関ノL、・意欲・態度の評価の理論と実際
-「保育内容の研究(言葉)」の実践を事例として-言語系教育講座中洌正堯
1. 「関心」「意欲」「態度」「知識」「技能」の相関関係 1. 1. 「関心」「意欲」「態度」の相関 国語科の「気になる『実践用語』を解明する」という特集1)に、「関心・意 欲・態度」がある。そこでは、「国語の諸分野の部分または全体に対する、関 心(主体的価値づけ)、意欲(主体的行動への発現態勢)、態度(主体的傾向 の持続的形成)」2)という把握がなされている。 「意欲」のところは、態勢に 発現そのものをふくめて考えることにして、この把握に賛同する。 簡約すれば、 次のような図式(1)が成立する。 関心×意欲×(持続)-態度一一一一一(I) こうしたことは、国語科に限ったことではない。 以下に述べることも同様で ある。国語科独自のことは、必要に応じてことわることにする。 1. 2. 「関心・意欲」と「知識・技能」の相関 関心・意欲は、知識・技能を引き込み、知識・技能が、関心・意欲を育むと いう相関関係にあると考える。 ならばどちらか一方(たとえば、知識・技能) を鍛えればよいか。そうとは思わない。 関心・意欲を考慮した知識・技能の学 習指導と、知識・技能へひたすらに向かう学習指導とは違うし、また、関心・ 意欲だけを取り立てる学習指導では、その持続、発展に限界を生じやすいから である。 この間題を、評価にからめて考えると、次のようになる。 A関心・意欲の評価 B知識・技能の裏づけをもった関心・意欲の評価、または関心・意欲の 顕現としての知識・技能の評価 C知識・技能の評価 Aは、関心・意欲だけを取り立てる学習指導での評価、Bは、関心・意欲と知 識・技能の相関をふまえた学習指導での評価、Cは、知識・技能へひたすらに 向かう学習指導での評価とすれば、本論考で求めている評価はBである。-58-2. 「関心・意欲・態度の評価」の目的 2. 1. 自己学習力の育成 当該教科の学習指導はひとしく、自己学習力の育成をはかっているはずであ る。自己学習力には、次のような図式(2)が考えられる。 態度×知識×技能自己学習力(2) 図式(2)の態度には、図式(1)の「関心×意欲×(持続)」が代入され る。つまりは、こうである。 関心×意欲×知識×技能×(持続)-自己学習力‥‥‥(3) 2. 2. 授業の改善 当該授業の学習指導の進展状況を、「関心・意欲・態度の評価」という見地 から点検することによって、授業の改善をはかる。 その際、「1. 2. 」で述 べた知識・技能のことが改めて問題になる。 知識・技能は、それなりの体系を もっている。 知識・技能へひたすらに向かう学習指導は、その体系に即してい こうとするであろう。 それに対して、「関心・意欲・態度の評価」の見地に立 つということは、その関心・意欲にとって必要なかぎりの知識・技能の相関と、 そのありよう(学習指導)を点検することになるのである。 もちろん、関心・ 意欲と知識・技能の体系とを接合させる授業構想、その中での自己学習力の育 成をめざすことはじゅうぶん考えられる。 現代の学習指導論において、関心・意欲を優先させることは通説とみてよい であろう。 それは、学習者に迎合することではなく、"関心・意欲もまた養い 育てるもの"という前提に立ってのことである。 3. 「関心・意欲」の出発点 3. 1. 学習者の当該教科への関心の把握 「『国語』は好きかきらいか」といったところも捉えておく必要がある0 そ れをふまえながら、"好き"の深化・拡充も、"きらい''の改善も、もっと個 別の内容から始めるのが生産的であろう。 3. 2. 当該教科の個別の内容への関心の把握 たとえば、「保育内容の研究(言葉)」では、開講時に幼児の詩や児童詩を 持ち込んで、受講生が、自分と幼児の言葉の世界との間にどれくらいのスタン スを置いているかをはかる。 3)一般化すれば、次のようになる.
