〔実践報告〕
群馬大学インターナショナルキャンプ報告
―学生間交流促進と相互理解の実践―
大 和 啓 子・古 川 敦 子・
Sylvain Bergeron
・牧 原 功
要 旨 群馬大学国際教育・研究センターは、グローバル人材育成のための教育実践の一つとして、2013
年 度からインターナショナルキャンプを実施している。これは日本人学生と外国人留学生が、協働して 様々な活動を行うことを通じて、異文化への理解を深め、また外国語学習の動機付けを行い、グロー バルな視野を育てることを目的としたものである。本稿はこれらの活動を、参加学生のレポート等を 用いながら振り返り、成果と課題を明確化することを試みた。 【キーワード】学生交流 異文化理解 グローバル人材育成1.インターナショナルキャンプの概要
群馬大学国際教育・研究センターでは、グローバル人材育成のための具体的な教育実践の一つとし て、毎年、夏季にインターナショナルキャンプ(国際合同合宿)を実施している。 従来、当センターでは、外国人留学生を対象として実地研修を実施していた。これは、旅館等への 宿泊を伴う形での名所旧跡見学、工場見学等を行い、日本文化理解の深化を図るものであった。な お、この研修には、数人の日本人学生がチューターとして参加することもあったが、あくまでも外国 人留学生を対象として企画されていたものだった。 一方、近年、大学にとってグローバル人材の育成は喫緊の課題とされ、日本人学生が自文化を意識 するとともに、多様な価値観に触れる機会も求められていた。そこで、外国人留学生のための実地研 修を日本人学生、外国人留学生双方にとってより教育的意義の強いものへと変更し、インターナショ ナルキャンプとして新たに実施することとした。このような経緯で、2013
年度に初の試みとして行わ れ、以後3回実施されている。 過去3回の実施の概要は以下の通りである。日本人学生と外国人留学生が互いに影響を与え合いな がら双方に意義のある活動とするという方針のもとで、実施場所や内容の詳細については、その時々 の状況に合わせて担当者が決定した。年 度 期 間 場 所 日本人・外国人留学生参加人数 主 な 内 容 第1回
2013
3日 群馬県みなかみ町19
名・21
名 里山オリエンテーリング 第2回2014
2日 栃木県日光市14
名・26
名(注1) 文化財オリエンテーリング 第3回2015
2日 群馬県みなかみ町16
名・21
名 ラフティング、民泊2.本報告の目的
本報告は、これまでに実施したインターナショナルキャンプの概要を記述し、今後実施する際の資 料とすること、第2回、第3回の成果や課題について、それぞれの担当者間で議論し、情報の共有と 今後の方向性の策定を行うこと、の2点を目的とするものである。なお、第1回の内容については、 すでに園田・大和(2014
)にて報告されている。 以下では、第2回と第3回の実施概要、活動内容とともに、参加学生の事後アンケートとレポート の記述を抜粋しながら成果と課題について述べる。続いて、全体的な総括を行い、今後企画する際に 留意すべき点等を明らかにする。同時に、本稿は同様の取り組みを試みる他教育機関への情報提供を 行うものでもある。3.第2回インターナショナルキャンプの詳細
3.1 実施概要 第2回は、世界文化遺産にも登録された日光の社寺をフィールドとして実施した。異なる文化背景 を持った日本人学生と外国人留学生を一つのグループで活動させ、文化財見学や文化体験などの機会 を提供し、グループワークを通じて異文化理解と学生間交流を深めグローバルな視点を育てることを 目的として設定した。そして、日本人学生は自文化を再認識し外国人に向けて発信することの重要さ に気づくこと、外国人留学生はより深く日本文化を知ること、そして相互に新たな気づきを得ること も目指した。 前回からの大きな変更点は期間、場所、使用言語の3点である。まず、今回は、群馬大学サマープ ログラム(JASSO
の短期受入プログラムとして実施)を同時期に群馬大学で実施しており、その参 加者も合同で実施するという事情もあったことから、日程を2013
