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〈論文〉生徒の協働的な統計的問題解決型シナリオ型教材を 用いた教員研修での効果測定についての一考察

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1.はじめに

小、中学校の次期学習指導要領が告示され、統計・確率に関する学習内容が現行の学習指導 要領から拡充された。更に、小・中・高等学校の確率・統計分野の学習については、内容的連 続性を担保することから、「データの活用」領域として統一した領域名が使われるようになっ た。これにより、小学校の第1学年算数から、高等学校まで、算数・数学の中に、統計につい てのカリキュラムが整備されたことになる。 一方で、次期学習指導要領では、「主体的・対話 的で深い学び」を目指した授業改善が求められ、 生きる力の育成の1つとして、「思考力・判 断力・表現力の育成」が重要視されている(文部科学省2017)。現行の学習指導要領では、「思 考力・判断力・表現力」は、 知識の活用の場として捉えられていた(文部科学省2010)。 今回 の改訂では、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力の三つの柱として、「知識及び技 能」、「思考力、判断力、表現力等」及び「学びに向かう力、人間性等」を規定した。これらは、 各教科の目標となり、「思考力、判断力、表現力等」の1つとして位置づけられるようになり、 現行の学習指導要領より、目標として強調されている。 このような状況において、統計教育としては、主体的・対話的で深い学びを起すような場面 の中で、思考力・判断力・表現力を育成する統計教材の開発と、それを用いた授業を開発する ことが喫緊の課題である。 この課題に対して、西仲(2018)は、新学習指導要領での「データ活用」領域での指導につ いて、「新しい学習内容を単に教示的な内容の伝搬においては、新しい学習指導要領が目指す、

生徒の協働的な統計的問題解決型シナリオ型教材を

用いた教員研修での効果測定についての一考察

西

仲 則

博*

A Study on Measuring the Effectiveness of Teacher

Training Using Scenario Type Teaching Materials of

Students’ Collaborative Statistical Problem Solving

(NISHINAKA Norihiro)

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生徒が知識を活用して、思考・判断し、根拠のある説明ができるようにはならない。また、生 徒達が思考・判断を行った結果について、多面的、批判的(クリティカル)に観ることもでき ない。先生方が知識の活用、思考・判断を行い、根拠のある説明ができ、それらを多面的、批 判的にみるようになることが必要である。そのためには、自らが経験し、その中から学んでい くことが必要であると考える。」とし、協働的な統計的問題解決型シナリオ型教材(以下シナ リオ型教材とする)の開発を行った。 西仲・吉川(2018)は、開発されたシナリオ型教材を用いて、数学科の教師向け研修を行い、 その反応についてまとめている。この研修においては、ワークシートが2種類(資料1、2 ) 使われており、西仲・吉川(2018)では、紙面の都合により、資料1のみについての分析が行 われている。資料2は「グループ活動での感想気づき」、「他のグループの発表を聞いての感想・ 気づき」、「(研修全体の)リフレクション」の3つの問いからなっている(資料2参照)。これ ら3つの記述に対する分析は、研修の方法や用いた教材への示唆を与えるものであり、研究の 発展のために欠かすことができないものである。そのため、本研究では、分析が行われていな いワークシート2についての分析を行い、研修を受けた教師のリフレクションを通して、研修 方法、シナリオ教材の効果測定について考察を行う。

2.研究の方法

 先行研究について 西仲(2018)で示された3つのシナリオ型教材は、同じデータを用いながらも、それぞれ違 う統計的知識を用いて、問題解決を行うシナリオになっている(表1参照)。 また、それぞれのシナリオは、大きく分けて、次のアからエの4つの場面で構成されている。 ア.課題提示場面:「若手の教師が課題(表1参照)を投げかける場面(教師のみ) 表1.シナリオ別の知識の活用・統計的問題解決の過程について 統計的問題解決過程 知識活用 シナリオ 代表値→度数分布→相対度数 度数分布表、相対度数 A 代表値→累積度数→累積度数分布表 累積度数、累積相対度数 B 四分位範囲→箱ひげ図 分位範囲、箱ひげ図 C

