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地域の教材化に関する研究(2)

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Academic year: 2021

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(1)Title. 地域の教材化に関する研究(2). Author(s). 君, 尹彦. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 43(1): 247-261. Issue Date. 1992-07. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5232. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . ・平成4年7月. 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第43巻 第1号 1 i l 43 ion(Sec t &iuca i iver i t do Un ty of] on IC) Vo lof Hokka s Journa . . No .. l Ju y ,1992. 2 ) 地域の教材化に関する研究 (. 君. 6. ヂ. 彦. 社会科副読本の 現況. 地域学習における教材化の問題点をさ ぐり, その改善策を求めようとすれば, まず小学校中学年 0種の授業が展開 0人の教師がいると1 社会科授業の実態を把握することが重要であると考える. 1 されることは前述の通りであるが, 地域に共通する問題を共同作業で解決しようとする努力なく し て, 個々の授業の前進は期待できない. 地域に共通する問題と解決努力を把握する一方法として, 次に市町村レベ ルの小学校3, 4年生用社会科副読本の現況を分析することにした. 副読本を取り 上げるのは, 第1に地域素材の教材化の試みが具体的事例としてそこに集積されており, その試み が個人的にではなく複数の作業によっ て形成され実践検証されていること, 第2に素材は個々別々 であっ ても, 教材化の目標はより広域的な教育課程を基礎にしているから, 他地域と共通する尺度 で比較研究が可能なこと, 第3はその積み上げに立っ て市町村レベ ルで反省と改善がはかられ, 新 しい成果が改訂本として形をなすから, 旧版と新版の対照により地域学習の問題点を汲み上げるこ とができること, そして第4は副読本の変遷をたどることによっ て社会科の授業研究と実践の時間 的変化, 即ち社会科教育の歴史を実証することにつながり, 地域の教材化のあり方を検討する上で 有益であると考えるからである. こう した視点から北海道における市町村レベ ルの小学校3, 4年生用社会科副読本の編集刊行状 況をつかむため, 1 9 92年2月に 「小学校児童用社会科副読本調査」 を実施した. 調査対象を市町村 4支庁管内) 5地域に分け(1指定都市と1 教育委員会とし, 道内を1 , 道央, 道東, 道南の3ブロ ッ プ クから各1地域をサン ルに抽出して, その地域内全市町村に文書による記入回答を求める方法に よっ た. 道央ブロッ クから石狩地域 (3市3町3村) , 道南か , 道東から釧路地域 (1市8町1村) 29市町村) を抽出し調査対象としたが, ら槍山地域 ( 10町, 市村なし) のあわせて4市21町4村 ( 3.7%にす ぎず,今後サン プル数の増加をはかり全道推計値の確率向上をはか これは全道市町村の1 7‐8%(3市2町2村) 0% る必要がある. 依頼の結果, 回答を得たのは石狩地域が7 , 釧路地域が7 5‐9%の回答率だっ た. これを市町村別にみる (1市6町) , 槍山地域80% (8町) で, 平均して7 00%, 町が7 6‐2%, 村が50%である. 以下この調査をもとに北海道における市町村レベ と市は1 ルの小学校3, 4年生用社会科副読本の編集刊行状況をうかがうことにする‐ なお調査に使用した 回答様式を本項末に付載した. 966年刊行後改訂再版をしていな 編集刊行状況 全回答市町村が編集刊行している‐但し1町で1 いというから, 現在学校での使用はなされていないと思われる. 無回答7町村は刊行していないた めとも思われるが,当研究室で収集した資料中に無回答町村の副読本がいくつか含まれているので, 北海道においては大半の市町村が副読本を刊行しており, 旧版で今日使用できないものを除いても 85~90%の刊行率を予測することができる. これほどの刊行率と学習現場での利用を想定すれば, 3, 4年社会科授業の現状を副読本を通して把握することが可能と考えてよかろう.. 247.

(3) . . デ 彦. 君. 表2. ~. 初版刊年別市町村数. 1968一77 年. IV I978一87 年. 98 8年から V I. 計. 7. 7. 8. 計. u J 1← ^ = U ” , RU (. 皿. ( = U T 上 っム み 自 沈 .←. 1 1 1958一67 年. . QJ ^ = v ^ = v QJ ?. 1 1 9 57年まで. ハ = V ハ U 亡 。 っム ( = U. 域 石 ぢ守 釧 路 桧 山. ~-~達 製、 刊 年. 22. いつ頃から副読本が作成されるようになっ たかを知るために, 回答により初版の刊行年を5期に 0年間に初めて副読本を刊行したとこ 97 8一87年の1 区分してみたのが表2である. これを見ると1 87年までに大部 968年以降の刊行で, しかも1 9 0年を含めると, ほとんどが1 ろが多く, その前の1 959年であるが, 全 分の市町村が1度は刊行したことになる. 回答の中で最も早い刊行は釧路市の1 道的に1 960年前後に副読本編集気運のもり上り があっ たから, これに連動しているものと 思われ る. 表2の1期に事例はないが, 他地域で先駆的業績をひろうことができる. 初版刊行年の3地域 差はほとんどないが, ひいて言うならば釧路地域が早く, 槍山地域が後年に属し, 石狩地域が両者 の中間期に位置する けれども顕著な特徴ではない. 注意を要するのは, 回答年が必ずしも正確でな 9 80年とした市について, 当研究室で収集した資料を い場合も推測されること. たとえば初版年を1 点検すると1 969年の副読本が存在するから, 実年は回答年をさかのぼることになるが, ここではア ンケートの回答をもとに大勢をう かがうことにした. 8年3,89年4,90年 現在 児童 が使用している最新版の刊行は1982年が1,86年1,87年1,8 2年としたのは目下改訂刊行作業 3, 91年3, 92年5市町村である (再版のない1町をのぞく) .9 をすすめ新学年から使用 するための刊行計画であろう. 学習指導要領の改正にともないこう した動 きが活発になるものと思われる. 初版から今日まで何度も修正改訂新版を継続.し, 10回以上の改訂 をつづけている例もめずらしくないから, その積み上げの中から中学年社会科のあゆみを確実に読 みとることができよう. 刊行責任者と経費 編集刊行に要する費用の負担は回答22市町村中20が市町村費としている. あと2町については記入がない. アンケートには 「学校又は利用者負担」 「寄付金」 「その他」 を設 けたが, そうした回答はなかっ た. かつて教材費などの名 目で印刷代を父母負担とする場合がみら れたが, 今日そうした経費の支弁方法はないようである. ただ後述の札幌市のように, 学校レベル の副読本は寄 附金や記念行事費等の名目でなんらかの地区父母負担となっ ているよう だし, 市販の 副読本を利用する場合は購入の金銭は当然父母が支払っている. 経費が公費となると, その刊行責任者は市町村 (長) ないし教育委員会 (教育長) となるのが一 般的だろう. ただし公立の教育研究所を設置している場合は編集刊行をそこの事業として行っ たり 委託された形をとり, 費用が研究所の事業費として 予算化されたり委託料となったりするが, 実質 は市町村の教育予算 内であることに違いはない. 回答22市町村の内20が刊行責任者を教育委員会 とし, 1市は教育研究所, 1町無記入であっ た. こうした実状は学校で使用する補助教材の内容や 採択方法に関して異論を生じたことも背景にあるとみられるが, 私 立学校での使用状況については 未調査である. 編集組織と責任者. 副読本の編集をすすめる機関はどのようになっ ているかを質問した. 回答に 2 よると, 編集を総括する責任者 (機関) は, 特設した編集委員会としたのが1 , 刊行責任者と同じ. 248.

