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ウォータージェットを用いた難透水層のバイオレメディエーション技術の開発

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Academic year: 2021

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(1)

ウォータージェットを用いた難透水層のバイオレメ

ディエーション技術の開発

著者

上澤 進

64

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

環博第134号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00129713

(2)

うえさわ すすむ

上澤 進

博士(環境科学)

学 位 記 番 号

学 位 授 与 年 月 日

令和

2 年 3 月 25 日

学位授与の根拠法規 学位規則第

4 条第 1 項

研究科,専攻の名称 東北大学大学院環境科学研究科(博士課程)環境科学専攻

学 位 論 文 題 目

ウォータージェットを用いた難透水層の

バイオレメディエーション技術の開発

員 東北大学教授

駒井 武

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授 駒井 武

 客員教授 張 銘

東北大学准教授 渡邉 則昭

(産業技術総合研究所)

論 文 内 容 要 旨

土壌や地下水は人間を含めて生物が生息していくうえでかけがえのないものであるにかかわら ず、大気や河川の汚染に比べて汚染が顕在化しにくく、その修復は比較的配慮されていなかった。 しかしながら、環境への意識の高まりに伴い、日本においても2003 年に土壌汚染対策法として法 制化され様々な規制がなされるようになってきた。土壌汚染対策の対象となる物質は、揮発性有機 化合物(以下 VOCs)、重金属等、農薬等に分類され、VOCs と重金属等で汚染サイト数の 9 割以 上を占めている。本論文の研究対象であるVOCs としては、テトラクロロエチレン(PCE)、トリ クロロエチレン(TCE)などのクロロエチレン類があげられるが、これらの物質は高比重、低粘性 であることから、地下に漏洩した場合、地下水の流れの影響を受け、広く、かつ大深度まで汚染が 到達することとなる。その結果、VOCs は大深度に存在する難透水層に到達し、ここにも浸透する こととなり、汚染対策を講ずるうえで、これを難しくしている。 本論文は、このクロロエチレン類により汚染された難透水層を浄化する融合技術の開発に関して の研究成果をまとめたものである。 開発技術は、バイオレメディエーションに分類されるものであり、地中微生物を活性化させる目 的で水素徐放剤をウォータージェット技術で地中に薄層状に投入するものである。 ウォータージェットを用いた既存の原位置浄化技術としては、噴射撹拌方式での施工方法が開発 され実用化されており、小型施工機で任意の深度のみを浄化できるという特性を有するが、高コス トであり、かつ、浄化剤を液体で噴射し、全対策区域で攪拌・混合するため、切削域が泥濘化する 等の問題がある。

環博第134号

東北大学教授 井上千弘

(3)

この問題を解決するために、本研究ではスリット噴射方式でのウォータージェットを用いた新規 原位置浄化技術を考案し開発した。 噴射攪拌方式とスリット噴射方式の両者の概念図を、図 1 に示す。 新規に提案するスリット噴射方式は、対策地層中で一定の間隔で薄いスリットを切削し、その中 に水素徐放剤などの浄化促進剤を投入するものである。図 2 に示すように、水素徐放剤から放出 される水素分子がスリット面の両側へ拡散し、電子供与体として自然界の嫌気性微生物によるクロ ロエチレン類の脱塩素分解に寄与し、浄化が促進される。この脱塩素分解のメカニズムにより、PCE がTCE に、更にジクロロエチレン(DCE)、クロロエチレン(VC)を経て、無害なエチレン等ま で分解される。 開発技術を構成する理論的根拠が水素の分子拡散をベースにしていることから、これに関する基 礎研究を行い、この結果をもとに、さらに複数の浄化モデルを構築してコスト試算等を行い、新規 施工方式(スリット注入方式)の優位性を確認した。 水素徐放剤 水素拡散範囲 小型施工機 図 1 ウォータージェット方式の比較 図 2 水素拡散状況模式図 水素の分子拡散に関する基礎研究として、水素の分子拡散係数を求めるために新規に装置を開発 し、この装置を用いて水素の分子拡散係数を定量的に求めることができた。開発した装置は透過型 拡散試験方式のものであり、図 3 に示すように容器本体は水素ガスを透過しにくい材質であるア ルミ合金とし、溶接個所も極力減少させたもので、内部からの水素ガス漏洩のないことも確認した。 (a) 撹拌噴射方式 (b) スリット噴射方式

(4)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.25 0.5 0.75 1 距離, x(m) 5E-10 m2/s 1E-10 m2/s 5E-11 m2/s 1E-11 m2/s 5×10-10 m2/s 1×10-10 m2/s 5×10-11 m2/s 1×10-11 m2/s 基準化 した水 素濃度 図 3 水素拡散試験容器の外観 図 4 平面的拡散における水素濃度分布の経時的変化 引き続き、浄化促進剤(水素徐放剤)をどのような方式で地中に投与するのが効率的かを検討し た。平面的拡散(ウォータージェットでの薄層状注入)と中空円筒形拡散(ボーリング孔の充填) および中空球状拡散(ボーリング孔先端充填)をモデルとし、水素の拡散係数を4 ケース( 5×10-10 m2/s, 1×10-10 m2/s, 5×10-11 m2/s, 1×10-11 m2/s )とし、拡散期間を半年、2 年、10 年としてシミュ レーションを行った(図 4 参照)。結果の一例を述べると、拡散期間を 2 年とし水素の拡散係数を 5×10-10 m2/s という比較的高い値とした場合でも、平面的拡散、中空円筒形拡散および中空球状拡 散で拡散距離が、それぞれ0.75 m、0.55 m、0.45 m 程度となり、水素の分子拡散は極めて緩慢な ものであることが明らかになった。さらに、一定規模の汚染範囲を設定し、拡散期間を半年と2 年 とし、浄化促進剤投入方式として先の3 種類の拡散モデルを用いて具体的なコスト試算と比較を行 い、結果として、薄層状に水素徐放剤を地中に噴射する平面的拡散方式が圧倒的に優位であること を明らかにした。 これらの基礎研究の成果をもとに、2 つの実汚染サイトにおいて試験工事を行って浄化効果を確 認して技術の有効性を実証し、加えて施工性向上のため行った手法の有効性を確認した。 薄層離隔を上下方向で0.3m として高濃度と低濃度の 2 汚染現場にて実証実験を行った結果、低 濃度汚染サイト(最大汚染濃度:DCE 0.79mg/L)では 8.5 箇月でほぼ完全に浄化され、高濃度汚 染サイトでは最大濃度75mg/L であった PCE が 2 年間でほぼ環境基準値(0.01mg/L)レベルまで 分解され、ウォータージェットによる浄化促進剤の投入と水素の平面的拡散を併用したバイオレメ ディエーション技術の有効性が実証された 拡散期間2 年 水素の拡散係数