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イ.グループ学習場面:あるグループ内での問題解決場面(生徒のみ男・女それぞれ2人 ずつのグループ) ウ.机間観察場面:教師の机間観察の場面(教師と生徒) エ.発表場面:問題の解決をまとめて発表する場面(教師と生徒) 4場面を作ったのは、教師の視点からの解釈、生徒の視点からの解釈が可能になるようにする ことで、研修での気づきを増やす狙いがある。

この基になっている考え方は、吉川(2007)が開発し SIT(Situated Intelligence Training)

である。SIT はビジネス場面での意思決定を想定した作られたものである。 これは、 すでに もっている知識を適用するという“文脈適用力”や、あるいはある知識をきっかけに考え出す こと、さらにはそもそもの状況を的確に把握しどのような問題であるかを考える“ 状況判断” の育成を想定して作られた教材と教授法を一体化した呼称である(吉川2007)。状況の中に埋 め込まれた情報を学習者が気づき、知識としていく、状況的認識論を基にしている。そのため、 SIT はすでに学習者がもっている知識をどの場面でどのように使うのかということを見つけ出 していく教育方法である(吉川2007)。 西仲・吉川(2018)においては、 西仲(2018)で作成した3つのシナリオ型教材とワーク シートを利用した研修での成果が報告されている。この研修では、参加者を3グループに分け て、それぞれに違うシナリオ型教材を提示し、それらを2種類のワークシート(ワークシート の内容は共通)に則って活動が行われた。 研修で用いたワークシートは、ワークシート1、2 (資料1、2 )の2枚である。 ワーク シート1には、「シナリオを読んで、発言に対して良かった所、悪かった所、私ならこうする。 台詞番号を書いて次の□にまとめて」と書かれており、それぞれを記入する欄が設けられてい る。ワークシート1への記入は、主に個人解決活動の中で行われるものである。そのため、他 者との共有や意見交換が行われていない状況での記述である。 ワークシート2は、「グループ活動での感想気づき」、「他のグループの発表を聞いての感想・ 気づき」、「(研修全体の)リフレクション」の3つの問いからなっている(資料2参照)。ワー クシート2への記述は、グループでの活動後、グループ発表後、研修の最後にそれぞれ行われ るものである。そのため、他者の意見や共有が行われた後でのリフレクションが記述されてい ると考える。 西仲・吉川(2018)の研究においては、紙面の都合上、ワークシート1「シナリオを読んで、

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発言に対して良かった所、悪かった所、私ならこうする 台詞番号を書いて次の□にまとめてく ださい。」のみが考察の対象となっている。 この研究では、 参加者の反応がシナリオの生徒の 発言に対する気づきと教師の発言に対する気づきの2つに分けて報告されている。 参加者は、シナリオ内の生徒の発言の中の「知識活用」、「判断の発言」、「グループの活動を 促す発言」について指摘し、それらを評価している。生徒の「統計的内容の簡略」、「是非や確 認等の発言」や、生徒の「無計画な問題解決」については、指摘されていない。 教師の発言については、課題提示の場面での教師の曖昧な問いかけについては、1 名がその 事を指摘したが、その他の参加者は指摘されていない。 机間観察の場面では、多くの指摘があ る。参加者が生徒の問題解決を進めたり、深めたり、より確かなものにするための教師の発言 の必要性について指摘している。しかし、生徒達が無計画に学習したことを適用して、解決を 図っていこうとする問題解決についての言及は無かった。発表の場面については、参加者は生 徒の発表についての要約や、結論・その過程についてのアドバイス等を示し、教師が発表の内 容・方法を共有化していないことへの指摘をしている。生徒の発表の論理的な誤りについては、 指摘されていない。 このように、シナリオ型教材に埋め込まれている全ての情報について気づいている事では無 いことがわかる。これは、他者の介入によって気づかせることができる可能性があるため、 ケース教材としての有用性があることを示している。  研究の目的 本研究で扱う研修の目的は、協働的な統計的問題解決における教師の実践力を高めることで ある。西仲・吉川(2018)では、この実践力を次の2つに分解している。 1)教師が生徒の協働的な問題解決の中での知識活用や判断についてどのようなことが行わ れているかを推定できること 2)協働的な問題解決の授業をどのように始め、解決中にどのように介入し、どのように終 結させるかの体系的な方法論を身につけることができること 1)は生徒の思考の把握であるが、協働的な学習の中では、同時に幾つものグループが活動を 行っているため、時系列的に教師が全てのグループの思考活動を把握することが困難である。 そこで、事前に擬似的にそのような場面を用意し、生徒の思考活動を予め把握する訓練してお くことにより、対応が可能ではないかと考える。そのため、本研修では、3 つの違ったシナリ

