日本の精神保健福祉領域におけるソーシャルワーカーと精神障害当事者との関係性
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(3) 主題:I ヨ本の精神保健福祉領域におけるソーシャルワーカーと精神障害当事者との関係性. 日本の精神保樹高社は、質・最ともに他の福祉領域と比較しても遅れているといえるであろう。 その背景には、日本の精神保健政策が民間の医療機関偏重で進められてきたこと、法制度上 にも根強し、差別が残存していること、社会における偏見がいまだに払拭できずにし、ることなどが ある。その中にあって本領域のソーシヤノレワーカー(以下 PSW)は、医療機関、保健所、共同作 業所などから活動を始め、当事者の疾病と障害の両方を視野に入れつつ、ストレングスを尊重 したアセスメントのスキル、他職種や関係者との協働のあり方、地域活動の視点と方法等を発展 させてきた。また特には社会防衛の一端を担わざるを得ない役割を引き受けつつも、クライエン トの権利擁護への取り組みを展開してきた。しかしながら PSW実践について、種々の実態調査 はあるものの、その内実について検証した研究は少ない。さらに実践を評価する指標も十分に 開発されてしもとは言えない現状がある。 そこで本研究では、 PSW実践の構造を描写しその実践行為を支える要素を抽出することに より、特にソーシヤルワーカーと精神障害当事者との関係性に焦点づけて、それらの要素聞 の関連を明らかにすることを目的とした。方法としては m i x e d m e t h o d法を採用した。 まず、第 l章では、上記のような問題の所在を、日本の精神保鰭高社領域の歴史を概観しな がら提示した。 次に第 2章では、ソーシャルワーク実践を理論枠組みから検討するために、本領域において 特に必要とされるエンパワメント理論と、 PSWにとって現念的には忌避されつつも実際には法的 にも認められ、日常的にも行われているパターナリズムについて論じた。前者については、ソー シヤルワークに導入されたことにより求められるようになった、①専門職によるクライエントの捉え 方、②専門職とクライエントのプロセスにおける役割、③専門職とクライエントとの関係性品、う枠 組みにおけるパラダイムシフトについて検討した。一方で、運動車念として誕生したエンパワメ ント理論を援助理論として適用する限界や、適用が適切ではない場合における課題にも言及し た。他方、パターナリスティックな介入が、正当化基準に照らされることなく無自覚に検証されな いままに行われている現状について論じた。つまりエンパワメントとパターナリズムは、実践現場 では混在している状況であることを示した。 第 31 者では、上記を踏まえ、日本における PSW実践の内実を理解するために、 2つの質的 調査を実施した。 1つ自は、精神障害当事者を調査協力者とするフォーカスグループ。インタピュ ーを実施し、ニーズ構造分析を行った ここでは、より良い援助のためには、 iPSWと当事者との O.
(4) 関係性J~IPSW のあり方j が重要であることが示唆された。前者においては、対等であり双方向. であることが期待され、また PSWと当事者との間にある超えられない接を認めつつも、両者がそ れぞれ成長することで信頼関係を形成し、パートナーシップへ至ることが示された また後者に O. 成長JI 地位向上JI 経験J 品、う4つの概念が抽出された。 おいては、「ポリシーを持つ JI 2つ自には、エキスパート PSW13 名を調査協力者とするインタビュー調査を実施し、 KJ~去に. より分析した。ここでも、個人と社会へアプローチするために、 IPSWとクライエントとの関係性jと. IPSW自身のあり方J が重要であることが明らかi こなったo 前者の関係性では、 f 対等であるが平 双方向の関係JI 信頼関係」から「パートナーで、あり運 等ではない役割分担のある特殊な関係JI 命共同体jに発展する様子と、「状況によって関係を変える Jとしづ様相が抽出された。また後者 のあり方としては、(知識・技術・価値・経験・熱意・感性の全てJI 人間観・人生観jさらに「謙虚に 天職と感じていること J、「人が好き jであることなどが 実践を振り返りながら成長し続けることj、f 多様に抽出された。. 2つの質的調査では、上記の IPSWのあり方j、IPSWクライエント関係」の他に、カテゴリーと して両方の調査から抽出された「対象者観J を含め、エンパワメント理論で、主張された 3つのパラ ダイムシフトの枠組みがソーシヤルワーク実践を支える要素で、あることが示された. O. そこで第 4章では、上記の 3概念について、先行研究をレビューし、それぞれが歴史的変還 を絞っつ、多様な内容を包含していることを提示した。「関係性jは、初期においてはワーカー の態度で説明されその後には構造の研究として発展したが、本研究では、ワーカーとクライエ ントとの間の相互作用の質に焦点を絞ることとした。関連する「信頼関係Jとしづ用語においても、 誰の何をどのように信頼するのかとし 1った多様な要素が含まれ、ワーカーは現場においてそれ らの要素を選択しつつ、状況に合わせた関係形成を企図していた。また「関係性」に影響を与え る要素としての「自己規定jと「対象者観J についてもレビューしたo I自己規定J は、「伝統的治療 者としての専門職J と「脱一専門性を目指す専門職J の両方を共存させつつ、状況に応じてその 度合いを柔軟に使い分けているありょうを示していた。また f 対象者観jは、「生活主体JI 責任主 体JI ストレングスを持つ者JI 生きづらさを抱える人」などの要素を包含しており、個々のクライエ ントの時々の状況にあわせて要素の大きさが変容すると考えられた。 第 5章では、これらの先行研究を踏まえて、「関係性jを中核とした PSW実践について検証 0 5名 、 2四日 するため、 3回の質問紙調査を実施した。 1回目はスノーボールサンフ。リング法で、 1. は X県精神保健許高祉士協会会員 4 7 5名 、 3回目は日本精神保樹高祉士協会会員 5 , 5 9 5名を対 象に実施した。毎回の分析結果を踏まえ、質問紙を精激化させてしりた. O.
(5) その結果、 f自己規定」は、「連帯者Jr 省察者Jr 援助者Jr u s eo fs e l f Jの因子により、また f 対象 者観jは 、 f 師匠Jr 被保護者Jr 責任主体Jr ストレングスjの因子、そして「関係性J は 、 r / ノ パ 《 一 ト ナ 職業的援助関係Jr 柔軟Jr イ 信 言 頼 関 係 係 、Jr 対等J の因子で 一シツブ。Jr た さらに、これらが実際に PSW実践に及ぼす影響を検証するために設定した「実践j概念は、 O. f 個別支援Jr 集団支援Jr 地域支援Jr 疾病管理」因子で、構成されることが分かった またいずれ O. の概念にも、エンパワメントとパターナリズムの両方の要素が合まれていることが示された。 対象者観Jは「関係性jに、逆に「関係性jは「自己規定j 次に回帰分析の結果、「自己規定jとf と「対象者観jに有意に関連することが明らか l こなったo これは坪上 ( 1 9 8 4 )の「循環的援助関係ム すなわち援助関係の結果としてワーカーもクライエントも変わるとしづ主張を想起させ、 PSWの 関わりから学ぶ姿勢や自らを省察する重要性が示唆された。 関係性jは「実践Jに有意に関連していた。ソーシャルワークの歴史を通して謡われて さらに f きた「関係性jの重要性について、実際に実践行為に影響していることが分かったことにより検 証できた。また経験年数や所属品、った PSWの属性による各因子の差も顕著で、あった. O. 第 6章では、以上の調査結果を踏まえて、 PSWと精神障害当事者との関係性を中心としたソ ーシャルワークの構造について、理論的枠組みを踏まえて考察した。すなわち、エンパワメント とパターナリズムは、実践において両方が必要とされており、それらは「自己規定J、「対象者観j、 f 関係性J品、う個々の概念の中でも共存していることを確認、した。但し、あくまで、エンパワメントを. 基礎としつつ、そのアプローチでは対応できないときの次善策としてのみパターナリスティックな 対象者観」、 介入の余地が残されること、アフ。ローチの内容に対応する一貫した「自己規定j、f 「関係性」が必要であること、そのためにも、 PSW自身が自らの認識と実践を厳密に振り返りつつ 自覚をもって実践に臨む必要があることを論じた. O. 最後に第 7章では、以上の結果と考察を踏まえて、 PSW実践と教育への提言を試みた。.