(4) . 地域の教材化に関する研究( 2 ). く教育委員会とするのが5, 教育研究所3, 市町村の教育共同研究組織とするのが2である. この 内編集のための特設組織は置かず, いわば直轄事業で作成しているところが町教育委員会1, 町教 育共同研究組織1の2つある. ほかの市町村は何らかの形で編集を担当する特定の組織を内部に別 置 し て, こ れ に あ た っ て い る.. その名称は社会科副読本編集委員会, 郷土資料研究委員会, 郷土読本編集会, 副読本作成委員会, 郷土読本専門委員会, 郷土読本特別委員会等様々であるが, 構成メン バーはほとんど似ている‐ た いていの場合, 市町村内の学校に勤務する社会科担当教員から委員をえらび, 校長会, .教頭会の代 表力切口わっ て責任者となる. それに教育委員会や教育研究所の職員が入り, 音別町のように学識経 験者を含む場合もみられる. これらのメンバーが中心になっ て作業を分担するが, 写真, イラスト, 装丁など特殊技術をもつ人にも参加してもらう例が多い. 委員の数は少ないところで5名, 多いと 20名を越えているが, 改訂の規模や予算とのからみ等から一様でない‐ 委員 がたくさんいると早く 出来るとは限らないし, 少人数のほうがまとまりやすいわけでもなさそうである. 豊富な実践経験 を持つ人たちが明確な問題意識のもとでチームを組むことが大切なのだろう. 体 裁 調査回答にあわせて現在使用中の副読本を寄贈していただき, それに当研究室で収集し ていたものを加えると,3地域で現行の副読本は25種となっ た.その体裁をみると次の通りである. まず表題紙のタイ トルだが, 市町村名のみを平仮名 でそのまま書名にしたものが10ある. 「ひろし ま」 「てしかが」 等だが, 釧路町は支庁名市名と識別するためであろう 「く しろ町」 としている. そ れ に 「わ た し た ち の」 「わ た し た ち の ま ち (又 は 町)」 を 冠 せ た も の が 12 あ る.・ こ の 中 に は 市 町 村 名. を漢字で表記した 「わたしたちの標茶」 「わたしたちの町北槍山」 などがみられ, 常用漢字の学年配 当, 難字の固有名詞とのしたしみ方など配慮がしのばれる. 第2は学習対象の学年だが, 小学校3 年と4年の内容を1冊にまとめたものが20 , 各別冊としたもの3, 学年を特定しないもの2となっ ている. かつては別冊にしていたが現行本では合冊とし中学年の一貫性をめ ざしたところ, 逆にか つては合冊だっ たものを内容の充実, 特に資料の増強にあわせ別 冊にした等, 種々の試行がくり返 えされているようだが, 大勢は3, 4年合冊にあるといえる. 第3は判型で, B 5 が22, A 5 が 2, 変 型 1 と な っ て い る. こ の こ と か ら A 5 判 か ら B 5 に移り つつあることがうかがえよう. 地図の大判化に加えグラフや写真を見やすく且 多く載せようとする 結果と考えられる.変型判は江差町のたて1 8×よこ20c mのみだか, かつて道内でも数多くみられた こ の 型 は 減 っ た よ う で あ る. 第 4 は 1 冊 の 頁 数 で, 201 頁 以 上 1, 151~200 頁 8, 101~150 頁 11 ,. 100頁以下5となっている. 最も厚いので21 0頁, 薄いのは特定テーマの冊子をのぞくと40頁であ 5 0頁前後が標準的な頁数になろうか. カラー印刷の増加傾向にともないアート紙な ど厚 る. 1冊1 手紙質の用紙使用 で, 児童が手にした厚味と重さが頁数とイコールではなくなりつつあり, 副読本 作成にあたって使いやすく破損しにくい体裁につき一層の改良が必要 であろう.なお25種の内1つ だけが本文横書きで, あとはたて書きである. 内容構成 副読本の章や節, 即ち内容の項目は教育課程の単元 (題材) や学習指導要領の内容と 関連しているのかどうかをみると, 密接なつながりをもたせているものが1 8ある. もっ とも完全に 一致しているの ではなく, これに準拠しつつ各地域の特性を生かした教材を入れ, 項目 (単元) の 軽重をつ けながら大枠として学習指導要領の内容にそうものである. 但し3, 4年の内容がすべて 副読本に教材化されているのではなく, 特に4年生後半の内容をカ ッ トする場合が多い. 教育課程 に準拠しつつも特定主題の教材を大幅に組み込ん で地域性を色濃くにじませた編集のものが3つあ り, 1冊の半分以上の頁数を特定主題にあてた場合がこれに該当する. その他は4つで, 内3つは 特定主題を独立した冊子として編集刊行しており, 釧路市の 「きれいなくらしを」 「釧路湿原」 , 上 249.

