一 六 頁 以 下 が 詳 し い 。 ( 4)   二 〇 〇 八 年 六 月 一 八 日 に 、 か つ て よ り 議 論 の あ っ た ﹁ 子 な し 要 件 ﹂ が 緩 和 さ れ 、﹁ 未 成 年 の 子 が い な い こ と ﹂ に 要 件 を 限 定 す る 改 正 法 が 公 布 さ れ て い る 。 ( 5)   婚 姻 当 事 者 の 一 方 が 性 同 一 性 障 害 者 で あ り 、 性 別 適 合 手 術 を 受 け て い る が 、 そ の 本 国 法 が 性 別 の 変 更 を 認 め な い よ う な 場 合 の 婚 姻 の 成 立 の 問 題 や 名 の 変 更 、 外 国 で な さ れ た 性 別 の 変 更 の 裁 判 の 取 扱 い な ど い ろ い ろ な 形 で 問 題 と な り 得 る 。 ( 6)   も っ と も 、 日 本 人 男 性 が 、 婚 姻 し た 相 手 方 で あ る フ ィ リ ピ ン 人 が 女 性 で あ る と 思 っ て い た と こ ろ 、 男 性 で あ っ た た め 、 婚 姻 無 効 で あ る と し て 、 戸 籍 法 一 一 三 条 に 従 い 戸 籍 訂 正 が 認 め ら れ た 事 件 が あ る ( 佐 賀 家 審 平 成 一 一 年 一 月 七 日 家 月 五 一 巻 六 号 七 一 頁 )。 ( 7)   G es et z üb er d ie Ä nd er un g de r V or na m e un d die F es ts te llu ng d er G es ch le ch ts zu ge hö rig ke it in b es on de re n F äll en v om 10 .S ep te m be r 1 98 0-T ra ns se xu ell en ge se tz ( B G B l I 1 98 0, 1 65 4 ) .  同 法 に 関 し て は 、 石 原 明 ﹁ 性 転 換 に 関 す る 西 ド イ ツ の 法 律 ― そ の 医 学 的 な ら び に 法 的 視 点 ﹂ 神 戸 学 院 法 学 一 三 巻 二 号 ( 一 九 八 二 ) 一 頁 以 下 、 大 島 俊 之 ﹃ 性 同 一 性 障 害 と 法 ﹄ 一 〇 三 頁 以 下 、 一 五 三 頁 以 下 ( 日 本 評 論 社 、 二 〇 〇 二 )、 渡 邉 泰 彦 ﹁ ド イ ツ 性 転 換 法 に つ い て ﹂ 戸 籍 七 五 一 号 一 頁 ( 二 〇 〇 三 ) な ど 参 照 。 ( 8)   日 本 に お け る 学 説 の 状 況 を 概 観 す る も の と し て 、 た と え ば 、 法 例 研 究 会 編 ﹃ 法 例 の 見 直 し に 関 す る 諸 問 題 ( 4)﹄︹ 中 西 康 ︺ 別 冊 N B L 八 九 号 八 六 頁 以 下 。   (四一八六)

(23)

