Title
自然由来有機物質共存下におけるノニルフェノールエトキ
シレートとエストロゲンの活性炭吸着特性に関する研究( 内
容の要旨(Summary) )
Author(s)
鄭, 恩貞
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第274号
Issue Date
2006-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2971
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 学位論文審査委員 鄭 恩 貞(韓 国) 博 士(工学) 甲第 274 号 平成18 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 自然由来有機物質共存下におけるノニルフェノールエトキシレートとエ ストロゲンの活性炭吸着特性に関する研究
(Activated carbon adsorption of nonylphenolethoxylates and estrogensinthepresenceofnaturalorganicmatter) (主査)教 授 (副査)教 授 助教授 授 教 晶健生 首 浅藤 湯佐李 小 嶋 智
論文内容の要旨
本研究では,外因性内分泌撹乱化学物質の疑いが持たれているノニルフェノールとその前駆 体のノニルフェノールエトキシレート(Nonylphenolethoxylates,NPnEO)および人獣由来の天 然女性ホルモン(Naturalsteroid hormone)であるエストロゲン(estrogens)を用いて回分式活 性炭吸着実験を行い,吸着等温線デTタとFreundlich吸着等温線式に基づいた解析結果によ り,これらの平衡吸着容量特性を検討した.さらに,自然由来有機物質共存下におけるノニルフェ ノールエトキシレート(NPnEO)とエストロゲン(Estrogens)がどのような吸着容量特性を示すかを 検討した.本論を総括すると以下のようである. まず、検討の対象物質としてはNP,NPEOl,NPEO6,NPEO2miⅩ,NPEO5mix,NPEOlOmix とエストロン(El),17β-エストラジオール(E2),エストリオール(E3)を使用し,検出下限値と定量 下限値などについて明らかにした. 次に、水道原水中に溶存する主たる有機物である自然由来有機物(NOM)が微量有機化合 物の吸着特性に及ぼす影響を定量的に示す方法について検討した.フミン物質が多く含ま れている自然由来の泥炭地水と自然由来ではあるが人工的に抽出した市販フミン酸を用い て吸着速度,吸着等温線,分子量分布の視点から検討した結果,それぞれの吸着特性が異 なることを明らかにした. また、非イオン界面活性剤の一部であるノニルフェノールエトキシレート(NPnEO)の中で,エト キシレート(EO)基の付加モル数が1のNPEOl,付加モル数が6のNPEO6とノニルフェノール (NP)の単成分系水溶液における吸着容量特性について検討した.その結果,pH調整をしてな いNPとpH7に調整したNPEOlおよびNPEO6の単成分系吸着等温線はFreundlich吸 着等温線式により表されることがわかった.3物質とも,Freundlicb指数(上側が0.3以下(それぞ れ0.261,0.286および0.270)と比較的小さいため活性炭との親和性が強いことが示された.NP の平衡吸着容量特性を表す吸着定数(励ま216(mg/g)/(mg/b)l/n,NPEOlとNPEO6の単成分系吸着等温線のFreundlich係数Kの値はそれぞれ506(mg/g)/(mg/b)l/n,409(mg/g)/(mg/ め1/nとなった. さらに、ノニルフェノールエトキシレートの混合系化合物の水溶液における吸着容量特性につ いて検討した.NPEO2mixにはEOの付加モル数が1から6まで6種類の化合物から構成され, その濃度割合はEO付加モル数が2の化合物が多く占めている.NPEO5mixにはEOの付加モ ル数が2から12までの11種類の化合物から構成され,その濃度割合はEO付加モル数が4と 5の化合物が最も多く占めていることをLC/MSの測定により明らかにした.その結果, NPEO2miⅩの混合水溶液中のEO付加モル数が1(NPEOl),6(NpEO6)の吸着等温線は単成 分系でNPEOl,NPEO6の吸着等温線を大きく下回っており,共存化合物間の競合吸着による 影響だと考えられた.NPEO5mixの混合水溶液中のEO付加モル数が6(NPEO6)の吸着等温線 は単成分系でNPEO6の吸着等温線を大きく下回っており,共存化合物間の競合吸着に起因す るものと考えられた.NPEO5mixの混合水溶液における平行吸着特性は親水基であるEO鎖の長 さによって異なり,EO鎖が短いものほど吸着されやすいことが示された. これらの検討結果から吸着性が高い泥炭地水を用いて,泥炭地水中のフミン物質が各々の物 質の吸着特性に及ぼす影響について検討した.フミン物質共存下におけるNPEOlとNPEO6 の回分式吸着実験では吸着容量特性がフミン質の影響を受け,吸着等温線を大きく下回ってい ることが示された.NPEO2mixとフミン質を含んだ水との混合系水溶液について吸着実験の結果, NPEO2mixの混合水溶液中のEO付加モル数が1(NPEOl),6(NPEO6)の吸着等温線は単成 分系でNPEOl,NPEO6の吸着等温線を大きく下回っており,共存化合物間の競合吸着やフミ ン質の影響を共に受けた結果であると推測される. 