総 説
排尿障害と自律神経系
〔養女舗。7第犠、妄言〕
東京女子医科大学 ヤナギ サワ柳 沢
同 教授 トウ マ東 間
泌尿器科学 助手』 ヒロシ 博 ヒロシ 紘 (受付 平成4月11月13日) Voiding Dys血mction and Autonomic Nervous SystemHiroshi YANAGISAWA and Hiroshi TOMA
Department of Urology, Tokyo Women’s Medical College The two functions of the lower urinary tract are the storage and the voiding of ur至ne. The neurogenic control of them is very elaborate and complex. In recent years, the neurohistochemical or neuropharmacological investigations in this field have given more detaile4 information relating to voiding function. As new equipments and techno董ogy for clinical urodynamic stud童es are developed, more acurate diagnosis of void童ng dysfunction can result from the analys量s of those urodynamic findings. This article focuses on the current view on neurophysiology of micturition, including the method of urodynamic study and the classification of neurogenic bladder. 、 はじめに 腎臓で生成された尿は尿管を経て膀胱に至る. 膀胱に一定量の尿がたまると,尿意を感じ,これ を体外へ排出する.健常人においては通常1日5 ∼6回,何ら特別の意識を払わずに自然に行われ ている排尿という行為は,実は非常に複雑な神経 一平滑筋の働きによって制御されているのであ る.ひとたびこの機構に,何らかの障害が生じる と,我々のquality of lifeは著しく損なわれるこ とになる. 近年,高齢化社会の到来とともに,この分野に 注目が集まるようになってきた.排尿障害,とく に神経障害によるもの(神経因性膀胱)の治療に あたっては,当然ながら,排尿経路の神経解剖学 的理解が不可欠である.最近の神経解剖学,神経 薬理学,電気生理学的研究および尿流動態検査法 の進歩により新しい知見が得られつつある1).こ こでは臨床の立場から排尿と自律神経の関係を中 心に,最近の検査法の現状2)についても言及した い. 1.下部尿路の解剖 腎臓より排泄された尿は尿管を経由して膀胱に 至る.尿管は膀胱壁を約2cm斜走して,尿管口を 形成する.膀胱尿管移行部には逆流防止機構が存 在して,膀胱内に貯留した尿の上行を防いでいる. 膀胱壁は外膜,筋層,粘膜よりなる.筋層は排尿 筋detrusorと呼ばれる平滑筋よりなり,その筋束 は網状に交錯する。この筋束の配列が,瞬胱の充 分な収縮と残尿のない排尿を可能としている.膀 胱は解剖発生学的に利尿筋部(体部)と三角部に 分けられ,体部は内胚葉由来,三角部は中胚葉(中 腎管)由来とされている.両側尿管口,内尿道口 により囲まれた部分が三角部trigoneと呼ばれ, 2層の平滑筋層よりなり,深層は排尿筋に連なる. 浅層は壁内尿管の筋線維が扇状に拡がって三角部 を被うと共に,尿道背側を男性においては精阜まる3),膀胱頸部の平滑筋構造は,男女で大きく異 なっており,男性においては,膀胱頸部を輪状に とり巻いており,射精時の膀胱内への逆流を防ぐ 働きが主であると考えられている(図1).外尿道 括約筋は蓄尿時の禁制を保持するために最も重要 であるが,いわゆる内括約筋,骨盤底筋群も補助 的な役割をはたしている. 2.下部尿路の神経支配 かつて排尿とは仙髄排尿中枢を中心とする単純 な脊髄反射と考えられていたが,近年,排尿反射 は更に高位の橋排尿中枢,大脳をも含めて考えら れている4)(図2).