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ZnDTPとFM共存下の摩擦特性と吸着特性に関する研究

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1. は じ め に 近年,低燃費化のためにモータとエンジンを動 力とするハイブリッド車が増加しており,そこで 使用されるエンジンに対して,エンジン油の高性 能化による燃費低減の取組みが行われている1, 2) ハイブリッド車のエンジンでは,従来の内燃機関 車よりも油温が低下することが明らかにされてお り1),低温での摩擦低減効果の重要性が増してい る.一方で,ピストンリング/シリンダ間の摩擦 では,燃焼室近傍の高温しゅう動部も依然として 残っている.そのため,エンジン油には,低温か ら高温にわたる広い温度領域における摩擦低減効 果の発現が要求されている. エンジン油による燃費向上の方法は,低粘度化 と低摩擦化による摩擦損失の低減効果が挙げられ る.低摩擦化の代表的な添加剤としては,従来か らモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)が 使われてきていた3).しかしながら,MoDTC は 高温で分解反応により二硫化モリブデンを生成す ることにより摩擦低減効果を発揮するため,油温 が低い場合にはその効果が発現し難くなることが “トライボロジスト”第 66 巻 第 5 号(2021) 363~371 原稿受付 2020 年 11 月 7 日 掲載決定 2021 年 2 月 21 日 J-STAGE 早期公開日 2021 年 3 月 19 日 学術論文 小野寺 康1*,佐藤 魁星2,渡部 誠也3,佐々木 信也3

Study on Friction and Adsorption Performance under Co-Existence of ZnDTP and FM

Ko ONODERA1*, Kaisei SATO2, Seiya WATANABE3 and Shinya SASAKI3

Key Words : ZnDTP, friction modifier, friction, adsorption, MoDTC

Friction reduction by engine oil under low and high temperature conditions is required because of the increasing number of hybrid vehicles where oil temperature is low. Friction modifier (FM) technology to realize it are required. Friction performance of molybdenum dithiocarbamate (MoDTC) used with adsorption type FMs was investigated, which showed different results depending on types of adsorption type FMs: glycerol monooleate (GMO) inhibited friction reduction while polymer FM (PFM) did not. To understand the cause of the difference, the effect of reaction film formation by Zinc dithiophosphate (ZnDTP), which is crucial for the friction reduction by MoDTC, on adsorption type FMs was investigated. GMO inhibited the reaction film formation by ZnDTP, while PFM did not fully, observed with mini-traction machine spacer layer imaging (MTM-SLIM) and EPMA analysis. The cause was studied by their adsorption performance examined by quartz crystal microbalance (QCM). GMO showed higher adsorption density, while PFM showed lower compared to that of ZnDTP. The result indicated that GMO competitively adsorbed on the surface, inhibiting the reaction film formation by ZnDTP while polymer FM did not. Adsorption performance under co-existence of PFM and ZnDTP indicated that ZnDTP is capable to adsorb on the surface under the existence of PFM. The study indicated that the key to achieve low friction is to use PFM which does not fully inhibit ZnDTP reaction film formation.

1 EMG ルブリカンツ(同) トライボロジ研究所 製品開発部(〒210-9526 神奈川県川崎市川崎区浮島町 6-1)

Product Research Department, Tribology Research Center, EMG Lubricants Godo Kaisha(6-1, Ukishima‒cho, Kawasaki‒ku, Kawasaki‒shi, Kanagawa 210-9526)

2 東京理科大学 大学院生(〒125-8585 東京都葛飾区新宿 6 丁目 3-1)

Student, Graduate School, Tokyo University of Science(3-1, Niijuku 6‒chome, Katsushika‒ku, Tokyo 125-8585)

3 東京理科大学 工学部 機械工学科(同上)

Department of Mechanical Engineering, Faculty of Engineering, Tokyo University of Science(ditto)

Corresponding author:E‒mail: [email protected]

(2)

