目次
Q1.基金制度のどの給付区分が分配金の対象となるのか ……… 1 Q2.分配金の特徴はなにか ……… 2 Q3.分配金はいつ支払われるのか ……… 3 Q4.分配金は何を基準にしてどのように計算されるのか .……… 4 Q5.分配金の算定基礎となる最低積立基準額とはどのようなものか ……… 5 Q6.他者と比較して分配金の水準が大きい方がいるがその理由はなにか. ……… 7 Q7.基金からの給付を退職金の内枠としている場合の留意点はなにか ………9 Q8.分配金の課税はどうなるのか ……… 11厚生年金基金残余財産の
分配金に係る Q&A
日本保温保冷工業厚生年金基金
1 【A1】 基金の給付区分は、国の厚生年金の一部を代行している「代行部分」と、基金独自の「上 乗部分」から構成されています。代行部分は、解散により国に返還され、解散後は国か ら年金が支給されますので、分配金の対象となるのは基金独自の上乗部分となります (図1参照)。 さらに上乗部分は「加算部分」と「基本上乗部分」に区分され、それぞれから分配金が 生じます。 残余財産(※)の水準によって分配金の水準が決まるため、残余財産の額によって分配 金が支払われることになります。(図2参照)。 (※)残余財産とは、解散時の年金資産から解散により国へ返還する資産(最低責任準備金) を引いたものです。 <図 1>分配金の対象となる給付区分 <図 2>残余財産のイメージ 分配金は残余財産を受給権者等(加入員、受給者、待期者)で按分することになるため、 残余財産の水準が小さい左図の場合は分配金が少なくなり、残余財産の水準が大きい右図 の場合は分配金が多くなります。 残余財産が小さいケース 残余財産が大きいケース
Q1.基金制度のどの給付区分が分配金の対象となるのか
代行部分 ②基本上乗部分 ①加算部分 =【分配金対象範囲】 ①加算部分 ②基本上乗部分 上乗部分2 【A2】 基本上乗部分の分配金の特徴 大半の方の基本上乗部分からの分配金は一般的な感覚として少額であるといえます。 しかし、個人毎に見ると加算部分の分配金を上回る方や、加入期間や報酬額等の条件 が同水準である別の方と比較して突出して大きい方がいることもあります(詳細に ついては Q6 をご参照下さい)。 加算部分の分配金の特徴 加算部分の給付が全額、脱退一時金や選択一時金として支払われている場合、加算部 分から分配金は生じません(「基本上乗部分」のみからの分配になります)。 加算部分の受給資格を満たさない加入員は加算部分から分配金は生じません(「基本 上乗部分」のみからの分配になります)。 例:脱退一時金の受給資格が加入3 年以上と定められているので、加入 3 年未満の方。 加入期間や報酬額等が同水準である場合、解散日時点で加入員か待期者かによって 大きな差が生じることがあります。待期者の分配金は年金の支給開始年齢までの期 間である待期期間に係る利息を加味する分、加入員の分配金よりも大きくなります。 加入員のうち、年金受給資格がある場合は無い場合より分配金が大きくなります。 例:年金の受給資格が加入20 年以上と定められている場合、加入 20 年と加入 19 年 11 月とを比較すると、加入年月数は 1 ヶ月しか変わりませんが、分配金に大きな差が生じ ることがあります。 加入員が仮に解散日に退職した場合に支払われる脱退一時金、選択一時金と分配金 を比較したときに、その大小は個々人によって異なることがあります。
Q2.
分配金の特徴はなにか
3 【A3】 国への返還額を計算するためには、国と基金それぞれが保有する膨大な年金記録が全 件一致している必要があり、一致しないデータについては調査及び整理を行うことか ら、返還額の確定には相当な期間を要しますが、皆様のご協力により記録整備につきま しては完了することが出来ました。 個々人の分配金は、解散により国に返還される代行部分について、国へ返還する資産額 が確定し、これを国へ支払った後に基金に残った資産である残余財産が確定しないと 金額が決まりません。 その、国へ返還する資産額確定のため、平成29年10月12日に「財産目録承認申 請」を厚生労働大臣あて申請し、平成29年11月28日付で承認をえて、最終分の責
任準備金相当額を平成29年12月18日に納付しました。
その為、分配金額の確定額計算や振り込み手続きを考慮しますと、平成30年2月末頃 にお支払できる予定です。 Q3.分配金はいつ支払われるのか4 【A4】 分配金の計算方法は基金規約に定められており、個々人の最低積立基準額と呼ばれ る金額に応じて計算されます。 残余財産の分配方法は、規約に基づき「公平分配」で行います。 残余財産の「公平分配」とは 公平分配とは、残余財産を加入員・受給権者(受給者・待期者)という分配金支払対 象者となる全員に対して、個々人の最低積立基準額の比率で分配する方法です。
Q4.