(5) . 君. ヂ 彦. ノ国町の 「わたしたちの町上ノ国-歴史篇」 がその例である. これの一般書との違いは, 小学生向 に作られたかいなかではなくて, 刊行の主目的があくまでも社会科授業に用いる教材にあり, 編集 は教師参加の副読本委員会のよう な機関によるものである. こう して出来た本は利用対象を中学年 児童に 限定せず, より広い生かし方を期待していること が多いようにみう けられる. 学習課題, ねらい, 記述の本文, 各種資料, まとめ等の内容を授業形態と学習過程を仮定 した上 で, いかに一般化し多くの授業場面で役立てうるか, 編集にたずさわる社会科教師が最も苦 心する ところである. こうした観点から社会科副読本の 内容構成を分類すると, 説明型, 課題型, 資料型, 作業型の4つのタイ プがありそうに思う. その詳細は後述するが, 要は素材をどのように教材化し, どん な授業を仮定して, 紙面にいかように 盛りつけたかということになる.25種の副読本をこれに も 9 あてはめて分類する と説明型1 , 課題型4, 資料型2, 作業型0となる. とはいえ説明型の中に より資料に力を入れているもの, 課題型としたものの説明型に近似するもの等, 必ずしもこの分類 は明解な区分にいたらない場合もあるから, 一応の目安としておきたい. 巨視的にみるとやはり教 科書タイ プである説明型が主流を占めているといえるが, 課題型ないしその 応用タイ プ が増える傾 向にある. 作業型の事例を3地域内でみなかっ たが, これについては滝川市を例に後述する. 副読本にあわせてスライ ド, VTR, 8m mフィ ルム, TPなどを製作し共同利用 している市町村 もみられ, ますます増える傾向にある. 個人の努力や学校として 資料整備もすすんでいるようだが, 市町村単位で整備をした場合は運用の仕方が大切になろう. また教師用の指導書や資料集の編集刊 行がふえてきた. 石狩地域では5市町村に, 釧路地域では2市町にこれ がある. 毎時の目標, 展開 例, 留意事項, 資料等をのせるもの, 資料を中心に編集したもの, 評価資料を観点別に作成して集 成したものなど, 教師用の充実も顕著に なりつつある. 1読 ニ口 小子 ノ 里 副読本調査 小学校児童用社会科 = ;冨. (回 答 様 式). 〔. 〕 内 は いず れ か0 でかこ ん でく ださ い‐ 明 確 でな い項 は 空欄 に して く ださ い.. 1. 所管部局係名!. 1. 市町村名1. 問1 貴市 (町村) が編集又は刊行した小学校児童用社会科副読本は, 〔・ あ. る. ‐な. い〕. . 工----一一ー”. 問2. その出版した年はいっですか‐. 最新版の刊 劉. 雪. 最初の刊年 i. 年 l. 問3 最新版の副読本は,. 刊 硫・任者 (機関) 1. 1. 編集責任者 (機関) 1. ・その他〕 ・寄付金 ‐学校又は利用者負担 編集刊行費 〔・市町村費 対象学年 〔・3年4年合冊 ・3年4年分冊 ・3年のみ ・4年のみ〕. 250. 」.

(6) . ) 地域の教材化に関する研究( 2 問4 小学校3, 4年社会科以外の副読本を編集刊行されていますか‐ 〔・ あ. ・な. る. い〕. ↓. 問5 貴市 (町村) 内の一地区か学校で社会科副読本を出版したことがありますか. 〔・ あ. ・な. る. い. ・不. 明〕. ↓. 問6 編集の苦労, 利用の成果等につきお話をうかがわせていただけそうな先生‐ 氏. 名. 勤. 務. 先. 電. 話. -(. )-. ‐(. )-. ご協力ありがとうございました‐. 7 編集刊行の経緯と変遷 これら社会科副読本は北海道でどのような過程をたどっ て今日にいたっ たのか, その経緯を十勝 地域の帯広市と空知地域の滝川市を例にふりかえっ てみたい. 帯広市の場合 社会科発足当初から活発 な実践研究活動をつづけ, 1 950年帯広プラン 『帯広市社 会科指導計画案』 を出した帯広市について, まず編集着手の背景をとらえておく. なお帯広市をと りまく十勝地域の社会科試案 『十勝基準カリキュ ラム一社会科第1次試案』 が作成されたのは1 952 年である. この地域で社会科副読本の先駆的役割をはたしたのは1 9 51年4月刊行の 『新しい十勝の姿』 であ っ た. 社会科指導を模索する教師等の全十勝社会科教育研究会により, 郷土の実態を新しい豊富な 資料で解説し地域の問題点を明らかにし, 小中学校の社会科授業での活用が企図されたもの. 1万 冊という発行部数からもわかるように,これの反響は地域内にとどまらず全道的に注目をひいたが, 文章がやや難しく内容面も高度にす ぎたきらいがあって, 小学生が教材として使用するには限界が あっ たし, 当時の教育課程が各校独自の試行期 だっ たから, これと授業の結びつきを積極的にすす めるには難点も多かっ たといえよう. 市町村を単位とする社会科副読本として,この地域でまず世に問われたのは芽室町の小学生用『私 たちの町』 中学生用 『拓けゆく芽室』 で, 1 954年の刊行である‐ 本書は町内教師だけでなく地域の 社会科実践者がねり上げた成果ともいえるもので, その刊行は周辺市町村に社会科副読本編集熱を 呼び起こす契機になっ たと評価できよう. 刺激を受けて編集に取り組んだところでは, 帯広市と池 田町が1960年, 翌年豊頃町, 翌々年音更町と刊行がつづき, 改訂版へと発展していく. 一方, 教師用の指導書・資料集は, 早くも1 946年 『郷土資料 十勝の統計』 を出したが, 本格的 なものは19 59年刊行の 『十勝学習資料集 N N 9 57年刊行で理科編) o Q ‐2』 であろう ( .1は1 . また同 『 年豊頃村立教育研究所から内容の充実した 豊頃村郷土資料集』が刊行されるにいたる これは「子 . 供達のしあわせを祈る教師の良心が無所得という心境」 (同書編集後記)で書き上げ騰写版刷りで村 251.