大脳皮質橋仙髄経路のどの部 位が障害されても正常な排尿が不可能となる. 副交感神経節前線維は,第2,3,4仙髄から でて,骨盤神経を経由して骨盤神経節に至る.一 部はここでシナプスをつくる.残りは,膀胱壁内 前立腺 膀胱 膀胱頸部 外尿道括約筋 男子 女子 図1 下部尿路の解剖 下腹神経 大脳皮質 / 骨盤神経 橋排尿中枢 胸腰髄交感神経中枢 仙髄排尿中枢(S2−S4) 陰部核(S2−S4) 陰部神経 図2 下部尿路の神経支配 骨盤神経の電気刺激により,排尿筋は収縮する. 電気刺激による排尿筋収縮はアトロピンによって 完全には抑制されない.アトロピン抵抗性は非コ リン,非アドレナリンの神経伝達物質の存在を示 しており,ATP, prostaglandinは興奮性5)6)に, VIP(vasoactive intestinal polypeptide)は抑制 的に作用する7)ことが報告されている.また,膀胱 からの求心性感覚神経線維は副交感神経に属す る.求心性線維内には,VIP, substance P等が含 まれている. 交感神経は,第11胸髄から第2腰髄の灰白質か らでて,交感神経幹を経て,下腸間膜動脈神経節 でシナプスを形成する.ここより下腹神経がはじ まり,骨盤神経叢を形成する.かつて,交感神経 の排尿に関する役割は軽視されていた.しかし, 膀胱や尿道の神経支配や受容体分布などの研究が 進むにつれて,交感神経は排尿に関しても重要な 要素であり,副交感神経,体性神経とともに排尿 運動を絶妙に支配していることが明らかになっ た.α受容体を介した蓄尿時の膀胱頸部および近 位尿道の閉鎖,副交感神経節への抑制作用,また, β受容体を介した排尿筋弛緩作用等が知られてい る.末梢神経節では交感神経節後ニューロンと副 交感節後ニューロンがshort neuron systemを形 成しているのである8).α受容体は膀胱頸部,尿道 を中心に分布し,β受容体は膀胱体部を中心に分 布する(図3)9).尿道内のα受容体のサブタイプ は,α1とα2が存在しウサギ尿道では,雄では必 が,雌ではα2が多いという10)11).膀胱内のβ受容 体のサブタイプに関して,森田12)は,ウサギ,ヒト ではβ2が優位であることを明らかにした. 陰部神経は,体性運動および感覚両神経線維を 含み,第2∼4仙髄の前核Onuf核よりでて,骨盤 底筋群および外尿道括約筋を支配する.また,会 陰および尿道部の知覚は,陰部神経により支配さ れている. 3.排尿の生理学 腎臓で生成された尿は尿管を経て膀胱内へ1時 間に約50m1程度の速度で貯められる.この間,膀 胱内圧は低圧のまま維持される.遠心性の陰部神
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==コ・’:’}〔== α一adr¢n2rgic re(:eptors 図3二二
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cho藍in2rgic 陀(:2ptors 下部尿路の自律神経受容体分布(Caine9)より) ? 経インパルスは尿道:横紋括約筋の電気的活動性を 増加させ尿道を閉鎖する.同時に膀胱頸部は閉鎖 し,排尿筋収縮は抑制される.すなわち,交感神 経遠心路は,下腹神経を経て副交感神経を抑制し 排尿筋の収縮を防ぐのである. 蓄尿量が増加してくると,骨盤神経,下腹神経 の求心路より大脳皮質に情報が伝わり尿意が強く なってくる.排尿期には,橋排尿中枢よりの遠心 Pon5 Sto[age \ \ 、鶏
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E刑bren電 一一一 Ur凱hr81 Pre88ure De電ru80r Pre58ur巴 F「ow 図4 排尿に関する主な神経経路(Blaivas13)より)道および尿道周囲の横紋筋の弛緩を起こすと同時 に交感神経の興奮は抑制され,膀胱頸部は徐々に 開きF,最:大尿流量時に最:大となる.骨盤神経(副 交感神経)は興奮し排尿筋は収縮する.すなわち, 排尿反射に対する抑制が解き放たれた状態とな る.横紋括約筋と尿道周囲の横紋筋群の随意的な 収縮によって排尿は終了する13)(図4).