国際私法的観点からみた性同一性障害者の性別の問題  一一六九 同志社法学   六〇巻七号 ( 9)   戸 籍 法 の 改 正 に よ る 対 応 と い う こ と も 可 能 で あ っ た が 、 戸 籍 が あ く ま で も 実 体 法 上 の 身 分 関 係 を 登 録 ・ 公 証 す る も の で あ る こ と か ら 、 戸 籍 の 続 柄 の 変 更 を 行 う た め に は 、 実 体 法 上 の 性 別 の 取 扱 い が 変 更 さ れ て い る こ と が 必 要 で あ る と 考 え ら れ 、 実 体 法 的 な 規 律 を す る 特 別 法 と し て 制 定 さ れ た ( 南 野 監 ・ 前 掲 注 ( 2) 九 八 頁 )。 ( 10)   自 見 ・ 前 掲 注 ( 1) 一 七 三 頁 ( 注 1)。 ( 11)   南 野 ・ 前 掲 注 ( 2) 九 七 頁 。 ( 12)   前 掲 注 ( 7) 参 照 。 ( 13)   一 九 八 二 年 に 他 の 性 別 に 属 す る こ と の 確 認 手 続 の 請 求 権 者 の 年 齢 を 満 二 五 歳 以 上 で あ る 旨 規 定 す る 八 条 一 項 一 号 が 、 一 九 九 三 年 に は 名 の 変 更 手 続 の 請 求 権 者 の 年 齢 を 同 様 に 満 二 五 歳 以 上 と す る 一 条 一 項 三 号 が 違 憲 で あ り 、 無 効 で あ る と 宣 言 さ れ て い る ( B V er fG , v. 16 . 3 . 1 98 2, B V er fG E 60 , 1 23 = N JW 19 82 , 2 06 1. ; B V er fG , v . 2 6. 1 . 1 99 3, B V er fG E 88 , 8 7f f.= N JW 19 93 , 1 51 7 ) 二 〇 〇 五 年 に は 、 性 転 換 法 一 条 に よ っ て 名 を 変 更 し た 者 が 婚 姻 し た 場 合 、 従 前 の 名 の 変 更 の 決 定 が 効 力 を 失 う と す る 七 条 一 項 三 号 の 規 定 が 違 憲 で あ る と 判 断 さ れ た ( B V er fG , v. 6. 1 2. 20 05 , B ve rfG E 11 5, 1 = F am R Z 20 06 , 1 82)。 そ し て 、 二 〇 〇 八 年 に は 、 性 別 帰 属 確 認 の 要 件 と し て ﹁ 婚 姻 を し て い な い こ と ﹂ を あ げ る 性 転 換 法 八 条 一 項 二 号 が 違 憲 で あ る と さ れ た ( B V er fG , v.2 7.5 .20 08 .  連 邦 憲 法 裁 判 所 の H P よ り 入 手 可 能 )。 一 九 八 二 年 違 憲 決 定 に つ い て は 、 石 原 明 ﹁ 性 転 換 法 の 年 齢 制 限 に 対 す る 違 憲 判 決 ― 西 ド イ ツ ― ﹂ 神 戸 学 院 法 学 一 三 巻 三 号 二 三 一 頁 ( 一 九 八 三 )、 二 〇 〇 五 年 、 二 〇 〇 六 年 及 び 二 〇 〇 八 年 違 憲 決 定 に つ い て は 、 渡 邉 泰 彦 ﹁ 憲 法 と 婚 姻 保 護 ― 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 変 更 要 件 を も と に ― ﹂ 同 法 六 〇 巻 七 号 三 四 八 頁 以 下 参 照 。 ( 14)   以 下 の ド イ ツ 性 転 換 法 の 訳 は 、 大 島 ・ 前 掲 注 ( 7) 一 五 三 頁 以 下 を 参 考 に し た 。 な お 、 八 条 一 項 二 号 も す で に 違 憲 に よ り 無 効 と 宣 言 さ れ て い る ( 前 掲 注 ( 13) 参 照 )。       第 一 条 ︹ 要 件 ︺ ① ト ラ ン ス セ ク シ ュ ア リ ズ ム 的 な 特 徴 に よ っ て 、 も は や 出 生 登 録 簿 に 記 載 さ れ た 性 に は 属 さ ず 他 方 の 性 に 属 し て お り 、 か つ 、 三 年 以 上 そ の 外 観 に 対 応 し た 生 活 を 余 儀 な く さ れ て い る 者 は 、 次 の 場 合 に は 、 申 立 て に よ っ て 、 裁 判 所 に よ る 名 の 変 更 を 求 め る こ と が で き る 。 す な わ ち 、           一   そ の 者 が 基 本 法 の い う 意 味 に お い て ド イ ツ 人 で あ る 場 合 、 ま た は そ の 者 が 、 本 法 の 施 行 地 域 内 に 居 所 を 有 す る 無 国 籍 者 も し く は 祖 国 を 失 っ た 外 国 人 で あ る 場 合 、 ま た は そ の 者 が 、 本 法 の 施 行 地 域 内 に 住 所 を 有 す る 庇 護 権 享 有 者 ( A sy lb er ec ht ig te r ) も し く は 外 国 の 難 民 で あ る 場 合 で あ っ て 、   (四一八七)

参照

関連したドキュメント

喫煙者のなかには,喫煙の有害性を熟知してい

﹂卵性隻胎卜二卵性隻胎トノ鑑別 ︵第一同報告︶

3 当社は、当社に登録された会員 ID 及びパスワードとの同一性を確認した場合、会員に

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

したがって,一般的に請求項に係る発明の進歩性を 論じる際には,

脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期等で、積極的な

いられる。ボディメカニクスとは、人間の骨格や