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オ教材を用意した。2 )は、2 .で示した、シナリオ型教材の4つの場面に、次の5つの情 報が埋め込まれている。 生徒の協働的な統計的問題解決過程における知識の活用とその過程 生徒の発表 教師からの問題提示 教師の生徒の活動への介入 生徒の発表に対する教師の評価 それぞれの場面での生徒の活動や教師の行動について振り返り、考えを出し合う中で、実際 的な問題の省察と解決の過程で実践的な知識を形成することを目的としている(ドナルド・A・ ショーン2007、2017)。 西仲・吉川(2018)では、それぞれの場面について、ワークシート1の記述を基にして、分 析し、シナリオ型教材の効果について示している。 本研究では、 西仲・吉川(2018)で示されていない、「研修の方法」の効果を調べることを 目的とする。ここで、研修の方法とは、研修全体での次の図1のプロセスを指す。 このプロセスでの個人学習(個人解決活動)については、西仲・吉川(2018)で示されてい るので、本研究では、個人学習(個人解決活動)以後の活動について着目し、その効果を、参 加者のワークシート2の記述を基にして、測定し、効果の是非を調べる。  研修について 実施日は2017年7月27日である。10ヶ年研修と数学科の研修が兼ねられた公的研修であった。 参加者は8名で、3 つのグループに分けて研修を行った。グループの人数構成は、シナリオA、 Cグループが3人、シナリオBグループが2人である(シナリオA、B、Cについては表1参 照)。 研修方法は、図1で示した通りである。 図1 研修の方法 個人学習(個人解決活動)→グループ学習(グループ活動)→発表会(共有化+講 師のコメント)→リフレクション

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 調査対象 研修で用いたワークシートは、ワークシート1、2 (資料1、2 )の2枚である。今回の調 査対象は、西仲・吉川(2018)で示されていない、ワークシート2の記述についての分析であ る。 ワークシート2は、「グループ活動での感想・気づき」、「他のグループの発表を聞いての感 想・気づき」、「(研修全体の)リフレクション」の3つの問いからなっている(資料2参照)。 ワークシート2への記述は、グループでの活動後、グループ発表後、研修の最後にそれぞれ行 われるものである。そのため、他者の意見や共有が行われた後でのリフレクションが記述され ていると考えることから、それぞれの活動の評価が出ていると考えるからだ。  分析について 分析については、「グループ活動での感想気づき」、「他のグループの発表を聞いての感想・気 づき」、「(研修全体の)リフレクション」の3つの問い毎に行う。「グループ活動での感想気づ き」、「他のグループの発表を聞いての感想・気づき」については、個人活動での気づいたもの を互いに確認する中で、新たな気づきを得ることや、同じ気づきについて共有することを通し て、協働的な統計的問題解決過程の指導についての学びを行うことを主眼としているため、「新 たな気づき」、「気づきの共有」の2点を観点として、これらの記述の有無について分析を行う。 「(研修全体の)リフレクション」については、協働的な統計的問題解決過程の授業の実践力 を高めることを研修の目的としているため、シナリオ型教材や研修を通して、「実践に対する 新たな気づき」について記されているかどうかを観ることにする。 「新たな気づき」が記されているかどうかは、 シナリオ番号やシナリオの内容、 それから派 生して気づきの記述があるかどうかで判断を行う。 「気づきの共有」については、 同意見や同じように感じる等の共感的な言葉で記述されてい るかどうかで判断を行う。 「実践に対する新たな気づき」は、 研修を通しての学びから従来の自分の授業についての記 述があり、日頃の授業へのフィードバックが記されているかどうかで判断を行う。 これらの観点の個数をそれぞれの得点として考え、その大小において効果があるかどうかに ついて考察する。