年度の3日から2日に短縮して実施 した。さらに、里山の自然以外に、交流の活発化が可能な地域を探すという意図もあり、歴史的文化 財へと活動のフィールドを移した。 もう一つの変更点は、英語使用の比重である。第1回では、みなかみ町の英語教師4名の協力を仰 ぎ3日間の日程のうち1日を英語使用の日として実施した。しかし、十分なコミュニケーションが取 れなかったという感想も聞かれた。今回は期間を短縮したこともあり、互いにより深く理解しあうことを重視して、必要に応じて英語を使ったり、やさしい日本語を使ったりしながら互いに十分なコ ミュニケーションを図れるよう活動を設計した。 活動内容としては、第1回で評判の良かった里山オリエンテーリングを世界遺産にも指定された日 光東照宮に即した形でアレンジし、メインの活動として据えた。そして、室内のワークショップで は、その東照宮オリエンテーリングに関連させた外国語使用の活動も設定した。実施概要は以下のと おりである。 ●期 間:
2014
年8月29
日(金)∼8月30
日(土) 1泊2日 ●場 所:栃木県日光市 ●参加者:日本人学生14
名 留学生26
名(アゼルバイジャン、アメリカ、インド、インドネシア、韓国、タイ、台 湾、中国、ハンガリー、ブラジル、ベトナム、モンゴル) ●引 率:国際教育・研究センター教員2名、国際交流課職員2名 ●費 用:学生負担5,000
円/1名 3.2 プログラム詳細 活 動 内 容 1日目 午前 ■バスで移動 前橋駅→昭和キャンパス→荒牧キャンパス→桐生キャンパス ■出発前研修(桐生キャンパス) 午後 ■日光東照宮でのオリエンテーリング ■旅館(湯西川温泉)到着 ■ワークショップ①(クイズ答え合わせ、外国語での自己紹介、②の準備) ■夕食(いろり料理) ■ワークショップ②(外国語での1分間スピーチ) 2日目 午前 ■華厳の滝、中禅寺湖見学 ■果物(巨峰)狩り体験 午後 ■昼食(バーベキュー) ■解散会(桐生キャンパス) ■バスで移動 桐生キャンパス→前橋駅→昭和キャンパス→荒牧キャンパス 【出発前研修】 出発前に桐生キャンパスにて研修を行った。あらかじめ設定しておいた多国籍グループ(8名×5 グループ)毎に自己紹介を行い、互いの呼び名を確認し、グループリーダーとサブリーダーを選出し た。また、午後のワークショップにおいて、全員の前で、各自にとっての外国語(日本語あるいは英 語)で自己紹介等をすることを予告しておき、普段英語を使用する機会の少ない日本人学生、および日本語が得意でない外国人留学生がスムーズに後の活動に参加できるようにした。 【日光東照宮オリエンテーリング】 日光ゆば料理の昼食をとった後、東照宮のオリエンテーリングを行った。各人に東照宮にまつわる クイズの書かれた冊子を配布し、準備された設問をグループメンバーとともに考えたり、説明したり しながら東照宮を巡った。日本人学生にとっては、教科書などで学んだ知識を実際に目にし、さらに 外国人留学生に説明することによって理解を深めることができる活動となった。そして外国人留学生 にとってもただ外観や雰囲気を楽しむばかりでなく、日本人学生の説明を聞いたり、質問したりしな がらより理解を深めた文化財見学となった。 【ワークショップ①外国語自己紹介、②感想スピーチ】 東照宮見学後は宿へ向かった。宿の研修室にて外国語自己紹介を行った。日本人は英語、外国人留 学生は母語以外の言語、ただし大多数の人に理解可能な言語ということで、日本語または英語での自 己紹介となった。参加者全員が、自分の名前、出身、最近嬉しかったことなどを外国語で話した。 その後、グループ内で東照宮の感想や活動について振り返り、自由に話す時間をとった(使用言語 指定なし)。そのうえで、各自に画用紙を1枚ずつ配布し、一日の活動を振り返り一番印象に残った ことを、短い言葉あるいはイラストで示し、そのときの気持ちや考えを含め、1分程度、外国語(日 本人は英語、外国人留学生は日本語または英語)でストーリーを語るように指示した。グループで外 国語の表現についてなど、互いに助け合いながら準備をしている様子が見られた。 活動を振り返っての感想スピーチは
20