(7) . 君. デ 彦. 内にく ばっ た資料集をもとにして いる. この地域においては児童生徒用, 教師用ともに社会科副読 960年前後からさかんになったといえるし,今日の状 況の原型はこの時期にほぼ形 本の編集刊行が1 をなしたとみてよい だろう. 以上のような地域の動きの 中で帯広市はどのよう な過程をたどっ たのか, 次にふりかえってみた い. それは帯広市だけの問題にとどまらず, 副読本を編集し活用しようとするすべての人に共通す る希望や悩みであり, 社会科教育のあゆみを確実に物語る 成果であるから, やや煩雑になるがあえ 967年まで帯広市の教育研究組 9 57年から1 て関連 資料を多く引用して, 経緯を跡づけておきたい.1 一部保育所幼稚園を含む ) が教科ない ( 職員 市内の学校に勤務する全教 織をサークル研究と呼び, し運営の部 会に所属して, テーマに沿っ た研究交流を共同ですすめようとするもので, そのひとつ 957年帯広市と隣接大正, 川西両村が合併し新帯広市を として社会 (科) サークルが設けられた. 1 スタートさせたが, サークル研究もまた新構成で始めることになり, 社会サークルの研究主題を「地 域性に立つた社会科教育の振興」 と設定した. そこでの実践テーマのひとつとして 「社会科資料集 の作成とその活用について」 をかかげたが, 発足したばかりのこの年はつっ こんだ話し合いにいた 1 ) らず, テーマは翌年への宿題として申し送くられることになった.{ 8年度は社会サークル内の資料作成 研究グルー プがこのテーマの推進に 取り組み, 95 そこで翌1 「社会科の本質をつく地理教育を目標としてする 資料せんたく上の 基準として生徒の興味・学力・ . 学習状態・カリキュ ラムの要求するものを考える. 作成に当っては生徒の学力 調査・興味調査の結 果から考えていく. 形式は一応, 単元・学習内容・学習活動にして実際に使えるもの. 指導上の観 点として単元の目標から一つだけあげ, 最後は系統性のあるものにして, 教師のもてる最高資料 と 2 )との方向づけをはかっ た 具体的には中学校社会科で使う副読本の作成を念頭において, したい」( . ① 資料の範囲を学習 目的にそい簡潔で直接利用できるものに 限定する. ②資料を学習に直結させる 有機的展開. ③グラフ, 図表, ことばの表現や利用方法を工夫する. ④単元ごとに重点目標を置き, 3 )そう した話し合いの中 それを中心に考えさせる 学習に進ませるという4点について検討したが,( から今日社会科の資料集を最も必要としているのは小学校中学年ではないだろうか, 中学校でも必 要だがより切実なのは ・学校であり, そちらを優先させて はどうかとの意見が多く出た. その結果, 小学校3, 4年生用の社会科副読本づくりへ方針を変え, 作業メンバーを中学校から小学校教員 中. 心に入れ替え, 教育研究所が事務局的役割を負い, 市教育委員会から社会サークルが郷土資料副読 本の作成研究を委託されることになっ て, 編集作業が始まっ た. 作業内容は6分野でなされた. まず既刊の他市町村の副読本や資料集の比較検討であり, 次に学 習指導要領との関わり, 地域カリキュ ラムの動向, 採択教科書との関わり, 郷土資料や研究書の収 集調査, そして学校現場の意見聴取である. 最初の作業では前述の芽 室町のほか道内からは新十津 島根県等の副読本, 資料集を取り寄せ 内 川, 砂川, ,釧路, 石狩, 北見, 後志等, 道外から長崎県, 4 )また 北 容分 析を行い, 対象学年, 年表, 写真, 絵, 図表, 地図についても比較検討をすすめた.( , 5 )関係資料の収集 調査に 海道史の研究者奥山亮を招いて座談会を開き意見の交換をはかっ たほか,{ , 960年5月, 帯広市で初の社会科副 読本 『お びひろ』 が刊行され, ただちに各学校に配布 あたり, 1 され, この年から使用されたのである. その刊行の意義を 「郷土から何をくみとるか, 小学校3, 4年生が活用できる副読本にするには どのように表現したらよいかと……各種の資料を集め, 現地を視察し, 多くの先生の 意見をいただ き, 今回ようやく出版のはこびとなりました. 1字を入れるかどう するかと, 連日討議に討議をつ み上げた夜半に及ぶ会議. その成果と して生まれるこの 一お びひろu を通じて, 郷土帯広を限り な く愛し, 郷土帯広市で育 ぐくまれるよろこびをわかちあい, 広くそしてたくましい市民精神の高め 252.

(8) . 2 ) 地域の教材化に関する研究(. ( 6 )と述べるように この出版は父母からも地域諸機関からも賛辞がよせ られることを願う次第です」 , られ, 市の教育事業の中で大きな評価を得たといえよう. 内容は小学校3年と4年生を対象として 1冊にまとめたから, 児童は2年間つ づけて使用することになる. 3年で帯広と十勝を, 4年で主 に北海道を扱っ たが, その内容と教育課程が必ずしも整合するものではなく, 当初から調整の必要 960年度帯広市小学校教科課程試案 (帯広市 を生じることになる. 副読本の内容を項目にそって, 1 すと表3のようになる ) 教育研究所編 の単元と対照して示 .. 表3 副読本項目と教科課程単元名の対照 教科課程試案の単元名. 副読本の項目. 上巻 (3年の学習内容) 1 . わたしたちのまち帯広 2. のうかのくらし 3‐ 4.. 3学年 1 ‐ 私たちの学級会 2‐ 私たちの町帯広市 3. 十勝の農業. 海 べ のく ら し. 4‐ 浜の村広尾. 山の 村 トム ラ ウ シ. 5. 山 の 村 6‐ 都 会 の く ら し 7‐ み な と. 8‐ 大昔の人と今の人 0これからの帯広 下巻 (4年の学習内容) 1 . 進む十勝の農業. 9.. 日本の 北と南. 4学年 1 ‐ わたしたちのきまり 2‐ 開けていく村 3‐ さかんな漁業 4‐ 進んだ衛生. 2‐ むかしの北海道. 5‐ 大昔からの生活 6‐ おそろしい大水. 3‐ 北海道のまち 4. ゴ捺海道のこうつう. 7 ‐ 大きな町 8‐ 交通の進歩. 0北海道総合開発. 9.. 土 地 とく ら しの 工 夫. 0歴史年表. 9 61年度使 1 この副読本を使用した教師の意見を もとに誤植の修正や一部手なおしを施し, 改訂版 ( 1 962度年使用) が刊行されていく が, これら初期の副読本に関する教師の意見は次の 用) 三訂版 ( 7 ) よ う な も の で あ っ た. (. 編集に関する意見調査集計 1. 単元の配列. イ. 教 科 書 に 準 拠 して ほ し い. 30 %. ロ. あ る 程 度, 教 科 書 に 準 拠 し て よ い,. 10 %. ノ・. 郷 土 を 主 に し た 郷 土 読 本 の 形 態 がよ い. 31 %. ニ. 教科書に準じ乍ら地域の特殊性を含める 253.

(9) . 君. ホ. 市のカリキュ ラムの配列に従う 単元配列は独創的でよいが, 内容は教科書に準拠し, 且比較学習ができるように. ヘ 2. デ 彦. 郷土の地域. イ. 帯広市内. 帯広を重点に十勝, 道東くらい ノ・ 帯広を重点‘ こするが, 十勝, 北海道も相応に ロ. ニ 3. 帯広を中心に, 文中に十勝, 北海道, 日本を配慮する 内容の精粗. 80% 5% 1. イ. 内容 は 少 い. ロ. 内 容 はく わ し す ぎる. 10 %. 大体 よ い. 70 %. ノ・. 4. 20 %. 要素及び資料. イ. 不足している 巻末絵地図に広さの感覚がない, 人口増の図 表, 図表 グラフを豊富に, さし絵を多く. 帯. 広の平面図, 北海道地図, 帯広駅の乗客貨物 統計表. ロ 5. 不要なもの (なし) 上下巻, 3, 4年の扱い方. イ. 3 年 は 上 巻, 4 年 は 下 巻. 80 %. ロ. 3, 4 年 と わ け な い. 20 %. 6. 3訂版. イ. もっ とくわしく述べる ロ 工業関係のわかりやすい写真を ノ・ 帯広市の性格づけに n鈴蘭公園から. はよい ニ 帯広十勝の特色であるやせた土地についてふれていない ホ. 農→商→工を体系的に. 農→工→商がよい ヘ 800 0年前のような表現はやめる ト. 説明にふさわしい図版を. チ. 2つのアイヌの乱をまとめて意義も明確にする. リ. アイ ヌ の 生 活 の 説 明 は い っ の こ と な の か. ヌ. 合併した村の生活は旧市と大きくちがうはず 文章. 7 イ ロ. 漢字, ことばがむずかしい 文が断片的で平板, ストーリ風にしては. ノ・ 専門語 (かいさく, サイロ) には註をつける ニ. 大 変 よ い, ル ビ も つ い て い て よ い. ホ. 単元による文章のちがいを統一する. ヘ. 分ち書きはやめるように. 8 教師用単元解説及資料編 イ 254. 対照頁が一致していない.