(6) 目次 序章 1.研究の背景. I T .研究の目的 目研究の方法. 2. N 論文構成. 5. 付記:各章の掲載先. 6. 引用文献. 8 0 0 3 3, 579. 4EE4aE4.. 第1 :章問題の所在 1.日本の精神保樹高祉領域の歴史的背景. 2 . 日本の精神保健詩話祉領域のソーシヤノレワーカーが置かれてしも状況. 4ag--4EE422. 1)精神保健福祉領域のソーシヤノレワーカーの歴史 2 ) 精神保健揺祉領域のソーシャルワークの課題. 3 .日本の精神保健諸冨祉領域のソーシヤノレワーク研究. 引用文献. 。 。 ウ tQd LqLQU り山つ山ワム qL ι. 第 2章 理 論 的 枠 組 み 1.精神保健福祉領域におけるエンパワメントアブ口一チ 1.エンパワメント理論の整理. 2 .ソーシャルワークへのエンパワメント理論導入の意義 3 .エンパワメント理論の導入により迫られたパラダイムシフト. 4ム氏 U 氏U. 1.パターナリズムの定義. っd q u q u q u A. I T .精神保健福祉領域におけるバターナリズム. 白 つ. 5 .エンパワメント理論の課題. ο q. 4 .PSW実践におけるエンパワメントアブ。ローチ. E 精神保健福祉領域におけるエンパワメントとバターナリズムの対比. ょ泊守. 3 .精神保健領域のソーシヤノレワークにおけるバターナリズム. 只u n u q u. 2 .バターナリズムの正当化基準.
(7) 引用文献. 4 4. 第 3章精神保健福祉領域におけるソーシャルワーク実践の 全体像把擦のための質的調査. 5 1. 1.調査の背景. 5 1. 1 1 .調査の目的と方法. 5 1. 沼田精神樟害者を調査協力者とするフォーカスグ、ループインタビュー (FGI)調査. 5 2. 1.調査の目的. 5 2. 2 .調査方法. 5 2. 3 .調査結果. 5 5. 1)各グループのニーズ. 5 5. 2 ) 4グループに共通して現れたニーズ. 6 1. ①ニーズ構造(図 3 5参照. 6 1. ②PSWに求められる援助の中身. 6 1. ③PSWに求められるあり方(図 3 7参照. 6 3. ④求められる PSWとの関係. 6 4. 3 )特筆すべきニーズ. 6 4. 4 .F G I調査に関する考察. 6 4. 1 ) ニーズ構造について. 6 4. 2 ) 援助について. 6 5. 3 ) PSWに求められるあり方について. 6 5. 4 ) PSWと当事者との関係について. 6 5. 5 ) エンパワヌントの可能性について. 6 6. 5 .F G I調査のまとめ N.エキスパートインタビュー調査. 6 7 6 7. 1.調査の目的. 6 7. 2 .調査方法. 6 8. 3 .調五結果. 7 0. 1 ) エキスパート PSWの仕事の構造. 7 0. 2 ) PSWの仕事の構成要素. 7 2. 1.
(8) ①PSWのあり方. 7 2. ②当事者との関係性. 7 2. ③ PSWの実践. 7 3. ④ソーシヤノレワーク観. 7 5. 4 .エキスパートインタピューに関する考察. 7 5. 1 ) エキスパート PSWの仕事の構造. 7 5. 2 ) エキスパート PSWの仕事の構成要素. 7 6. ①PSWのあり方. 7 6. ②当事者との関係性. 7 6. ③ PSWの実践. 7 7. ④ソーシャルワーク観. 7 7. 5 .エキスパートインタピューのまとめ. V.2つの質的調査に関する考察. 7 8 78. 1 .PSWの仕事の構造. 7 8. 2 .PSWの仕事の構成要素. 7 9. 1 ) PSWのあり方. 7 9. 2 ) 当事者との関係性. 8 0. 3 ) 実践. 8 1. V I .質的調査のまとめ. 82. 引用文献. 82. 第 4章. ソーシャルワーカー酬クライエント関係に関わる概念の整理. I.ソーシャルワー力一一クライエント関係の概念形成. 87 88. 1.関係として説明されるワーカーの態度. 8 8. 2 .関係の構成要素. 9 1. 3 .関係の状態. 9 3. 1 ) 信頼関係. 9 3. 2 ) パートナーシツブ。. 9 6. 3 ) 坪上援助関係論. 1 0 1. 4 .量的調査において取り上げる関係性. 1 0 4. 1 ・ 1 ・ l.
(9) 1I.関係性に影響を与える要素 1.ワーカーの自己規定. 1 0 4 1 0 5. 1 ) ワーカーの自己規定の変遷. 1 0 7. 2 ) ワーカーの自己規定の連続帯モデル. 1 0 7. 3 ) PSWの自己規定. 1 0 9. 2 .対象者観. 1 1 0. 1)不適応者からストレングスの宝庫へ. 1 1 0. 2 ) 精神保樹高社領域における対象者観の現状. 1 1 6. m .量的調査に向けての概念整理. 1 1 7. 引用文献. 1 2 0. 第5 章関係性への影響悶子の検証. 1 3 1. 1.目的. 1 3 1. I I .方法. 1 3 1. 1.調査プロセスの概略. 1 3 1. 2 .分析方法としての境目反応理論. 1 3 2. 3 .倫理的翻意. 1 3 4. E 量的調査のプロセス 1.スノーボールサンプリング調査. 1 3 4 1 3 4. 1 ) 目的. 1 3 4. 2 ) 方法. 1 3 4. 3 ) 結果. 1 3 7. 4 ) 考察. 1 4 2. 5 ) X県精神保健福祉士協会会員調査のための項目精査. 1 4 4. 2 .X県精神保健福祉士協会会員調査. 1 4 6. 1 ) 目的. 1 4 6. 2 ) 方法. 1 4 7. 3 ) 結果. 1 4 8. 4 ) 考察. 1 5 8. 5 ) 全国調査のための項目精査. 1 6 1. IV.
(10) 3 .全国調査. 1 6 2. 1 ) 毘的. 1 6 2. 2 ) 方法. 1 6 2. 3 ) 結果. 1 6 4. ①回答者の属性. 1 6 4. ②概念の検討. 1 6 9. ③概念問の関係. 1 7 8. ④因子間の関係. 1 8 2. ⑤因子と属性との関係. 1 8 2. W.量的調査の結果と考察 1.概念の検討. 200 2 0 0. 1)自己規定. 2 0 0. 2 ) 対象者観. 2 0 1. 3 ) 関係性. 2 0 2. 4 ) 実践. 2 0 3. 2 .概念間の濁係について 1 ). r 自己規定jと「対象者観jの「関係性J に対する影響. 2 0 5 2 0 5. 2 ) 3概念の「実践J に対する影響. 2 0 5. 3 ) 他概念の「自己規定J と「対象者観J に対する影響. 2 0 6. 3 .因子関の関係について. 2 0 7. 4 .因子と属性との関係について. 2 0 7. 1)年齢による差. 2 0 7. 2 ) 最終福祉教育機関による差. 2 0 8. 3 ) PSW経験年数による差. 2 0 8. 4 ) 所属機関による差. 2 0 9. 5 ) 経験したソーシヤノレワーク樹貯による差. 2 1 0. 6 ) 研修回数による差. 2 1 0. 7 ) スーパーピジョンの有無による差. 2 1 1. V.量的調査のまとめ. 2 1 1. 引用文献. 212. V.
(11) 1.理論的枠組みと関係性を中心とした概念との関連 1.エンパワメントとパターナリズムの共存. 2 .関係性を中心としたソーシャルワークの構造. I I .本研究の意義と限界 1.本研究の意義について 1 ) 自己規定、対象者観、関係性の視覚化. 2 ) 関係性を中心にした各概念の関連について の研究手法について. 6 6 6 9 2 2 2 3ぷ3 458 ワムワムワムワムワムつ山円ぷ 414E1i1in 222222222222. 第 6章結論:ソーシャルワー力一回精神樟害当事者関係. 4 ) 実践理論として. 2 .本研究の限界と今後の課題. 引用文献. 第 7章実践と教育への提言 1 .PSW実践への提言. 2 3 0 230. 1.省察について. 2 3 0. 2 .エンパワメントとパターナリズムの併用. 2 3 1. I I .PSW教育への提言. 232. 1.現任訓練. 2 3 2. 2 .養成教育. 2 3 4. 引用文献. 235. 謝辞. 235. 資料. VI.