以上のよ うに,排尿は種々の神経反射が複雑に関係しあっ て円滑に行われる. Mahonyら14)は,これを12の反射として分類し ている(表1). 4.尿流動態検査(urodynamic study) 排尿障害,特に神経の障害により起きるもの(神 経因性膀胱)に対する検査法は,尿流動態検査 (urodynamic study)と呼ばれ,最近急速に発達し てき「た.これらの検査を適切に行うことにより, 排尿障害の状態を客観的に知ることができるよう になった.もちろん,これらの疾患の診断にあたっ ては,一般的な問診,神経学的検査が必要なこと は言うまでもないが,ここでほ尿流動態検査に焦 点をしぼって述べる.なお,これらに関する用語 の使い方には,専門家の間でも混乱が生じていた が,近年,神経因性膀胱研究会15),ICS16)(Interna− tional Continence Society)等によって,統一が はかられている. 一回の排尿状態を客観的に知ることができる. 種々の方法により測定が行われるが,いずれにお いても,排尿量,排尿時間,平均尿流率(average How rate;Qave),最大尿流率(maximum How rate;Qmax),残尿量が測定される(図5).これら のうち,Q。v。, Qmaxは排尿量により変化する.す なわち,排尿量の増加とともに上昇するので,単 純な数値の比較は無意味である.これらを補正す るにはSilokyら17)のnomogramの利用が有用で ある.さらにこれらの測定値が,検査時の環境, 患者の.精神状態等によっても影響を受けることに 留意すべきである.よって,細かい測定値の検討 よりむしろ排尿パターンを知ることが重要であ る. 2)膀胱内圧測定(cystometry;CM) 膀胱内にカテーテルを挿入し,生理食塩水また ml/s 尿 流 率 由大曲曲率 排尿量 排尿時間 図5 尿流量曲線 時間(s) 表1 蓄尿および排尿反射(Mahonyら14)より) 名 称 刺 激 求心路 遠 心 路 反射中枢 機 能 1 交感神経排尿筋抑制反射 排尿筋緊張 骨盤神経 下腹神経 胸腰髄 蓄尿 2 交感神経括約筋収縮反射 同上 同上 同上 同上 同上 3会陰排尿筋抑制反射 会陰骨盤底筋群緊張 陰部神経 骨盤神経 仙髄 同上 4尿道括約筋防御反射 三角部緊張または 同上 陰部神経 同上 同上 近位尿道への尿流入 5 会陰球部排尿筋刺激反射 腹圧上昇に伴う 陰部神経 外側網様体脊髄路 延髄 排尿開始 会陰骨盤底筋の弛緩 骨盤神経 6 排尿筋排尿筋促進反射 排尿筋緊張 骨盤神経 同上 橋 同上 後索 7排尿筋尿道抑制反射 排尿筋緊張 骨盤神経 骨盤神経 仙髄 排尿継続 8排尿筋括約筋抑制反射 同上 同上 陰部神経 同上 同上 9尿道排尿筋促進反射 尿道への尿流入 陰部神経 外側網様体脊髄路 橋 同上 後索 骨盤神経 10尿道排尿筋促進反射 同上 骨盤神経 骨盤神経 仙髄 同上 11尿道括約筋抑制反射 同上 陰部神経 陰部神経 同上 排尿中止 12 会陰球部排尿筋抑制反射 会陰骨盤筋群収縮 陰部神経 腹側網様体脊髄路 延髄 同上 後索
cmH20 内 圧 最大膀胱内圧 初期尿意 最大尿意 容量(ml) (FDV) (MDV) 図6 膀胱内圧曲線 は炭酸ガスを注入し,この際の膀胱内圧を測定す る.注入媒体は生理食塩水の方が生理的で望まし いが,炭酸ガスの方が簡便である.炭酸ガス法で は多少膀胱容量が少なめに測定されるが,診断上 問題はないと言われている18).いず乳にせよ初発 尿意(丘rst desire to void;FDV),最大尿意 (maximam desire to void;MDV),最大膀胱容 量,最大膀胱内圧等が測定され,膀胱内圧の変化, 膀胱コンプライアンス,および膀胱知覚について 知ることができる(図6).なお,・膀胱内圧は排尿 筋収縮圧と腹圧の和であり,排尿筋圧を知るには, 腹圧の同時測定が必要であり,通常,直腸内圧が 測定される. 排尿筋反射の認められない場合には,コリン作 動性薬剤であるベサネコールを投与し,膀胱内圧 上昇の有無を調べ,denervation supersensitivity を判定することができる.しかし,false negative, false positiveも認められ,その判断には慎重を期 すべきである19).また,排尿筋反射充進と低コンプ ライアンス膀胱の鑑別には,抗コリン剤負荷CM が有効である20).
