固体物理学 固体物理学固体物理学 固体物理学B 1
§1.
金属の
Sommerfeld
理論
[1] 金属の金属の金属の金属の3次元次元次元次元Sommerfeldモデルモデルモデルモデル 金属中の電子を量子力学的に扱う.最初に絶対零度(T=0K)における場合を考える. 金属を,その中に電子が閉じこめられている体積 V の箱と考える.電子は 箱の中では自由に運動できるが,箱の外には出られない(箱の外に電子は存 在しない).このようなモデルを金属のSommerfeldモデルという. 箱の中の電子のシュレーディンガー方程式は以下のようになる.( )
r ψ( )
r ψ E m∇ = − 2 2 2 h (1.1) なぜならば,ポテンシャルU(r)=0(rが箱の中)だからである. 次に,金属を1辺がマイクロオーダの小さなcubeに分解して考える.このcubeの体積を V=Lx Ly Lzとする.このcubeでも同様に波動関数を考える.このcubeは同じものがいくつも並ん だ構造をしていて,並進性を持つから,周期境界条件を適用できる.以下の周期境界条件を考え る.(
x Lx,y,z)
ψ(
x,y Ly,z)
ψ(
x,y,z Lz) (
ψ x,y,z)
ψ + = + = + = (1.2)(
)
(
)
(
)
(
x y z)
x L z y x x z L y x x z y L x x x, , , y, , , z ∂ , , ∂ = + ∂ ∂ = + ∂ ∂ = + ∂ ∂ψ ψ ψ ψ (1.3)以上の2つの周期境界条件をBorn – von Karmanの周期境界条件の周期境界条件の周期境界条件の周期境界条件(= BvKの周期境界条件)と呼 ぶ. 波動関数を以下のように置く.
( )
r r r =Aeik +Be−ik ψ (1.4) BvKの周期境界条件を用いると, ( ) ( ) x x x ikL ikL ikx ikL ikx ikx ikx L x ik L x ik ikx ikx L n k B A B A B A B A x x x x x π 2 1 e e e e e e e e e e e = → = → + = + → + = + ± − − − − + − + − (1.5) 同様にして,以下の関係が得られる. z z z y y y x x x L n k L n k L n k =2π , =2π , =2π (1.6) ここで,各nは整数である.(1.1)の解から,エネルギは以下のようになる.( )
(
kx ky kz)
m E , , 2 2 2 = ← = k k k h (1.7) このように,BvKの周期境界条件から,離散化された波数とエネルギが得られる.エネルギEと 波数kの関係を 分散関係分散関係分散関係(分散関係 dispersion relation)という. 2 固体物理学固体物理学固体物理学固体物理学B [2] 絶対零度における金属の性質絶対零度における金属の性質絶対零度における金属の性質絶対零度における金属の性質 次にT=0Kにおける電子の占有状態を考える.金属内に存在する電子の状態は,波数kとスピンσ で指定される.ゆえに,波数kの状態には,スピンのupとdownを含めて最大2個の電子を収容 できる. 波数空間はBvKの周期境界条件によって(1.6)式のように量子化(離散化)されている.(1.6)式か ら,電子が入りうる最小の領域∆vkはni=1の場合の以下のような場合である. z z y y x x z y x x L k L k L k k k k v ∆ ∆ ∆ ∆ π ∆ π ∆ π ∆ = ← =2 , =2 , = 2 (1.8) Lx=Ly=Lz=Lの場合,∆vkは以下のようになる. V L L vk 3 3 3 3 8 8 2π π π ∆ = = = (1.9) ここで,金属を微小に分けたcubeの体積をVとした.この∆v kの領域に電子が2個まで入ること ができる. 金属を微小に分けたcube 波数空間における電子の入りうる最小領域電子の入り方はPauliの排他律(Pauli exclusion principle)に従いながら,最もエネルギの低い配 置を取る.存在し得る1番外側の状態にある電子,つまり最も波数の大きい電子の波数を フェルフェルフェルフェル ミ波数 ミ波数 ミ波数 ミ波数kFとし,その電子のエネルギを フェルミエネルギフェルミエネルギフェルミエネルギフェルミエネルギEF(Fermi energy)とする.3次元的に 電子は分布しており,フェルミ波数を持つ電子が作る面をフェルミ面という.フェルミ面で作ら れる球をフェルミ球という.フェルミ面の外には電子は存在しない.同じように,フェルミエネ ルギよりも大きいエネルギを持つ電子は存在しない.つまり,フェルミ波数,フェルミエネルギ は電子の存在しうる上限の波数,エネルギを示している. T=0K では|k|≤kFの球の中に電子が詰まっている.電子のスピンを考えると,金属内の電子数 N は以下のようになる. ( )
