特別養護老人ホーム入所者の機能の経時変化とリハビリテーション介入の効果
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(2) 特別養護老人ホーム入所者の機能の経時変化とリハビリテーション介入の効果 21. 前の対象者は 52 名(男性 15 名,女性 37 名), 施行後は継続者 34 名(男性 8 名,女性 26 名), 新対象とした旧入所者 9 名(男性 4 名,女性 5 名),新規入所者 16 名(男性 6 名,女性 10 名) , を加え計 59 名(男性 18 名,女性 41 名)であっ た。 2.介入内容. 図1. 上記対象者に以下のリハビリ介入を行った。. 主診断. 1)リハビリ専門医による出張診察:出張診察 は診断・評価と助言指導を受ける目的で年 4. 結 果. 回,合計 24 回実施した。入院等身体機能面の 変化があり,必要性の高い利用者を優先的に診. 1.診断. 察対象として,前回との間隔は 1 年以上開かな. 利 用 者 の 主 診 断 は 脳 血 管 障 害 48 % ,痴 呆. いように設定した。2)PT ・ OT による個別訓. 19 %であったが,柄澤式痴呆スケールにおい. 練:個別訓練は 1 コマ 30 分で対象者の必要度に. て 83 %が軽度から最重度の痴呆と判断された。. 応じて週 1 ∼ 3 回実施した。特に一時的入院か. 介護保険施行前の対象利用者では,脳血管障害. ら退院後早期の利用者には,リハ医の判断で一. 56 %,痴呆 9 %であり,施行後は脳血管障害. 定期間頻回に訓練を実施した。3)PT ・ OT に. 49 %,痴呆 22 %であった。また柄澤式痴呆ス. よる介護担当者指導:指導は居室のベッド配. ケールで軽度から最重度の痴呆と判断されたの. 置,起居動作介助,車いす移乗動作や姿勢,食. は前 81 %,後 91 %であった(図 1) 。四肢の運. 事・排泄・入浴などの ADL 介助方法等施設生. 動麻痺を有する症例は全体の約 50 %で,麻痺. 活全般に渡る内容で,全利用者を対象とした。. のタイプは片麻痺が多かった。. 4)PT ・ OT による集団訓練:集団訓練は介護 保険施行後,全利用者へ介入の必要性が生じた. 2.開始時の状態. ことから 1 グループ 20 名程度で週 2 回実施し. 開始時の機能障害では,74 %に関節可動域. た。利用者一人当たりは必ず週 1 回参加できる. 制限を認め,その内約半数は健側にも制限があ. ように設定した。. り,同様に筋力低下も認めた。基本動作では, 28 %が全介助,寝返りから立位まで何らかの 動作が可能なもの 50 %,歩行レベルは 22 %で. 3.評価項目 リハビリ診察時の医師の診断・評価と,. あった。介護保険施行前では全介助 27 %,歩. PT ・ OT 評価報告より,機能障害(関節可動域. 行レベル 17 %,施行後は全介助 31 %,歩行レ. 制限,筋力低下),基本動作能力,厚生労働省. ベル 15 %であった。ADL は,日常生活自立度. 日常生活自立度判定基準による日常生活動作. 判定基準において A 自立が最も多く,B 一部介. 1). (以下 ADL) ,認知機能(柄澤式痴呆スケー. 助,C 全介助の順であったが,自立度が A であ. 2) ル) 等に関する資料をもとに,診断などの基. っても A-2 の日中の大半をベッドで過ごすと判. 本情報,転帰をあわせて経時変化を調査した。. 断されるものが多かった。. また,介護保険施行後は全利用者が対象となり, 集団訓練による介入を行ったため,介護保険施 行前後についても比較した。. 3.PT ・ OT 介入終了時の変化 PT ・ OT 介入終了時に個々の利用者において 可動域制限,筋力の著明な改善は認められず, 柄澤式痴呆スケールの変化においても全体的な 割合は正常・軽度が減少し,重度・最重度の増.