3)尿道内圧測定(urethral pressure
pro創ometry;UPP) 尿道に挿入したカテーテルより一定量で注水を し,カテーテルを引き抜きながら尿道全長の内圧 を測定する.最:高尿道内圧,尿道長が測定される. これらの測定値は,カテーテルサイズ,注水率等 により大きな影響を受けることから,常に一定の 条件で施行することが重要である.なお,測定結 果はあくまでも静的状態における測定値であり, 排尿時の尿道の状態を示すものではない.今後, microtiptransducerを用いた排尿時尿道内圧測’「ype 1 Type 2 Type 3
膀胱内圧 図7 排尿筋括約筋協調不全(Blaivasら22》より) 定がこの問題の解決に役立つ可能性がある21). 4)外尿道括約筋筋電図(electromyography;
EMG)
外尿道括約筋は体性神経(陰部神経)の支配下 にある横紋筋であり,排尿時には弛緩し,蓄尿期 には収縮している.この筋肉活動を筋電図により 知ることが目的である.針電極または表面電極が 使われ,通常,膀胱内圧測定と同時に測定が行わ れる. 排尿意図時に活動電位が消失せず,尿道括約筋 の弛緩の得られない状態を排尿筋括約筋協調不全 (detrusor sphincter dyssynergia;DSD)と呼ぶ. ICSI6)によるとDSDとは排尿筋収縮時に,不随意 に尿道あるいは尿道周囲の横紋筋が収縮すること と定義されている.Blaivasら22)は, DSDを排尿 筋収縮時の括約筋活動電位の増強の仕方により3型に分類している.1型は増大したEMG活動が
排尿筋最大収縮期に突然消失するもの,2型は排 尿筋収縮の間,EMG活動が間欠的に生ずるもの, 3型は排尿筋収縮の間,括約筋収縮が持続するも のと定義している(図7).これらは,CM・EMG同 時測定により診断されるが,UFM−EMG同時測定 の方がより生理的な診断法と考えられる23)24).DSDの成因については確定した説はない.
Blaivasら25)は,仙髄排尿中枢と橋との経路が障 害されたときに生ずるとしており,橋排尿中枢は 排尿反射を円滑に協調的に作動させる高位中枢で あるとの考えに基づいている. 5)Combined urodynamics 以上述べてきた各種検査法を同時に行おうとい う試みである. (1)Pressure flow・study26)UFMとCMを同時に測定する方法である.細
懸
膀胱内 ?ー内 r尿筋 A道内 リ電図 尿流量9
膀胱内圧
排尿筋圧
尿道内圧一一一㌧__一ノー一愚
図8 Combined urodynamics いカテーテルを経尿道的に挿入するか,経腹的に カテーテルを膀胱内に留置して測定する.膀胱内 圧と尿流量率との関係より,排尿障害の原因が, 下部尿路の物理的閉塞によるのか,排尿筋の収縮 不全によるのかを推定するのが目的である. (2)Radiologic urodynamics 排尿時膀胱尿道造影時にUFM, CM, EMG等 を同時測定する.膀胱,膀胱頸部および,括約筋 部の形態的変化を観察することが可能である.こ れをビデオに録画すれぽ,比較検討,経過観察が 容易となる.理想的な方法ではあるが,実際には 繁雑であり,もっぱら専門的施設で行われている (図8)..また,X線透視の代わりに,超音波装置 の使用も試みられている. 5.神経因性膀胱の分類 神経因性膀胱の分類法には,神経の障害部位に よるもの,尿流動態力学検査の結果に基づいたも のなどがあり,時代による変遷がみられる(表2). Lapidesの分類27)は,膀胱内圧測定に基づき分 類したもので,今日まで,泌尿器科医にとって最 もポピュラーなものであった. 無抑制膀胱(uninhibited bladder)とをま,大脳 皮質から橋排尿中枢への排尿抑制経路が障害され た状態である.頻尿,尿意切迫,失禁が主症状で, 通常排尿困難を伴おない.脳血管障害によるもの や乳幼児の排尿がその典型である.反射性膀胱 (renex bladder)とは,仙髄排尿中枢より上位の 経路が遮断された状態で,尿意はなく排尿はまっ たく反射的で不随意となる.高圧排尿であり,か つ残尿を伴う.