分配金は何を基準にしてどのように計算されるのか
5 【A5】 最低積立基準額とは、これまでの基金の運営において、基金が解散した時にこれまでの 加入期間に見合う受給権を保護するため基金の積立目標とされてきた金額です。 最低積立基準額は、解散までの加入期間に応じて発生している、または発生していると みなされる給付の総額をベースとして計算されます。 【最低積立基準額の大まかなイメージ】 最低積立基準額の計算は、受給権者等の状態(受給者・待期者・加入員)によって、以下 のように違いがあります。 受給者 その方が受給している年金が今後どの程度支払われるのかを、男女別に国が定める予定 死亡率を使用して計算し、解散した時点まで国が定める予定利率で割引いたものが最低積 立基準額です。今後受け取ることができる年金の受取総額を解散時点まで割引いたものと 同水準になります。 したがって、同じ年金額であっても、今後受け取る年金の回数が多いほど最低積立基準額 は大きくなります。 待期者 その方が年金の支給開始年齢に到達したときに支払われる年金額を見込みます。その年 金が支給開始後どの程度支払われるのかを、男女別に国が定める予定死亡率を使用して計 算し、解散した時点まで国が定める予定利率で割引いたものが最低積立基準額です。今後受 け取ることができる年金の受取総額を解散時点まで割引いたものと同水準になります。 したがって、同じ年金額・同じ支給開始年齢であっても、割引き期間が短いほど最低積立 基準額は大きくなります。例えば、支給開始年齢が60 歳の場合、60 歳に近づくほど大きく なります。 加入員(年金受給資格者) その方が解散日に退職した場合に支払われることとなる給付を見込みます。その給付が 規約に定める標準的な退職年齢から支払われると仮定した場合に、支給開始後どの程度支 払われるのかを、男女別に国が定める予定死亡率を使用して計算し、国が定める予定利率で 解散時点まで割引いたものが最低積立基準額です。
Q5. 分配金の算定基礎となる最低積立基準額とはどのようなものか
6 加入員(一時金受給資格者)
その方が解散日に退職した場合に支払われることとなる脱退一時金が、規約に定める標 準的な退職年齢で支払われると仮定した場合に、国が定める予定利率で解散時点まで割引 いたものが最低積立基準額です。
7 【A6】 以下の理由が考えられます。 ① 性別による差:女性が大きくなります。 ② 加入員と待期者による差:待期者が大きくなります。 ③ 独自給付による差:独自給付と呼ばれる給付が加算される方が大きくなります。 ④ 選択一時金を取得したかどうかの差 ①性別による差(基本上乗部分・加算部分共通) 分配金の計算の基礎となる最低積立基準額は平均余命を考慮した年金の受取総額と 考えられます。 平均余命は男性より女性の方が長く、同年齢の男女で比較した場合、女性の最低積立 基準額の方が大きくなり、分配金も大きくなります。 例えば65 歳の男女の平均余命はそれぞれ、男性 19 年、女性 24 年となり、この場合 女性の分配金の方が2~3 割程度大きくなります。 【基本上乗部分のみ】同年齢の男女であっても男性より女性の方が支給開始年齢が 早くなります。この場合、女性の方が年金の受け取り回数が多くなることから、分配 金も男性より大きくなります。 ②加入員と待期者による差(加算部分) 加入期間や報酬額等の条件はほぼ同じで、加入員と待期者の分配金を比較した場合、 待期者の分配金の方が大きくなります。 分配金の計算の基礎となる最低積立基準額は平均余命を考慮した年金の受取総額と 考えられますが、受取総額を考える上での年金額が加入員と待期者では異なります。 待期者の年金額は、現在年齢から年金の支給開始年齢までの間、規約に定める利息が 付利されますが、加入員には利息が付利されません。 例えば現在年齢が40 歳で支給開始年齢が 65 歳の待期者の場合、3%の利息が 25 年 間分付利された年金額に対して受取総額を考えます。 一方で加入員には利息が付利されないため、この場合、待期者と加入員では約2 倍差 が生じます。 加入員に利息が付利されないのは、この利息が「脱退して初めて実現するもの」であ るからです。 Q6.他者と比較して分配金の水準が大きい方がいるがその理由はなにか