∑
∑
≤ ≤ = = F z y x F z y x k n n n E E n n n N k k , , , , 2 2 (1.10) ここで,N>>1であるから,(1.10)式の和を積分で以下のように近似することができる. k k∫
∑
≅ ≤ d vk k n n n F z y x ∆ 2 2 , , (1.11) 上式における積分は,3次元極形式の積分である†1. †1 2 次元でのヤコビアンはk,3次元でのヤコビアンはk 2sinθ となる. ∆kx ∆ky ∆kz Lz Ly Lx固体物理学 固体物理学固体物理学 固体物理学B 3 ここではフェルミ球内における電子の総和を考えているから,3次元極形式の積分により, 3 0 2 0 2 0 3 4 sin F k k k k k d dkd d F φ θ θ π π φ φ π θ θ = =
∫ ∫ ∫
∫
k == == == (1.12) となるから,Nは以下のようになる V k k V d v N F F k 2 3 3 3 3 3 4 8 2 2 π π π ∆ = = ≅∫
k (1.13) 単位体積当たりの電子数,つまり電子密度n = N /Vを用いると,フェルミ波数kFは以下のように 求められる.( )
2 1/3 3 n kF = π (1.14) kFが求められると,フェルミ運動量pF,フェルミエネルギEF,フェルミ速度vF,そしてフェル ミ温度T Fが求められる. F F k p =h (1.15) m k E F F 2 2 2 h = (1.16) m k vF F h = (1.17) B F F k E T = (1.18) (1.11)式で和を積分に変える近似を行った.この変形を一般の物理量 F(k)について考えると以下 のようになる.( )
k( )
k k k k d F v F F F z y x k k k n n n∫
∑
≤ ≤ ≅ ∆ 2 2 , , (1.20) ゆえに,フェルミ球内の電子のエネルギの平均値は以下のようになる(Sommerfeld モデルでは, エネルギは運動エネルギのみを考える).( )
k dk E v N N E E k tot∫
≅ = ∆ 2 1 (1.21) Sommerfeldモデルでは,エネルギは運動エネルギのみを考えるから,( )
5 4 2 4 2 sin 2 5 2 0 4 2 0 2 0 2 2 2 0 F k k k k k k k m dkk m k m k d dkd d E F F × × = × = =∫ ∫ ∫
∫
∫
== == == == π π θ θ φ π φ φ π θ θ h h h k k (1.22) となる.よって,エネルギの平均値は次のように求められる(変形では(1.14)式を用いた). 4 固体物理学固体物理学固体物理学固体物理学B F F F F E m k n k m N V k m V N E 5 3 2 1 5 1 5 2 5 4 2 8 2 1 2 5 2 5 2 2 5 2 3 × × × = = = = π π π π h h h (1.23) つまり,電子の持つエネルギの平均値は,電子の持てる最大エネルギであるフェルミエネルギE F の60%の値となるのである. (1.20)式はkに関する積分であるが,Eに関する積分にすると利用しやすいため,以下のような 式変形をする.( )
( )
( )
(
( )
)
(
( )
)
( )
(
Ek)
k dk F V dk k k E F V d E F L d F v F F F F F k k k k k 2 0 2 2 0 3 3 4 4 2 2 2 2∫
∫
∫
∫
∑
= × = = ≅ ≤ ≤ π π π π ∆ k k k k k k k (1.24) (1.24)式のk 2 dkを以下のEの式を用いてdEに比例するように変換する. 3 2 / 3 2 2 / 3 2 2 2 2m E m k k E = → =h h (1.25) (1.24)式を全微分することで, dE mE m dE E m dk k dk k m dE E 3 2 / 1 2 / 3 2 2 2 2 / 3 2 2 / 1 2 2 2 1 3 2 2 3 h h h = = → = − (1.26) 以上より,(1.24)式をEに関する積分に変換した結果が以下のようになる.( )
( )
( )
( ) ( )
EgEdE F V dE mE m E F V dE mE m E F V F F F F E E E∫
∫
∫
∑
≡ = = 0 2 2 2 0 3 0 2 2 2 2 h h h π π k (1.27)ここで,g(E)を 状態密度状態密度状態密度状態密度(density of state; DOS)という.3次元での状態密度は以下のようになる.