高位脊髄損傷が典型的疾患である. しぼしぼ自律神経過反射(autonomic hyper一Lapides KranサーSiroky ICS 無抑制膀胱 排尿筋反射充進 蓄尿期 反射性膀胱 協調型括約筋 膀胱機能 自律性膀胱 非協調型横紋筋性括約筋 正常 知覚麻痺性膀胱 非協調型平滑筋性括約筋 過活動 運動麻痺性膀胱 排尿筋反射消失 尿道機能 協調型括約筋 正常 非弛緩型横紋筋性括約筋 機能不全 除神経型横紋筋性括約筋 排尿時 非弛緩型平滑筋性括約筋 膀胱機能 無収縮 低収縮 尿道機能 正常 閉塞性 過活動 物理的 reHexia)が誘発される.自律性膀胱(autonomous bladder)とは,仙髄反射中枢と膀胱との反射弓の 障害で起こり,尿意はなく,残尿の多い腹圧排尿 となる.脊髄損傷急性期の脊髄ショック期に認め られる.知覚麻痺性膀胱(sensory paralytic blad− der)とは,膀胱の求心性知覚路のみが障害される. 尿意が消失し,膀胱が過拡張する.糖尿病性神経 症の一症状として出現することがある.運動麻痺 性膀胱(motor paralytic bladder)とは,遠心運 動路のみが障害され,尿意はあるが排尿が困難と なる.帯状庖疹,骨盤内手術などで起こりうる. 以上,Lap三desの分類は,明解である.しかし, 膀胱内圧測定の結果のみに基づいているため,尿 道の病態が無視されているという欠点がある.こ の点を考慮に入れてつくられたのが,Krane・ Sirokyの分類28)や, ICS16)による1988年の分類で ある. ここではICSの分類について述べるが,蓄尿期 と排尿期に分けているところに特徴があり,更に それぞれ膀胱および尿道機能を分類している.や や繁雑であるがよく考えられた分類である. 正常な排尿筋機能とは,蓄尿期に,鵬胱内圧の 有意な上昇がなく,何らかの刺激によっても不随 意な収縮が起こらないこととされている.過活動 膀胱とは,蓄尿時に不随意な排尿筋収縮が起こり,
患者はこれを完全に抑制することができないこと とされている.同義語として不安定膀胱(unstable bladder),排尿筋過反射(detrusor hyperrenexia) があり,後者は特に神経障害によって生ずるもの を言う.蓄尿期の正常な尿道機能とは,腹圧の上 昇時においても尿道閉鎖圧が維持されること,不 全尿道とは,排尿筋の収縮なしに,尿が漏れ出る ことと定義されている、 排尿時の正常排尿筋機能とは,随意に排尿筋を 収縮することによ.り,排尿を開始でき,これを維 持し,随意に抑制できるものとされている.排尿 時の正常尿道機能とは,膀胱が空になるまで,尿 道が開いていることとされ,DSDの定義は, UFM の項であげたとおりである. おわりに 以上述べてきたように,排尿の生理はきわめて 複雑であるが,近年の神経生理学の進歩により, 刻々と新しい知見が得られつつある.しかし,い まだに神経因性膀胱の分類に完全に統一されたも のはなく,今後,さらに明確な病態の解明が待た れる. 臨床の立場に立つと,尿流動態検査法の進歩に より,排尿障害患者の病態をより客観的に知るこ とができるようになった.治療の面でも,ナキシ ブチニンや新しいαブロッカー等の薬剤の登場 が治療法選択の幅を広げている.さらに非侵襲的 で安定した検査法の開発29}とともに,副作用のな い有効な薬剤の開発も期待されるところである. 文 献 1)土田正義:排尿の神経支配.日泌尿会誌 80: 1257−1277, 1989 2)八竹 直,金子茂男,宮田昌伸ほか:排尿機能検 査の現状と問題点.日泌尿会誌 82:1377−1390, 1991 3)Tanagho EA, Smith DR:Mechanism of uri・ nary continence:1. Embryologic, anatomic, and pathologic considerations. J Urol 100: 640−646, 1968 4)Kuru M:Nervous control of micturition. Pysiol Rev 45.:425−494,1965 5)Abrams PH, Fenely RCL The actions of prostaglandins on the smooth muscle of the human urinary tract in vitro. Br J Urol 47: 909−915, 1976 6)Andersson KE, Husted S, Sj6gren C et