-59-a. 学習者が当該教科の個別の内容とその学習方法にどれくらいの「関心」 を持ち、「反応」を示すかを把握する。 その「関心」「反応」を分析すると、次のようなことに気づく。 b. 同一内容のものであっても、学習集団の場合と、個人の場合とでは、そ の「反応」に違いがある。 C. 個別の内容への「関心」の度合いは、学習者の経験に左右される。 d. 個別の内容への「関心」は、学習者の性向にも左右される。 4. 「関心・意欲」の育成、持続 4. 1. 個別の内容の細部の関連と「関心」の育成 たとえば、「保育内容の研究(言葉)」では、幼児の発音の乱れなどについ て、国語学的な取り扱いをする時間がある。 「たまごやき」を``クマモヤキ" と発音する事象を、子音交替の両唇音化と捉えるような学習である。 また、言葉の発達を記録した一つづきの文章を取り扱う(録音記録などがあ れば、理想的である)0 そうした記録の中に、先の時間に取り扱った発音の乱 れなどの生きた事象が出てくるので、そこで関連させていくようにする。 e. すでに学習したことをふまえて、応用させる。 言葉の発達の記録の場合、「産声から暗語」に始まり「五歳児」になるまで、 各年齢を1回(75分)ごとに扱っていく。 その際、二歳児の言葉の状況と三歳 児のそれとを比較させる。 f. すでに学習したことと比較させる。 4. 2. 連続する資料(教材)に取り組む意欲の持続 資料(教材)が具体的であれば「関心」をひくが、それでも同じ学習作業が 連続すると単調になり、「意欲」は減退する。 そのために、聴写による知識整 理や小見出しっけなどの作業を持ち込む。 前者は、「"スキクナイ"の発達的 事実」や「簡易模倣と拡充模倣」などを、記録に出てくる事象に照らして、解 説文を読み上げ、カードに書き取ってもらう作業(聴写)であるO後者は、記 録を読んで、その内容ごとに小見出しをつける作業である。 g. 適宜に「知識」として整理する。 h. 小見出しをつけるなどの作業をおこなう。 このあたりの受講生の感想を一つ掲げてみる。 下線は、引用者による。
-60-二学期ルツの成長の話など、成長の記録を通しての幼児語の研究はとて も興味が持てました。 自分が子供を持った時、是非記録をつけたいなと思 いました。 二、三学期を通し、大変だったけど、有意義な授業でした。 4) (芸術系音楽女子) 4. 3. 資料の収集・法則の発見・事実の把握等の演習 「保育内容の研究(言葉)」をまっすぐに演習するとすれば、文献に見る幼 児の言葉の記録を自らやってみることである。 当該教科ごとに、この種の演習 に相当するものが構想され、また、それが中心となる教科もあろう。 「保育内容の研究(言葉)」では、言葉そのものの研究演習は現時点では採 用していない。 採用しているのは、絵本や紙芝居の読み聞かせである(ただし、 受講生どうLである。 理想的には、幼児を対象におこなうのがよい)0 i. 諸作業の方法(技能)を学ぶ。 j. 個々の作業成果を評価し、励ます。 5. 「関心・意欲」の発達的事実 先の「4. 2. 」にあげた感想のとおりに、受講生が将来、記録をつけたと すれば、「関心・意欲」は、そこに定着を見たといってよいであろう。 そんな に造かなことでなくても、学校の実践では、学期や年間のスパンでそれを見る ことができる。 また、「関心・意欲」は、変化を見ることも重要である。 k. 個別の内容のまとまりである単元ごとに、学習者の関心も意欲も推移す る。 関心・意欲は、個人ごとにうねりをもつと考えられる。 1. 調査や実技など実践的なものは、ほば確実に「意欲」を促進する。 m. グル-プ等の集団活動において、個人の「意欲」が、そのグループの構 成員を刺激し、全体の「意欲」を高めていく。 注 1)『教育科学国語教育』Na478(明治図書、1993.8) 2)湊吉正稿「関心・意欲・態度」(注1)に同じp. 36) 3)拙稿「保育内容の研究(言葉)の実践」(咽語教育研究報告・実践記録 集凱風』第6集、凱風会、1994)を参照されたい。 4)注3)に同じp. 5