第16回群馬遺伝子診療研究会
日 時:平成 20年 6月 24日 (火) 18: 00∼ 会 場:群馬大学医学部 刀城会館 当番世話人:竹内 利行(群馬大・生調研・ 泌制御 野) 代表世話人:森 昌朋(群馬大院・医・病態制御内科学)特別講演>
血液脳関門を壊さない脳の標的化 DDS 技術 澤田 誠(名古屋大学環境医学研究所 脳機能 野) ミクログリアはいろいろな特殊な性質を持つ中枢神経 系細胞で, 脳内サイトカインネットワークの中心的な細 胞である. 我々はミクログリアが血液脳関門を崩壊させ ること無く脳に浸潤できることを見いだした. この性質 を利用して, 外来遺伝子を導入したミクログリアを末梢 血管投与して脳に目的遺伝子を発現させることができる ようになった. また, GFP恒常的発現ミクログリアを導 入した場合, 導入後数ヶ月にわたって脳内に GFP陽性 ミクログリアが観察できることから, 外来性ミクログリ アの一部は脳に侵入後内在性ミクログリアと同様に脳に 生着し続けることがわかった. したがって, 疾患遺伝子 を補償するように遺伝子操作を加えたり, あらかじめ薬 物を取り込ませたミクログリアを血管内に注入すること によって, 脳をターゲットした遺伝子治療やドラッグデ リバリシステムとして利用できると えている. 一方, 脳内でのミクログリアの役割については, 神経細胞の変 性にともなって活性化ミクログリアの集積や増殖が観察 されることや, アルツハイマー病やパーキンソン病など の神経変性疾患でミクログリアが活性化していることな どから, 神経細胞の変性や生存維持に対する作用が注目 されている. そこでミクログリアが脳特異的に移入する 性質を利用して一過性前脳虚血を起こした砂ネズミ血管 にミクログリア導入を行い, 遅 性神経細胞死が見られ る海馬 CA1領域の錐体細胞層に標識ミクログリアが集 積することを見いだした. この時, 内在するミクログリ アも海馬の広範囲に渡って集積活性化が観察できた. さ らに, ミクログリアを脳内導入した場合や虚血再還流直 後にミクログリアを注入した場合においては有意に CA1錐体細胞の神経細胞死が抑制されることがわかっ た. したがって, ミクログリアは神経変性に対してこれ までの えとは反対に保護的に作用している可能性が えられ, 治療担体として用いた場合に多くの利点を持つ と えられる. 最近我々はミクログリアが脳内侵入する様式を模倣す ることができる 子を単離することに成功した. この 子と薬物, タンパク, 遺伝子, 人工担体などを結合して脳 を標的化した薬物送達を目指した開発を行っている. こ のシステムを用いると血液脳関門を崩壊させることな く, しかも他の技術に比べ脳選択性が高いほか, 高移行 率で脳移行させることができるため, 脳疾患の新規な治 療法としての実用化が期待できる. さらに, 特殊なナノ 粒子と結合することによって神経細胞にだけ目的物を導 入することも可能となった. 神経細胞のトリプルターゲ ティング (脳―病変部―神経細胞内) も構築できると えている.一般演題>
1.FGF-2遺伝子治療による機能的血管新生における 内因性 VEGF,PlGFの検討 藤井 孝明,桑野 博行 (群馬大院・医・病態 合外科学) 藤井 孝明,居石 克夫 (九州大学大学院医学研究院病理病態学) 米満 吉和 (千葉大学大学院医学研究院遺伝子治療学) FGF-2による血管新生では内因性 VEGF が必須であ る. PlGF にも血管新生作用があり, 今回 FGF-2遺伝子 治療による内因性 VEGF,PlGF について検討した.マウ ス虚血肢モデルでは PlGF 発現は亢進し, FGF-2遺伝子 導入でさらに発現亢進した. 内皮細胞では FGF-2では なく VEGF 刺激で PlGF 発現が亢進し, 虚血肢モデルで の PlGF 発現亢進は VEGF 中和抗体で阻害された. 内皮 細 胞 で は PKC, MEK, NF-kB阻 害 で VEGF 依 存 性 PlGF 発現は低下し, 虚血肢モデルでは p70S6K 阻害で も FGF-2依存性 PlGF 発現 が 低 下 し, p70S6K/VEGF が FGF-2依存性 PlGF 発現に関与すると えられた. 409 Kitakanto Med J 2008;58:409∼410また PlGF 中和抗体で虚血肢モデルの FGF-2依存性血 流回復が阻害された. 以上より FGF-2は VEGF 発現亢 進し, VEGF は直接的, また PlGF 発現を介し, 間接的に も血管新生に寄与すると えられた. 2.卵巣に再発を認めた家族性 paragangliomaの1例 橋田 哲,橋本 貢士,佐藤 哲郎 山田 正信,森 昌朋 (群馬大院・医・病態制御内科学) 症例は 20歳, 女性. 平成 18年 8月後腹膜 paragang-lioma (PGL)を当院消化器外科 (2)にて手術.以後,近医 にて経過観察中であったが, 平成 19 年 7月頃より血圧 上昇あり, 再発を疑われ造影 CT を施行された際に, 200mmHg 台に血圧上昇し, 右卵巣に 4 cm大の腫瘤を認 めた. 血中ノルア ド レ ナ リ ン 5.9ng/ml, ドーパ ミ ン 0.07ng/mlと高値であり, PGL 再発疑いにて 8月当科紹 介入院. 入院時血圧 137/94mmHg. 尿中ノルアドレナリ ン 1095.4ug/day, ノルメタネフリン 1.911mg/day, VMA
7.46mg/dayと高値. 右骨盤内の腫瘤は MRI にて T2WI で 一な高信号・DWI にて強い拡散低下を示し,PGL が 疑われた. しかし, I-MIBG シンチでは前回同様に RI の取込みを認めず, 一方, FDG-PET では MaxSUV 18.8 の高度集積を認めた.また,後頚部・上縦隔・傍椎体・鎖 骨下・肋骨下・後腹膜などにも FDG の高度集積を認め, カテコラミンにより活性の亢進した褐色脂肪組織と え られた. 以上より右卵巣の PGL 再発と え, 9 月当院婦 人科にて右附属器切除術を施行された. 病理組織は前回 同様の PGL の所見であり, 術後カテコラミン値は正常 化した. 卵巣の PGL はこれまでに 6例しか報告されて おらず,極めて貴重な症例である.また,病歴聴取の結果, 患者の祖母にも PGL を認めたが,MEN2・VHL 病・NF1 などを疑わせる所見はなく, 家族性 PGL と えられた. さらに, FDG-PET にて患者の母にも頚部 PGL が疑わ れた. 家族性 PGL の原因遺伝子として, 近年 SDHB/ SDHD 遺伝子が注目されており, 同遺伝子解析を予定し ている. 第 16回群馬遺伝子診療研究会 410