(12) 序章 1.研究の背景 日本では、精神障害者注1)は何重にも生きづらさを負わされている。偏見は根強く、それは社 会にも精神障害者自身にもあり、社会福祉サービスも充実しているとはいえない状況にある。障 害の種別を超えた施策を総合的に展開する障害者自立支援法が成立したものの、精神障害者 が利用できるサービスが圧倒的に少ない現状は克服できておらず、他方で精神障害者特有の 保安処分であるとも批判される、「心神喪失等の状態で、重大な他害行為を行った者の医療及び 観察等に関する法律jが施行されている。このような取り組むべき課題が山積し、変革を迫られ ている激動の時代にこそ、質の高し、ソーシャルワーク実践の展開が求められている。 ソーシヤルワーカ一一クライエント関係jがあるとされ ( B l o m 従来、ソーシヤルワークの中心には f. 2 0 0 2 )、ソーシャルワークにとって「魂J ( B i e s t e k コ1 9 8 9 )、「核心J ( P e r l m a n1 9 7 9 )であり J基盤J ( 黒 )[ 1. 1 9 9 0 )、「規定で支える J ( 坪上 1 9 9 8 ) ものとされてきた。それは時代や文化、アプローチの違. いを超えて、常にソーシャルワ}クの核になるものとして諮られてきた したがって、日本の精神 O. 保鰭高社領域においても、精神保僻説的頁域のソーシヤルワーカー削(以下、 P SW)…クライエン ト関係を基礎とした、ソーシャルワーク実践が展開されることは必然品、える。. 0年の歴史と実績があり、現場にはすぐれて質の高い実践があり、言傑〉 日本の PSW実践は約 6 が認めるエキスパートが存夜するO それにもかかわらず、その実践を実証的に調査した研究は 少なく、未だその中身が明確に可視化されず、評価も十分になされているとはいえなし、(福島. 2 0 0 5 ) そこで、実践現場における PSW実践の内実を明らかにし、実践の質の向上に資するた 0. めのt 齢十を示すことが求められる。. 耳.木研究の目的 本研究の目的は、日本の精神保健福祉領域のソーシャルワーク実践の全体像を把握した上 で、実践を支える構成要素を明らかにし、特にソーシャルワーカーと精神障害当事者との関係 性に焦点づけて、要素関の関連を明らかにすることを通じて質の高い実践の内実を提示するこ とにある。 具体的には、先ず質的調査として、第一に精神障害者の視点から理想、の PSW像を聴き、第二 にエキスパート PSWへのインタピ、ューから、彼/彼女らの実践の内容を聴取した。再調査から 得られたデータによって、質の高い PSW実践の構造、ならびに PSW実践行為を支える要素と 関 それへの影響要素を把握することを自指した結果、 PSW実践行為を支える中核要素として f.
(13) 係 性jを、その「関係性jに影響を与える要素としておW が自らの役割をし 1かに規定するかとし、ぅ と 、 PSWのクライエントに対する見方である「対象者観jを抽出した。そこで、、次にア 「自己規定J 関係性J が実際に実践 ンケート調査において、上記の 3要素を測定するための道具を開発し、 f 関係性jは「自己規定jと「対象者観jから影響を受けるかを検証した。 を予測するか、 f 実践にとって留意すべきポイント l こついてまた、質の高い実践の その上で、質の高し'1PSW の専門性を向上させるための、効果的な教育や訓練について、提言することを目 ための PSW 指した。 なお、 PSW実践を構成する理論的榊且みとしては、エンパワメント理論とバターナリズムを取り 上げた。ソーシャルワークにおいては、エンパワメント理論が重視されており、実践されてもいる が、特に強制的措置が法的にも規定されてしも精神保健分野においては、バターナリスティック な介入も同時に行われている。したがって日本における精神保健福祉領域のソーシヤルワーク 実践の全体像を把握するためには、エンパワメント理論だ、けを枠組みとして用いるのでは不十 分であると考えた。エンパワメントとバターナリズムは対概念で、はないが実践現場では両方が 混在しているため、本研究ではそれら両方を対比させた上で、理論的枠組みとした。 関 さらに質的調査の結果、これらの理論的枠組を基礎として、 PSW実践を支える要素である f 係 性jと、それに影響する「自己規定jと「対象者観j品、う概念が抽出された。そこでこれら 3概 念を、より現場に引き寄せて実践を詳細に糊卒するための鍵概念とした。理論的枠組みと、概念 との関連を示すため、質的調査と先行研究調査で得られた結果から、 3概念それぞ、れにエンパ ワメントとバターナリズムの両方の理論が反映されていることを提示した。. 1lI.研究の方法 以上のように、単一の理論から演鐸的手法による研究では、エンパワメントとパターナリズムの 荷方が混在する日本の PSW実践に迫ることができなし立考え、演繕と帰納を循環させて包括的 に実態を捉えられる M i x e d m e t h o dの探索的順次デザインを採用した。 探索的順次デザインの目的は、 PSW実践の全体像を把握したうえで、その実践の中核となる 要素を抽出するこど、さらにその中核要素の構成要素、およびそれに影響する他要素を測定す る質問紙を開発し、要素間の関連を検証することである。最初に質的データを収集する理由は、 質の高い実践そのものの構造が明らかにされていないことと、実践の中核となる要素を把握す る必要があるためである。そこで質的調査においては、質の高い実践が成立する構造を明らか にし、 PSWの実践行為を支える中核要素とそれに影響する他要素を抽出することを自約とし、. 2.
(14) 的調査では、それら各要素を測定できる指標を作成し、その関連を明らかにすることを目指し た 。 M i x e d m e t h o dとは、量的・質的調査アプローチの間方を用しも調査デザインである ( M a x c y 2 0 0 3 ) 0すなわち量的データと質的データの両方の収集と分析を一つの研究の中で実施し a r a c e l l i2 0 0 3 )、量的・質的アプローチ双方の強みを用しも実用主義的方法として ( G r e e n e&C s h a k k o r i2 0 0 3 )デザインである。その強みとは、①最的・質的アプローチ 考案された ( T e d d l i e&T 双方の弱点(最は文脈や状況の理解の不足など、質は一般化の難しさと調査者のバイアスなど) を補うこと、②包括的エピデンスを提供すること、③量的・質的アプローチのどちらか一方では答 えられない聞いへの回答が可能になること、④時に敵対する量的・質的アフ。ローチを志向する 調査者たちを協力させること、⑤多様なものの見方やノミラダイムの使用を促進すること、⑥全て の方法を自自に使えるので実用的であること ( C r e s w e l l2 0 0 7 )である。 量的・質的アフ。ローチはそれぞ、れ異なるパラダイムに拠っているので、両方のアフ。ローチの並 立は不可能とする批判もあるが、方法とパラダイムは独立すると主張する立場、意図的に複数の パラダイムに取り組むとしち弁証法的立場、 M i x e d m e t h o dの基盤として実用主義的、あるいは s h a k k o r i2 0 0 3 ) 。本研究 改革一解放ノミラダイムを採用する立場等、複数の反論がある( T e d d l i e&T では弁証法的立場をとり、多様なパラダイムを使用することで、現象をより深く理解することを沼指 し た 。 本研究で M i x e d m e t h o dを採用する理由は、以下の 4点である。①本領域のソーシャルワーク 実践の全体像が明らかにされていないため、まずは実態を描写し、そこから焦点を絞るべき要 素を抽出する必要があること、②日本国有の新教を踏まえて、 PSWの実践行為に影響する要素 を明らかにした上で仮説を設定する必要があること、③実践行為とそれに関連する要素を測定 する指標を開発する必要があること、④実践行為と関連する要素との因果関係を検証し、一般 化して PSW実践に寄与するエピデンスを得ることである。 I [ 頁次的探索デ、ザ、イン ( C r e s w e l le ta . l2 0 0 3 )を設計した。こ 本研究では、函1のような 2段階の). のデザインは、質的データの収集と分析→量的データの収集と分析→調査プロセス全体の分 析としづ流れで実施され、質的段階から出た理論の構成要素を検証するのに適しており、測定 用具の開発と質的結果を一般化するのに活用できるデザインである。質的調査は、 PSW実践行 為に影響を与える要素の探索、それらを測定する用具を縄発/検証するための情報収集を意図 しつつ、重要なステークホルダーで、ある精神障害当事者と、エキスパート PSWの見方を探求す ることを目的に実施した。. 3.
(15) 質的調査. 質的調査 の成果物 ・実践の基 礎としての 関係性 'PSWのあ り方と対象 者観 'KJ~去. 'PSW実接構造. 調査票作成. 量的調査. 量的デー. タ収集 (スノー ボールサ ンプリング、. n = 1 0 5 ) .3 概念 『自己規定」 『対象者観j 「関係性J. -因子分析 ・回帰分析. . 4 概念 『自己規定」 「対象者観j 「関係性J 『実践』. -因子分析 ・回帰分析. ' 4 概念 『自己規定 J 『対象者観J 『関係性」 『実践j. -因子分析 ・回帰分析 .共分散 構造分析. 最終の結果 図1.順次的探索デザイン 第一の質的調査は、 4つの当事者のグループを対象に、フォーカスグループ。インタビ、ューを実 施し、「理想、の PSW像」を問い、そのデータから当事者のニーズ構造を浮き彫りにしたO そこで、は、 より良い援助のためには、 rpSWのあり方」と rpSWと当事者との関係性jが必要であることが示さ. 3名のエキスパートPSW を対象に半構 れた。第二の質的調査は、それぞれ所属機関の異なる 1 造インタピ、ューを実施し彼/彼女らの行ってしも実践の構成要素を明らかにした。ここでは、 実践の中核要素としての「関係性」には PSWのクライエントの見方が含まれること、「関係性」に は rpSWのあり方jが影響することが示された。これらの質的調査から、 PSW実践を支える中核 J : :r pSWの対象者観J 要素として「関係性」を、またそれに影響を与える要素として rpSWのあり方J. を抽出した。 ここでこれらの 3つの要素について、あらためて先行研究を探索し、質的調査結果と合わせて 検討の上、項目群を作成した。そしてこの要素を測定する道具の精微化と、要素聞の関連を検 証するため、 3回の量的調査を行ったo. 4.