(10) . 2 ) 地域の教材化に関する研究(. 市勢要覧をつけてほしい. ロ. ノ・ 単元設定の理 由だけでなく, 展開例がほしい ニ. 問題的事項の説明がたりない. ホ. 十勝の生い立ち (農業) にもっとくわしい資料を. 9. 問題欄 ィ. 必要. 85 %. ロ. 不要. 8%. 0 全体意見 1 イ. 市のカリキュ ラムに並行するように してほしい. 専門用語に解説と資料を, 特に農業関係 ・ ノ 教科書との関連を明示する ニ 単元解説及資料で農業関係をもっと詳細に ロ. ホ. 統計グラフに出典と年度を. ヘ. 内容は知識注入より問題発見に役立つように. ト. 皮表的ではなく筋を通すように. チ. 資料を豊富に. リ. 4年の内容は平易す ぎる. ヌ. 製本に工夫を. ル. さし絵は写実 的に. ヲ ワ. 図表写真を多くし, 場所撮影日など説明を 農業区分を適確につかむ. 力. 合併村の記述を整理し, 市街地を商業にうつす. ヨ. 農→商→工のあとに建物を展開してはどうか. 夕. むかしの 内容を整理統一する. し. 晩成社移住の 必然性はなにか. ソ. 下巻北海道のむか しの図写真は入れかえる. ツ. 児童が使える 帯広地図がほしい 教科書的では なく, 児童用の資料としてはどうか. ネ. これらの意見は現在の副読本作成にそのまま参考となることが多いから, 要約はしたが全項目を 再録した。 こうした意見を 汲み上げ, 学校をとりまく条件の変化, また指導要領, 教育課程の変更 991年4月発行の社会科 にともない度々改訂がつ づけられ今日にいたっ たのである.最新版である1 8 ) 副読本( を当初のものと比較し, この30年の移り変りをまとめておきたい. 体裁の面 でまずあげられるのは 3, 4年合冊(1冊の中で上巻3年用, 下巻4巻用に分けていた) から各独立冊子に変っ たこと. 判型もA5からB5 と大きくなり, 当然頁数が増加し内容の量的拡 大につながっ ている. 紙質の改良がなによりもこの30年の違いをあらわしているが, 印刷技術の向 上もめ ざましく, 写真図表とも鮮明になり, 地図グラフや主要項目のほか学習 課題とまとめの文に 色をかけるようになっ た. 一部頁をアート紙にしてカラー写真を入れ, 特に3年用の空撮写真が効 果的である.当初版はA5の1頁に本文31字×11行をつめていたが,現行版は判面が大きく なっ た ほどには字数をふやさず, 上欄に空白部を残して, そこに学習のねらい, 視点, 用語解説, 資料(小 さい絵, 写真)をおさめ, 見やすい頁構成に配慮している. 前述の意見にある製本の改善もなされ, やぶれにくい表紙と強い綴じ目の工夫がみられる. 内容面では教育課題に準拠するようになり, 指 255.

(11) . 君. デ 彦. 導計画と一体化されていることが大きな変化というか特徴であろう. 従っ て副読本の項目は教育課 程と一致しているし, 学習過程を下敷にして編集されている. 表記は当初版が 「大通りこうえんが あります.」 「四万五千人ほどです.」 という説明型であっ たが, 現行 丁版はその前後段に「土地のよう す と 人々 の し ご と は, ふ か いつ な がり が あ る の で は な い か, な ど と 話 し 合 い ま し た.」 「さ っ そく 近. くの農家をたずねました.j r話し合いながら書き入れていきました.一等の学習目標, 調べ方, まと め方を加えた説明型に変えてある. さらに単元ごとに最初に学習のめあてと予想, 調べ方を理解し, 単元への関心をもたせる頁, 最後に学習のまとめ, 発展の頁をもう けている. すなわち教育課程の 中でこれらの時数を確保する配慮がうかがえる. 判面ともかかわり上欄部に学習目標や視点をかか げ, 色刷りの黒板式で調べ方やまとめの文を入れ, 写真, グラフ, 地図も多数とり入れているから, 説明型副読本といっ ても当初版とは大きな違いがみられ, これは帯広市の例にかぎらず全道に通じ る特徴といえよう. 小学校3, 4年用社会科副読本は地域素材をいかに教材化したかの集約本としての性格をもつ. そうした観点から現行版 『お びひろ』 3年用から3点に注目したい. 第1は最初の単元 「わたした ちの帯広市や北海道」 における身近な地域の考え方である. 単元のねらいに 「自分たちの市を中心 にした地域における特徴のある地形・土地利用及び集落分布をとり上げ, 人々の生活と自然環境と の関係を理解させるとともに, 北海道内における自分たちの市の地理的位置を確認させ, 道全体と 9 )学習内容は学校のまわり-市全体のようす- しての地形の特徴などに気づかせる」とあるように,( 十勝の町や村-北海道のようすとなっている.前半については他の多くの副読本と相通じているが, 3年生最初の単元で十勝地域, 北海道を取り扱っ て帯広市の位置づけをはかる後半の内容は特異で あり, 実践の結果に注目したい. 第2は単元 「農家のしごととわたしたちのくらし」 の充実した内 容である. 前述 の当初版意見調査でも色濃くうかがえるように教師側から農業単元に出された要望 はずい分多い. 市域の広い面積が農山村であり, 周囲の生産構造をみても農業地帯を後背地とする 十勝地域で唯一の市であってみれば当然ともいえるが, 農村で生活体験している教師がきわめて少 なく, 知識は限られているために, 副読本や指導書での農業内容の充実が強く求められてきたのだ ろう. 現行版における豆づくりとらく農の教材開発は帯広ならではの成果であろう. 第3は単元 「海べの市と帯広市」 である. この内容は平成元年版学習指導要領から消失したので, 副読本の次期改訂でけずられるかも知れないが,「私たちの住んでいる市と比べて, 自然条件が異な 1 0 )ために釧路をえらんだ 11 る地域を道内からえらび, その地域における生活の様子を理解する」( . 時間扱いで釧路の土地のようす, 気こう, 海のしごと, 畑のしごとと酪農, 工場のしごと, 石炭を ほるしごとを学習して, 海べの市釧路のまとめをし, それを1年間学習してきたわたしたちの市帯 広とくらべ, 帯広の特色をより確実につかませ, 3年の社会科学習をふりかえりまとめにしようと している. 帯広市が釧路をえらんだように, 釧路市は帯広をえらびやはり3年生で 「十勝平野のま 1 1 )釧路での指導内容は帯広市と釧路の位置関係 気候と土地利用 仕 ち帯広市」 を設定している.( , , 1 2 }こう 事の特徴, 農家の仕事, 工場, 商店や交通網, そしてまとめと評価で11時間扱としている.( した同一単元の地域選定に互換性が生じれば, 副読本の編集, 資料提供に協力体制が生まれようと し, 教師側の便宜だけでなく 児童間の文通, 社会見学等を活用した交流も可能となり, 条件や環境 を異にする地域の生活を理解し合う面から有益な試みといえる. なお, 釧路におけるこの単元の配 置は, 釧路市の仕事を学習した直後にあり, 位置や仕事を中心に釧路と帯広を比較学習し, そのあ とにく らしの移り変りの単元をおいて3学年をしめくくるようにしているので, 両市それぞれ特色 を生かしているわけである. 次に現行版 『お びひろ』 の編集方針を再録しておく. 道内における副読本編集の現時点における 256.