一方、女性ホルモンのEl,E2,E3の単成分系吸着容量特性に及ぼす初期濃度の影響を検 討した.いずれの物質についても,平衡吸着量と平衡濃度の関係は初期濃度に依存せず,対数 上で直線に近似されるため,Freundlich吸着等温式により解析を行い,解析により得たKと1hz の値からEl,E2およびE3の吸着容量特性および活性炭との親和性などについて明らかにした. 吸着強度の大小を表すFreundlich定数(R)はElがE2より若干高く,E3が最も低い.平衡濃 度の広範囲(0.1∼250腫几)にわたって平衡吸着量の大小順位はEl>E2>E3である. また,エストロゲンの混合系水溶液(2成分と3成分系)における吸着容量特性について検討し た.2成分系としてはElとE2,E2とE3,ElとE3を混合させた場合,3成分系としてはEl,E2 とE3を混合させた場合,吸着等温線から平衡濃度に対する各物質の平衡吸着量,活性炭添加 量の増加に伴う各物質の除去率の変化などについて明らかにした.El,E2,E3の3物質を同じ 濃度割合で混合した水溶液(2成分系,3成分系)の場合には,混合吸着の影響を受けて,各物 質の吸着容量は単成分系の場合に比べて低下し,その低下度合は混合溶液中における他の物 質の存在割合(初期濃度割合)に依存する.El,E2,E3の2成分系,3成分系混合水溶液にお ける各物質の吸着容量の順位は,単成分系の場合と同様にEl>E2>E3であった. さらに、フミン物質共存下におけるEl,E2,E3とそれぞれ混合した場合,どのような吸着挙動 を持つかについて検討した.El,E3より内分泌撹乱作用が示唆されている代表的な化学物質に 比べて約103∼105倍のエストロゲン活性(estrogenicactivity)をもつといわれているE2に対し ては河川水での吸着挙動も検討した.El,E2およびE3の平衡濃度と各々の吸着量を比較検 討した結果,単成分系の場合と同様にフミン質共存下においても吸着量はEl>E2>E3の順とな っている.この順位は単成分系吸着の3物質のFreundlich定数Kの大′日頃位と一致しており,
フミン質共存下における被吸着質の構成比(濃度比)が同じ場合における被吸着質の吸着挙動 は単成分系の吸着特性(gとム匂の大′J、)を反映することが示された.河川水中のフミン物質共存 下における17β-エストラジオールの吸着容量は単成分系の場合に比べて若干低下し,河川水 中自然由来有機物との競合吸着が小さいことが示された.
論文審査結果の要旨
本研究では,外因性内分泌撹乱化学物質の疑いが持たれているノニルフェノールとその 前駆体のノニルフェノールエトキシレート(Nonylphenolethoxylates,NPnEO)および人獣 由来の天然女性ホルモン(Naturalsteroidhormone)であるエストロゲン(estrogens)を用い て回分式活性炭吸着実験を行い,吸着等温線データとmeundhcb吸着等温線式に基づいた 解析結果により,これらの平衡吸着容量特性を検討した・さらに,自然由来有機物質共存 下におけるノニルフェノールエトキシレート(NPnEO)とエストロゲン(Estrogens)がどの ような吸着容量特性を示すかを検討した.本論を総括すると以下のようである・ まず、検討の対象物質としてはNP,NPEOl,NPEO6,NPEO2mix,.NPEO5miⅩ・NPEOlOmix とエストロン(El),17β一エストラジオール(E2),エストリオール(E3)を使用し,検出下限 値と定量下限値などについて明らかにした・ 次に、水道原水中に溶存する主たる有機物である自然由来有機物(NOM)が微量有機化合 物の吸着特性に及ぼす影響を定量的に示す方法について検討した・フミン物質が多く含ま れている自然由来の泥炭地水と自然由来ではあるが人工的に抽出した市販フミン酸を用い て吸着速度,吸着等温乱分子量分布の視点から検討した結果,それぞれの吸着特性が異 なることを明らかにした. また、非イオン界面活性剤の一部であるノニルフェノールエトキシレート(NPnEO)の中 で,エトキシレート(EO)基の付加モル数が1のNPEOl,付加モル数が6のNPEO6とノ ニルフェノール(NP)の単成分系水溶液における吸着容量特性について検討した.その結果, pH調整をしてないNPとpH7に調整したNPEOlおよびNPEO6の単成分系吸着等温線 はFreundlich吸着等温線式により表されることがわかった.3物質とも,Freundlich指数 (〟緑が0.3以下(それぞれ0.261,0.286および0.270)と比較的′トさいため活性炭との親和性 が強いことが示された.NPの平衡吸着容量特性を表す吸着定数(R)は216(mg/g)/(mg/b)l/n,NPEOlと NPEO6の単成分系吸着等温線の Freundlich係数Kの値はそれぞれ 506(mg/g)/(mg/a)1/n,409(mg/g)/(mg/b)l/nとなった・ さらに、ノニルフェノールエトキシレートの混合系化合物の水溶液における吸着容量特 性について検討した.その結果,NPEO2.nixの混合水溶液中のEO付加モル数が1(NPEOl), 6(NPEO6)の吸着等温線は単成分系でNPEOl,NPEO6の吸着等温線を大きく下回ってお り,共存化合物間の競合吸着による影響だと考えられた.NPEO5血の混合水溶液中のEO 付加モル数が6(NPEO6)の吸着等温線は単成分系でNPEO6の吸着等温線を大きく下回っ ており,共存化合物間の競合吸着に起因するものと考えられた.NPEO5mixの混合水溶液に おける平行吸着特性は親水基であるEO鎖の長さによって異なり,EO鎖が短いものほど吸 着されやすいことが示された.