(16) 量的調査のリサーチクェッションは以下のように設定した ①PSWのあり方、すなわち自らの O. 役割をし、かに規定するかとし、う「自己規定」、 PSWがクライエシトをし、かに捉えるかとし、う「対象者 観J 、PSWとクライエントとの関係で、ある「関係性J 、そして PSWの実践行為である「実践jは し 1か なる構成要素で測定できるか、②「自己規定jと「対象者観jは「関係性J を予測するか、③「関係 実践jにとって重要か、④4つの概念間のその他の関連はあるか、の 4点である。 性Jはf 対象は、第一の量的調査ではスノーボールサンプリングの 1 0 5名、第二の量的調査では X県 精神保健福祉士協会会員 4 7 5名、第三の量的調査では全国精神保健福祉士協会会員 5, 5 9 5 名である。 3回のアンケート調査を通して、「自己規定」、「対象者観J 、「関係性J 、「実践」の 4概念 を測定し、概念間の関連を検証した。. N.論文構成 第一章では、精神醸害者と PSWが置かれてしも状況を理解するため、日本の精神保樹高祉 領域の歴史的背景と、 PSWという専門職の成立背景を概観した。その上で、根強い精神障害に 対する差別や社会的入院の問題を挙げ、それらに対応するべき PSWの実態が把握されていな い現状を指摘した。こうした現状を受けて、本研究の目的は、質の高い PSWの実践の内容の理 解と、それを可視化するための道具の開発、実践に関連する要素の検証にあることを示した。 第ニ章では、精神保健福祉領域のソーシャルワーク実践を理解するための理論枠組みとして、 エンパワメント理論とパターナリズムを取り上げた。それは、本領域で最も達成が難しいが必要 で、あるとされるエンパワメントアフ。ローチと、否定的に受け止められつつ遂行されているバター ナリスティックな介入が、実践現場では共存していると捉えらえるからである。相矛盾するかに見 えるアフ。ローチを対比させっつ、それらの両方が課題を持ちつつも、老子定されずに存在するこ とを提示した。 第三章では、 2つの質的調査を実施した。精神障害者に対して「当事者にとって理想の PSWJ を聞くフォーカスグループ。インタピューと、エキスパート PSWにその実践内容を聞くエキスパート インタビュー調査を実施した ここから、 PSW実践を支える中核要素として、 PSWとクライエントと O. を抽出し、「自己規定J と「対象者観J が、その「関係性jに影響することも示した。 の「関係性J 、「自己規定」、「対象者観jについての文献 第四章では、前章の質的調査を受けて、「関係性J レピューをし、それぞれの概念の整理をした。「関係性Jについては、多様な論者がさまざまな用 語を用いて説明しており、混乱していたため、 f ヮーカーとクライエントとの相互作用の状態や質 であり、両者の間でやり取りされる情緒と力のあり様Jと操作定義を提示した。それぞれの概念に. 5.
(17) ついて、ソーシャルワーク史においてし、かに説明されてきたかを振り返り、その概念の構成要素 について検討した そしていずれの概念においても、エンパワメントとバターナリズムの両方を O. 反映した構成要素が含まれることを示した。 第五章では、 3回の量的調査を実施した。前章で整理した 3概念に、 PSWの実勝子為である と「対象者観jがf 関係性」に影 「実践j概念を加え、それぞれの構成要素を特定し、「自己規定J が「実践」に影響することを検証した。また逆に「関係性jは f自己規定J と「対 響を与え、「関係性J に影響し、「実践J も「自己規定J と「関係性J に影響することを明らかにした。 象者観J 第六章では、以上の調査研究を踏まえ、日本の精神保健福祉領域におけるワーカーとクライ エントとの関係性についての構造を包括的に考察し、本研究の意義と限界を述べた。 第七章では、本研究で得られた成果を通して、実践と教育・研修への提言を試みた。. 付記:各章の学会誌等掲載先 第 1章・・・「精神科ソーシヤノレワークの歴史的背景と現状. J Wソーシャルワーク研究j33(2),. 9 5 1 0 1, 2 0 0 7 . 第 2章一イ精神障害者福祉実践におけるエンパワメント. J W関西学院大学社会学部紀要』. 96・2 4 5 2 5 6 . 第 3章一-当事者を調査協力者とした F GIに関して 「精神障害当事者から求められる精神科ソーシャルワーカーのあり方と当事者と. J W ソーシ. の関係性一当事者を対象としたフォーカスグループoインタビューより一. 3 1 ( 1 ), 4 5 5 2, 2 0 0 5 . ヤルワーク研究j エキスパートインタピューに関して. f 精神科ソーシャルワーカーと精神障害当事者との関係性一ベテラン PSWのイ ンタビュー調査より. J W関西学院大特土会学部紀要j103;27仰, 2007.. 精神科ソーシャルワーカーの実態ーベテランPSW のインタビュー調査より一J f 『精神保健訴前叫3 8 ( 4 ), 3 9 7 4 0 5,2 0 0 7 . 第 4 章一明槻提訴酎士とクライエントとのソーシヤノレワーク関係f精神保健許高社j 4 1 ( 3 ),2 0 3,. 2 0 1 0 . 第 5章 一 第 l回目調査. f 精神保樹高祉領域におけるワーカークライエント関係、に影響する精神保健揺 祉士のアイデンティティと対象者観一項目反応理論による量的調査. J W 精神保 6.
(18) 健福祉j 41 ( 2 ),1 2 7 1 3 4 ,2 0 1 0 . 第 2回目調査. 「精神保健福祉領域における実践に影響するソーシヤルワーカ一一クライエント W精神障害とリハピ、リテーションj 1 4 関係一項目反応理論を用いた量的調査一J. ( 2 ),1 7 2 1 8 0,2 0 1 0 . 第 3回目調査 f 精神保樹高祉領域におけるソーシヤノレワーカークライエント関係に関する実証 研 究: rソーシャルワーカーの自己規定J,r 対象者観J ,r 関係性」概念を用いて. 『社会福祉学j 51 ( 3 ),3 1 4 3,2 0 1 0 . 注. 1)精神障害者の呼称として、基本的には「精神障害当事者J を略して「当事者J を用いる。「当 事者J とは、問題を定義されサービスを提供される存在ではなく、その存在をかけて社会によっ てつくられた「障害J を背負いつつ、いかに生きるかとしづ挑戦を与えられた者である。中西らが、 f 新しい現実をつくりだそうとする構想力を持ったときに、(中路)人は当事者になる J (中西他. 2 0 0 3 ;3 )とするように、当事者とは、単なる障害者ではなく、本人の人生における、さらには社会 に影響を与えてして主人公であるという合意がある。ソーシャルワークは、本来精神障害者とし て生きる当事者と、精神保餅高祉針旦う当事者としての PSWという、当事者同士の協働プロセス であると考えるからである。「障害J については、その漢字表記の問題を認識しつつ、「社会によ って障害を負わされた人々 J という意味で、そのまま用いる。 宏 ( 19 8 7 ) で「社会復帰J が法的に明記される以前の歴史的記 ただし l章において、精神保健j. 述について、精神路害者は障害者と認められておらず、病者として認識されおり、「当事者J 品、 う表記が文脈に合わないため、「精神病者J とする。また 2章のエキスパートインタビューにおい ては、エキスパート PSWが使用した用語を用いる。 3章以降の関係性の文脈においては、パー トナーになる可能性も認識しているが、 PSWとの対比を明示するためにけライエンむとする 歴 O. 史的には、当事者は援助の受け手と捉えられており、主体であるとは考えられていなかったた め、その文脈で「当事者」を用いるのは不適当であると考えた。また調査データである諮りや、引 用文の中には、「利用者j、「メンバー J品、った呼称が挙げられているが、藍接引用の場合は、 そのまま利用する。. 以上のような多様な呼称の使い分けによる混乱は危倶するものの、呼称そのものに、それを. 7.