危惧されている4).そこで,MoDTC に加え,分 解反応を必要としないために低温で有効とされる 吸着型摩擦調整剤(FM)による摩擦低減が着目 されている.吸着型 FM としては,これまでは, オレイン酸,グリセリルモノオレート(GMO)の ような低分子型の吸着型 FM が使用されてきた. 近年,油膜形成能を有しながら分子の設計自由度 も高い高分子量型の吸着型 FM,すなわち,ポリ マー FM(PFM)が着目されるようになった5~7) 一方,MoDTC のような反応型 FM と吸着型 FM を併用した場合は,添加剤同士の相互作用に より,必ずしも両方の FM の効果が発揮されると は限らないという研究結果が得られている.また, 吸着型 FM のタイプによる反応型 FM 相互作用 の違いも見られている8, 9).筆者らは前報10)にて, MoDTC と吸着型 FM を併用した場合,MoDTC に対する摩擦阻害効果は,低分子の吸着型 FM で あるグリセリンモノオレート(GMO)は大きいの に対し,高分子の吸着型 FM であるポリマー型の FM(PFM)は小さいことを報告した.また,吸 着特性の解析結果から,単位面積当たりの吸着分 子 数 が MoDTC よ り は る か に 大 き い GMO は MoDTC の吸着挙動を阻害したのに対し,単位面 積当たりの吸着分子数が小さい PFM は MoDTC の吸着とその後の二硫化モリブデン(􀁍􀁍􀁯􀁯􀁓􀁓􎨲􎨲)の生 成を阻害し難いことを明らかにした. MoDTC が 􀁍􀁍􀁯􀁯􀁓􀁓􎨲􎨲を生成して摩擦低減効果を発 現するためには,エンジン油に必須の耐摩耗剤と して使用されているジチオリン酸亜鉛(ZnDTP) が重要な役割を果たすことが知られている11, 12) 吸着型 FM は,前報で報告した MoDTC との競 争吸着だけでなく,ZnDTP との競争吸着により 反応膜生成を妨げている可能性が ある. そこで本報では,ZnDTP と吸 着型 FM との共存下における摩 擦特性および反応膜の生成を調査 し,その相互作用を明らかにした. ZnDTP と吸着型 FM 相互作用を 理解する上で重要な吸着特性を調 査し,ZnDTP と PFM 共存下で みられる摩擦特性を考察した. 2. 実 験 方 法 2.1 試 料 油 2.1.1 摩 擦 特 性 評 価 用 試 料 油 試 料 油 を Table 1 に示す.ZnDTP,MoDTC の添加濃度は, 通常のエンジン油として使用されるレベルとし, そ れ ぞ れ 10 mmol/kg( P􀀽􀀽0.06 mass% ),2.5 mmol/kg (Mo􀀽􀀽0.048 mass%)とした.低分子 吸着型 FM として GMO,高分子吸着型 FM とし てラウリルアクリレートをベースにヒドロキシエ チル基で部分的に修飾したポリマー FM (PFM: 分子量約 15 000)を用いた.なお,ポリマーの合 成反応はランダム重合であって,ヒドロキシエチ ル基のモル濃度は 30~40 mol%である.GMO は, 実用レベルである 8.7 mmol/kg(0.31 mass%), PFM は実用レベルである 0.25 mmol/kg(0.38 mass%)を添加した.いずれも Gr.III 基油(100℃ 動粘度􀀽􀀽4.1 mm􎨲􎨲/s)に希釈して調製した,使用 した添加剤の化学構造を Fig. 1 に示す. 2.1.2 吸 着 特 性 評 価 用 試 料 油 吸 着 試 験 では,添加剤単独の吸着特性を検討するために, 摩擦試験と同じ Gr.III 基油にそれぞれの添加剤を 希釈して供試した.PFM と MoDTC,ZnDTP と の共存下の吸着特性を調査するために,PFM + ZnDTP と PFM􀀫􀀫ZnDTP􀀫􀀫MoDTC の 2 種の油 を調製した.添加剤濃度は実用レベルとし,PFM は 0.25 mmmol/kg,MoDTC は 2.5 mmol/kg, ZnDTP は 10 mmol/kg とした. 2.2 摩 擦 試 験 2.2.1 摩 擦 試 験 方 法 摩擦試験には,Fig. 2 に示す MTM(PCS instruments Mini Traction Machine)試験機を用いた.試験条件を Table 2

Samples GMO PFM MoDTC ZnDTP

mmol/kg mmol/kg mmol/kg mmol/kg

ZnDTP 10

MoDTC 2.5

ZnDTP 􀀫􀀫 MoDTC 2.5 10

ZnDTP 􀀫􀀫 GMO 8.7 10

ZnDTP 􀀫􀀫 PFM 0.25 10

(3)