名ずつ2つのグループに分かれて行った。眠り猫に絡めて日 本と母国の猫の印象の違いについて述べたもの、日本の若者が自国文化や歴史に対する興味が薄いこ とを指摘するもの、東照宮の階段の多さと日頃の運動不足について語るものなどその内容は多様で あった。短時間の準備にも関わらず、共有した時間・空間を様々な観点から切り取ったスピーチが 披露された。日本語や英語を使いながら、笑いが起きたり、真剣に聞き入ったり、質問のやりとりが あったりなど、和やかな楽しい雰囲気で行われた。 【旅館文化体験】 和風旅館で和室に宿泊し、温泉、浴衣、いろり料理、和朝食などを体験した。2週間のプログラム で来日した学生はもちろん、日本に1年近く滞在していても、畳に触れたり、和食を食べたりした経 験がないという外国人留学生もおり、非常に興奮している様子が見られた。また囲炉裏料理など、外 国人留学生ばかりでなく日本人学生にとっても貴重な体験だったという声が少なくなかった。浴衣の 着方や温泉の入り方などの説明が日本人学生には求められた。【名所見学、果物狩り、
BBQ
】 2日目は、前日のグループワークや宿で同室になり仲良くなった者と自由に交流した。華厳の滝や 中禅寺湖の見学を通して外国人留学生の国の風景と比較をしてみたり、バーベキューやブドウ狩りを しながら互いの食文化について話したりと見学地やそれぞれの活動を題材に交流していた。 【解散会】 桐生キャンパス到着後、教室で、グループ毎に着席し、2日間の研修の振り返りを行った。最後に は、お互いの国のことばで「ありがとう」と伝えあって解散した。2日間を共に過ごした仲間と別れ がたい様子で、記念写真を撮ったり、連絡先の交換をしたりと予定よりも出発までに時間を要した。 短期間ではあったものの密度の濃い交流がなされた様子がうかがえた。 3.3 本プログラムの成果と課題 −事後アンケート、レポートより− 本プログラムから参加学生は何を得たのか、またプログラムの改善点はどこにあるか、事後に実施 したアンケートおよびレポートからその記述を引用しながらまとめる。なお、アンケートに関しては 選択肢による設問もあったが、ここでは活動毎の感想を自由に記述する部分のみを引用している。 ⑴ コミュニケーション方法への気づき ・留学生にどうやったら考えが伝わるか非常によく考えた。[日](注2) ・場所の説明看板をあまり分からなくて同じ日本人のグループはやさしい日本語で訳してくれまし た。[留] ・「○○って何?」と日本のものについて聞かれたとき、うまく説明できないこともありました。 そんなときは、英語を使ってみたり、紙に絵をかいたり、スマホで画像検索してそれを見てもら いながら説明したりしました。[日] ・今回のキャンプは、自分にとって初めての留学生との本格的な交流だった。(中略)留学生の人 たちも、簡単な日本語を話してくれたので、コミュニケーションでの不安などはなく、安心して 会話ができた。[日] ・いろいろな人たちとスムーズな会話をしていくためには、バックグラウンドとなる様々な知識が 必要であると感じた。[日] 今回のキャンプでは、特に使用言語を定めず、互いの状況に合わせて言語を選択し、十分なコミュ ニケーションをとることを重視した。その結果、互いに伝わる方法を模索しながら、交流をはかって いた。初対面同士の交流に不安を抱いていたものもいたが、様々な活動を通し「積極的に自然な交流 ができた」という記述が外国人留学生、日本人学生双方に見られた。 また、特に日本人学生には、スムーズに伝わらないという困難な状況で何とか伝えようと努力したことが、よい経験として捉えられていた。 ただし、少数ではあるが日本語学習歴の短い学生からは、もう少し英語での説明が欲しかった、日 本語力の不足から十分な交流ができなかったとの声も聞かれた。 ⑵ 自文化・異文化への気づき、異文化理解 ・みんなの考え方を聞くと自分に考えなかった見方を考えました。[留] ・留学生とともに行動したことで、さまざまな国の文化や、外国人が日本の景色のどこに驚くかが わかった。[日] ・自分の国のことを理解しておくことは大切であると感じました。[日] ・ワークショップでは、人々とつながり、自分自身をもっとわかり、相手に自分のことが伝えられ て、互いの感じもわかりやすくなって、個々の違いだけでなく、共通点を学べます。[留] ・多分世界には普遍的な価値というものがあって、私たちはそのことについて共通の感情を得られ るのではないか、と何となく思った。[日] 多国籍の友人と行動を共にする中で、自分にはなかった他者の視点に気が付いたという記述が多く 見られた。特に共通の体験を振り返り、自身の考えをのべるワークショップ②を通じ、多様な視点、 価値観の存在に気づくことができたようである。また主に日本人学生には、グループワークの際に外 国人留学生に質問されて答えられなかったことから、自文化を理解することの重要性を感じたという 意見がみられた。