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 効果量の導入 2.で示した「新たな気づき」、「気づきの共有」、「実践に対する新たな気づき」のそれぞ れについては、記述の内容だけでなく、教育効果の有無を数値で表すことを導入する。数値で 表すことにより、他との比較が容易にできる。 そこで、効果があるとする回答者数をA、教育効果が無いとする回答者数をB、無解答者数 をCとしたときに、効果量を次の式で定義する。 効果の量=(A-B)/(A+B+C) これは、効果量を割合で示すことにより、回答数の違いに依らずに比較できる利点がある。こ の効果量は1~-1までの数として表し、0 以上1以下では、「効果がある」とする回答が多 いことを示し、被験者が「効果がある」と判断していることが分かる。効果量が-1以上0未 満では、「効果が無い」とする回答が多いことを示し、被験者が「効果が無い」と判断してい ることを表していることが分かる。これらの数値を用いて効果があるかどうかを判断する。無 回答については、「効果がある」「効果が無い」のどちらでもないと判断するため、全体の人数 には入れるだけとした。回答者数としたのは、回答数では1人で複数の回答を数えることにな るが、「効果がある」「効果が無い」と判断するのは、1 人なので、人数で定義することにした。

3.結 果

 調査件数等 研修参加人数が8名と少ない状況の中で、 ワークシート2の「グループ活動での感想気づ き」、「他のグループの発表を聞いての感想・気づき」、「(研修全体の)リフレクション」につ いての反応数と無解答数については、表2のような結果となった(表2参照)。  「グループ活動での感想気づき」についての分析 「グループ活動での感想気づき」については、回答数が4件で、 回収率50%である。 表3は 表2.ワークシート2への回答状況 研修全体のリフレクション 他のグループの発表を聞いての 感想・気づき グループ活動での感想気づき 4 6 4 回答数  4 2 4 無解答数

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「新たな気づき」・「気づきの共有」についての回答者数についてまとめたものである(表3参 照)。 グループ活動を通して、新たな気づきを得たと解答しているのが3名で、 研修に参加した 37.5%である。同じく、気づきの共有ができたと回答しているのが2名で、全体の25%である。 具体的な記述については、表4にまとめた(表4参照)。「新たな気づき」では、具体的なシ ナリオでの発言についての気づきや、授業での指示として「記録の良し悪しの決め方」や抽象 的な教師の授業の目的についての気づきが示されている。「気づきの共有」では、 教師の活動 についてグループで共有できた事が記述されている。  「他のグループの発表を聞いての感想・気づき」についての分析 「他のグループの発表を聞いての感想・気づき」については、回答数が6件で、 回収率75% である。表5は「新たな気づき」・「気づきの共有」についての回答者数についてまとめたもの である(表5参照)。 表3.「グループ活動での感想気づき」での「新たな気づき」・「気づきの共有の回答者数 なし ある 1 3 新たな気づき 2 2 気づきの共有 表4.「グループ活動での感想気づき」での「新たな気づき」・「気づきの共有」の記述 記述 ・33のゆうと君のナイス発言 ・48誰かしてね。おれはわからないから。 ・グループの構成 ・教師の目的・記録の良し悪しをどのように決めるか ・箱ひげ図の利点とは何かを教師が理解していないといけない。 新たな気づき ・グループとしての活動の仕方や良し悪しや教師のフォローの仕方や発問の仕方で同じ ように私も感じた。 ・だいたい同意見でした。とても共感できました。答えの導き方、子供達がこちらの答 えに辿り着くように手立てがすることが大事である。 ・良い点として グループ活動ができている 悪い点として 教師が生徒に任せきり 気づきの共有