に示す.比較的低温での反応性を調べるために, 試験温度は 60℃に設定した.まず,最初にストラ イベック測定(Before running-in)を実施した上 で,定常試験を開始し,2 分,5 分,10 分,30 分, 1 時間後で一旦停止し,後述の SLIM 法(spacer layer imaging)での観察を実施した後に,それぞ れのタイミングでストライベック測定を実施した. 最終的には,合計 2 時間の試験を定常実施し,ス トライベック測定(After running-in)を実施した. 2.2.2 分 析 方 法 光干渉を用いた SLIM 法を 用いて反応皮膜の生成を観察した.SLIM 法では, 鋼球の摩擦表面にクロム膜とシリカ膜が蒸着され たガラスディスクに押し当て,白色光を顕微鏡を 通じて接触面を照らし,反射光の干渉光を測定す る.反応膜厚さは,干渉光を Red,Green,Blue に分離し,各成分の強度を基に色相値に変換する ことで算出できる.本実験では,中央部直径 100 nm 平均値を反応膜厚さとした.試験後のディス ク試験片をヘプタンで洗浄後に,しゅう動痕を含 む 0.25 mm􀃗􀃗0.4 mm の範囲について,EPMA 分 析を実施した. 2.3 吸 着 試 験 2.3.1 吸 着 試 験 方 法 各添加剤の吸着特性 を評価するために,水晶振動子マイクロバランス (Quartz crystal microbalance : QCM)法による試 験 を 行 っ た.測 定 装 置 に は QCM-D( Biolin Scientific, Q-Sense E4,Sweden)を用い,センサ

には酸化鉄(Fe􎨳􎨳O􎨴􎨴)コーティングしたものを用 いた.測定プロトコルを Fig. 3 に示す.設定温 度は 60℃とし,基本周波数 4.95 MHz の水晶振動 子を用い,オーバートーン n􀀽􀀽3 の振動数変化を用いた.まず,基 油のみを回転式ポンプにより送液 して設定温度およびシグナル(振 動数:􀎔􀎔F および Dissipation:􀎔􀎔D 値)の安定を確認し,次に試料油 に切り替えて 􀎔􀎔F と 􀎔􀎔D の変化を 60 分間観測した.単位面積当た りの吸着量は,60 分後の振動数変 化量を SAUERBREYの式に基づい て変換して求めた13)

Fig. 1 Structure of FM and ZnDTP

Fig. 2 MTM test

Running in Stribeck measurement

Materials AISI 52100 steel ball(Ra 􀀽􀀽 0.01 􀎼􀎼m)and disk(Ra 􀀽􀀽 0.01 􀎼􀎼m)

Sliding rolling ratio 50 %

Load 36.6 N

Herz pressure 1.0 GPa

Temperature 60 ℃

Speed 100 mm/s 5-3000 mm/s

Test duration 0, 2, 5, 10, 30, 60, 120 min 6 sec/step

Table 2 MTM test condition

(4)

3. 実 験 結 果 3.1 摩 擦 試 験 結 果 3.1.1

ZnDTP

MoDTC

摩 擦 低 減 効 果 に 与 え る 影 響 潤滑油基油およびそれに MoDTC を 2.5 mmol/kg 添加した場合の 2 時間 の慣らし試験後(After running-in)の摩擦特性を Fig. 4(a)に示す.MoDTC の有無にかかわらず, 高速側の摩擦係数は 0.03 程度の小さい値を示し た.これは弾性流体潤滑状態における潤滑油基油 のトラクション係数を反映したものと考えられる. 一方,低速になるにつれて摩擦係数は上昇した. これは潤滑条件が混合潤滑に移行するためと考え られる.MoDTC の添加有無にかかわらず摩擦係 数に大きな差がみられないことから,本試験条件 においては,MoDTC 単独添加潤滑油基油中では 摩擦低減効果がほとんど発現しないと考えられる. Figure 4 ( b ) に 潤 滑 油 基 油 に ZnDTP を 10 mmol/kg 添加した ZnDTP 含有基油と,さらに MoDTC を添加した複合添加油の After running-in の摩擦特性を示す.MoDTC 無添加の場合は, ストライベック曲線が全体に右側にシフトすると ともに,摩擦係数が高速側から低速側にかけて上 昇している10).これは,ZnDTP 由来の表面粗さ が粗い厚い反応皮膜が形成されることにより,混 合潤滑領域が広がったためと考えられる14, 15) MoDTC を添加した場合は,摩擦が大幅に低減し ていることから,􀁍􀁍􀁯􀁯􀁓􀁓􎨲􎨲の低摩擦皮膜が形成され ていると考えられる.MTM-SLIM 法で観察した 結果を Fig. 5 に,反応膜厚の経時変化を Fig. 6 に 示す.基油単体に MoDTC を添加した場合と比 較して,ZnDTP􀀫􀀫MoDTC の方が大幅に皮膜生成 を 促 進 し て い る こ と が わ か る.基 油 中 で は MoDTC の反応膜は成長しないのに対し,ZnDTP 含有基油中では 40 nm を超える厚さの反応膜を 形成したことがわかる. 以上の結果から,本試験条件においては, ZnDTP 添加により MoDTC による摩擦低減効果 (􀁍􀁍􀁯􀁯􀁓􀁓􎨲􎨲生成)が高まることが確認された. 3.1.2

