高等部専攻科 自立活動 学習指導案 1 単元名 自分の聞こえに応じた配慮を理解して伝えよう 2 単元設定の理由 ○単元観 本単元のねらいは、自分の聞こえに応じて必要な配慮を理解し、聴者とのコミュニケーション方 法を理解することである。 厚生労働省『平成 25 年度障害者雇用実態調査結果』によると、転職経験のある聴覚障がい者が 前職の勤め先を離職した理由で最も多い回答は「職場の雰囲気・人間関係(35.6%)」であり、現 在の会社で仕事を続けていく上で改善等が必要な事項として最も多い回答は「コミュニケーショ ンを容易にする手段や支援者の配置(52.5%)」であった。これらの調査結果から、聴覚障がい者 が働く上でコミュニケーションの壁は大きな問題であることが考えられる。 障害者雇用促進法では事業主に対して、障がいをもつ従業員へ合理的配慮の提供を義務付けて いる。事業主は、障がいをもつ従業員が他の従業員と同じ条件で働けるように職場環境の整備を推 進していくとともに、障がいをもつ従業員は事業主に対して合理的配慮の提供を要望していく必 要がある。その際、障がいをもつ従業員は、事業主が合理的配慮の提供の必要性について理解を示 してくれるように伝達方法を工夫し、友好的な態度で交渉に臨むことが大切である。 そのような中、本単元の活動を通して、聴覚障がいのある生徒が自分の聞こえに応じた必要な配 慮を相手に理解してもらえるように伝達方法を工夫する態度を身に付けることは、就業体験など のキャリア教育の学習活動や卒業後の就労の場面で生かせる上でも意義深いと考える。 本単元の活動を行うに当たり、特別支援学校教育要領・学習指導要領解説自立活動編の内容にあ る「1 健康の保持(4) 障害の特性の理解と生活環境に関すること」「2 心理的な安定(3) 障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること」「6 コミュニケーショ ン(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること」を相互に関連付けて指導する。 ○生徒観 専攻科の生徒8名は、専攻科入学前に本科や4年制大学に在籍していた生徒である。 本科に在籍していた生徒は、在学中、自立活動の時間における指導の中で、障がい認識や職場に おけるコミュニケーション方法について学んでいる。また、総合的な学習の時間において、企業等 での就業体験も経験している。就業体験では、受入企業との事前面談において、生徒の合理的配慮 の提供に関する説明は教師が行い、生徒は始めから自分の聞こえに応じた配慮が整った職場環境 の中で体験を行うことが多かった。そのため、生徒自身が自分の聞こえに応じた配慮の必要性を事 業主へ説明することに課題がある。 4年制大学での在籍経験がある生徒は、人間関係を築くことに困難さを抱えており、これまで障 がい認識や職場におけるコミュニケーションについて学んだ経験を、就職活動や実際の職場に生 かし、自分の障がいのことを相手に伝えていくことに課題がある。 ○指導観 本単元の指導のねらいは、二つある。一つは、働く上で自分の聞こえに応じた配慮は何かを理解 すること。二つは、聴者と円滑にコミュニケーションを行う方法を理解することである。指導に当 たっては、生徒一人一人の実態に応じた指導ができるように、専攻科所属の教師と協働しながら活
