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精神保健福祉領域におけるソーシャルワーク実践の 全体像把握のための質的調査

I .調査の背景

序章で概観したように、日本の精神保健福祉領域が抱える課題は山積している。その中 で

PSW

は、エンパワメントとパターナリズム、両方のアフ。ローチを担っていると考えられる。

しかし本領域における調査研究の蓄積は十分とはし、えない。量的調査研究としては、

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年に日本精神保健福祉士協会が全国の会員の内

9 2 7

名を対象に実施した岡本精 神保健福祉士協会員に関する業務統計調査J(日本精神保健福祉士協会医療福祉経済 部業務検討委員会

2 0 0 4 )

や、群馬県で実施された実態調査(鈴木

2 0 0 8 )

、愛知県で実施 された業務調査(業務検討委員会

2 0 0

1)などがあるが、それらは、「入院相談」としりた実 践項目件数のカウントによる実態把握であり、実践内容に迫るものはない。すなわち「入院 相談jの件数が理解できても、そのソーシャルワークのアフ。ローチ内容の描写はされていな い。また、 PSW の「センスJ~r 直感J について毘療機関に勤務する PSW に調査した興味深 い研究がある。ここでは、ソーシャルワーカーの態度や実践の方向性、価値を含んだ「セン スjを8割弱が実践において必要と回答しているが、その具体的内容については今後の課 題とされている(井上

1 9 9 9 )

。一方、事業所と当事者を対象にした、全国精神障害者地域 生活支援協議会の大規模な調査においても、障害者自立支援法への移行後の変化を中 心に良くなったかどうかを問うており、ソーシヤルワークの全体像について理解できる内容 ではない。ソーシャルワークの内容に迫ることが期待で、きる質的調査としては、医療保護入 院者への聞き取り調査を行い

PSW

の役割を検討したもの(嶋村

2 0 0 6 )

、急性期病棟担当

PSW

を対象に、精神科病床機能分化におけるソーシャルワークの課題を検討したインタピ ュー調査(岩本

2 0 0 9 )

があるが、いずれも精神科病院内に限定されており、施設や保健所 品、った所属組織も含めた、精神保健福祉領域全体に共通するソーシヤルワークを把握で きないものである。

以上のように、精神保健福祉領域のソーシャルワーク実践の全体像を把握しようとする研 究は見つけられなかったOそこで¥日本の精神保健福祉領域における質の高いソーシャル ワークの内実を把握し、それに貢献する要素を抽出するために、2つの探索的調査を行っ た。

I I .

調査の目的と方法

2本の調査の目的は、日本の精神保健福祉領域における質の高いソーシャルワークの全 体像を描写することと、その実践を支える中核要素を見出すことである。質の高い実践を理 解するためには、エキスパート

PSW

によるモデルとなる実践を把握することと、最も重要な ステークホルダーで、ある当事者の評価を開くことの両方が必要であると考えた。また、その 異なる調査協力者によるそれぞれの調査結果に共通する要素は、質の高い実践に貢献す

る中核要素と考えられる。そこで、①当事者はPSWに何そ求めているのか、②エキスパート PSWはどのようなソーシャルワーク実践を展開しているのか、③当事者の視点からも、エキ スパートPSWのモテ、ル約実践にも共通する、PSW実践を支える要素は何かを理解すること を企図し、 2つの調査を実施したo

方法は、第一調査として、ソーシャルワークの重要な参加者で、ある当事者の視点から、求 められる PSWの資質や行為とはどのようなものかを明らかにするフォーカスグループインタ ピュー(以下、 FGI)を実施した。その上で、PSWが実際にどのような仕事を行っているかを 理解するため、医療機関、施設、保健所に所属するエキスパートを対象にインタビュー調 査を行ったOこれを第二調査とする。 2つの調査を実施したのは、 PSWの仕事に対する、当 事者の視点と、エキスパートPSWの認、識とを照らし合わせることで、より多角的なソーシャル ワークの全体像を浮き彫りにすることを目指したためである。