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他のグループの発表を聞くことを通して、新たな気づきを得たと解答しているのが6名で、 研修に参加した75%である。同じく、気づきの共有ができたと回答しているのが0名で、全体 の0%である。 具体的な記述については、表6にまとめた(表6参照)。「新たな気づき」では、次期学習指 導要領から導入される、累積度数や箱ひげ図についての活用について評価する記述があった。 統計的問題解決での基準の設定についての気づきが3件あり、基準の設定の必要性について 気づいたことを示している。また、班毎に役割を与えることで、協働的な学習を行うことの良 さに気づいた記述もあり、協働的な統計的問題解決の授業への気づきを示している。 また、気づきではなく、感想として、「課題が3種類あり、視点が違うところがとても面白 く感じました。特に箱ひげ図は興味深かったです。」があった。 これは、 研修の方法に対する 肯定的な意見であると考える。 「度数分布表の階級の幅を決めるのが難しい。」とあげられているのは、参加者から「工学系 の大学の研究室では度数分布表の階級の幅は10と決まっていると習った。そのため、生徒たち にはそのように指導している」という発表があったためである。階級の幅については、階級の 表5.「他のグループの発表を聞いての感想・気づき」での「新たな気づき」・「気づきの共有」の回答者数 なし ある 0 6 新たな気づき 6 0 気づきの共有 表6.「他のグループの発表を聞いての感想・気づき」での「新たな気づき」・「気づきの共有」の記述 記述 ・累積相対度数をどこで切るのかを考えさせる ・箱ひげ図の見方が色々分かったので良かった。 ・基準をどこにするのか?全て調べることの意味は?教師からのアドバイス、導きの重 要性 ・グループ活動で様々な意見が出たときに多様性を持たせるために、各グループに役割 を持たせるように後押しをしてやる。(例えば このグループはこの方法でいこうか) ・B中の方がよいという結果を出すよりもなぜそう判断したのか、なぜヒストグラムを 使ったのかという理由が大切 ・階級の幅の取り方「記録がよい」の定義は? 新たな気づき 気づきの共有

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個数に関するスタージェスの公式があるが、使われている文脈やデータ数により、ケースバイ ケースである。(スタージェスの公式は、階級の数=1+ log2  n(nはデータ数)で求められ る。)  「研修全体のリフレクション」についての分析 「研修全体のリフレクション」については、回答数が4件で、回収率50%である。表7は「実 践に対する新たな気づき」についての回答者数についてまとめたものである(表7参照)。 研修全体の活動を通して、実践に対する新たな気づきを得たと解答しているのが4名で、研 修に参加した50%である。 具体的な記述については、 表8にまとめてある(表8参照)。 実践に対する新たな気づきと しては、「四分位範囲、 箱ひげ図の活用の便利さ」といった次期学習指導要領の内容について の気づきが示されている。 2 群比較判断に関する記述として、「数値を決めて根拠付けしての 判断の重要性」、「基準を決めてから調べるのか、調べた結果から基準を設定するのか」があり、 基準を基にして判断を行うことの重要性に気づいている事がわかる。 「4~5人のグループ」という記述は、 協働的な学習におけるグループの人数であるが、こ れは、実践においては、6 人班を6~7グループを基本としていることから出てきた気づきで ある。 「数値を決めて具体的に説明させる。」という記述は、生徒の発表の場面において、曖昧な言 葉で発表するのではなく、具体的な数値を示して、説明させることに気づいた記述である。 更に、表8には、研修の教材(シナリオ型教材)についての記述も観ることができる。 研修の教材については、 ・同じテーマで、3 班とも違うやり方で話し合った生徒の活動を見たので面白かった。 ・現場にいると、できない子どもが多いです。その子どもらの対応について考える内容で あればなお良かったように思います。 ・題材についてはとても良かったと思います。今後のデータ活用に活かしたいです。 の3点があり、教材については好意的な意見である。今後の実践での活用を示している。また、 できない子ども達への対応については、今後の検討課題である。