al: Contribution of prostagrandins to the adenocine triphosphate−induced contraction of rabbit urinary bladder. Br J pharmacol.70: 443−452, 1980 7)Kinder RB, Mundy AR:Inhibition qf sponta− neous contractile activity in isolated human detrusor muscle strips by vasoact玉ve inteStinal polypeptide. Br J Urol 57:20−23,1985 8)Elbadawi A, Shenk EA:.Anew theory of the innervation of bladder musculature. Part 3. Postganglionic.syanapSes in uretero・vesico・ urethral autonomic pathways. J Urol 105: 372−374∫ 1971 9)Ca量聡e M:Autonomic pharmacolQgy of the urinary tract.動Pha㎜acology of the Urinary Tract, pp5−33, Springer・Verlag, Berlin(1984) 10)Yablonsky F, Ri∬aud JP, Lacolie JY et a翼: α1・adrenQrec6ptors in the s血ooth muScle of male and fema正e rabbit urethra.』Eur J Phar・ maco1121:}8,1986 11)森田 隆:.尿失禁に関する基礎的研究 第2報 ウサギ尿道平滑筋のα一adrenoreceptor subtype における性差について.日泌尿会誌80: 416−423, 1989 12)森田 隆:尿失禁に関する基礎的研究 第1報 ウサギ,イヌ,ヒト膀胱平滑筋の収縮張力および 細胞内cAMP含量に及ぼすβ受容体サブタイプ 刺激剤の影響.日泌尿会誌 80:407−415,1989 13)Blai†as JG:The neurophysiology of micturi・ tion:Aclinical study of 550 patients. J Urol 127:958」963, 1982 14)Mahony I)T,1.afrte RO, Blais DJ:Neuro− physiologic concept of continence and micturi・ tion. Urology 9:95−106,1977 15)神経因性膀胱研究会:神経因性膀胱に関する標準 用語(第1部門の提案.臨泌 38:1009−1011,1984 16)Abrams P, Blaivas JG, Stanton SL et a1: The Intemational Continence Society Commiゼ tee on Standardization of Terminology:The standardization of terminology of lower uri− nary tract function, Scand. J Urol Nephrol l14:5−19, 1988 17)Siloky MB, Olsson CA, Krane RJ:The How rate nomogram:LDevalopment. J Uro1122: 665−668, 1979 18)Nordling J, Hebjφrn S, Walter T et al: Acomparative study of water cystometry and CO2 cysto由etry. Urol Int 33:6研67,1978 19)Blaivas JG, Labib KIB, MidLalik ST et a葺: Faulure of bethanecho】denervation supersen− sitivity as a diagnostic aid. J Urol 123:
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