(19) 使う者の立場や現念が表明されることや、時代背景を反映した当事者の扱われ方が表現される こと、そしてそれは大いに変還していることを考慮し、多様な呼称を採用した。. 2 )日本で 1 9 9 5年以降に使用されるようになった「精神保鰍高祉J 品、う用語には、?っの異な 2 0 0 3 )は分析している。本論では、堀口の提案する「精神保 る定義があり混乱していると、堀口 ( 健医療サービスと連携し、精神保健と社会福祉を統合した総合的な社会サービスに関する政策 と実践を総利する概念Jを意味する用語として用いることにする。. 3 )精神保鰯高社領域のソーシャルワーカーを本論で、は PSWと表現する。精神保樹高祉士と しづ国家資格は名税可虫占であり、他職種が「共通言語、認識を持ちながら地域で活動するため J (今村 1 9 9 9 )の資格として取得している場合や、資格を取得したまま一般企業に就職する者も おり、実践を論じる本論で、その国家資格名の使用は不適当だと考えた。国家資格ロ専門職で あるべきで¥資格をその専門性担保の基礎にしてしてのは今後の課題として、本論では現状を 踏まえて PSWとする。. 引用文献 B i e s t e k,F e l i xP .( 1 9 5 7 )乃 θ c a s e w o r kr e l a t i o n s h i p ,L o y o l aU n i v e r s i t yP r e s s .( = 1 9 8 9,田代不ニ 男・村越芳男訳『ケースワークの原財よりよき援助を与えるために』誠心書房.). C r e s w e l l,J o h nW.,&P l a n oC l a r k .,V i c k iL . ,G utmann,M i c h e l l eし , &H a n s o n,W i l l i a mE .( 2 0 0 3 ) b b a s .,& T e d d l i e,C h a r l e se d . A d v a n c e dm i x e dm e t h o d sr e s e a r c hd e s i g n s .b yT a s h a k k o r i,A 劫. n d b o o k0 1 m i x e dm e t h o ゐ ' .J ns o c i a l&b e h a v i o r a lr e s e a r c h ,S a g eP u b l i c a t i o n s, I n c .2 0 9 2 4 0 .. o h nW.,& P l a n oC l a r k . , V i c k i L .( 2 0 0 7 )Dθ ,' 8 1 如I n gandc o n d u c 出 'gm的 d m θt h o a 台 C r e s w e l l,J. r e s e a r c h .S a g ep u b l i c a t i o n s,I n c . e n n i f e rC .,& C a r a c e l l i,V a l e r i eJ .( 2 0 0 3 )M a k i n gp a r a d i g m a t i cs e n s eo fm i x e dm e t h o d s G r e e n e,J p r a c t i c e,T a s h a k k o r i,A b b a s .,& T e d d l i e,C h a r l e se d .H andbooko fm i x e dmθt h o d s .J nsoαW&. b e h a v i o r a ln θ' s e a r c , hS a g eP u b l i c a t i o n s,I n c .9 1 1 1 0 . G u t i e e 汀e z,L o r r a i n eM .,P a r s o n s,R u t h .,&Cox,E n i dO p a l( 1 9 9 7 )E m p o w e r m e n ti ns o c i a lw o r k p r a c t i c e :A s o u r c e b o o k,W a d s w o r t hP u bC o . (2 0 0 0,小松源助臨尺『ソーシャルワー-ク実践に ご. おけるエンパワーメントーその理論と実際の論考集一』相川書房.). 1 9 9 5 )r ソーシヤルワークにおける E m p o w e r m e n t概念の検討-Powerとの関連を中心 久保美紀 ( lこ -JWソーシャルワーク研究~21 ( 2 ),9 3 9 9 .. Maxcy ,S p e n c e r ] .( 2 0 0 3 )P r a g m a t i ct h r e a d si nm i x e dm e t h o d sr e s e a r c hi nt h es o c i a ls c i e n c e s :The. 8.
(20) s e 訂 c hf o rm u l t i p l emodeso fi n q u i r yandt h eendo ft h ep h i l o s o p h yo ff o r m a i 1 sm,T a s h a k k o r i,. w .. A b b a s ., & T e d d l i e, C h a r l e se d .H andbooko f m i x e dmθt h o d 弘I n s o α &b e h a v i o r a lIiθ ' S e a r c h , S a g e. Pu b l i c a t i o n s, I n c .5 1 8 9 . 向谷地生良 ( 2 0 0 2 )r 仲間の力一浦河における精神科リハピ、リテーションフ。ログラムへの当事者 参加の現状と意義一JW精神療法~28(6) , 6 9 8 7 0 4 .. 中西正可・上野千在恵子( 2 0 0 3 ) W当事者主権J 岩波新書. 2 0 0 4 ) W日本精神保健福祉士協会 日本精神保健福祉士協会医療福祉経済部業務検討委員会( 員に関する業務統計調査報告(平成 13 年 10 月全国調査)W精神保鰍高祉~27 号別冊,へる. す出版. P e r l m a n, H e l e nH出 T I s( 1 9 7 9 )A θ' . ! a t i o n s h i p ,t h θ h θ E τo f h e h フ mgp θ o p i l θ "TheU n i v e r s i t yo fC h i c a g o P r e s s . t e v e nP .,S i l v e r m a n,C訂 0 1,&Ternkin,Tanya( 1 9 9 3 )Empowermenta n ds e l f h e l pa g e n c y S e g a l,S. w . 砂 七1 T k ,3 8 ( 6 ), 7 0 5 7 1 2 .. o α p r a c t i c ef o rp e o p l ew i t hm e n t a ld i s a b i l i t i e s,S. T e d d l i e,C h a r l e s .,& T s h a k k o r i,Abbas( 2 0 0 3 )M a j o ri s s u e sa n dc o n t r o v e r s i e si nt h eu s eo fr n i x e d b b a s .,& T e d d l i e,C h a r l e se d . methodsi nt h es o c i a la n db e h a v i o r a ls c i e n c e s .byT a s h a k k o r i,A. Handbookofm 立θ dm θt h o d s .I ns o αw .&bθ0avioralIiθIsearc , h SagePu b l i c a t i o n s, I n c .シ5 0 .. 9.
(21) 第 1章 問 題 の 所 在 日本で精神障害者が直面している偏見や差別、就職や地域生活といった当たり前の生活から の疎外、社会的施策の不十分さといった社会的障壁を理解するため、日本の精神保健福祉領 域の歴史的背景を概観する。そしてこれらを踏まえ、 PSWが置かれてしも現状との関連におい て、本研究の位置づけを提示する。. 1.日本の精神保健福祉領域の歴史的背景. 1 8 7 3年の東京番人規郎は、治安を目的に精神病者収容を法的に規定した。それは、路上の 8 7 4年には、「狂病を発する 狂癒者は取り押さえ、警部の指揮を受けるとし、うものだ、った さらに 1 O. 7 2号が出され、精神病者を監 者は、その家族において厳重監護せしむJという、警視庁布達規 1 視する義務が家族に負わされた。明治以降、「精神病者」は法的に規制されるようになった 彼 O. /彼女らを取り締まったのは警察で、あり、「精神病者の存在は、路上俳御や他害行為などの「問 題行動 J~こよって認識されたO つまり「精神病J とは、これら問題行動の別名で、あった J(永井. 2 0 0 7 :1 1 4 ) 01 9 0 0年に「精神病者監護法jが制定されたが、精神障害者に対するそれまでの考え 方や対策を踏襲するものだ、った 精神病患者の不法監禁を禁止してはいるが、届け出によって O. 座敷牢などの私宅監援を法的に認めるもので、あった ここでもその管轄は警察庁のままであり、 O. 社会防衛を目的に精神障害者を取り締まるという排除の思想、が色濃いものだ、った. O. こうした動きに反対した呉秀三らは、精神病者は病人であり、まず治療が必要だとして、精神科 病院の設置を求めた。そうした尽力もあり 1 9 1 9年に精神病院法が成立したが、予算がつかず公 立病院設置は進まなかった 結局、代用病院としての民間精神科病院と私宅監置が、大多数の O. 精神病者の居場所であり続けた。 第二次世界大戦後、座敷牢制度を家族に対して合法化したといえる精神病者監護法と、公立 病院の設置を促進で、きなかった精神病院法にかわる法として精神衛生法が成立した 衆議院に O. おいて法案を発議した中山欝彦議員が、「正常な社会生活を破壊する危険のある精神障害者 全般をその対象としてつかむことにした」と説明しているように、やはり社会!坊衛的発想の色濃い もので、あった ただ隔離収容する施設は、私宅ではなく精神科病院に変更された。そして受け O. 皿として公的精神科病践の設置を義務付け、強制入院の制度を規定した。ようやく精神障害者 の処遇は、響察行政の手を離れることになった 法的には精神病者は医療の対象になったが、 O. それはすなわち医療機関が社会防衛の一端を担うとし、う、ねじれたシステムのスタートで、もあっ た 。. 10.