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協働的な統計的問題解決の学習については、 ・オープンエンドの問題は面白いがある程度、どの部分を考えさせたいかと言うところを 持って、生徒に声かけをしたり、発問をしたりするのが重要。 ・問題に対する回答をするに当たって、答えの定義を設定してやるのか、それを考えさせる のかこれが不明だと「いい授業」にならない。 の2点が示されているが、これらは、教師の狙いと、それと生徒が活動を結びつけるための発 問の重要性に気づいていることを示していると考える。  効果量の測定 新たな気づきや気づきの共有化に対して、「グループ活動の効果」、「他のグループの発表を 聞くことの効果」の効果量について、表2、表3、表4を基にして、表9のようにまとめるこ とができる。 表7.「研修全体のリフレクション」での「実践に対する新たな気づき」の回答者数 なし ある 0 4 実践に対する新たな気づき 表8.研修全体に対するリフレクションの記述 研修全体のリフレクション 同じテーマで、3班とも違うやり方で話し合った生徒の活動を見たので面白かった。  私自身この単元が苦手なので、自ら学ぶことがほとんど無かったため、今日考えることができたので 良かった。 現場にいると、できない子どもが多いです。その子どもらの対応について考える内容であればなお良 かったように思います。  題材についてはとても良かったと思います。今後のデータ活用に活かしたいです。 ・気づき 四分位範囲、箱ひげ図の活用の便利さ ・数値を決めて根拠付けしての判断の重要性 オープンエンドの問題は面白いがある程度、どの部分を考えさせたいかと言うところを持って、生徒に 声かけをしたり、発問をしたりするのが重要。  問題に対する回答をするに当たって、答えの定義を設定してやるのか、それを考えさせるのかこれが 不明だと「いい授業」にならない。 ・気づき 基準を決めてから調べるのか、調べた結果から 基準を設定するのか  ・気づき 良いという基準を出してからする。 4~5人のグループ 数値を決めて具体的に説明させ る。

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また、 全体のリフレクションにおいては、「実践に対する新たな気づき」に対する研修の効 果量は、0.50となる。

4.考 察

まず、この研修においてグループ活動の効果を、グループ活動を通して、新たな気づきを得 たことや、 気づきの共有化が図れているかどうかについて表9を元にして考える。「新たな気 づき」の効果量は0.375であり、「気づきの共有」の効果量が0.25であり、 ともに正の値をとる ことから、学習者が「効果がある」と判断していると捉えることができる。すなわち、研修で のグループ学習が「新たな気づき」「気づきの共有」について効果的であったと考える。 グループ活動の中で、「グループとしての活動の仕方や良し悪しや教師のフォローの仕方や 発問の仕方で同じように私も感じた。」「だいたい同意見でした。とても共感できました。答え の導き方、子供達がこちらの答えに辿り着くように手立てをすることが大事である。」という ように、シナリオでの教師の活動について注目し、為されていないことへの共通認識を持ち、 そこから、グループ活動での教師の介入、発言、手立てについての重要性を再認識しているこ とを読み取ることができる。 このようなことから、本研修におけるグループ活動の効果を認めることができると考える。 次に、「グループ活動での成果を発表し、その発表を聞く活動」についての効果について述 べる。まず、表9の「他のグループの発表を聞く」より、「新たな気づき」の効果量は0.750で あり、「気づきの共有」の効果量が0.00である。「新たな気づき」の効果量は正の値で、0.750と 1に近い値をとることから、参加者の多くが「効果がある」と判断していると捉えることがで きる。それに対して、「気づきの共有」の効果量が0.000である。効果量が正負の数であれば、 「効果ある」「効果無し」のどちらかの効果についての判断が為されていると考えることができ るが、効果量0.00はそのどちらも行われていないことを意味する。よって、「気づきの共有」に ついての効果判断が為されていないことを意味する。このようになったのは、発表を聞くだけ 表9.グループ活動・他のグループの発表を聞くことについての効果量 他のグループの発表を聞く グループ活動 0.750 0.375 新たな気づき 0.000 0.250 気づきの共有