動を展開していく。 第1次では、これまでの就業体験を振り返りワークシートへ記入する。大学生の経験がある生 徒は、これまでに学んだキャリア教育の体験も振り返る。振り返りの活動では、生徒が将来の職 場において、どのような配慮をしてもらえると働く上での困難さが解消されるのか考え、整理す ることをねらうため、生徒同士や教師と話合い活動を設定する。その際、教師は生徒自身の言葉 でワークシートに記入するよう助言を行う。 第2次では、実際の職場を想定して、聴覚障がいの社員が上司に、自分の聞こえに応じた配慮 を要望するロールプレイを行う。聴者とのコミュニケーションの困難さを知り、聴者との円滑な コミュニケーションを助ける支援者とその役割に気付くことをねらうため、教師が上司役とな り、一対一によるロールプレイを行う。 第3次では、聴覚障がい者の社員が支援者と一緒に、自分の聞こえに応じた配慮が必要である ことを理解してもらえるように話し合うロールプレイを行う。その際、支援者の役割を理解する ことをねらうため、様々な支援者が登場するロールプレイを行う。単元のまとめの段階では、聴 者と円滑なコミュニケーション方法を理解し、本単元の学びを、第1学年の生徒は今後実施され る就業体験において、第2学年の生徒は卒業後の就業先において生かすことを伝える。 3 単元指導目標(到達目標) ○ 職場において、自分の聞こえに応じた配慮について考察し、整理することができる。 ○ 聴者と円滑にコミュニケーションを行う方法を理解することができる。 4 指導計画(単元の指導時間 3 時間) 第1次 自分の聞こえに応じた配慮に気付く 1時間 ○ ワーク1_就業体験の振り返り ・これまでの就業体験で学んだ内容を振り返る。 ・聞こえにくい、聞こえないことで困ったことや会社から配慮してもらって助 かったことなどをワークシートへ記入する。 ・生徒同士や教師と話合い活動を行い、聞こえにくい、聞こえないことで職場 に配慮してほしいことを共有する。 ○ ワーク2_仕事をする上で自分に必要な配慮の考察 ・教師と話合い活動を行いながら、ワークシートへ記入する。 ・整理した内容を発表し、他の生徒と共有する。 第2次 聴者と円滑にコミュニケーションを行う方法を考える 1時間 ○ ロールプレイ1(合理的配慮の提供を伝達する) ・第1次のワークシートを基に、実際の会社の場面を想定して、社員役の生徒 が上司役の教師へ自分の聞こえに応じた配慮を伝える。 ○ ロールプレイ2(合理的配慮の提供が必要な理由を説明する) ・社員役の生徒が上司役の教師に、自分の聞こえに応じた配慮が必要な理由を 説明する。 〇 ワーク3_聴覚障がい者の支援者とその役割について ・上司と円滑なコミュニケーションを行うために必要な支援者とその役割に
ついて考察し、ワークシートに記入する。 第3次 聴者とのコミュニケーション方法を理解する 1時間(本時) ○ ロールプレイ3(合理的配慮の提供の必要性を理解してもらう) ・社員役の生徒が支援者役の教師と一緒に、上司役の教師へ自分の聞こえに応 じた配慮が必要であることを説明し、理解してもらえるように話し合う。 〇 ワーク4_職場の上司との円滑なコミュニケーション方法を理解する。 ・前時と本時のロールプレイを振り返り、聴者との円滑なコミュニケーション の方法を整理し、ワークシートに記入する。 5 本時 (1)本時の指導目標(到達目標) 〇 自分の聞こえに応じた配慮の必要性を理解してもらう職場の上司との話合いの場において、 自分に適した支援者が必要であることに気付く。 生徒 個別の目標 生徒A 生徒C 生徒G 合理的配慮の提供の要望をするときは、ろうあ者相談員など、聴覚障 がいの特性に理解のある支援者が必要なことに気付く。 生徒B 生徒E 生徒F 生徒H 合理的配慮の提供の要望をするときは、手話通訳士など、自分の伝え たい内容を確実に通訳してくれる支援者が必要なことに気付く。 生徒D 合理的配慮の提供の要望をするときは、就労支援員など、障がい者の 就労に詳しい支援者が必要なことに気付く。 (2)本時の手立て 前時のロールプレイと本時のロールプレイと比較して、伝えやすさの違いに気付くように、 ロールプレイ後に自評を述べるとともに、見学している生徒から感想を聞く、振り返りの時間 を設定する。 (3)本時の授業仮説 実際の職場を想定したロールプレイを通して、聴者との円滑なコミュニケーション方法を 理解するであろう。 (4)教材 ○ 教師 ①パソコン ②テレビ ③スライド資料 ④ネームプレート(上司、支援者) ⑤ホワイトボード ○ 生徒 ⑥ワークシート ⑦ネームプレート(社員) ⑧筆談用具 (5) 学習の展開(学習指導過程) 学習内容・活動 教師の支援 指導上の留意点 教 材 時間 配当 学習 形態 評価 導 入 ○ 前時の学習を振り返る。 ・前時のロールプレイを振り返 る。 ○ 本時の内容を理解する。 ・社員が支援者と一緒に、上司 へ自分の聞こえに応じた配 慮を要望するロールプレイを 行う。 ・聴者との円滑なコミュニケーショ ンの方法を理解する。 〇 これまでの学習内 容 を 思 い 出 す よ う に 、 前 時 の ワ ー ク シートを基に発問を する。 〇 本時の学習内容を 電 子 黒 板 に 提 示 す る。 ① ② ③ ⑥ ⑧ 10 集団
展 開 ○ 支援者の役割を理解する。 ・ロールプレイを行う。 「社員が支援者と一緒に職 場の上司へ合理的配慮の提 供を要望する。」 ロール プレイ 社員役 支援者役 上司役 ① 生徒E T2 母親役 T1 ② 生徒F T3 手話通訳者役 ③ 生徒G T4 会社の同僚役 〇 社員役の生徒は、 卒業学年の進路決定 した生徒3名を抽出 する。 〇 見学している生徒 に配役が分かるよう に、社員役と支援者 役、上司役はネーム プレートを付ける。 〇 見学している生徒 に聴者の役が話す内 容を理解できるよう に、T5は手話通訳を する。 ④ ⑤ ⑦ 20 集団 〇 自分の聞こえ に応じた配慮が 職場に必要な理 由を、支援者と 一緒に上司に理 解してもらえる ように説明する ことができる。 ・ロールプレイを振り返る。 (1)自評を述べる。 (2)見学した生徒の感想を聞 く。 ○ 自 評 は 、 前 時 の ロールプレイと比較し て述べるように促す。 〇 感想は、ロールプ レイで良かった点、 参考にしたい点など について述べるよう に促す。 ○ 振り返りの内容を 後でワークシートに 記入するため、T6は 生徒の自評と感想を ホワイトボードに記 入する。 〇 社員役の生徒 は、前時のロー ルプレイと伝え やすさの違いに 気付き、自評を 述べることがで きる。 〇 見学した生徒 は、ロールプレ イで良かった 点、参考にした い点などについ て感想を述べる ことができる。 〇 職場で困ったときに助けて もらえる人たちを知る。 〇 様々な支援者とそ の役割を理解できる ように、支援者の一 覧表を提示しながら 説明する。 〇 職場の上司は、家 族や友人など社員の 身 近 な 支 援 者 の 場 合、企業秘密の漏え いを心配するため、 守秘義務を順守でき る中立的な立場の支 援者が望ましいこと に気付けるよう発問 しながら説明する。 10 集団 ○ 様々な支援者 がいることを知 る こ と が で き る。 〇 職場での支援 者は、守秘義務 を順守できる中 立的な立場の支 援者が望ましい ことを理解する ことができる。 ま と め ○ 単元の学習内容を理解する。 ・ワーク4 (1)ロールプレイの感想を記 入する。 (2) 職 場 の 上 司 と 円 滑 に コ ミュニケー ションをする 方法を考察し、ワークシー トに記入する。 〇 自分の聞こえに応 じた配慮を要望する 際は、自分の要望だ けを伝えるのではな く、要望する内容が 職場で対応が可能な 内容であるかどうか を考えながら話し合 いに臨むことが大切 であることを伝える。 ○ 本単元の内容を、 第 1 学 年 は 就 業 体 験、第2学年は卒業 後の職場で生かすよ うに伝える。 ① ② ③ ⑤ ⑥ ⑧ 10 個別 集団 ○ 職場の上司と 円滑にコミュニ ケーションをす る方法を理解す る こ と が で き る。