(22) この後、精神科病践の設置・運営費の国庫補助を民間にも拡大し、政府出資の医療金融公庫 を設立して低利長期融資の特別枠を設けることで、民間の精神科病院が乱立した。さらに自傷. / 2から 8 / 1 0に 他害のおそれのある患者を強制的に入院させる措置入院に対する国庫負担を 1 引き上げたので、措置患者は病院にとって取りはぐれのない資金源になってしりた 折しも開 O. 発された向精神薬も、「化学的拘束衣jの役割を果たし、精神科特例によって認、められた数少な いスタッフで、大勢の入院患者を管理する手段としても、利用されたのである(芹沢 2 0 0 5 )。. 9 5 0年に 1 9, 9 7 8床だった精神科ベ こうした国による民間精神科病院設立の誘導は効を奏し、 1 9 6 0年には 9 5, 0 6 7床 、1 9 7 0年には 2 4 7, 2 6 5床 、1 9 8 0年には 3 0 8, 5 5 4床へと膨れ上が ッドは、 1 った(各年末病院報告)。その内で公立のものは、現在に室るまで 5% を占めるにすぎない。ま. 9 9 9年以降には 1%を超えていない措置事(全入院患者の内で措置入院患者が占める都 た 1 合)も、 1 9 6 4年のピーク時には 3 7 . 5 %にまで、至っているo 6 0年代から欧米諸国は脱施設化に取 り組んで、いたが、日本はその同時期に、全く逆行していたことになる。こうして、都市から離れた 巨大精神科病院は、経済至上主義の営利施設であると同時に f 治安を望む社会の要請に応え るj施設となっていった(芹沢 2 0 0 5 :1 9 0 )。. 1 9 8 0年代になって精神科病院の不祥事が明るみに出るようになり、間遠から国際法律家委員 J )と国際医療従事者委員会(I CHP)による合同調査団が派遣された。その結果精神障害 会(IC. 者の人権と処遇について著しく不適切であるとして、改善勧告が提示された。そうした外圧もあり、. 1 9 8 7年に精神衛生法が改正され精神保健法が成立する。ここではじめて精神障害者の社会復 帰の推進がうたわれ、社会復帰施設が創設された。しかし本来ならば福祉的アプローチである を担う施設だが、その 5 1 .2% の運営主体は医療法人(障害者自立支援法への移行 「社会復帰J. 0 0 5年社会福相茄設等調査)であり、医療による福祉の齢、込みと批判される状況が 前である 2 生まれた。医療法人立の中にも先駆的な活動を展開している施設もあったが、医療重視とし、う 自本の政策もあしぜって、社会福祉法人や NPO法人による施設運営の展開が十分になされな かった. O. 1 9 9 3年に公布された障害者基本法で、精神障害者は「障害者Jとして初めて法的に明記され 9 9 5年には精神保健及び精神障害者福祉に関する法律が施行され、ようやく「福祉J た。さらに 1 を冠する法ができ、「自立と社会経済活動への参加の促進jが諮われた。実に身体障害者福祉. 6年である。そして 2 0 0 5年、障害者自立支援法が公布された。 3 1 嘩害のサー 法から遅れること 4 ビスが一元化されることになったが、質・量共に大幅に遅れていた精神障害者に対する福祉が 一足飛びに充実されることはなく、交通機関利用料割引や各種手当など、精神障害者だけが対. 1 1.
(23) 象とされない制度なども多く残されている。 一方、 2 0 0 3年に f 心神喪失等の状態で、重大な他害行為を行った者の医療及。潮察等に関す. Jが制定された。従来の、罪を犯した精神障害者の処遇に関する制 る法律(以下、医療観察法) 度には、以下のような課題があった すなわち、触法精神障害者に対する処遇の判断を、司法 O. にかわって医療が担わなければならなかったこと、心神喪失を理由に不起訴になっても、医療 が不要とされれば釈放され、その後の処遇は皆無で、あったこと、不起訴や無罪になった者の約. 4筈IJに措置入院に該当する症状がなかったこと、措置入院になっても、退院後のケアを継続させ るシステムは制度化されていなし℃と、当該障害者の責任能力を判断する鑑定の信頼性が疑問 視されていること等である。また刑法犯検挙人員の中で精神障害者(疑いのある者を除く)が占め .4%に満たないが、殺人は 4.2%、放火は 7.5%と多くなる(平成 2 2年版犯罪白書)。 る割合は、 0 こうした触法精神障害者の処遇については、特に重大犯罪において大きな課題であり、それら に対し医療観察法は、一定の司法の関与の道筋をつけた しかしこの法によって上述の課題は O. ほとんど解決されておらず、成立前から、そして現在に至るまで、弁護士団体、精神科医療団体、 そして精神保健福祉士や当事者団体がこの法に反対してしも根拠(再犯予測はできなし亡と、 精神障害を理由とした予防拘禁になること、この法により精神障害者は危険だとし、う偏見を助長 すること等々)は、依然として残されている。したがって「医療の衣を借りた保安処分そのもの j (高木 2 0 0 7 )と言われるように、治安維持のために監督すべき対象として精神障害者を捉えて いると断ぜざるをえない。 このように、精神障害者は社会防衛の観点から隔離収容される対象で、あったが、底療の対象と なり、ようやく社会福祉の対象になったように見える しかし一方で、医療観察法が成立し、精神障 O. 精神の病は、歴史的に犯罪と 害者口危険分子として、縞離の対象にする装置も維持している。 r. 0 0 5 : 2 1 4 )、治安を脅かす 同一視する論理のせいで、『普通の病』となることを妨げられJ(芹沢 2 存在とされ続けている。また、医療の中でも、医師や看護師の配置基準が他科より低く設定され ている精神科特例のように、精神科特有の基準が設けられ、他科と向等のサービスが受けられ ない仕組みが作られている。さらに社会福祉においても、長く医療機関によって担われていた. 0 0 4年の 樹恥相まって、他領域と比べるとサービスの質・量共に著しく遅れてし泊。たとえば 2 厚生労働省「障害福祉サーゼス利用の実態把握調査Jによると、自治体のホームヘルプ。実施率. 3 %、知的障害 6 6 %に対して、精神障害は 4 9 % であり、ショートステイの実施率は、 は、身体障害が 8 8 弘、知的障害が 6 1 %、精神障害が 6 % となっている。 3障害一元化が基本とされる障 身体障害が 3 害者自立支援法移行後も、精神障害者は利用を拒否子される施設も存在する。. 1 2.
(24) 以上のような、何重にも張り巡らされた差別を一身に引き受けているのが、日本に生きる精神 障害者なのである。. 2. 日本の精神保健福祉領域のソーシャルワーカーが置かれている状況. 1)精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの陸史 日本のPSWの起源は、医療機関、保健所、作業所にたどることができる。 PSW~士、それぞれの. 機関で、培った実践を受け系齢、でいるとし、える。 第一は医療機関である。 1 9 4 8 年に、最初のPSW が国立国府台病院に置かれ、その後、医療機 関を中心に配置されるようになった 当初のアメリカから導入されたPSW の樹敷として柏木ら O. ( 1 9 6 8 )は、①ソーシャルワークの一分野として、精神医学ではなく、ソーシャルワークの理論と 実践体系を基礎とする、②ケースワークを中核としつつもグループ。ワーク、管理運営、教育訓練、 調査研究、地域社会への教育活動をも機能とする、③精神医学との直接かつ責任ある関係に おいて行われる、つまり精神医療チームの一員として活動する、④精神障害者対象のサービス 提供機関、精神科医療、精神衛生の機関、施設において実施される、の4点を挙げ、①②は. PSW を他の専門職業から区別させ、③④はPSW を他領域ソーシャルワークから区別させる点と している。こうした斬敷をふまえつつ、当初は専門職としての確立を目指し、カ動精神医学、ある いは岡村理論に学問的基盤探しをしていた(坪上1 9 9 2 )。そうした現臓PSW と研究者を中心に8 8 名のおWが集まり、 1 9 6 4 年に日本精神医学ソーシャルワーカー協会 ( 1 9 9 9 年に日本精神保健福 祉士協会に改名。以下PSW 協会)が結成された。折しもライシャワー事件を機に、精神障害者の 隔離収容強化に向けて国策が転換しようとする時期であり、協会は精神障害者の人権擁護と自 らの専門職化を軸に、活動を展開してしりた. O. 第二は保慨庁で、ある。 1 9 6 5 年の精神衛生法改正に伴い、地域における精神保樹高祉の第一 線機関である保健所に精神衛生相談員(現精神保樹高祉相談員)が配置された。その相談員と は法律上の職名で、はなかった注1)が、精神障害者の症状悪化を防止し、社会復帰を促進する一 定の資格要件を持つ専門職を指したものである その資格要件とは、大学で社会福祉または心 O. 理学の課程を修めて卒業したもの、医師、講習を受けた保健衣帯で精神衛生に関する経験を有 するもの(柏木1 9 6 8 )で、あった。. o m m u n i t yo r g a n i z a t i o nは不足していた(河村他 当初はケースワークが中心で、患者紙織化やc. 1 9 6 7 ;岩田他 1 9 7 2 )が、次第に家族会や小規模共同作業所(以下作業所)を創設する原動力 になってして。一方で、、法に規定された措置鑑定にかかわる社会防衛的役割をも担っており、当. 1 3.