さらに、相違点ばかりでなく、共通点もあることに気づいたという意見もあった。 その他東照宮の見学、旅館内でともに過ごすなかで、外国人留学生は日本人学生に問うことによっ て、また、日本人学生は外国人留学生に説明することによって、日本の歴史や日本人の思考、文化に 対する理解を深めたという以下のような意見も多く見られた。 ・日本人と一緒に行ったから様々なことを説明してくれました。もし東照宮についての質問がない なら、ただ場所の美しさだけ考えるかもしれません。[留] ・東照宮をグループで見学して、分からないことを皆さんから聞いて、一緒に問題の解答を考えて よかったと思います。例えば三猿の話、眠り猫とすずめの話や鳴き龍をよく分かるようになっ て、面白いと思いました。[留] ⑶ 日本語運用力への評価と外国語学習意欲の喚起 ・グループメンバーの中に英語を母国語とする方がいなかったので、ほとんど日本語での会話と なった。英語も補足説明の際などに使用することができたが、充分に話すことができず自分の英 語力の弱さを痛感させられた。反省を踏まえて、英語力を鍛え直していこうと考えている。[日] ・精一杯頑張って、日本語で説明しようとしていた留学生の人たちの姿がとても印象的でした。だ
からこそ、英語もしくはほかの言語を頑張らないとと思いました。[日] ・キャンプを通して英語力が少し上がったと思います。少しずつ英語が喋れるようになってきたの で、英語圏へ留学できたらよいなとも思うようになりました。[日] 今回のキャンプでは、まずは何語であってもコミュニケーションを積極的にとることを重視し、語 学能力の向上についてはそれほどの比重をおいていなかった。活動時には、⑴で述べた通り様々な方 法でコミュニケーションをとっており、外国語使用を課したのは、それぞれ1分程度の自己紹介とス ピーチの時のみであった。 それでも、多くの日本人学生が、留学生の日本語運用力の高さに驚くとともに自身を振り返り、語 学力を向上させたいという記述が多く見られた。日本語であっても、伝えたいことが十分に伝えられ ないというコミュニケーション上の困難との遭遇や、外国人留学生が学習中の日本語を積極的に使お うとする姿に触れるという経験が語学学習意欲を喚起したと考えられる。 以上、第2回のキャンプでは、参加学生の多くは伝え方を工夫しながら積極的に交流を図り、異文 化を知るとともに、自文化を振り返ることができたようである。また、グループワークを通して自然 に交流できたという意見も多く、なかにはリーダーの大変さを学んだなどの意見もあった。また外国 人留学生が日本人学生に説明を求めることで、互いに日本文化に対するより深い理解を得たようであ る。さらに、今回はあまり英語使用に比重を置かなかったが、日本人学生からは外国語学習能力の向 上への意欲が見られた。
4.第3回インターナショナルキャンプの詳細
4.1 実施概要 第3回インターナショナルキャンプの実施場所は群馬県みなかみ町である。実施目的は異なる文化 背景を持った日本人学生と外国人留学生が、英語又は日本語を用いて協働することを通じて異文化理 解及び学生間の交流を深め、グローバルな視点を育むことと設定した。実施内容の主な変更点は、プ ログラム中のコミュニケーションにおける英語使用の比重を高めること、そして、群馬の地域的特長 の理解を深めるための活動を取り入れることの2点である。英語使用に関しては、担当者に英語教育 を専門とする教員(英語母語話者)が加わったことで可能になった。プログラム初日の英語による自 己紹介や、群馬在住の英語母語話者による講義など、英語のみを使用する活動を多く設けた。また、 群馬の地域的特長を体験を通して学べる活動として、みなかみ町での「利根川ラフティング体験」と 「農家での民泊体験」を設定した。実施概要は以下の通りである。 ●期 間:2015
年8月31
日(月)∼9月1日(火) 1泊2日 ●場 所:群馬県みなかみ町 ●参加者:日本人学生16
名外国人留学生
21
名(アメリカ・インドネシア・スリランカ・タイ・中国・フィリピン・ ベトナム・モンゴル・ラオス) ●引 率:国際教育・研究センター教員2名、国際交流課職員2名 ●費 用:学生負担4,000