( )
2 2 2 2 h h mE m E g π = (1.28)g(E)dEはE~E+dEの間にエネルギを持つ電子の単位体積当たりの座席数であり,Vg(E)dEはその
電子の数を表す.
一般に状態密度は電子密度nのエネルギ微分で与えられる.
( )
E =∂n∂( )
εε固体物理学 固体物理学固体物理学 固体物理学B 5 [3] 1次元次元 および次元次元およびおよびおよび2次元の次元の次元の次元のSommerfeldモデルモデルモデルモデル 基本的に1~3次元のそれぞれにおいても,電子密度nを求めることが重要であると言ってよい. 1次元および2次元におけるnを以下に示す. ・1次元電子密度n π π ∆ F k k k k k k dk L L d L L n F F 2 2 2 1 2 1 = = =
∫
∫
= − = k (1.30) ・2次元電子密度n π π π φ π ∆ π φ φ 2 2 2 2 1 4 2 1 2 1 2 2 2 2 0 0 2 F F k k k k k k k dkd S S d S S n=∫
=∫
F∫
= ⋅ = × × = = = = k (1.31) (1.29)式より,1次元および2次元でのDOSは(1.30)式および(1.31)式をエネルギ微分することで 求めることができる. [4] 有限温度有限温度有限温度有限温度 における金属の性質における金属の性質における金属の性質における金属の性質 絶対零度では,フェルミエネルギ EFよりも大きなエネルギを持つ電子は存在できなかった.電 子の存在確率をf(E,T)とすると,以下の図のような分布になる. f(E,0) = 1 0≤E≤EF (1.32) 0 EF ≤E統計力学的には,有限温度(T≠0)における電子の分布はFermi - Dirac分布分布分布分布 関数関数関数関数(Fermi - Dirac distribution function)に従う.Fermi - Dirac分布関数は,逆温度 k T
B / 1 = β を用いて,次のように 表される.
( )
( ) 1 e 1 , + = βE−µ T E f (1.33) Fermi - Dirac分布関数は以下のような形になり,µ を中心として約2kBTの幅で電子の存在確率が 1から0に急激に変化する.µ はchemical potentialであり,温度に依存する.絶対零度ではµ =EF となる. 6 固体物理学固体物理学固体物理学固体物理学B しかし,常温においても2kBT=0.05eV程度であり,µ≅ EF≅eV程度であるから,存在確率が急激 に変化する幅は非常に小さく,電子の大半は常温においても絶対零度の状態に極めて近いことに なる.このような状態を縮退電子ガス状態という.§2.
金属中電子の古典的動力学と電気伝導度
各原子の最外殻電子は比較的自由に金属内を移動し,電気伝導や熱伝導に寄与する.例えば,Na 原子(1s 2 2s2 2p6 3s1 = [Ne]3s1 )の最外殻3s 1 電子はその典型である.このような電子を伝導電子 (conduction electron)という. このような自由電子の原子との衝突を考える.電子間の衝突を無視し,電子が各原子とのみ非弾 性衝突(運動量が保存される)すると考える.原子と電子の衝突が 1/τ [1/s]の確率で起こるとす ると,時刻t=0から考えて,時刻tに初めて衝突する確率P(t)は以下のように表される.( )
− = τ τ t t P 1exp (2.1) 上式は,初めて原子と電子が衝突する時刻tが長い,つまり長い時間衝突が起こらない確率はよ り小さいということである.ここで上式から,衝突間の平均時間間隔<t>はτ に等しくなる.ゆえ に,τ を原子と電子間の平均衝突時間もしくは緩和時間という. 次に,一様な電場中での電子の運動を考えると,以下の波数kに関する運動方程式が得られ, E k k e dt d − = + h h τ 1 (2.2) 定常解は以下のようになる. h E k=−τe (2.3) ここから,電場による電子の速度の減速分は以下のようになる. E k v m e τ − = = h h (2.4) このように,電子は電場と逆方向に,電場の大きさに比例した分だけ減速されることがわかる. よって,DC電気伝導度σ0が以下のように求められる. m e n m e ne ne 2 0 0 τ σ σ τ = ⇒ = = − = v E E j (2.5) 次にAC電気伝導度を求める.ここでは角振動数ωで振動する電場中の電子の運動を考える.電 子の運動量をp( ) ( ) (