ZnDTP

と 各 種

FM

共 存 下 の 摩 擦 特 性 前項に記載した通り,エンジン油としての MoDTC の 摩 擦 低 減 効 果 を 検 討 す る 上 で は,

Fig. 4 Effect of ZnDTP on friction reduction by MoDTC (After running-in)

(5)

ZnDTP の添加が必要である.そこで,各 FM と ZnDTP との相互作用を調査するために,ZnDTP 単体と ZnDTP と FM との共存油の摩擦特性を確 認した.いずれの FM も実用レベルの添加量

(GMO 8.7 mmol/kg,PFM 0.25 mmol/kg,

MoDTC 2.5 mmol/kg)とした.境界摩擦係数 (Boundary Friction Coefficient)として,ストラ イベック測定の低速部(5~20 mm/s)の平均摩 擦係数を用い,摩擦係数の時間変化を示した結果 を Fig. 7 に示す.なお,低速部における合成表面 粗さと計算油膜厚さから計算される膜厚比は, 0.1~0.2 である. MoDTC は試験開始 5 分で摩擦を低減し,その 後,緩やかに摩擦係数が上昇した.一方,GMO の場合は,初期の摩擦低下の後は,ほぼ一定の摩 擦係数を保持した.GMO の場合は反応膜を形成 しないため,GMO 吸着膜が ZnDTP 由来の摩擦 係数を上昇する粗い皮膜形成を抑制した可能性が 考えられる.一方,PFM の場合は,初期には摩 擦係数は低減したが,徐々に摩擦係数が増加した. これは,ZnDTP による皮膜生成が PFM 存在下 でも徐々に進んできている可能性を示している. Figure 8 に SLIM 法による表面観察結果を, Fig. 9 に反応膜厚の経時変化を示す.FM 無添加

Fig. 6 Effect of ZnDTP on reaction film thickness Fig. 7 Effect of FMs on friction coefficient in base oil +ZnDTP

(6)

の場合,皮膜生成は試験開始 30 分後から顕著に 確認され始め,120 分後まで継続的に生成し,最 終的には厚さ約 120 nm の反応膜を形成した. GMO 添加の場合は,120 分間にわたって皮膜生 成が見られず確認され最終反応膜厚さもほぼゼロ であり,摩擦係数も一定であった.一方,PFM 添加の場合は,30 分後から皮膜生成が見られ始め, その後 120 分後まで皮膜の生成が進んだ.摩擦係 数は試験開始から少しずつ上昇し始めて 120 分間 にわたり緩やかに上昇した.反応膜は,ZnDTP 単独よりは薄いものの 50 nm 以上の厚さで形成 されていた.MoDTC の場合は,SLIM 法で目立 った皮膜形成が見られたのは 60 分以降であるが, 試験開始 5 分後から摩擦係数は低減した.このこ とから,MoDTC による摩擦低減には必ずしも厚 い反応膜の生成は必要ないと考えられる. しゅう動試験後の EPMA 分析結果を Fig. 10 に示す.P, Zn は ZnDTP 由来,Mo は MoDTC 由 来,S は ZnDTP および MoDTC 由来の元素であ る.FM 無添加の場合は, P, S, Zn 元素が検出さ れており,ZnDTP 由来の皮膜生成を示している. GMO 添加油の場合,これら P, S, Zn 元素が検出 されておらず,ZnDTP による皮膜生成を阻害し ていることがわかる.一方,PFM 添加の場合に は,P, S, Zn 元素が検出されており,ZnDTP 由来 の皮膜の形成が示唆され,摩擦係数および MTM-SLIM 試験結果とも符合する.MoDTC 添加の場 合は,P,S,Zn に加えて,Mo 元素も検出されて おり,􀁍􀁍􀁯􀁯􀁓􀁓􎨲􎨲の生成が示唆される. 3.2 吸 着 試 験 結 果 3.2.1 添 加 剤 単 独 の 吸 着 特 性 前 報10) て,MoDTC,PFM,GMO について,各単独添加 油における吸着特性を測定した.本報では, ZnDTP の吸着特性を QCM(オーバートーン n􀀽􀀽 3)で測定した.添加重量濃度がほぼ等しい GMO 0.31%(8.7 mmol/kg),PFM 0.38%(0.25 mmol/ kg),MoDTC 0.27%(0.25 mmol/kg)と比較した 結 果 を Fig. 11 に 示 す.􀎔􀎔F 値 の 変 化 か ら, ZnDTP は,PFM,MoDTC と比較すると,初期の 吸着量増加から,徐々に吸着が継続し,60 分後の 吸着量は大きくなったが,GMO と比較すると吸 着量ははるかに小さい.また,􀎔􀎔D 値は時間とと もに増加し,比較的薄い膜を形成しているものの, 徐々に厚みを増していると考えられる. 次に,60 分後の単位面積当たりの吸着質量を求 めた.いずれも当該濃度では 􀎔􀎔D 値が小さいこと から,単純に 􀎔􀎔F 値の変化(オーバートーン n􀀽􀀽3) を SAUERBRAYの式に当てはめて,1 nm􎨲􎨲当たり の吸着分子数に変換した.その結果を Fig. 12 に 示 す.1 nm􎨲􎨲当 た り の 吸 着 分 子 数 は,GMO は ZnDTP の約 8 倍,PFM は ZnDTP の約 0.03 倍

