稲田道彦先生を送る
経 済 学 部 長
原
直 行
稲田先生は 年に東京都立大学大学院理学研究科博士課程(地理学専攻) を退学し,同年 月,香川大学教育学部に助手として着任された。その後, 年に同学部講師, 年に助教授, 年には教授に昇任された。 年からは大学改組により香川大学経済学部教授に異動になり, 年に香川 大学アーツ・サイエンス 研 究 院 教 授, 年 に 香 川 大 学 経 済 学 研 究 院 教 授, 年に香川大学人文社会科学系教授に配置換えになった。この間,管 理運営面では, 年度および ∼ 年度に経済学部地域社会システム 学科長, ∼ 年度に研究企画委員長, ∼ 年度に入試委員長, ∼ 年度に香川大学瀬戸内圏研究センター人文社会研究チームリー ダーなどを務められた。 以下,稲田先生の教育,研究,社会貢献・地域貢献について紹介したい。 先ず教育についてである。先生は香川大学教育学部において 年間,経済 学部において 年間,計 年間,教壇に立ち,また演習等で多くの学生を指 導された。経済学部においては,講義科目として地域研究論,観光地理学,お 遍路観光論等の授業を担当され,演習・個別演習,さらには大学院においても 多くの優秀な学生を指導された。 筆者は稲田先生が経済学部に異動されてから,同じ地域社会システム学科の 教員として,また 年度から立ち上げたツーリズムコースの教員として, 仕事をご一緒させていただいた。その経緯から,稲田先生の教育に対する姿勢 を近くから見る機会が多かったが,観光系講義科目の創設,授業における フィールドワークの導入を積極的になされ,筆者ら後進の教員たちは現在もこ のような姿勢を学ばせてもらっている。次に研究についてである。稲田先生の研究テーマは教育学部時代においては 墓地文化の地域的変容過程と瀬戸内海島嶼地域の生活文化の変化であった。墓 地文化の地域的変容過程は瀬戸内海島嶼部における両墓制の研究のほか,香川 県や在日外国人,イギリスの墓地まで研究対象を広げられた。また,瀬戸内海 島嶼地域の生活文化の変化については,水の確保など日常生活の維持に必要 だった共同性に着目し,それらの変貌に関する研究を行われた。 経済学部時代においては,研究テーマを四国遍路の研究と持続可能な観光に 関する研究にシフトされた。四国遍路研究については,著書『四国徧禮道指南』 講談社( )はじめ数多くの研究を著し,今や同分野の第一人者であるが, ここでも歩き遍路の実践などフィールドワークを積極的に取り入れた研究をさ れた。また,根来寺での一年半近くにもわたる月一回の定点観測調査など地道 な調査をされた。さらに,江戸時代の納経帳を入手したことから歴史にも研究 関心が広がり,資料として納経帳を丹念に調べられ,研究の集大成ともいえる 上記『四国徧禮道指南』の出版へとつながった。持続可能な観光に関する研究 については,観音寺などをフィールドとして,自治体,地域住民と連携して地 域活性化につながる「まち歩き」観光や瀬戸内海島嶼地域の観光についての研 究をされ,今でもまち歩き観光が地域で継続して行われるなど地域貢献にも直 結した研究もされた。 最後に社会貢献・地域貢献についてである。 ∼ 年に四国遍路世界 遺産登録推進 県協議会専門委員会委員, ∼ 年に「四国八十八箇所 霊場と遍路道」世界遺産登録推進協議会「普遍的価値の証明」部会委員, ∼ 年に(財)髙松観光コンベンション・ビューロー理事などを歴任された。 筆者は稲田先生から多くのことを学ばせていただいた。その中でも大学教員 として優れたところは,教育,研究,社会貢献・地域貢献を三位一体として, 取り組まれたところである。学生に教育するための題材を地域から見つけ出 し,丹念に調査・研究を行い,その成果を講義や学生指導の中に落とし込んで いく。そのことが地域研究の蓄積を厚くし,地域ならではの抜きんでた研究成 果に結実すると同時に,社会貢献・地域貢献につながっていく。 −2− 香川大学経済論叢
以上のように,本学の教育,研究,社会貢献・地域貢献,そして管理運営の 活動に多大な貢献をいただいた稲田先生を定年退職で失うことは誠に残念であ るが,これからも引き続きご活躍,ご健勝を祈念するとともに,私ども後輩の ために,今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げる。