円/1名 ●協力機関:株式会社キャニオンズ、一般社団法人みなかみ町体験旅行 4.2 プログラム詳細 活 動 内 容 1日目 午前 ■バス出発 桐生→昭和→荒牧→みなかみ・キャニオンズ到着 (車中: 英語・日本語によるプログラム説明、英語による自己紹介) ■ラフティングの安全に関する注意事項説明(日・英)・ラフティング体験 ■キャニオンズにてグループごとに昼食 午後 ■キャニオンズにてMike Harris
氏による講演(英語)・質疑応答 移動(水紀行館にて休憩・足湯体験) ■入村式(民泊農家との対面式)、日本人学生による挨拶 ■民泊体験開始:グループごとに各農家に移動、夕食、宿泊 (郷土料理、散策、温泉など、各民泊先で農家の生活体験) 2日目 午前 ■民泊先で生活体験(うどん作り、餅つき、野菜の袋詰、クラフト体験など) 午後 ■集合 離村式、外国人留学生による挨拶 ■田園プラザかわばへ移動 自由時間 ■バス出発(車中:英語・日本語による活動報告、振り返り、感想発表)→荒牧 ■荒牧にて、民泊農家先へのメッセージ作成(グループワーク) ■バス出発 荒牧→昭和→桐生到着 【英語でのコミュニケーション】 参加学生同士の英語での交流を促進するため、初日にバス車内において、全員英語での自己紹介を 行った。自己紹介中も互いに質問し合うなど、初対面の学生同士も打ち解けやすい雰囲気の中で行う ことができた。今回担当となった英語教員が日本語も堪能であることから、車内での説明や案内も英 語・日本語の両言語で行われた。プログラム開始時から英語の使用機会を設けたことで、その後のラ フティングや民泊でのグループ活動においても、互いに積極的にコミュニケーションを図ろうとする 姿勢が見られた。 【利根川ラフティング体験】 ラフティングは、みなかみ町でキャニオニングやラフティング等のアウトドアツアーを企画・運営 するキャニオンズで実施した。まず、キャニオンズのスタッフから英語と日本語でラフティング時の 安全確認・注意事項が説明された。その後、利根川上流から1つのボートに6-
8名が分乗し、イン ストラクターの指示のもと全員で協力して漕ぎ、激流や渓谷美を楽しみながら約4㎞のラフティングを体験した。 【キャニオンズ代表取締役
Mike Harris
氏による講演】 ニュージーランド出身のMike Harris
氏は、大学在学中に初来日し、卒業後、群馬県みなかみ町の アウトドア会社勤務を経て、2004
年に同町で株式会社キャニオンズを設立している。講演では、みな かみの自然資源の価値と、自然を活かした新しいビジネスの展開、海外からの観光客が感じるみなか みの魅力について、写真や映像とともに説明された。その後、参加者との質疑応答の時間を設けた。 【農家での民泊体験】 民泊は、みなかみ町体験旅行のプログラムを利用した。参加学生は米・果樹・野菜などの生産農家 1軒あたり3∼6名ずつに分かれて宿泊した。家族の一員として交流しながら農作業や郷土料理を体 験するほか、自然と共生する農家の生活様式と地域の歴史や伝統について理解を深めた。日本人学生 が外国人留学生と受け入れ先家族との交流の橋渡し役を担うことで、外国人留学生にとっても日本語 でのコミュニケーションを図れるよい機会となった。 【民泊農家先へのメッセージ作成】 荒牧キャンパスに到着後、グループごとに宿泊先の家族へ感謝のメッセージ(色紙)を作成した。 宿泊先で撮った写真を貼る、日本語・英語でお礼の言葉を書く、レイアウトを決めるなど、グループ で協力して作業を進めた。プログラム最後のグループ活動であり、メッセージ作成後も互いに今回の 活動について語り合うなど、最後まで交流が続いた。 4.3 本プログラムの成果と課題 −学生のレポートより− 参加学生にはプログラム終了後に、プログラムの感想や意見を自由に記載するレポートの提出を求 めた。ここではレポートに書かれた記述を引用し、参加学生が得た気づきや学び、そして課題として 挙げられた点について記述する。 ⑴ 学生同士の交流促進 ・1日目のCanyons
でのラフティングは、初めて会った外国人留学生や他学科の学生と協力して 川を下ることで仲を深めることができました。[日] ・このキャンプを通して外国人留学生と交流でき、友達となれたこと、それが私がこのキャンプで 得ることができて本当によかったと思うことです。[日]・ I
found new friends, either both from Japan or other countries.