(5)

① 削孔 ② 超高圧水で盤状に地盤切削 ③水素徐放剤(高比重化)注入 ④水素の拡散(浄化) 図 5 ウォータージェットによる浄化促進剤投入工程と浄化のイメージ さらに、施工性向上を目指して実施した以下の手法の有効性を確認できた(図 5 参照)。 ・ 拡径のためにウォータージェットにエアー併用しても嫌気性微生物に悪影響なく浄化可能 ・ スリット造成後に、時間をおいてここに浄化剤を圧入しても端部までの圧入が可能 ・ 浄化剤への加重材添加により地表面へのリーク現象を防止でき、噴射浄化剤全量を投入可能 本研究で開発したバイオレメディエーション技術は浄化効果に加えて、経済性および環境適応性 も高いと考えられる。今後、VOCs による土壌・地下水汚染の浄化技術として広く活用されること を期待する。

(6)

(別紙)

論文審査結果の要旨及びその担当者

論文提出者氏名 上澤 進 論 文 題 目 ウォータージェットを用いた難透水層のバイオレメディエーション技術の開発 論文審査担当者 主査 教 授 駒井 武 教 授 井上 千弘 客員教授 張 銘 准教授 渡邉 則昭 (産業技術総合研究所)

論文審査結果の要旨

本論文は、現位置処理および難透水層に適用可能な土壌・地下水対策における技術的、社会的な課題を解決する 手法として、ウォータージェットを用いて水素徐放剤を地中に薄膜状に投入する方式のバイオレメディエーション 技術を新たに提案し、揮発性有機化合物(VOCs)を対象とした理論的な基礎研究と現場実証試験を通じて、提案す る技術の有効性、経済性および社会的な受容性の検討を総合的に行うものである。 第一章は序論であり、本研究に関わる背景や研究目的について述べた。 第二章では、ウォータージェットを用いた従来型浄化技術について述べるとともに、本研究で採用した新規の薄 膜状に投入する方式ウォータージェットの特長を既存技術との比較で整理した。また、現位置での難透水層を対象 にした浄化手法の有効性や汚染、従来技術にない様々な利点とその問題点について述べた。その上で、本研究で実 施する基礎的な研究、現場での実証試験の必要性を明らかにし、本研究の技術的、社会的な重要性を示した。 第三章では、ウォータージェットを用いたバイオレメディエーション浄化技術に関する基礎的な研究について述 べる。まず、水素の分子拡散係数を求めるための実験装置を開発し、この装置を用いた難透水性の土壌サンプルに おける水素の分子拡散係数を実測した。さらに、測定された水素の分子拡散係数を用いて、各種の土壌や水素徐放 剤の投入方式における水素拡散の時間および到達範囲に関して数値シミュレーションを行った。その結果、平行平 板状、円筒状および中空球状に投入する条件のうち、一定の離隔で水素徐放剤をウォータージェットで切削した薄 膜状スリットに投入する浄化手法の有効性を理論的に明らかにした。 第四章では、前章において明らかとなった各種条件をもとに実際の汚染現場で試験施工を行い、理論的な研究に より実証されたバイオレメディエーション技術の浄化効果および施工性を確認するための実証的な検討を行った。 対象とする汚染現場は、高濃度汚染と低濃度汚染の2 通りとした。高濃度サイトでは、主に高濃度レベルの VOCs の土壌汚染を対象として、開発した技術の有効性を確認するための試験を実施し、自然界の微生物を水素により活 性化してテトラクロロエチレン(PCE)をシス-1,2-ジクロロエチレンまたはクロロエチレン(VC)を経て脱塩素で きることを明らかにした。また、低濃度サイトでは、PCE をエチレンまでに完全に脱塩素できることを実証し、コ ストや施工の条件などの現場データを収集して、本技術の有効性、経済性および環境適応性を明確にすることがで きた。これらの現場試験の結果より、ウォータージェットによる浄化促進剤の投入と水素の平面的拡散を併用した バイオレメディエーション技術の有効性を実証した。 第五章は結論である。各章における研究成果を総括するとともに、本研究の目的に沿った結論について述べた。 本研究は、斬新な概念のバイオレメディエーション技術について理論的、実証的な検討を進め、その有効性につい て新たな方向性と展開を示したものである。本技術の適用性は広範にわたり、世界各国の汚染現場における今後の 有力な浄化技術として確立する可能性がある。さらに、提案するバイオレメディエーション技術は浄化効果のみな らず、経済性および環境適応性も高く、その学術の進展による環境科学への貢献も大きいと考えられる。 よって、本論文は博士(環境科学)の学位論文として合格と認める。

参照

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