8 ③独自給付による差(基本上乗部分) 基本上乗部分の分配金の水準が突出して大きい方がいます。これは「独自給付」と呼 ばれる給付が加算される方と加算されない方がいるからです。 独自給付が加算される方と加算されない方とを比較すると、基本上乗部分の分配金 に2 倍~10 倍程度の差が生じます。 独自給付には例えば以下(A)、(B)のような給付があります。 (A) 基金の設立事業所を退職後、基金の設立事業所以外の事業所に再就職した場合、 国では併給調整によって年金が停止される一方で基金では年金が支給される場 合があります。 (B) 厚生年金の被保険者期間が 25 年に満たない場合、国から年金が支払われません が基金からは年金が支払われます。 分配金の算定対象となる独自給付が加算されるかどうか、また加算される場合にど の程度加算されるのかについては、解散時の年齢、及び老齢厚生年金の支給開始年齢 によって決まります。65 歳から老齢厚生年金が支給される方については独自給付は 加算されません。 ④選択一時金を取得したかどうかの差(加算部分) 選択一時金を取得し加算部分が清算済みの方は、加算部分から分配金が支払われな いため、選択一時金を取得していない方と比較して分配金は少額になります。
9 【A7】 厚生年金基金の給付が退職金制度の内枠である事業所と、外枠である事業所がありま す。内枠であるか外枠であるかは、事業所ごとに定める退職金規程でご確認いただけま す。 外枠の場合は基金からの給付の多寡によらず事業主が支払う退職金額は変わりません が、内枠の場合、事業主が支払う退職金額は退職金規程に定める退職金の総額から厚生 年金基金の給付を控除した額になります。 退職金総額から控除する分配金と事業主が支払う退職金額 例えば、基金の給付のうち加算部分からの給付のみを内枠として退職金総額から控除 し、事業主が支払う退職金額を決定している事業所の場合、分配金についても加算部分 からの分配金のみを内枠として退職金総額から控除し事業主が支払う退職金額を決定 する方法が考えられます。 一方で、基本上乗部分も含めた分配金の全額を内枠として退職金総額から控除し事業 主が支払う退職金額を決定する方法も考えられます。 どちらの方法かは、事業所の退職金規定をご確認ください。 Q7.基金からの給付を退職金の内枠としている場合の留意点はなにか 加算部分からの分配金のみを内枠として退職金総額 から控除し事業主が支払う退職金額を決定する方法 分配金の全額を内枠として退職金総額から 控除し事業主が支払う退職金額を決定する方法
10 分配金確定までに退職者した方の事業主が支払う退職金額 解散してから分配金が確定するまでに退職した方について、事業主が支払う退職金額 は分配金が確定するまで正確な額が判明しないため、退職金の支給を分配金が確定す るまで待っていただく取扱が考えられます。しかし、分配金確定には相当の期間を要す るため、退職金の支払いもその分遅くなることに留意する必要があります。 一方で、分配金の予想額を予め計算しておき、退職時に退職金総額から分配金の予想額 を控除した額を事業主が支払う取扱も考えられます。この場合、実際に支払われる分配 金は、予想額から多少増減するため、増減によって生じた差を事業主が調整するかどう か、また調整する場合は調整方法について検討が必要になります。 例えば、実際に支払われる分配金が予想額を下回った方については、退職金の総額がそ の分小さくならないように差額を事業主が補填する等が考えられます。 分配金確定前に事業主が退職者に退職金の総額を支払い、分配金確定後に事業主が分 配金を受け取る、いわゆる事業主による立替は行うことができません。 分配金を退職金総額から控除する場合の退職金規程の改定要否 厚生年金基金からの給付額を控除するというのが内枠の基本的思想だと考えますの で、現行規程のままで分配金を退職金総額から控除する取り扱いは許容されると考え られます。 退職金規程の具体的な記載方法は個々の事業所によって異なりますので、個別の取り 扱いについては担当の社労士等にご相談下さい。
11 【A8】 分配金の課税は、所得税法に基づき、原則として一時所得とされています。 しかし解散認可日から分配金額の通知を受ける前日までに退職した場合には、退職所 得として差し支えないケースもあると聞いています。個々の具体的なケースについて は税務署の判断に従うこととなるため、所轄の税務署にご確認ください。 Q8.分配金の課税はどうなるのか