Iwas introduced with
friends from Kiryu and Aramaki, friends
Ididn
’tknow much before.
[留]本プログラムを通して、日本人学生と外国人留学生との交流だけではなく、他学部の学生とも交流 することができたという意見が多かった。特にラフティング体験の際、皆で協力してボートを進める 活動によって距離が縮まったとの感想が多く見られた。また、英語でのコミュニケーションについて は、主に日本人学生から「留学生と英語で会話することにより、英語力を高めることができた」「(普 段は)実際に英語でコミュニケーションをとる機会はあまり多くないので、今回とても良い刺激を受 けることができました。今後の英語学習へのモチベーションが高まりました」等、英語の学習意欲が 向上したとの意見があった。 ⑵ 自文化・異文化の気づき、文化の相互理解 ・お互いの国の文化や宗教などについてさらに理解が深まったと思う。このキャンプを通じて海外 の興味関心が強くなった。[日] ・宗教観の違いなどについて理解を深めることができた[日] ・日本の文化を学ぶことができました。そして日本人以外にいろいろな国の人とコミュニケーショ ン・異文化も学びました。[留] 本プログラムは2日間という短期間であったが、協働の活動を通して交流が深まり、互いの文化、 習慣、価値観、宗教観について話し合うことができていた。他文化を知るだけではなく、自文化を改 めて見直す機会になったとの報告もある。本プログラムでは、特に異文化理解をテーマとするような 活動を設定はしていないが、多国籍が混在する小グループでの活動時間を多く設定したことが、文化 的多様性に関する興味・関心の増加に肯定的な影響を与えたと考えられる。 このような多国籍が混在するグループ活動による効果は、前年度の第2回インターナショナルキャ ンプでも同様であった。 ⑶ 群馬の地域的特長の理解 ・一番印象に残っているのはマイク・ハリス氏による講演である。これらのアクティビティは、群 馬の誇れる産物であると考えた。県民の多くがこの魅力をおそらく知らないと考えるので、この 魅力をぜひ発信していきたいと思った。[留] ・マイクさんの講演は世界の中でもみなかみを舞台に
Canyons
を立ち上げた背景や、みなかみの 自然の素晴らしさについて話を聞くことができました。群馬に4年間住んでいても季節ごとの自 然の素晴らしさや様々なアクティビティがあることを初めて知りました。[日] 参加学生の多くが、Mike Harris
氏の講演を高く評価しており、「改めて群馬のよさを知った」とい う意見が多く見られた。群馬の自然の豊かさが海外の人たちにどのような魅力として捉えられている のか、またその魅力をどのようにビジネスにつなげるかという点が印象に残ったようである。この講演はラフティング体験の後に行われたため、自分たちが体験した活動の背景にある理念や意義をより 深く理解できたのではないかと考えられる。
⑷ 農家の生活様式体験
・
Another interesting factor
Iobserved was that the family did an excellent job of reducing,
reusing and recycling trash.
[日]・農家は生産した野菜を自分たちで安心して食べる(地産地消)の他に、〈中略〉マーケットで販 売することになっていた。生産した農作物は残って無駄になることなく 人々に届けられるため シンプルだけど、いいシステムだと印象に残った。[留]
・I
was most impressed by the beautiful landscape and that they gave leftovers to the chickens
and rabbits, so that no food was wasted.
