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N. エキスパートインタビュー調査
1.調査の目的
このインタビュー調査の目的は、エキスパート PSWの仕事の全体像を理解し、PSW実践
を支える中核要素を抽出することである。ここでしづ仕事とは、PSWが実際に行う行為だけ でなく、そのために必要とされるおW のあり方や能力、当事者との関係性といった、ソーシ ヤルワークに関係するもの全てを包括する概念とするo本調査のリサーチクェッションは、
①エキスパート PSWの仕事はどのような構成要素で、成り立っているか、②実践を支える中 核となる要素は何か、③それぞれの構成要素はどのように関連しているか、の2点である。
2園調査方法 1)調査手法
エキスパートインタビューは、特別な知識、排他的で、詳細、完全な知識と実践の蓄積の再 構築を目的とし、エキスパートの知識の「慣習」あるいは「暗黙の要素jを重視する (Pfadenhauer 2009) 0 90年代に発展してきた方法だが、他の質的調査の方法とは異なる 独立したものかという議論はいまだ継続している(Bogneret al. 2009) 0 しかし調査協力者 がエキスパートだとし1う理由ではなく、調査の焦点がエキスパートの知識構造への関心にあ るところに、この方法の特異性がある。
この方法の強みは、ある領域に特有の、そしてふさわしい知識の蓄積を持つエキスパート を対象にするので、多くの関係者たちの代理として、その領域の全体的知識を概観できる ことである。また新たなインタピ、ュイーへのアクセスも可能になりやすい。つまり、効事的で 凝縮されたデータ収集の方法であるとし、える(Bogneret al. 2009) 0
インタピュアーに関しては、共通の科学的背景を持つことの利点が挙げられている。
Pfadenhauer (2009)によると、同じ領域の専門家同士のコミュニケーションは、テーマの焦 点が絞られ、専門用語や指示詞が使われ、誤解を恐れなしものになる。そこで、インタピュア ーからの質の高いアセスメントや根拠、反論をすればするほど、エキスパートは知識や地位 を開示するようになる(Pfadenhauer 2009)のである。一方で、地位とジェンダーが結果に影 響するとしづ危慎が提示されている(Meuser& Nagel 2009) 0しかし本調査に関しては、調 査者は本領域で
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年の経歴があり、またジェンダーについて、本領域は女性が多数を占 め、現場をけん引しているエキスパートに占める女性の割合も多い。したがって本調査にお いて、この危倶は払しょくできると考える。以上のような特徴を持つエキスパートインタビューを採用した理由は3点ある。第一に、精 神保健福祉領域に特有のソーシャルワーク実践構造を把握するために最も情報を有して いるのはエキスパート PSWであること、第二に、激動する精神保健福祉領域に長年携わる ことで、多様な時代や制度的文脈に合わせた実践を経験したエキスパートは、組織や状況 によって変化する実践と普遍的な実践の両方を知っていると推察できること、最後に、調査 者も本領域における、 10年のソーシャルワーク経験を持っとし、う特性を生かせることであ る。
2)調査協力者
口頭と文書により趣旨と倫理事項を説明し、了解が得られたエキスパートPSW13名(表 3
‑2参照、)を調査協力者として、半構造化インタピューを実施したOモデルとなる実践を理解
するため、 20年目以上のPSWとしてのキャリアがあり、医療機関においては後輩や学生の 指導経験があること、医療機関以外においては社会資源開発の経験があることを条件に、
調査協力者を選定し依頼した。 1人の被調査者から別の方の紹介を受けるスノーボールサ ンプリングと、彼/彼女らの活動実践を調査した上で飛び込みの依頼をするとしづ方法を 取ったO所属機関を超えて共通する実践構造を理解するため、異なる機関に所属するエキ スパートPSWに依頼した。そのため、調査協力者の所属は、医療機関が5名、旧法の社会 復帰施設が5名、保健所3名であり、その所在は複数の都道府県にまたがっているo
表3‑2.調査協力者の属性 性別 経 験
年 数 所 属
1女性 35 地域生活支援センター 2女性 27 地域生活支援センター 3男性 24 通所授産施設
4男性 27 病 院 5里 性 27 保健所 6男性 21 病 院 7女性 20 クリニック 8男性 28 病 院
9女性 38 地域生活支援センター 10 男性 32 保健所
11 女性 40 地域生活支援センター 12 女性 23 クリニック
13 女性 26 保健所 3)調査手順
インタピ、ューフローとして、①日常業務について聞かせてください、②ふだんの業務の中 で、どんなことに気をつけ、何を大切にしておられますか?③当事者も他職種もできない、