(25) 事者支援との間のジレンマの中で業務を展開することを余儀なくされていた(林 1 9 7 5 )。. 9 7 3 年に、 そして 1. r y問題Jが起こる。これはYさんとその家族が、 PSW協会総会で、保健所の. 相談員によって精神病者とみなされ、強制入院させられたと告発したものである。この告発は PSW~ こ、ともすれば社会防衛の担い手として精神障害者のj叡u侵害に加担する危険性があるこ. とを気付かせると共に、 PSW 協会には、その存続の危機に陥るほどの種障を与えた。その後協 会は、精神衛生法における入院制度の点検、精神障害者の立場に立った業務の基本姿勢、こう. 0 年をかけて取り組み、 8 2 年「精神棒害者の した業務を保障する身分の確立品、う3つの一課題に 1 社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めるJ ことを宣言した。この出来事は、ソー シャルワーカーとしての専門性を探るとき、その実践を相手の立場から見直す必要性をPSW~こ. 諜した(坪上1 9 8 2 )品、う意味で重要な意味を持つ。 第三は作業所である。 7 0 年代から共同住居や作業所の活動が始まり、 8 0 年代に入ると作業所 は急増する。これらが補助金対象事業になる前は、 PSW たちがこれらの活動を支援しており、ま さに実践の中から地域生活支援の必要性を見出し、展開していたのである(谷中 1 9 8 2 )。増田. ( 2 0 01)は、社会防待?と医療が精神障害者対策の主軸を占め続けた日本において、精神障害者 の地域生活支援の中心を担った作業所活動は、入院中心の精神医療へのアンチテーゼ、であり、 家族や関係者のやむにやまれぬ願しせ努力により広がった運動であったと評している。また患 者会活動も組織され、全国精神障害者社会復帰車絡協議会が創設された。この活動にも PSW の支援の存在があり、こうした活動はサボーターやノミートナーとして関わるPSW の新たな活動モ デルを提示してしりた(谷中 2 0 0 0 ) 。. 1 9 8 7 年の精神保働宏において漸く社会復帰施設が法的に位置づけられ、精神障害者を対象 とした地域生活の考え方が導入された。それらの施設は、第2 種社会福祉事業にとどまるなど、 施設のあり方そのものには課題もあったが、その後さらに地域生活支援センターやグループoホ ーム品、った櫛烈〉加わり、 PSW の実践の場は確実に広がってしりた これらの施設の中には、 O. の聯見定が法的に 「精神科ソーシャルワーカーJの配置規定の設けられたものもあったが、 PSW ない中では、言傑〉がPSW~こなれるとしづ、つまり専門性の質の保障がなされないまま配置規定だ. けが先行する異常な状態が続いていた(大野 1 9 9 8 ) 。. 1 9 9 7 年に「精神障害者の社会復帰に関する相談援助業務に従事する者の資格jとして精神保 健許高祉士法が成立した。ここで初めて社会福祉学を基盤とした専門職として、精神障害者の生 活を中心とした実践を展開することに、法的な裏づけができた。しかし業務独占ではないので、 他専門職が精神障害者に対するソーシャルワークを展開するのを妨げるもので、はなく、現に障. 1 4.
(26) 害者自立支援法における障害者福祉サービスにおいては、精神保健詩話祉士の配置規定はな い。作業療法士や看護部など他耳献重が、精神保健許冨祉士資格を取得してしも場合もあれば、資. 0 1 1年2 月末日現在で 格取得後、社会福祉に従事しない者も多く柄主する。国家資格登録者は2 4 7, 9 0 7 名だが、障害者支援施設等に8 3 2 名、精神障害者社会復帰施設に7 4 3 名を含む、社会福 , 6 9 1名、障害福祉サービス等事業所に3 , 5 1 5 名( 2 0 0 9 年社会福相茄設等調査)、医療 布蹴設に 1 , 1 5 4 名( 2 0 0 9 年医療施設(動態)調査・病院報告)、保健所に 1 , 1 7 4 名( 2 0 0 9 年地域保健・ 機関こ7 健康増進事業報告)が従事しているとされている。これらの数字を総計すると 1 3, 5 3 4 名となるが、 調査時期も実施主体も異なるため、実態を反映した正確な数字とは言い難い。一方、厚生労働. 0 0 8 年に実施した「介護福祉士等現況把握調査Jによると、精神保樹高祉士の回答者(全 省が2 割粗野の内53%が、福祉・介護分野で就労しているという結果が得られており、 登録者数の2. 4, 0 0 0 名は現任PSWになる。ただこの数字も回答率の低さから信頼性は低い。 単純計算すると約2 2 0 1 1 年4 月時点で7 , 6 9 0 名)、上記調査で挙げ このように、国家資格登録者数、職能団体会員数 ( られる人数のすべてが異なるとし 1う、実働人員把握さえ罰難な状況になっている。 現在 PSWは多様な機関や紘織に配置されているが、以上のような歴史を振り返ると、その実 践のルーツは病院、保健所、作業所での実践に見出せる。まず病院における疾病と障害に焦 点を合わせた関わりとチームアプローチから、精神棒害者の障害やストレングスも含めたアセス メントとケースワーク、他聯重を含め関係者と協働するあり方、そのために PSWとしてのアイデン ティティを具備する姿勢を引き継し 1でしも。次に保健所における、社会資源やシステムを開発し てきた実践から、地域活動の視点と方法、社会妨衛の一端を担わざるを得ないシステムの中に あってなお、生活の視点と精神障害者の権利を擁護する立場を堅持する姿勢を引き継いでいる。 最後に作業所における生活を共にするスタイルから、精神障害者との関わりのスタンス、精神障 害者のニーズから新たに社会資源を創造してして活動を引き継し、でしも。さらに PSW全体とし て 、 fy問題jを踏まえて人権侵害に加担する危険性を持つ立場性の自覚と、だからこそ個人の 尊厳を守ることへの厳密な意識化がなされた。 2 ) 精神保健福祉領域のソーシャルワークの課題. これら PSWが引き継し、できた姿勢や実践は、当然のことながら、精神障害の糊敷およびその 置かれてきた状況と通じている。すなわち疾病と障害の共存、治安維持の対象として捉えられて きた歴史、社会福祉に関する法・制度・サービスの著しい遅れ、根強いスティグマの存在への対 応である。そこから見出される PSWの課題は、社会防衛的側面を持つ役割を担うと向持に尊厳 を守ることのジレンマへの対応、窓療機関の職員としての立場と個人の権利を守る専門職として. 1 5.
(27) の立場のジレンマへの対応、社会資源のない中でその開発や地域啓発、ソーシヤノレアクション である。 第一に、精神障害者個人の尊厳を守ることと、社会防衛的役割を担うことという、相矛盾する機 能を負わされている。例えば、保安処分だとして成立に反対を表明してきた医療観察法の中に は、精神保健福祉士が従事する「精神保健参与員」や「社会復帰調整官」が配置されている。指 定医療機関の PSWも含めて、ケアと共に再犯予防品、う視点を排除で、きなくなった また、措置 O. 鑑定の調整をする保健所の PSWも明らかに葛藤を抱えざるをえない。 第二に、医療機関の職員としての倫理と、 PSWの専門的倫理が対立する場合もある。例えば、 ベッド充足率が経営に直結する精神科病院にあって、社会的入院者の退院支援をすることにも、 、た訪問看護件数がノルマ化されている医療機関もあり、 ジレンマがある 保険診療点数が付v O. 患者のニーズとの間で、ジレンマが生じている。さらには仮に医療機関が精神障害者に対して人 権侵害にあたる行為をしていても、人権擁護を旨とする専門職だからとし、って、 PSWが自らの所 属する医療機関を訴えるのは難しい。 第三に、新たな社会資源の開発が求められている。障害者自立支援法により、障害種別を超 えたサービス利用が進められているが、上述のように、精神障害者には依然として選択肢が少 ない。したがって、従来他障害者を対象にサービス提供をしていた事業所に対して、精神障害 者が利用できるように、ケアに関する知識と技術を伝えることや、社会福祉領域以外の社会資源 を、精神障害者が活用できるものにしてし 1くこと、新たな社会資源の創造品、った方法によるア プローチが必要である。 また、法制度的な課題に対して、政策提言をしてして役割も担っている。精神科特例や精神保 健福祉法における保護者規定や移送制度、地域移行の進まなさなど、法制度的課題が残され ている。精神障害者が間年齢の他の人々と同じように地域で生活するとしづあたりまえの権利を、 あたりまえに実現するために必要な制度政策について、検討し、現場から声を挙げる役割もあ る 。 さらに根強いスティグマの存在は、精神障害者に生きる意味や人生の価値を問う。中途障害 者である精神障害者は、その差別を自らに内在化しており、一様に「自分が精神障害者になると と語り、かつては「何をするか分からない、社会の幕後者J 品、った偏見を は思っていなかったJ 持っていたとし、う。発病前に持っていた、あるいは持ってしもと信じていた自分の社会的価値が はく奪され、「精神障害jとしづ否定的な評価だけが自らのレッテルになると感じるような経験を通 は彼/彼女らにとって避けでは通れないテーマに して、「それでもなお何のために生きるのかJ. 1 6.