(12) . 2 ) 地域の教材化に関する研究(. 大勢をこの方針から知ることができようし, 将来さらに進展するであろう新しい型の副読本の基底 1 3 ) になって, 別の視点から比較検討する場合の手 がかりとなると 思う か ら で あ る. (. 編集の方針 目標. 1. ①. 地域に見られる人々の生活は, 自然環境と密接な結びつきの上に営まれ, 地域によっ て生産 活動や消費生活に特色があることや, 人々の生活の様子は歴史的に変化してきたことを理解さ せ, 地域社会の成員としての自覚を育てる.. ②. 地域社会における社会的事象を具体的に観察させるとともに, 地図その他の具体的資料を効 果的に活用させる. 編集の基本的態度. 2 ① ②. 有識者や学校現場からの意見を編集に反映させる. 過去の副読本, 他地域の現行副読本, 学習指導要領などをもとに, 編集内容・方法の適正化 に 努 め る.. 副読本を主にして学習をすすめていけるように, 教科書スタイ ルの副読本にする. 「おびひろ・3年」 の編集特色 ① 地域のとらえ方について 同心円的扱い方を改めた. 3年は市内, 4年は道内という行政区 域に限定せず, 機能面で必要に応じて道内にひろがりをもたせた. これは, 従来の3・4年で ③. 3. 内容に重複があっ たことや, 最近の地域社会の変ぼうや地域社会相互の複雑化を考慮したため である. 両学年を関連的にとらえ, 学習内容の質の違いを明確にしてある. (3年は地域の人々 と自然や人為的社会とのかかわりあいの学習-生産活動・消費生活. 4年は地域住民全体のく らしの維持向上のための地域の 組織的・協力的活動) ②. 指導要領を充分検討し, 過去の教育実践をもとにして,「何を教材に 選べば児童が積極的に学習と取り組むか」 の観点から考えた. そして 児童の生活経験の中で, 教材の選び方について. より日常的であり課題性のある教材を選び出し, 主体的に学習できるように配慮した. 更に事 例や内容の精選に努め, 学習負担の軽減をはかっ た. 従っ て一つの典型事例を 時間をかけて追 求し, 他の事例は自主研究へ転移発展できるようになっ ている. また 「研究」 「学習しりよう」 を設け, 児童が自主的, 発展的に学習を深め, 実践できるようにした. ③. 地域の身近な観察を通して, 実証的にとらえる見方, 考え方を具体的 に養っ ていけるように教材を展開した. 従っ て編集にあたっ ては観察や課題追求の際の手順や 操作を具体的にし, 自らする学習の仕方が身につくように配慮した. また文章表記の仕方も意 展開の仕方について. 欲的, 自主的に学習できるように児童の立場に立っ た展開を考えた. 教科書については随時活 用 を は か る.. また学習を意欲づけたり, 学習目標や計画を明確にするため, 大単元ごとにオリエンテーシ ョ ンを設けた. そして単元末には 「学習のまとめ」 を設け, 学習の整理や深化・補充ができる ようになっ た. 学習のめあて, 驚きや疑問, 補充資料などは上段の頭注欄で扱うことにした. ④ 資料の扱い方について 昭和61年4月から改訂版 (4分の1改訂)の教科書が使用されるこ と, また過去3年間の中で地域情勢の変化があっ たこと, これらのことを適確に把握し, 資料 等の整理改善に努めた. 各種の資料を豊富に, しかも効果的に活用し, 資料で考え判断できる力を伸ばせるように配 慮した. 特に地図指導は地図学習の系統をふまえ, 地図の活用能力がいっ そう身につくように 257.

(13) . . ヂ 彦. 君. 改善充実に努めた. 写真は現場・有識者の声を反映して撮影にあたり, 内容や時期を充分考慮 し, 学習対象について効果的なイメージ化をねらっ た. 特に4ページにわたるカラー写真の活 用は児童の印象を深くするものと思われる. 図表‐グラフ・さし絵などは児童の発達に即応し た形式や表現法を取り入れたので, 学習の深化に効果を発揮するものと思われる. また聞いた り調べ たりしたことをかこみ記事の形式で記述し, 児童に親しみやすくした. 社会科副読本が今日の状況にいたるまでには, それぞれの地域や市町村の事情が 背景にあっ て, 全道一律の動きとしてとらえることは難しいように思われる. そこで次に初版刊行 後どのような変遷をたどったかを空知地域の滝川市を例にうかがうことにする. 初版刊行にいたる 経緯など帯広市と相通じる事柄については重複をさけて省くことにした. 滝川市の場合. 滝川市の社会科副読本はまず典型的な作業型として出発した. 初版の刊行がいつだっ たのか明ら 6年版」だから, 197 1年には使われて かでないが, 当研究室で収集した中で最も古いものは「昭和4 1 9 7 0年が初版で グラフに1 いた. ただ収載の表や 969年の統計が多いことから, , その一部を改訂し たのが 「昭和46年版」 とも考えられる. タイ トルを 「社会科のがく しゅう」 とし, 副題に 「わたし たちのまち滝川」 を付す. B5判, 52頁, 表紙は色刷りだが本文頁にカラーは使っ ていない. 編集 発行機関は市教育共同研究組織の中に設けた郷土学習委員会で, 委員数は7名 だっ た. 3年生用だ 50円の表示があるので, 印刷代は父母負担としてスタートし が4年生用はなかっ たらしい. 定価1 たことがうかがえる. これの作成のねらいを 「学習指導要領の基準にそいながら, 教科書や各種資料を活用しながら, 子どもたちが自主的, 積極的にとりくめるように考えながら編集した」 と述べ, さらに編集方針を 1 4 ) 3 つ あ げて いる. (. 1 図1. 道. 4、じゅうたく地へいって しらべたことをまとめ. る 。. も. ようす 家の のよ うす 家. 道はぱ. さ. 亀菱. ま じ. ” ほrr. . . に応じ作業や書きこみができるよう. o 地. 5・しらべにいった をかきましょう。 ゅうたく地の絵地図. 258. 階として考え, 少しでも子どもの思 考力をのばし, 総合的な判断力を育. ぶち淡 雪 守. 大案 京店 店 金星響 き ; 警 察 媒本. の. 調べる→考えろを基本的な思考段. てるようにしました. 2 表, グラフなどを多く用い, 必要. ほそう 人や車. つ て 下 い る. て 下 い る と こ. { 塚の U りL 不 “ も ん - そのほか一気 こ十 と のついた”. が が. ※教科書の じぬうたく地と くらべてみましょ. ⑦ ⑦ ′- - -「窄 〔暫 に ち. 作業型副読本例. 3. にし, 資料の活用を重視しました. 教室の授業だ けでなく, 家庭での 予習, 復習にも使えるようにしまし た.. 内容は学習指導要領に準拠し, ①わ たしたちのまち滝川 市, ②山の村と海 べの町, ③滝川の人たちのくらしとの り も の の は た ら き, ④ さ い が い を ふ せ. ぐしごと, ⑤わたしたちのくらしと市 役所のはたらき, ⑥滝川市のうつりか わり, ⑦くらしをよくするためにの7 項目だが, これはおそらく市の教育 課 程の単元名 と一 致して いた の であろ う. 1頁を上下2段にわけ, 学習課題 ごとに記入余白をもうけたワークブッ.