これらの検討結果から吸着性が高い泥炭地水を用いて,泥炭地水中のフミン物質が各々 の物質の吸着特性に及ぼす影響について検討した.フミン物質共存下におけるNPEOlと NPEO6の申分式吸着実験では吸着容量特性がフミン質の影響を受け,吸着等温線を大きく 下回っていることが示された.NPEO2mixとフミン質を含んだ水との混合系水溶液について 吸着実験の結果,NPEO2mixの混合水溶液中のEO付加モル数が1(NPEOl),6(NPEO6)の 吸着等温線は単成分系で■NPEOl,NPEO6の吸着等温線を大きく下回っており,共存化合 物間の競合吸着やフミン質の影響を共に受けた結果であると推測される. 一方、女性ホルモンのEl,E2.,E3の単成分系吸着容量特性に及ぼす初期濃度の影響を 検討した・いずれの物質についても,平衡吸着量と平衡濃度の関係は初期濃度に依存せず, 対数上で直線に近似されるため,Freundlich吸着等温式により解析を行い,解析により得 たgとJ血の値からEl,E2およびE3の吸着容量特性および活性炭との親和性などについ て明らかにした・吸着強度の大小を表すFreundlich定数(励まElがE2より若干高く,E3 が最も低い.平衡濃度の広範囲(0.1∼250〃g几)にわたって平衡吸着量の大小順位は El>E2>E3である. また,エストロゲンの混合系水溶液(2成分と3成分系)における吸着容量特性について 検討した.2成分系としてはElとE2,E2とE3,ElとE3を混合させた場合,3成分系と してはEl,E2とE3を混合させた場合,吸着等温線から平衡濃度に対する各物質の平衡吸 着量,活性炭添加量の増加に伴う各物質の除去率の変化などについて明らかにした.El,E2, E3の3物質を同じ濃度割合で混合した水溶液(2成分系,3成分系)の場合には,混合吸 着の影響を受けて,各物質の吸着容量は単成分系の場合に比べて低下し,その低下度合は 混合溶液中における他の物質の存在割合(初期濃度割合)に依存する.El,E2,E3の2成分系, 3成分系混合水溶液における各物質の吸着容量の順位は,単成分系の場合と同様に El>E2>E3であった. さらに、フミン物質共存下におけるEl,E2,E3とそれぞれ混合した場合,どのような吸 着挙動を持つかについて検討した.El,E3より内分泌撹乱作用が示唆されている代表的な 化学物質に比べて約103∼105倍のエストロゲン活性(estrogenicactivity)をもつといわれて いるE2に対しては河川水での吸着挙動も検討した.El,E2およびE3の平衡濃度と各々 の吸着量を比較検討した結果,単成分系の場合と同様にフミン質共存下においても吸着量 はEl>E2>E3の順となっている.この順位は単成分系吸着の3物質のFreundlich定数K の大′日頃位と一致しており,フミン質共存下における被吸着質の構成比(濃度比)が同じ 場合における被吸着質の吸着挙動は単成分系の吸着特性(gとム匂の大小)を反映すること が示された.河川水中のフミン物質共存下における17β-エストラジオールの吸着容量は 単成分系の場合に比べて若干低下し,河川水中自然由来有機物との競合吸着が小さいこと が示された. 以上のように,自然由来有機物質共存下におけるノニルフェノールエトキシレートとエ ストロゲンの活性炭吸着特性を明らかし,浄水処理技術の向上に資する新しい知見を明 らかにしており,博士(工学)の学位論文として合格と判定する.