目精神障害者を調査協力者とするフォーカスグループインタビュー調査 1.調査の目的

本調査の目的は、当事者に求められる PSW像とその仕事を理解することである。現段階 では、その「仕事」とは、PSWの知識や技術、行為、当事者との関係性など、実践現場にか かわる全てを含めることとする。

本調査のリサーチクェッションは、①当事者はPSWに何を求めているのか、②ソーシャル ワーク実践に対する当事者のニーズ構造はどのようなものか、の2つである。

2. 調査方法 1)調査手法

FGI法とは、対象者に近い視点で、社会的、情緒的、経験的現象を洞察するのに有用(安 梅 2001;瀬畠他 2001; Giacomini & Cook  2000)な手法とされている。この手法では、

「生の声そのままの情報」を生かすことができ、量的調査では得られない深みのある情報と 単独インタぞューでは得られない、積み上げられた幅広いダイナミックで、農かな情報が得ら れる(安梅他 2003;安 梅 1998)0そのため、実態把握、ニーズアセスメント、政策評価の理 解などに適した調査法である。また、「特定のサブカルチャーグループ。の認識や態度など、

デリケートなトヒ。ックを探求する研究としても適しているJ(郷良 2002:.84) 0複雑で、あまり理 解されていない精神科領域において、精神障害者の主観的体験を理解するといった知識 を開発するのに役に立つ(Fosseyet al. 2002)。先行研究でも、ニーズ調査(吉田他2003a;

田他 2003b;木 下 他 2002;瀬 晶 他 2001b;清水 2001)、消費者ニーズ調査(磯島 2001)、視聴率確保のためのニーズ調査(戸田 1999)、介護経験についての実態把援調査 (荒井他 2003)、地域把握のための調査(藤内 2001)、プログラム掠発を目的とした調査 (柴辻他 2001)、精神障害に対するスティグマ軽減の広報プログラム開発のための調査 (Grunig  1990)などに用いられてきた。

本調査でFGIを採用した理由は以下の4点である。第一に、当事者が調査協力者である

ため、個別インタビューより参加者に圧迫感が少ないこと、第二に、障害特徴のーっとし、わ れる思考迂遠があってもそれを補い、意見の積み上げが可能であること、第三に、彼/彼 女らの視点で豊かで、深みのある情報を得ることができること、最後に、本調査を、当事者の エンパワメントに貢献する機会とすることである。

先進諸国ではすでに、調査者として当事者が参画することの意義を唱えているものも多 い(Ochockaet al.  2002;  Nelson et al.  1998;  Rapp et al.  1993)。調査に参加すること、そ の得られたものを政策や実践に反映していくことは、当事者も負うべき課題であるとし、う認 識である。本調査については、分析過程にも調査協力者の参加を得、できるだけ当事者の 視点に近づくこと(堀 2003)を最重要課題として取り組んだ。

2)調査協力者

Wに求めるものを聴くことが目的であるので、精神障害者福祉サービスを利用しPSWと 日常的に関わっていることを調査協力者の条件とした。参加者は、意見の差し控え ( censoring)や集団意見への向調(conforming)を防ぐため、互いに知り合いでないこと、性 別を含む属性を統一することが基本とされている。しかし、知り合いがいる方が話しやすい とする日本人の特徴(瀬畠克之他 2001b)と、限定され、かっ繊細なテーマの場合は参加 者の属性が同じ方が望ましいとしづ先行研究(郷良2002;安 梅2001)、対人関係の苦手な 当事者も多いことから、本調査の対象は、男女混合で既に関係のできている、参加意思を 表明していただだ、いた方で

外的妥当性確保のため、2グル一ブ。以上実施することが原則で、あるのでで、、セルブへルフ。

グル一ブ。(以下、 SHG)沈と支援セン夕一をそれぞぞ、れ 2笛所ずつとlしJO対象へのリクルート法 は、 fAJSHGへは、例会に参加し、研究の趣旨を説明し参加協力を募ったofBJSHGは、 代表者に研究の趣旨を説明し、代表を通してメンバーへの依頼をしたoC支援センターは、