(14) . 2 ) 地域の教材化に関する研究(. ク式の副読本である. その第1単元の例を示すと図1のようで, 地図, 棒 グラフ, 円グラフ, 統計 表などをもり込んでいる. しかし説明文の資料も全体の5分の1頁ほど含まれており, 児童用とし て①滝川のあらまし, ②学校しよ うかい, ③うつりかわり, ④あゆみ(年表) , ⑤地図のかきかたと しらべかたがあり, 教師用の統計類では①位置, ②地形図と地図記号, ③標高, ④人口推移, 産業 別人口, 近接市町との人口比較, ⑤道路橋梁, ⑥消防火災, ⑦交通事故を載せている. ところが1971年に滝川市は隣接の江部乙町と合併することにより,農業地区を増やし市域を拡大 974年改訂版を刊行することになる. 前 したので, 副読本は新しい市勢にそった改訂を求められ, 1 i ( ) 版と体裁は大差ないが, 内容面で次のような変更をみた. 5 1 単元の系統性を考慮し配列換をした. すなわち前述の②山の村と海べの町を資料扱いとして単 2. 元からはずし, ⑦を充実させて第2単元とした. 江部乙町合併にともない地理的歴史的表記統計で一新した. 市域の地図を合併地区を含むもの. 3. に替え, 歴史年表も新たにした‐ 農業人口と地区の増大にともない, 市の人たちのしごとの中に 「りんごづくりののう家」 を教 材化した. 教師用風料は大部分 除外した. 82年である.後述のように滝川市でこれとは別に説明型 この作業型副 読本が装いを改めたのは19. 4. 副読本を刊行したので, 従来の作業型副読本と機能分担をして重複をさけ, 両者一体の活用による 2年版学習指導要領にそっ て編集し, 単元構成は説明型副 学習効果をねらうことになっ た. 新版は5 1 6 ) 読本と連動させ, 次のような改正を施した.{ 1 2. タイ トルを改め, 表紙にカラー写真を使っ た. 編集者は従来通り市教育共同研究組織の内部委員会だが, 発行者を共同研究組織そのものとし た.. 3 4 5 6. 内容面では3年と4年の両学年用として1冊に合本した. 白地図を見やすく使いやすいように大判にして折り込んだ. 北海道における滝川の位置づけを充実した. 児童用の説明文資料を除外した. これは新規の作成であっ たから, 学校で使用してみると多くの問題点が指摘された‐ それらの意. 983年に新版の改訂版を刊行したが, これにより新版のスタイ ルは 見をもとに部分修 正をはかり, 1 1 7 )修正を加えた主な点は ①3年と4年の単元をわかりやすく 表示した ほぼ定着したとみてよい.( , . ②資料的記事の表示方法をかえた. ③3年絵地図の方位を8方位から4方位にした. ④漢字の学年 配当表を考慮し, 文章中の漢字とひらかなの書き換え, 固有名詞のルビつけをした. ⑤上下水道の 内容を変更した. ⑥作業用 グラフ用紙を lmmか ら 5m m方眼にかえた. この版から編集者が共同研究 組織から分かれ独立した機関となり, 発行者は教育委員会に変わっ た. 以後, 表紙の写真を新しく 991年度まで したり, 作業用年表用紙や グラフ用紙の増頁, 一部項目の小部分 改訂を毎年つづけ, 1 使用してきたのである. 平成元年版学習指導要領の実施にともない, 滝川市の説明型副読本が新編集され, 作業型もまた 8 1 )これは新版の第9 9 91年度から使用された.( 新たな内容に変えることになり, 再新版が作成され1 次改訂にあたるが, 改訂というより新規の編集である. 再新版では, ①3, 4年生用合冊から4年 分を分離した. ②B5をA4判に大型化した. ③作業項目を絞り, 説明型との調整をはかっ た. ④ 作業用白地図を除外したこと等が注目される. 9 81年説明 このように滝川市の副読本は, まず作業型で始まり今日にいたったが, これとは別に1 259.