t = pω exp−iωt)
とすると,(2.2)式を以下のように変形することで,p( )
ω が得ら れる.( )
( )
t e( )
t i( )
t dt t d p -E p p ω τ − → − = 1 (2.6)( )
ω τ ωτ( )
ω i e − − = 1 E p (2.7) f(E,T) E 1 T=0 EF 1 2kBT µ f(E,T) E固体物理学 固体物理学固体物理学 固体物理学B 7 よって,AC電気伝導度σ
( )
ω が以下のように求められる.( )
ω( )
ω τ( )
ωωτ σ( )
ωωτ σ( )
ω σωτ i i i m e n m ne ne − = ⇒ − = − = − = − = 1 1 1 0 0 2 E E p v j (2.8) ここで,E( ) ( ) (
t =Eω exp−iωt)
とし,Maxwell方程式から比誘電率を求めると,( )
( )
( )
ω ωεσ( )
ω ωε σωτ ε ωεσω ωε ω σ ωε ε i i i i i i t − + = + = ⇒ + − = + − = + ∂ ∂ = 1 1 1 ~ 1 rot 0 0 0 0 0 0 0 j E E E E H (2.9) となる.ωτ >>1となるときでは,(2.9)式は以下のようになる.( )
0 0 2 2 2 0 2 0 1 1 ~ τε σ ω ω ω τε ω σ ω ε ≅ − ≡ − ← p = p (2.10) 上式のε( )
ω ~を複素比誘電率,ωpをPlasma振動数振動数振動数振動数(plasma frequency)という.Plasma振動とは, 電場によって動かされた電子雲が電気的中性を取り戻すために元に戻ろうとするとき,慣性によ って元の位置を往復運動することで起こる振動である. 金属に垂直入射する電磁波は,その角振動数がω <ωpのときにはε~
( )
ω <0となり,金属は光を全 反射することになる.一方でω >ωpのときにはε~( )
ω >0となり,金属は光を透過することになる.§3.
周期場中の電子の一般論
―
基礎編
ここでは周期的に配列したポテンシャル中の電子状態を考える.結晶中のイオン配置は周期的に 規則正しく並んでいる.ゆえに,結晶中のポテンシャルU(r)も周期的となる.格子における並進 ベクトルをRとすると,U(r)= U(r+R)を満たす.ゆえに,周期ポテンシャル中の電子の振る舞い を考える必要がある.シュレーディンガー方程式に従う周期ポテンシャル中の電子をBloch電子 という†3. 逆格子空間全体での波数をq,第1ブリルアンゾーン(Brillouin zone)内での波数をkというよ うに分けて定義する†2.ただし,逆格子ベクトルbを用いてq+b=kというように,全ての波数を 1stB.Z.内にシフトすることができる. 周期ポテンシャル中の電子の波動関数について,位置rから並進ベクトルR分だけ離れた位置に ある波動関数は,位置rにおける波動関数と並進ベクトルRの位置における平面波との積で表さ れ,以下のように1stB.Z.内の波数,つまりkで特徴付けられる.( )
r ψk( )
r ψk(
r R)
(
ik R) ( )
ψk r ψ → + =exp ⋅ (3.1)これをBlochの定理の定理の定理の定理(Bloch theorem)という.つまり,周期ポテンシャルに対するシュレーディ
ンガー方程式の解は,(3.1)式を見たさなければならないのである. †2 これからは第1ブリルアンゾーンを1stB.Z.と表記する.同様に第2ブリルアンゾーンは2ndB.Z.となる. †3 周期ポテンシャルが0の場合は,自由電子となる. 8 固体物理学固体物理学固体物理学固体物理学B Blochの定理を別の形で表すと,並進ベクトルの周期を持つ関数uk(r)を用意し,これと平面波と の積で以下のように表すことができる.
