• 検索結果がありません。

1 . 目的

2つの質的調査結果や先行研究レビューから、精神保健福祉領域のソーシヤルワークにとっ て「関係性」が重要であること、そしてソーシヤルワーカーが自らの役割をし、かに認識しているか としづ「自己規定Jと、クライエントに対する見方である「対象者観」が「関係性」に影響を与える要 因であることが示された。そこで、それぞれの概念を測定する項目群を作成した上で、「自己規 定」と「対象者観」は「関係性Jを予測するのか、「関係性」は「実践」に重要な影響を与えるのか、

それらの概念聞には他にどのような関係があるのかを明らかにすることを目的に量的調査を実 施した。

1 1 .

方法

1.調査プロセスの概略

上記の目的を達成するために3回のアンケート調査を実施した(図5‑1参照)03回の調査は

スノーボールサン プリング105

『自己規定

J r

対象者

J r

関係性」の下位

概 念

『関係性」の予測の有

5‑1 .

調査プロセス

, . ..

~,' 2 ; 回目;

X県協会員475

『実践」の下位概念を 追加

f実践」の予測の有無 を追加

全国

日本精神保健福 祉士協会員5595

4概念の下位概念を 精徹化

各概念聞の関連

それぞれ、予備調査、指標の精錬化、指標の検証を目的とし、より精紗示測定指標の開発を目 指した。第一回目調査では、スノーボールサンプリングで、105名のPSWを対象に、「自己規定J、

「対象者観J、「関係性」の3つの概念の構成要素を明らかにし、前 2者が「関係性Jを予測するか を調べた。第2回目調査では、X県精神保健福祉士協会員475名を対象に、「自己規定」、「対 象者観」、「関係性」に加え、「実践J概念の構成要素を明らかにし、前二者による「関係性」の予

測の有無と共に、「関係性」が「実践」に影響するかを調べた。最終の全国調査では、日本精神 保樹高祉士協会員5,595名を対象に、4つの概念の構成要素を明確にし、各概念聞の関連を調 べた。

2.分析方法としての項目反応理論

本調査では、3回の量的調査を実施し、指標の精激化を目指すため、項目反応理論(以下、

IRT)を採用した。 IRTは、項目の特性が予想されるテストのデータから、各項目の特性曲線を表 わす関数を同定したり、各被験者のOを推定したりすることを目的として開発された(芝 1991)。 この理論を用いて、項目群への応答に基づいて、評価項目の難易度・識別力と、能力や態度と いった被験者の特性を測定することがで、きるoすなわち、各項目を肯定する確率を、測定しよう としてしも特性(trait)値(測定の対象となってしも属性を、量的変数としてとらえたもの)の関数とし てあらわすことによって、それらの項目の鞘敷を表現するのである。その関数を項目特性関数と よぶ。この項目特性関数が項目ごとにわかっていれば、各被験者の項目ごとの回答反応ノミタン から、その被験者の特性値を推定することができるのである。

本研究では、例えば回答者個々の特性で、ある「パートナーシップ度」といった特性値0を測定 できる。さらに質問項目一つ一つの識別カ(測定している特性に適切に反映して回答者を区別 する度合い)と困難度(回答者のどの程度が正答できるかとし、う正答率である。本調査の場合は

「正答」はないが、どの程度の特性値を持つ者が回答できるかとし、う難しさと匹敵する)が関数で 算出され、その項目がどの程度の0を測定するかが把握できる。

図5‑2は項目特性曲線の例である(図5‑2参照)。横軸のー7から7まではOの値である。縦 軸のOから1までは正答確率である。今回調査は4件法を採用したので、右の黒し、ラインは、 r4J、 緑のラインはr3J、青はr2J、赤はrlJのOの回答者が正答する確率を示している。この左図のよ うに{捌が大きければ識別力が高く(

e

の違いによって回答がわかれる)、右図のように{麟が なだらかな曲線の場合は識別カが低し注解釈する。

1

0 8  

0.

5‑2 .