Fig. 9 Effect of FMs on reaction film thickness

Fig. 10 Effect of FMs on film formation by ZnDTP analyzed with EPMA

(7)

であることが確認された. 3.2.2

ZnDTP

,

MoDTC

PFM

の 吸 着 特 性 摩擦試験において,ZnDTP と PFM 共存下で 反 応 皮 膜 が 生 成 し て 摩 擦 を 上 昇 し,さ ら に MoDTC も含めた 3 成分存在下では反応皮膜を生 成して摩擦を低減することが確認された10).それ は,PFM 存在下でも,ZnDTP および MoDTC が 吸着できることを示唆している.そこで,その摩 擦特性を説明するために,PFM􀀫􀀫ZnDTP,さら には,PFM􀀫􀀫ZnDTP􀀫􀀫MoDTC の吸着特性につ いて QCM を用いて調査し,PFM 単独添加の吸 着特性と比較した.なお,QCM で生じる振動数 変化は,質量に依存しており,化学種に依存して いないため,複数成分系において,それぞれの吸 着量を分離して計算することは困難である. PFM 単独の場合,PFM に対して ZnDTP を加 えた場合,さらに MoDTC を加えた場合の QCM 試験結果を Fig. 13 に示す.PFM は単独の場合 は,初期に大きな吸着量を示し,その後,一定の 値を示した.PFM と ZnDTP との 2 成分系,さ らに MoDTC を添加した 3 成分系においても, PFM 単独の場合と同様に,初期に大きな吸着量 を示し,その後,一定の値を示す傾向が見られた. しかしながら,􀎔􀎔F の低減度は PFM 単独よりも 大きくなった.60 分後の単位面積当たりの吸着 量を Fig. 14 に示す.2 成分系,および,3 成分系 の合計吸着量は,PFM 単独の場合よりも増加し ていることから,ZnDTP および MoDTC がそれ ぞれ,PFM 存在下においても吸着したことが推 察される.一方,3 成分の吸着量は,それぞれ単 独の吸着量の和よりも小さいため,ZnDTP およ び MoDTC は吸着可能な分子の一部が表面に吸 着したものと推察される.そのため,共存系では 反応膜形成が進むものの,生成に遅れが生じたも のと考えられる. 4. 考 察 今回の摩擦試験,および,その反応膜生成の解 析の結果から,GMO が MoDTC の摩擦低減効果 発現に対して必須である ZnDTP による反応膜生 成を阻害する一方,PFM は部分的にのみ阻害す ることが判明した.ZnDTP による反応膜生成が MoDTC の低摩擦に本試験条件では必須であるこ とを考えると,前報10)で報告した GMO による MoDTC の摩擦低減効果の低下は,単に MoDTC との競争吸着で MoDTC の低摩擦化を阻害した だけではなく,ZnDTP による反応膜生成の阻害 による影響も大きいと考えられる.一方,PFM