( )
r(
k r) ( )
k r k =expi ⋅ u ψ (3.2) (3.1)式では波動関数がkで特徴付けられているが,実際にはkのみで特徴付けることはできず, 同じkに対して無限に多くのエネルギ固有値E(k)が存在する.kを固定すると,離散的な整数n に対して固有エネルギと固有関数のセット{En(k),ψn,k(r)}を得ることができる.このnをバンド 指標という.つまり,周期場中の電子状態は,バンド指標nと1stB.Z.内部の波数kのセットで指 定される.§4.Bloch
の定理の応用
原子が周期的に並んだ1次元のモデルを考える.それぞれの原子が持つ電子は,その電子の持つ 波数に応じて,持つエネルギの値が変わる.電子の持つエネルギと端数の関係を示した図を分散 関係という.1次元的に並んだ全ての原子の分散関係を図示すると,その結晶の持つ大きな分散 関係が得られる.これをバンドという. 波数空間において,ある波数kを持つ電子1つをとっても,逆格子ベクトルbに応じて分散関係 は複数存在する.それらの各分散関係をまとめて{Ek-b}のように示す.各分散関係の違いは逆 格子ベクトルの組{b}で表されることになる. 以下の図のように,複数あるバンドを1stB.Z.であるk=-b/2~b/2の範囲で切り取って考える近似 を 空格子近似空格子近似空格子近似空格子近似(empty lattice approximation)という.これは,結晶の周期性のみを考慮して,ポテ ンシャルは非常に小さいと近似し,Blochの定理に従うBloch電子が自由電子でよく近似できる ことを表す.空格子近似で得られた分散関係は,結晶中の1つの格子がつくるunit内での端数と エネルギの関係を表している.そして,結晶全体では,このunitの分散関係が周期的に並んでい るのである. 空格子近似において,図のようにzone端では2つのバンドがクロスしている †4 .つまり,特定の 波数では複数のバンドが同じエネルギ値を取り,エネルギに縮退があるのである. 2重縮退の場合において,zone端でのエネルギをE b/2,弱い周期場をU bとし,zone端近傍k=b/2+s でのエネルギEを考える.ここでsは微小な波数ベクトルであり,s=sv+shのようにbに垂直な成 分と平行な成分に分けて考える.すると,Eは次のように与えられる. †4 波数空間の原点と逆格子ベクトルを結ぶベクトルの垂直2等分面をBragg面という. Ek E(k) k k E(k) 1stB.Z. b -b 0 Ek-b Ek+b固体物理学 固体物理学固体物理学 固体物理学B 9 2 * 2 2 2 2 / 2 2m v m h U E E b b s s ± + + ± = h h (4.1) ここで * ± m は電子の 有効質量有効質量有効質量有効質量(effective mass)である. * ± m は以下のように表される. b b U E m m /2 * =1±2 ± (4.2) (4.1)式からわかるように,zone端におけるエネルギは,Eb/2を中心に|Ub|だけ増減し,幅2|Ub|を 持って縮退が分裂する. 金属内には多数の原子が並んでいて,Bloch 電子は多数の原子核からの作用を受けるため,その 運動を記述することは非常に難しい.しかし,空格子近似によって電子が本来の質量mではなく, 有効質量m*を持っているとして近似することで,Bloch電子を古典的な自由電子の振る舞いと同 様に扱うことが出来るのである.有効質量は,本来の自由電子の質量よりも大きいこともあれば 小さいこともあり,さらには負の値を取ることもある. ここまでは1次元のバンドについて考えてきた.しかし,実際の結晶は3次元であるから,1次 元のバンドは理論を理解するためのステップであると言ってよい.次は3次元エネルギバンドと 縮退について考えることにする. 3 次元のバンドを描くことは容易ではないので,1stB.Z.内に定義されている点や線について,こ こでは高対称点と高対称線のみのエネルギについて考えることで十分である.ここでは,代表的 な(名前の付いている)点におけるエネルギの縮退について考えることにしよう. 例として,f.c.c.格子(面心立方格子)について考える.バンドを考えるときは逆格子を用いて考 える.f.c.c.格子のぶりルアンゾーンを図示すると以下のようになる. 10 固体物理学固体物理学固体物理学固体物理学B ここで考える逆格子空間における代表的な点は以下の通りである.