項目特性曲線の例

またテスト情報曲線とは、 l因子を構成する項目群の精度を表現するものである。つまり全て の項目の情報関数を重ねたものである。したがって項目数が多いほど、情報量は多くなる。その テスト情報量は、テストの測定精度を言判面する指標であり、「古典的テスト理論における信頼性係 数に相当すQJ(JI合他 2I 010)。しかし従来の信頼性係数は、項目群全体としての精度を表すた めに、回答者全体に対する平均的な精度を示していたが、IRTでは、評価の精度はテストの全 範鹿にわたって均一で、はないことも明らかになる。そこで、情報関数品、う概念を用いて曲線を 図示することで、特定の個人について、その項目群で良い測定ができたかを言軒高できるのであ る。またサンプルに依存せず、回答者集団から独立したテスト回有の特質として測定精度を表 現できること、とし1う2つの鞘敷を持つ。さらにクロンバッハα係数などは、間隔尺度であることを 基に算出する数値であり、カテゴリカルデータを使用する本研究で、は利用で、きない。

以上のように、項目反応理論の特長は、。の推定値の精度を、特性値のレベルごとに細かく 評価できること、どの項目を用いて測定しても、共通の尺度上で特性伎の推定僚が得られること である(芝 1991)。

本研究でIRTを採用した理由は3つある。 1つ自は、項目ごとの識別力と図難度が明示できる IRTを用いることで、3回の調査を通して、識別力の高い項目群の開発ができることである。すな わち、全ての項目の識別力と困難度を検討し、困難度が偏らず、識別力の高い項目を残し、精 度の低し、項目については削除するか、原因を考察の上改良する等、精度の高い指標の開発を 志向した。2つ日は、個々の回答者の 0は筒縞尺度の水準で、算出されるので、統計的分析を加 えるのにより妥当性の高いデータ(野口 1999)を用いて個々の特性を可視化でき、現任PSWの 属{、甥Jjの実態を明らかにできることである。そこから、PSWの属性に合わせて、実践や教育部練 へ提言ができると考えた。3つ目は、現任PSWが実践を振り返り、個別にセルフチェックをする ための項目群にできることである。これは、識別力と悶難度が算出された項目群を用いることで、

共通尺度上で一人ひとりのOを推定できるとしち物教を生かしたものである。

本調査では、因子分析による PSW実践の構成要素の探求から始めるが、この因子分析とIRT の考え方は真逆であると言える。すなわち、悶子分析が精選によって項目数を絞り込み潜在変 数を探求する手法である一方、項目反応理論はあらゆる項目を多様な0の測定に役立てる手 法である。つまり因子分析の適合度指標を上げるためには項目の削除が必要だが、項目反応 理論のテスト情報量を上げるためには、項目の追加が必要となる。本研究においては、現任 PSWの実践への提言を目的にしているため、因子分析の適合度指標を上げるよりも、回答者の

0の測定精度を上げることを重視した。

3.倫理的配慮

倫理的事項として、データは統計的に処理し回答者を特定しなし亡と、研究以外の目的で使 用しないこと、結果は調査協力者に還元すること、回答しなし、ことによる不利益はないことを約束 した文書を、依頼文と共に対象者全員四時した。

2回目と3回目調査では、協力を得た職能団体の理事後の承認を受け、全国調査では日本福 祉大学の調査倫理委員会の承認(申誇番号09‑06)を受けた。

ill.量的調査のプロセス

1

スノーボールサンプリング調査 1)目的

ここでは、①「自己規定J、「対象者観j、「関係性J概念の構成要素を明らかにすること、②「自 己規定Jと「対象者観Jが「関係性Jに影響を与える要因であるかを調べること、③逆に「関係性j