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では、共有することまでの意識が向いていないと思われる。 「新たな気づき」として効果量が高いのは、 この研修での1つの仕掛けが解き明かされたこ とにも原因がある。それは、グループの活動時には、3 つのグループで使っているシナリオ型 教材が違う事が知らされず、発表時に初めて違うシナリオ型教材が使われていることに参加者 が気づくようになっている。そのため、他のグループの違う教材での発表について「新たな気 づき」としての意識が強められたと考えられる。そのため、単に他のグループの発表を聞くこ とではなく、仕掛けを含めた活動についての効果として、参加者に認められたと考えることが できる。 「研修全体のリフレクション」での「実践に対する新たな気づき」の効果量は、0.50である。 これは、今回の研修全体での学びが「実践に対する新たな気づき」を生むことができたかどう かを調べるものであったが、 その効果量が0.50ということで、 ある程度の教育効果があったと 考えられる。また、 記述の中には、研修の教材については、「題材についてはとても良かった と思います。 今後のデータ活用に活かしたいです。」とあるように評価する記述がある一方、 「できない子どもが多いです。その子どもらの対応について考える内容であればなお良かった ように思います。」というように、できない子ども達への対応についての記述がある。 今回用いたシナリオ型教材は、「できるように見える生徒たちの間違いを捜す」ことを目的 としたものであるが、できない子ども達への対応については、、今後の検討課題である。 協働的な統計的問題解決の学習については、参加者がその良さを認めて、授業を行うに当た り、発問や手立て(発問やワークシートの組み立て等)への意識を喚起することができた。 上記のことから、研修全体のデザインについては、参加者が「効果がある」と捉えたと考え ることができる。

5.おわりに

本研究では、数学教員に、生徒が協働的な統計的問題解決を行っているシナリオ型教材を用 いた研修での、研修デザインについての教育効果について考察を行った。教育効果を測るため に、参加者のワークシートでの記述から、講師が意図した行動が為されたかどうかを読みとり、 それを効果量と定義して、その値によって研修の効果を測ることを行った。結果として、研修 全体のデザインについては、参加者が「効果がある」と捉えることができる。 シナリオ型教材については、できない子ども達への指導を考えることができる教材の必要性

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が参加者から示された。これについては、この研修後に開発したマンガ型教材の中にも取り入 れている。そのため、今後も、研修や研究会等で教材を用いながら、改良を続けていきたいと 考える。 付 記 本研究は、JSPS 科研費(No.16K00979)の助成を受けて行われた。 参考・引用文献 文部科学省(2017)中学校学習指導要領解説数学編(平成29年告示)   http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/   afieldfile/2017/07/25/1387018_4_1.pdf ドナルド・A・ショーン(訳)柳沢昌一,三輪建二(2007):省察的実践とは何か,鳳出版 ドナルド・A・ショーン(訳)柳沢昌一, 村田晶子(訳)(2017):省察的実践者の教育―プロ フェッショナル・スクールの実践と理論,鳳出版 マーティン・スター,イアン・ラシュトン(訳)三輪建二(2018):教師の省察的実践―学校 教育と生涯学習―,鳳出版 西仲則博(2018):統計的問題解決における知識活用を重視した教師用シナリオ型教材の開発 に関する研究,近畿大学教育論叢,29(3),p5171. 西仲則博・吉川厚(2018): 協働的な統計的問題解決型シナリオ教材を用いた教員研修での評 価,日本科学教育学会第42回年会論文集,p183186.

吉川厚(2007):獲得した知識を活用するトレーニング: Situated Intelligence Training」,シ

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参照

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