(3) 22. 埼玉理学療法 第 12 巻第 1 号. 図2 表1. 向上 変化なし 低下. 認知(柄澤式) 図3. 柄澤式 変化の状況(人) 男性. 女性. 1 19. 1 37. 2 56. 2.6 72.7. 5. 14. 19. 24.7. 転帰. 合計(割合:%) による一時的入院は約半数であったが,脳血管 障害再発者を除き入院前の機能に戻っていた。 4.転帰. 表2. 向上 変化なし 低下. 基本動作変化の状況(人) 合計(割合:%). 最終評価時の転帰では,自立施設を含め在宅 復帰に至った利用者は 10 %,22 %は入院等,. 男性. 女性. 2 18. 4 30. 6 48. 7.8 62.3. 名中 6 名は介護保険施行前に退所となった。表. 5. 18. 23. 29.9. 転帰したケースの概要を示す。. 68 %が継続入所であった(図 3)。在宅復帰者 8 4 に在宅またはケアハウス,養護老人ホームに. 考 察 表3. 日常生活自立度変化の状況(人) 合計(割合:%). 特別養護老人ホームにおいては,スタッフ配. 男性. 女性. 向上 変化なし. 3 12. 3 34. 6 46. 7.8 59.7. けられていない現状がある。今回,リハビリ専. 低下. 10. 15. 25. 32.5. 間に渡る観察結果から,利用者の筋力,関節可. 置の問題もあり,リハビリ機能が十分に位置づ 門医の指導に基づく PT ・ OT 介入を行った 6 年 動域,知的機能などの機能障害には大きな変化 は認めなかったものの,基本動作では全介助か. 加が認められる(図 2)ものの個別に比較する. ら一部介助へ変化した症例が 20 %存在した。. と変化梨が 72.7 %,低下が 24.9 %であった(表. また,日常生活自立度もそれ以上の低下が起こ. 1)。基 本 動 作 で は ,全 体 的 な 割 合 は 全 介 助. りえない最重度例を除いてもほぼ 50 %で機能. 38 %,歩行レベル 13 %であったが,個別に比. が維持されていた。介護保険施行により全施設. 較すると全介助から一部介助座位レベルに変化. 利用者が施行後の訓練対象となったことから身. したものが約 20 %認められた(表 2) 。介護保. 体機能,知的機能共に最重度者が増え,全体的. 険 施 行 前 後 を 比 較 す る と 全 介 助 が 31 % か ら. に全介助の割合が多くなった。このことにより. 40 %へ増え,歩行レベルは 13 %から 12 %に低. 個々の利用者の状態を的確に把握して,必要な. 下した。また日常生活自立度に基づいた変化状. サービスを提供することの必要性はますます高. 況では,全体的には ABC の割合がほぼ同じで. くなっていると言える。さらに入院を契機とし. あったが,個別に比較すると向上あるいは変化. た機能低下に対するリハビリ介入も元の機能レ. 無しが 67.5 %であった(表 3) 。骨折や肺炎等. ベルへの回復に有効であった。また,リハビリ.
(4) 特別養護老人ホーム入所者の機能の経時変化とリハビリテーション介入の効果 23. 表4. 在宅,他施設への転帰者の概要. 性別. 期間(月). 転帰先. 概 要. A B. 男性 女性. 271 5. ケアハウス 在宅. ADL 向上し,併設施設への入所が可能 ADL 向上,屋内移動確立,住宅改修指導,市福祉へ連 携. C D E. 男性 女性 女性. 5 7 7. 養護老人ホーム ケアハウス 在宅. 和室での起居,移動,ADL 獲得のための訓練 ADL 向上,屋内移動動作獲得,併設施設へ 屋内移動確立,住宅改修および福祉用具導入指導,町の 社協へ連携. F G. 男性 男性. 4 9. 在宅 在宅. 屋内移動動作確立,機能維持のための自主管理方法獲得 起居,移動,ADL 向上 介護保険での住宅改修指導, 入浴サービス利用 月 1 回のショートステイでフォローする. H. 女性. 16. 特別養護 老人ホーム. ADL 自立,痴呆あり, 娘の自宅近くの施設へ転出. アプローチにより自立施設を含め在宅復帰に至 った利用者が 10 %認められた。以上の結果よ り,特別養護老人ホームにおいて利用者は高 齢・重度であり,転帰は入院・死亡など低下を 辿って行くと思われるが,焦点を絞った適切な リハビリ介入が有効である可能性が示唆され, 今後,利用者の要介護状態の改善および増悪予 防に有効かつ効率的なリハビリプログラムを検. 討していく必要がある。. 参考文献 1) 障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定 基準:老健第 102-2 号厚生省大臣官房老人保健 福祉部長通知,1991. 2) 大塚俊男,本間 昭(監修):高齢者のための 知的機能検査の手引き.ワールドプランニング, 1991..
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