Fig. 11 QCM test result of FM and ZnDTP

(8)

共存下では,ZnDTP の皮膜生成速度は遅れるも のの反応膜は生成され,結果として前報10)で報告 した MoDTC による摩擦低減効果がみられたも のと考えられる. GMO の吸着量から,単分子吸着をしていると 仮定すると,隣の分子との距離が GMO の分子サ イズよりもはるかに小さい 0.2 nm 程度と計算さ れるので,GMO は表面を覆い尽くしているだけ ではなく,多層吸着をしているものと考えられる. そのため,MoDTC および ZnDTP が吸着するす き間がなく,MoDTC および ZnDTP による反応 皮膜生成を阻害したものと考えられる.したがっ て,GMO が表面を占有することにより,ZnDTP との共存下,および,ZnDTP と MoDTC の両方 との共存下に,反応皮膜の形成ができなかったも のと考えられる. 一方,PFM の場合は,11 nm􎨲􎨲当たり 1 個の分 子が占めることがわかった.今回用いた PFM の 分子量から,分子の回転半径は 2~3 nm 程度で あることが想定されるので16),分子の投影面積上 の空隙はほとんどないと考えられる.しかしなが ら,PFM は立体的な構造をとるため,PFM 分子 間にはすき間が生じることが考えられ,そのすき 間の中に ZnDTP や MoDTC など,比較的小さな 分子は入り込む余地があると考えられ,そのため に,ZnDTP や MoDTC により作られる反応膜の 生成を完全には阻害せず,結果として,低摩擦効 果を維持することができたものと考えられる.2 成分系,および,3 成分系の QCM 試験結果も, PFM と共存下で,ZnDTP および MoDTC が摩擦 面に吸着できることを支持している. 以上の結果から,高分子の吸着型 FM である PFM は,少ない分子数で低摩擦効果を示し,さ らに ZnDTP および MoDTC による低摩擦皮膜の 阻害効果が小さいことが明らかとなった.その理 由としては,吸着する分子数が相対的に小さく立 体的な構造をとるため,PFM 吸着分子間にはす き間が生じることが考えられる. 以上より,摩擦調整剤としては,PFM のよう な高分子吸着型 FM と MoDTC と併用すること が,低温から高温にわたって幅広く潤滑油の摩擦 を低減する上で有効な手段と考えられる. 5. ま と め 低分子吸着型 FM と高分子吸着型 FM につい て,ZnDTP 共存下の摩擦特性における影響を, 反応膜生成ならびについて吸着特性の調査をもと に解析した結果,以下の結論を得た.

Fig. 13 QCM test result of PFM with ZnDTP and MoDTC

(9)

(1) ZnDTP の反応皮膜生成に対して,低分子の GMO は阻害効果が大きいことから,GMO による MoDTC の摩擦低減効果の阻害は,単 に MoDTC との競争吸着で􀁍􀁍􀁯􀁯􀁓􀁓􎨲􎨲皮膜生成を 阻害しただけではなく,ZnDTP による反応 膜生成の阻害の影響も大きいと考えられる. (2) 高分子の PFM は阻害効果が小さく,共存下 でも ZnDTP による反応膜を生成できること が確認された. (3) GMO は,単位面積当たりの吸着分子数が ZnDTP よりはるかに大きく表面を覆い尽く すため ZnDTP の吸着を阻害する.これに対 し,高分子の PFM は吸着分子数が小さく, また,立体的な構造をとるため,吸着分子間 にはすき間が生じ,ZnDTP の吸着とその後 の反応膜の生成を阻害し難いものと推察され る. (4) 2 成分系および 3 成分系において,ZnDTP および MoDTC は PFM と共存下でも摩擦面 に吸着でき,皮膜形成が阻害されないことが 明らかになった. 謝辞 本 研 究 で 使 用 し た 摩 擦 調 整 剤 は 株 式 会 社 ADEKA よりご提供いただいた.ここに記し,感 謝の意を表する.

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16) 平本拓也ら:ポリ-Ö-オレフィン(PAO)中におけるポリ メタクリレート(PMA)の 金属表面への吸着挙動に関す る分子シミュレーション, トライボロジー会議 2019 春 東京 予稿集 (2019) B21.

Table 1 Test samples for friction test
Fig. 1 Structure of FM and ZnDTP
Fig. 5 Effect of ZnDTP on film formation by MoDTC with SLIM observation
Fig. 8 Effect of FMs on film formation by ZnDTP with SLIM observation
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参照

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