がf自己規定Jと「対象者観」に影響するかを明らかにするニとを目的にした。

2)方法

①調査内容

3概念を測定する項目群を作成するにあたって、既存の尺度を調べた。

まずf自己規定」を測定する既存の尺度は見つけられなかったO

次に「対象者観」については精神障害者に対する「叶ofessionalOpinion Scale J品、う専門的見 解を問うものの中に、基本的権利や社会的責任といった人間観が含まれているが、定年退職や 女王女辰中絶に対する価値観を問うような項目で構成されてしも(Abbott2003)。クライエントの多くは 就労や結婚をしていないため、本調査での対象者観としては適当で、はないと考えた。また学生 (Sugiura et a. l2000)や地域住民(Sawsan1996)を対象に精神障害者に対する見方を問うものや、

精神障害者に対するスティグマを付与する態度を問うもの(Lauberet  a. l2006)があるが

J

危険 性」、「正常で健康」、「同情jとしりた因子で測定されており、先行質的調査で得られた PSWの 対象者観とはかなり異なっていたため、採用しなかったO

また「関係性Jについては、心理療法の領域で関係性尺度は開発が先行している。例えば、作 業同盟尺度(WAI)(Hor

rathGreenberg 1989; Busseri Tyler 2003)や,地域精神保健の領域 では地域精神保健における治療関係評価尺度(STAR) (McGuire‑Snieckus et  a .l2007)、ソーシ ヤルワーク領域でも、援助関係尺度(日開)(Poulin& Young 1997;  Young & Poulin  1998)などが

開発されている。しかしこれらの尺度は、クライエント、臨床家、観察者の 3者が回答する形式を 取っており、本調査で、はそのまま活用で、きなかったOまた、心理療法を基礎に考えられた質問項 目であり,

H

陪においてもケースワークのみが想定されている。したがって地域を視野に入れて 包括的に展開するソーシャルワークにおける関係性、エンパワメントが主張するパートナーシッ プ、質的調査によって浮き彫りになった日常生活を共にする関係性、さらには多様に変幻する 柔軟性を測定する尺度には至っていなし、。そこで、これら尺度の項目を参考にしつつも、質問 項目は新しく作成することとした。

そこで¥第3章の質的調査で収集したデータについて、再度、3つの概念枠組みに基づ、いて 分析をしなおした。データの最小単位であるl行見出しを3つの概念に分け、KJ法によりカテゴ リーを抽出し、各概念の構成要素になると考えた。それらを最も適切に、分かりゃすく表現して いると思われる項目を、蓄積されたインタビューデータや文献データから選択し、質問紙を作成 した。その際、現任PSW3名の協力を得て、質問項目の選択、設問の推敵を行ったO

それぞれの概念を次のように整理した(表

5 ‑

1.参照)。

表5‑1.各概念の構成要素の依説

概念名 構成要素

自己規定 f伝統的援助者J、「伴走者J、f自己開示」、「脱専門性J

対象者観 「責任主体J、f尊敬する対象J、「被保護者J、「ストレングスを持つ者j

「生活者J

関係性 「対等j、「パートナーシッフ。J、「双方向j、「信頼関係j、「仕事上の関 イ

j、「柔軟な関係J、「意図的関係形成」

「自己規定Jは4つの構成要素からなる 23項目である。その下位概念は、「伝統的援助者(中 立的・客観的立場を維持)J、「伴走者(クライエントの傍ら

l

こいで支援)J、「自己開示j、「脱専門 性(クライエントから学ぶ姿勢で、関わる新たな専門性)Jの4つである。4章の概念整理では、バタ ーナリズ、ムとエンパワメントの要素の強い「伝統的治療者としての専門職jとf脱ー専門性を目指 す専門職Jの連続帯としていた。ここでは、「伝統的援助者Jと「脱専門性Jの連続帯上に、「伴走 者Jとf自己開示」の要素が布置されると想定した。

「対象者観Jは5つの構成要素からなる 24項目である。その下イ封既念はf責任主体(病気・棒害 の管理責任、自己理解の責任、人生の決定責任、ゃったことについての責任、社会活動参衝の 責任)J、「尊敬する対象J、f被保護者(管理や保護を必要とする存在)J、「ストレングスを持つ 者j、f生活者Jの5つで、あるo4章の整理では、複数の要素が状況に合わせて重みを変えつつ 混在してしもと考えたので、上記5要素からなるとした。