PSWだけがやっている実践には何がありますか?④PSWの専門性はどこにあると思います か、という4点を用意した。 Meuserら(2009)によると、インタビューの焦点で、あるエキスパー トの知識は、多様な問題への対処が習慣的になっているため、「実務的」と「あいまいな自 覚」の両極の間にある。すなわちルーティンに従って自動的に行っていることと、知識や経 験の蓄積から明快な道筋の自覚なしに行為を導き出すことの両方がエキスパートの実践に は存在するのである。したがってエキスパートの決断の事例、彼/彼女らの守る原則、活動、
即興、例示などを質問することが効果的である(Meuser& Nagel 2009)とされている。そこで、
具体的に事例や行為を問う質問をインタビュー中に注入したoさらに調査者が専門領域を 共有している特性を生かし、調査者の視点や、考察を伝え、それへの応答を求めることで、
さらなるエキスパートの実践知の開示を促すよう努めた。
全てのインタピ、ューは、カセットテープと ICレコーダーで、録音し、ノンバーパルメッセージ は観察記録を取ったO
実施期間は2004年 12月から 2006年 2月である。インタビ、ュ一環境は、エキスパートの 日常の知を理解するために、個々の文脈にしみ込んでいる文化的習慣に従い、親しみゃ
すいコミュニケーション状況をつくられる職場がふさわしい(Pfadenhauer 2009)とされてい る。そこで、各エキスパートが話しやすいと指定した場所で、インタピ、ューを実施したOほとんど は職場内で、行った。
4)分析方法
インタビューデータは、すべて調査者が逐語記録に起こし、
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法AB型により分析した。その手順は以下のとおりである。諮りの中から実践を表現する箇所すべてを一行見出しと して抽出し、それをカードに記入する。次にそれらのカードの中から類似するものをグルー プとして集める。さらにそのグループ。を代表する一行見出しを付け、類似するカードをさら に探しグループ。化するとしづ作業を、エキスパートの実践の全体像が現れるまで、繰り返すO
K]法は実態の構造をつかむのに優れているため採用した。 AB型とは図式化と文章化を 行い、構造とプロセスの荷方を把握することができる手法である。まず 13名のインタビュー データを基に一人ずつの分析を行い、得られた 13枚のA型図から上位見出しを抽出し、
それらを再度ベースカードとしてまとめの分析を行ったo
倫理的事項として、依頼の際、録音の了解を得、研究以外の目的で使用しないこと、守 秘義務を守ること、アンケート調査に継続することと結果の還元を口頭と文書で約束した。
5)妥当性確保のための工夫
妥当性確保のため、逐語記録から一行見出しの抽出、また一行見出しをグループ。化する 作業は、現任の精神保健福祉士の協力を得てmembercheckingを行ったOまたインタピュ イーには、分析結果であるA型図解と文章を見ていただきrespondentvai1dationも実施し た。調査協力者からのコメントを受け修正を加えつつ分析をすすめたO
3.調査結果
1) エキスパート PSWの仕事の構造
1人につきl回から3聞のインタビューを実施し、 37時間分のデータが得られた。一人平 均 230枚、総計2945枚のカード得られた。PSW自身のあり方と当事者との関係性、それら を基に個人と社会の両方へアプローチする実践、それらを基にしたPSWのソーシヤルワー ク観が抽出された(図2‑8参照)。それぞれの概念ごとに、カテゴリーとそれを生成した下位 項目を提示する。一つひとつのカードには、その奥にいくつもの諮りがあるので説明を加え ていく。
②当事者との関係性(クライエントは責任主体でワー力ーとは役割分担をして共に歩む)
C.状況により変容するが役割の違いをこえて協働する
図
3 ‑ 8 . エキスパート PSW
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型細部図解)①PSWのあり方(武器である自分を磨き続け仕事を通していきいきする)
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題 11││病院を変える地域の課題を一緒に考えるきっかけをl作る
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2)現状に安住しないパイオニア魂を持つ
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│生きやすい地域を作るのが究 極の目的
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2006.2.8.自宅。大谷京子作成。1名の分析協力者あり。