センター内の当事者グループ。の中で、中心的役割を担っている方々に直接依頼した。

D

支 援センターは、保健所の相談員から紹介され、施設長に依頼の上、ミーティングにて利用 者に趣旨説明し、施設長を通じて協力者を募集した。

その結果、A7名、 B8名、C6名、 D5名の計26名(内女性5名)の参加を得た。平均年齢 は42.6歳、診断名は、統合失調症、繰うつ病、うつ病、非定型精神病、てんかん、パニック 障害で、あったo22名は l回 訪問の入院歴があり、トータル年数の平均は4年だった。グ ノレ…プ間の属性はほぼ均一であると判断した。

3)調査手順

2003年11月 29

1 3   '   ¥

12月 27日、 2004年 l月 23日、 2月9日、計4回実施した。一人 ひとりに調査の目的・方法・謝礼・倫理事項を書面と共に説明した。趣旨を理解した上での 協力についての契約書を交わし、インタピューを実施したO瀬畠らの 3,000円はやや高額・

あるいは妥当とする調査結果(瀬畠他 2001a)を採用し、終了後謝礼 3,000円を支払ったO インタビューの時間は 1時間半から 2時間で、それぞれの対象者にとってなじみの場所に て実施した。リフレッシュメントを用意し、ドリンクを欽みながらリラックスして話せるよう

l

こしたO

4回中 3回の FGIでは観察者が同席し、ノンパーパノレコミュニケーションをチェックしたO

前に作成したインタビューフロー(表 3‑1参照)を基に参加者に自由に議論していただき、

全ての会話は、カセットテープ。とICレコーダーで、録音、ビデオで録画し、調査者、観察者に よって観察記録をとったOそれらの記録は調査者がテープ起こしをし、逐語・観察記録にし た。

3 ‑

1.インタビューフ口一

• r

印象に残ったスタッフとのエピソードJ

・「スタッフが役に立った、あるいは役に立たなかった体験j

• r

特定の状況でのスタッフへの期待J

• r理想のPSWJ

・rpSWとの関係J

倫理的事項として、依頼の際、録音・録画の了解を得、(ピデオ録画については、背景の み了承の参加者も含まれる)研究以外での使用はしないこと、参加者の許可なくビデオや テープを公縄しないこと、守秘義務を守ることを約束し了承を得た。結果については、分析 の途中で、解釈について、調査協力者の確認を経ることと、最終のまとめを報告することで、

参加者に還元し、 PSWに対するアンケート調査の基礎にする旨説明し了承を得た。

4)分析方法

当事者から求められるPSW実践を理解するためには、当事者の PSWに対する見方をそ のまま把握するよりも、彼/彼女らの PSWに対するニーズとし、う形で理解することが適切で、

あると考えた。そのため、調査協力者から表現される PSWに対する不満や苦情、批判など も、

r " "

してほししリ品、うニーズの形に変換するO例えばf見下したような話し方をされたjと いうエヒ。ソードは、 f見下さないでほしいJというニーズの形に変換し、求められる PSW像を 形成してしてのである。また、構造を把握することで、質の高いPSW実践に貢献する要素を 容易に抽出できると考えた。そこで¥こうしたニーズ構造が把握で、きる上位下位分析(梅津

1993)を採用した。

これはインタピ、ユーで、出された1つ1つのベースニーズから、目的と手段、すなわち「どうし たいためか」と「そのためにはjの関係で、上下にニーズカードを配置していき、ニーズの全 体構造を把握する手法である。目的と手段としづ単純な切り口で分析してし、くため、主観が 入り

l

こくし、とされている。例えば九、つで、も相談に乗ってほししリ品、う語りが得られたら、そ れをベースニーズとしカードを作成するO次に fそれはどうしたいためかJとしづ間いを立て、

「安心感を提供してほししリとしづ別のニーズカードを上に置く。そして「そのためには何が 必要かjとしゅ聞いを立て、「時間を取ってほししリ品、うカードを下に配置する。諮りから作 成されたベースニーズカードに該当するものがなければ、新しくカードを作成する。このよう にニーズ構造を組み立ててして。その上で 4グループ。に共通する概念を抽出し、 4グルー プ共通のニーズ構造を把握した。さらに各概念を構成するベースニーズカードから、それ