(15) . 君. 秀 彦. 1 9 }作業型だけではどうしても授業展開に制約があり 資料を補って収載し 型の副読本を発刊した.( , ても限度があることから, 別冊の説明型ないし資料型の作成が強く 求められるようになっ たのであ る. そこで各小学校から1名 ずつの編集委員が出て, 校長会教頭会教育委員 会からも各1名力功口わ り, 共同研究組織とは別個の 社会科副読本編集委員会を設けて検討した結果, 説明型の作成にふみ きることとなり, 市長部局から編集者の応援を得て, A5判,167頁, 写真だけでなく地図, グラフ, イラストにもカラー印刷をふんだんに使っ た3, 4年生合冊の副読本が生まれた. 市長目から本文 案に全て目を通したという から, 当時の関心の高さがうかがえよう. 項目は教育課程の単元に準拠 しているが, 3年単元の内, 他地域との比較による滝川の特色をまなぶ部分は巻末に資料扱いとし てまわしてある. この使用にもとづく反省と状況推移から, 初版の一部文章を修正し, 写真のさし替え, 友好親善 2 0 }さらに学習指導要領の 改正にとも 9 86年に刊行した.{ 都市栃木市の資料追加等を行い, 改訂版を1 ない, 新版を1 991年に編集刊行した. 新版ではA5をB5判に変え, 本文の横書きを採用するなど 新しい試みがみられる. 初版と新版の項目 (単元) は表4のようになっており, 作業型は3, 4年 を分離したが, 説明型は合冊のままである. この試みの評価は授業の 中で使いこなしてから聞かれ るものと期 待している. 表4. 『わたしたちの滝川』 項目一覧 初. 新. 1 981年) 版(. 91年) 1 9 版(. 1 . 滝川市のすがた 2. 滝川市の人びとの仕事. 1 ‐ わたしたちのくらしの発見 2‐ 滝川市のすがた. 3. 滝川市の商店がい 4‐ 農家の仕事. 3. 滝川市の商店がい. 5‐ 工場の仕事 6‐ くらしのうつりかわり. 5‐ 玉ねぎづくりのしごと 6 . きょう土館をたずねて. 7‐ 健康で安全なくらし 8‐ くらしをよくする. 1‐ く ら し の な か の 水 と ごみ. 9. くらしを高める願い IQ これからの滝川市 資料. ほかの市や町とのむすびつき 滝川のおもなできごと (年表). 4‐. 工 場の し ごと. 2. 安全なくらし 3 ‐ くらしのひろがり 4 ‐ 滝川を開いた人びと 5. くらしやすい滝川市に 資料 友だちになろう 滝川市のうつりかわり (年表). これらにともなう教師用書につ いてふれておきたい. 滝川市では作業型作成以前に, 教師用の郷 土資料集が刊行されていたという が未見である. 児童用の作業型ができると, その中に教師用の資 料が一部組み入れられたのは前述の通りで, 「社会科作業帳」になっ てからも, 説明型を補うための 2 1 }このほかに社会科副読本の 『指導の手引き』 を作成し刊行してき 参考資料を含むことがあっ た.{ 2 2 }このよう た. 第1集指導上の留意事項, 第2集学習指導案, 第3集市内公共施設ガイ ドである.( に児童用の作業型と説明型, それに教師用の指導書, 資料集がセッ トになっ て, 今日の滝川市にお ける小学校中学年社会科副読本 が出来ていることになる. 260.

(16) . 2 ) 地域の教材化に関する研究(. 社会科副読本を作成することになれば, 相当の経費負担を責任者は覚悟しなければならない. 義 務教育の父母負担軽減の面からしても, 単なる教育的配慮だけでは作成にいたらない. 市町村が責 任者となれば, 今後どうしても自主財源から経常的支出をともなうから, 大都市の財政ならばとも かく, 補助金をたよりにする市町村では, 経済的社 会的に適切な判断が必要になる. そうした中で 滝川市の場合, 説明型の作成とともに, 在来の作業型をさらに充実整備し, 両者を一体的に組み合 わせた授業の展開をめ ざしたのが特徴といえる. かつて多くの作業型副読本があっ たけれども, 説 明型や資料型の編集とともに姿を消していく傾向にあり, 今日その数は減少の一途をたどっ ている ようである. こうした動向にあっ て滝川市の取り組みが今後の副読本のあり方にひとつの示唆を与 えるように思われる. 以上帯広市と滝川市についてみてきた社会科副読本作成の努力は, 戦後の教育活動の一環として 程度の違いこそあれどこの市町村でも地味に着実に休むこと なく続けられてきたのであり, それを 生かした社会科授業の積み上げは, 社会科教育実践史の貴重な遺産ということができるであろう. 本項は帯広市教育研究所大内亮, 造田誠, 滝川市立江部乙小学校 ト部信臣各氏のご教示によると ころが多い. 記して謝意を表する次第である. (副読本の類型と地域的特色, 地域の教材化との関わ 9 92年4月新版を刊行したが, りについては, 紙数の都合で次号にまわした. 帯広, 滝川両市とも1 本稿執筆時に見ることはできなかっ た.) 〈注〉 ( 1 ) ( 2 ) 3 ) ( ( 4 ) ( 5 ) ( ) 6 ( 7 ) ( 8 ) ( 9 ). ) 5~8p 帯広市教育委員会 『教育交流』 5 (1957 . . 11 同 『教育帯広』 3 (1958. 6) 6 ~8 p. 9 5 8 ) 4~5 p. 同 『教育帯広』 5 ( 1 ‐ 10 同 『教育帯広』 6 (1958‐ 12) 2 ~4 p. 同 『教育帯広』1 2( 959 ) 4~5 p. 1 ‐ 11 同 『教育帯広』1 6( 1 96 0 ‐ 4) 3 p‐ 『昭和37年度帯広市教育研究集録』 所載) 有田剛 「社会科副読本おびひろの大改訂に臨んで」 ( 帯広市教育研究所編集, 帯広市教育委員会発行 『おびひろ』 3年用, 同4年用 同上3年用所載 「教師用指導書編集の方針」 2 p‐. 1 ( の. 同 上 18p . ( ) 釧路市教育研究センター 『くしろ』 御[路市教育委員会 1 1 1 991 ‐ 3). 44~54p .. り 釧路市教育研究センター 『くしろ指導の手引き』 ◎-路市教育研究センター 19 87 4~40p { 1 2 . . 3) 3 め 注( ( 1 9 )に同じ. 1~ 2 p‐ Q 4 ) 滝川市教育振興会郷土学習委員会『社会科のがくしゅう-わたしたちのまち滝川』 (滝川市教育振興会郷土学習委 員会 1 971 ) 2 p. 5 ( 1 ) 滝川市教育振興会郷土学習委員会『社会科のがくしゅう-わたしたちのまち滝川』 (滝川市教育振興会郷土学習委 員会 1 9 7 4 ) Q 6 ) 滝川市教育振興会社会科作業帳編集委員会 『社会科作業帳-わたしたちの滝川』 (滝川市教育振興会 19 2 8 . 4) 師 滝川市社会科副読本編集委員会 『社会科作業帳-わたしたちの滝川』 (滝川市教育委員会 1 9 83 4 ) ‐ Q務 同 『社会科作業帳-わたしたちの滝川』 (同 1 9 91 . 4) Q ) 同 『わた した ちの 滝川』 (同 1981 9 . 4) 86 ◎ 同 『わたしたちの滝川』 (同 19 . 4) 御 同 『社会科作業帳-わたしたちの滝川』 (同 1 9 90 . . 4) 60~63p 第 2 集 9 8 0 第 8 鰹 4 1 3 1 3 集 1 9 5 ) 第 1集 1981 , , . ‐ ‐ 4の発行. 編集者, 発行者は児童用副読本に同じ . (本学助教授 札幌分校). 261.

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参照

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