(28) なる。しかし実は自らの存在価値や、生きる意味の探究は、すべての人に共通する普遍的な聞 も同様にその課題に取り組まざるを得なくなる。 PSWは、こうしたスピリチュアルな いであり、 PSW 課題も担っている. O. 3. 日本の精神保健福祉領域のソーシャルウーク研究 以上のように、 PSWの実践の現場は課題が山積しているにもかかわらず、実態把握もできない 状況であり、し、かなる実践をなすべきか、その方向性を示すエピデンスを提供する研究もまだ 十分とはいえない。 精神保健福祉領域のソーシャルワーク実践に関する先行研究として大半を占めるのが、 PSW の先達による、実践経験から物した方法論や援助論であり、現任PSW の実践報告である。 C i N i i でf 精神障害j、「福祉j、「実践」品、う 3つのキーワードを入れて検索すると、 1 5 3件がヒットし、そ. 3件と、外国の実践について紹介したもの 8件を除外す こから、他専門職や療法に関するもの 1 3 3件になる。その内、文献による理論研究が 2 8件、質的量的調査報告が 1 6件、実践から ると 1 考察を加えたものが 8 8件で、あった( 2 0 1 1年 6月 6日検索)065%を占める実践報告は、現任 PSW の日々の実践に方向性を示し、工夫すべきアイデアを提供する重要な知の蓄積である。 しかし一方で、、実践モデ、ル、実践スキルや支援技術について、質的・量的調査によって検証 したものは少ない。精神保健福祉領域のソーシャルワーク実践に関する先行研究をレビューし た福島( 2 0 0 5 ) も、その料教として、実践報告、事例研究の形が多いこと、地域生活支援のモデル が示されているが理念や概念が示されるのみで実践の内容について具体的には記述されて いなし℃と、 PSWの方向性やそデ、ノレも思念的、抽象的なものが多いこと、特定のプログラム、援 助方法、利用者の効果測定の実証的研究は少なし亡となどを挙げている。 質的調査については、移送サービス利用者へのインタゼユ}から受診援助を考察したもの(大 塚他 2 0 0 9 ) や、急性期病棟担当ソーシャルワークの課題を検討したもの(岩本 2 0 0 9 )、居住サポ ート(山口 2 0 0 6 )やセルフヘルプ。グループ。(守村 2 0 0 5 )などに焦点を絞ったもの、 PSWのf 実践. 0 0 8 )がある。また横山 ( 2 0 0 4 ;2 0 0 8 )は 、 PSWがし、かにソー 知」の形成過程に関する研究(驚藤 2 シャルワーク援助観を形成し保持させているのか、その援助観はどのようなものかを描写した。. ( 横山 2 0 0 8 : 3 5 )は、行動の方向性を決定するソーシャルワーク この「ものの考え方や行動の型J の核心であるとし、この PSWの認識に焦点を絞っている。ここから得られた知見によって、それ まで、エキスパートによって様々に表現されてきた経験知が、理論として可視化で、きるようになっ イ可をするか」としづ目に見える部分ではなく、 PSW自身の意識とし 1う見えない部 たと考えられる。 r. 1 7.
(29) 分であり、だからこそ実践を左右するところを描写した横山の研究の成果は、本領域の実践にも 研究にも大きな影響を与えたとし、える。 i N i i検索で、ヒットした 8 件の内、筆者の行った調査以外に 量的調査研究としては、上述の C. PSW実践に焦点を合わせたものはなかった。上記のキーワードで、はヒットしないが、 PSW実践 に焦点を合わせたものとしては、. 2 0 0 1年に日本精神保樹高祉士協会が全国の会員の内 9 2 7名. を対象に実施した「日本精神保鰍高祉士協会員に関する業務統計調査J(日本精神保樹高祉士 協会医療福義臨済部業務検討委員会. 2 0 0 4 )や、群馬県で実施された実態調査(鈴木 2 0 0 8 )な. どがあるが、それらは業務の項目を提示して、その実施頻度や重視度、自信を問うているため、 その業務の中身を把握するに至っていなし、。. 2 0 0 3,2 0 0 4,2 0 0 6 )は、一連の研究で、 その中で、栄 (. PSWのエンパワメントアフ ローチに基づ o. く実践活動の尺度を開発し、それがアセスメント活動と関連することを検証した。日本の本領域 での量的調査のさきがけともいえる研究である。調査結果から、ストレングスに着目するときの有 効なアセスメント活動の着限点を提示し、. PSW実践の現状と個人要因による差を明らかにしてい. る。しかし、これはエンパワメント実践に焦点を絞ってしもため、パターナリスティックな介入につ. 2 0 0 5 )は 、 いては言及されていない。また福島(. PSWの実践言判団指標を作成し、その実践に影響. を与える要因を見出している。丁寧な先行研究から鍛密なスタイルで尺度を作成し、演緒的な. 4項目の評価尺度から、 手法でなされた量的調査のさきがけとし、える。信頼性、妥当性共に高い 3 「問題予防や課題解決のスキル群J、「信頼関係を築くスキル群J、「対人関係、技能や自己百軒面を 、「ケースマネージメントのスキル群J の 4因子が抽出されている。この調査によ 高めるスキル群J って、. PSWの実路頻度と、 PSWの所属する施設のサービスの充実とが関連することを検証した。. しかし基礎にしてしも米国で、開発されたソーシャルワーカーのスキル尺度には、日本の実践で 見られるクライエントと共にソーシャルアクションを起こすとし、ったマクロ実践の項自がなく、日本. SW実践の全容を把握できない可能性があると考えた。 間有の P 以上のように、臼本の本領域における実証研究は数が少なく、ソーシャルワーク実践の全体像、 すなわち関係性を中核とした実践の内実を把握しようとする研究は見つけられなかった つまり O. PSW実践の全体像、それを可能とする知識・技術が可視化され、伝承可能になってしもとし、え ない状況である。それでも現場で筆者は、社会資源を新たに創造し、当事者の声を社会に発信 こ し、当事者と共に自己実現を目指すといった質の高い実践を展開する何人ものエキスパート l. 出会った。彼/彼女らは、日常の実践において当事者の尊厳を守りつつ、パートナーとして関わ り、危機をも共に乗り越えるようなアブ。ローチを展開していた。そうしたエキスパートに対する周. 1 8.
(30) 聞の評価も高く、すなわちそれは f 質の高い実践」や「そのために必要とされる要素」について、 暗黙の基準が実は共有されていることを示している。 そこで、日本の精神保健福祉領域のソーシャルワーク実践の内実を把握した上で、それを支 える要素を明らかにし、その実践の質の向上に資するための指針を提示するために、 Mixed-Methodを用いた研究を行う。. 、 主. 1)改正精神衛生法第 4 2条において、「都道府県及び保健所を設置する市は、保健所に、精 さ 神衛生に関する相談に応じ、及び精神障害者を訪問して必要な指導を行なうための職員 Jと と過称されていた。しかしその相談に応じる職 れていた耳献重であり、当時かげ精神衛生相談員J 名が法文上に明記されるようになったのは、精神保樹高祉法に改正されてからである。. 引用文献 福島喜代子 (2005)~ソーシヤノレワーク実践スキルの実証的研究精神障害者の生活支援に焦点. をあてて』筒井書房.. 1 9 7 5 )1特集地域精神衛生活動精神衛生相談員と地域精神衛生活動J~公衆衛生』 林幸男 ( 3 9 ( 11 ) ,7 5 37 5 7 …. 堀口久五郎(2003)1~精神保樹高社Jの概念とその課題一用語の定着過程の検証…J~社会福祉 学~44(2),. 3 1 3 .. 今村イヨエ ( 1 9 9 9 )1 看護識が精神保樹高祉士の資格を得ることの意味 ( 3 )イ呆健所保健婦の立 場から-J~精神科看護~26(8),. 3 9 4 3 .. 岩本操( 2 0 0 9 ) 1精神科病床機能分化におけるソーシャルワークの課題一念性期病棟担当ソーシ ヤノレワーカーへのインタビュー調査による考察J~精神保樹高社]40(2),. 1 4 8 1 5 4 .. 岩田邦彦・大喜多由起子・垂石房子・ 2 土恵子・石川由美子・松永均・各務まり子・岡本瓦弘・穐山. 1 9 7 2 )1東海地区における PSW、棺談員の業務実態調査J~精神医学ソーシ アイ子・清水道生 ( ヤノレワーク~7 ( 1 ), 6 2 4 .. 柏木昭 (1986)~精神医学ソーシャル・ワーク』岩崎学術出版社.. 柏木昭・小松源助(19 6 8 )1精神医学ソーシヤノレ・ワークJ~異常心理学講座(第 3 巻)心理療法』村 井恒郎、懸田克身号、島崎敏樹、村上仁、責1 ' f:is肩集、みすず書房 3 0 5 4 0 4 . 増間安代 ( 2 0 01 )1精神障害者小規模作業所の現状と課題J~和歌山県立医科大学看護短期大. 1 9.
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