Iwondered about sustainability
;it seemed living
on your own farm was more ecological, more environmentally friendly than living in
acity.
[留] 民泊での2日目は天候が悪く、予定していた農作業ができず、うどん作りや餅つき、収穫物の袋詰 め作業を行った農家が多かった。民泊体験については、「楽しかった」「初めて農家の体験した」「伝 統的な文化を知った」という記述もあったが、農家ならではの暮らし方や自然との共生の考え方につ いて言及した記述も見られた。農家では自家製の農作物を市場に出すだけではなく、食材として自分 たちで消費し、その廃棄物を畑の肥料や飼育している動物の飼料として再利用する。学生はこのよう な無駄のない一連の流れを実際に見聞きすることで、リユース・リサイクルという活動が特別な社会 活動はなく、昔から伝わる生活の知恵として普段の生活の中で自然に営まれていることを改めて学ん でいる。 以上のように、今回の活動は参加学生から概ね高く評価されたと考えられる。
5.今後の課題
以上、学生レポートからわかるように、普段接点のない学生同士の交流が促進され、刺激し合い、 相互理解を深めるという成果が確認できた。それ以外にも、本キャンプの活動を通して、学生たちが 個々に様々な成果を得たと考えられるが、その一方で、課題もある。 第2回のプログラムでは、一部の外国人留学生から日本語でのコミュニケーションが十分に行え ず、全体的に情報が不足したとの声があった。特に、東照宮見学の際の活動が十分に理解できなかっ たとの声がきかれた。誰もが活動の目的と内容を十分に理解し参加できるようプログラムの設計を工 夫すること、英語でのサポートを充実させることが課題として残った。 第3回では英語教員が担当に加わり、英語によるサポートを積極的に取り入れることで、第2回の課題を解消した。加えて、英語を積極的に使用したいという日本人学生のニーズを満たすこともでき た。しかし、第3回のプログラムでは、「同じ班のメンバーと話す時間は十分に取ることができ非常 によかったが、他の班のメンバーと話す時間があまり取れなかったことが少し残念だった」という意 見もあった。時間の制約もあり、参加者全体での活動時間が限定されてしまったため、学生同士の交 流がグループ内のみに留まってしまった面もある。自分たちの経験や感想を全体で共有し、活動全体 を振り返る時間を設けられれば、より多様な考え方に触れることができ、理解がさらに深まったので はないかと考えられる。 このような日本人学生と外国人留学生とを対象としたプログラムでは、使用言語の設定、交流を活 発化するための活動の選定というプログラム設計と、実際に活動を進める中で、学生の交流の状況を 見ての的確な助言が非常に重要であることを改めて感じた。 また募集に関しては、第2回、第3回ともに共通の問題があった。いずれも実施約1か月前の7月 下旬からポスター掲示するとともに、センター教員が担当する授業等で学生へ直接呼びかけたり、国 際教育・研究センターホームページ、大学教務システム掲示板、外国人留学生メーリングリストでの 情報発信を行った。外国人留学生については、すぐに定員に達したものの日本人学生の応募が思った ほど伸びなかった。そのため、当初は日本人学生と外国人留学生を同数で計画していたが、結果的 に、外国人留学生枠を増やすこととなった。今後は日本人学生への効果的な周知方法を工夫する必要 があると思われる。 注 ⑴ 2014年度群馬大学サマープログラムに参加した協定校からの短期留学生10名を含む。 ⑵ 学生の引用文中の[日]は日本人学生の記述、[留]は外国人留学生の記述を示す。また、誤字は文の意味を変え ない範囲で筆者が訂正した。 参考文献 園田智子・大和啓子(2014)「日本の里山で実施するインターナショナルキャンプでの実践と学生の気づき:異文化間 能力の育成への挑戦」『留学生交流・指導研究』17, pp.47-58,国立大学留学生指導研究協議会
Gunma University
’
s International Camp
:
An Annual Event for Multicultural Exchange and Mutual Understanding
YAMATO Akiko
・
FURUKAWA Atsuko
・
Sylvain Bergeron
・
MAKIHARA Tsutomu