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胸壁原発Askin腫瘍の一治験例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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胸壁原発Askin腫瘍の一治験例

山梨医科大学第2外科 西尾徹 吉井新平 三宅知雄 橋本良一 松川哲之助 上野明 同第2病理 加藤良平 飯田洋司 はじめに  Askin腫瘍は1979年にAskinら1)により 報告された。思春期までに発症する胸壁、 肺末梢を主な原発巣とする、小型の円形細 胞よりなる悪性度の高い腫瘍である。我々 は、14歳男性の左胸壁に発生したAskin腫 瘍の手術例を経験したので報告する。本腫 瘍は本邦では十数例の報告がみられるのみ の、非常にまれな症例である。 症 例 症 例:H.K.14歳男性 主 訴:左肩癒痛 既往歴:特記事項なし 家族歴:特記事項なし 現病歴:平成2年9月下旬より,左肩の終痛 が出現した。同年10月上旬に近医を受診し, 胸部レントゲン撮影,CTにより左胸壁腫瘍 の診断を得た。11月8日に当科へ紹介され 入院した。 入院時現症:身長170cm,体重54kg,血圧 116/68mmHg,脈拍78/分,体温36.5℃, 貧血,黄疸,チアノーゼは認めず。左胸壁か ら背部に腫瘤は触知せず,両側頚部,耳介後 部,鎖骨上窩,腋窩のリンパ節も触知しなか った。心音,呼吸音には異常を認めなかっ た。肝脾腫もなかった。 入院時検査所見:血算値には異常を認めな かった。生化学的には,ALP3561U/1, LDH5721U/1と上昇を示す他には異常値 図一1 図一2 一1

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を認めなかった。腫瘍マーカーはNSE値が 10.32ng/mlと軽度上昇している他には異 常値は認めなかった。  入院時の胸部X線写真(図一1)では左の 上側方胸壁より,左胸腔内へ突出する,9× 5.5cmの辺縁が平滑な陰影がみられた。左 の第2,第3肋骨間は開大しているが,骨破壊 像は示していなかった。  術前のCT(図一2)では,左後側方胸壁よ り,胸腔内へ突出する腫瘤影を認めた。又上 方では胸壁より外へ腫瘤の一部が,突出して いた。左鎖骨下動静脈への浸潤はみられな かった。  TI強調,矢状断,冠状断のMRI(図一3)で は,CTと同様に左胸壁より胸腔内へ突出す る辺縁平滑な腫瘤影を認めた。内部は二相 性を呈しており,腫瘤内に多数の拡張した血 管を認めた。以上より胸壁原発の腫瘍と考 え悪性の可能性が高いため,手術適応とし た。 手術所見:体位は右側臥位とし,第5肋骨上 縁にて開胸した。第2,第3肋間は開大して おり,やわらかな腫瘤が,壁側胸膜をかぶっ て胸郭内へはり出していた。第1,2,3,4肋 骨を腫瘍縁より3cm離して切離し,腫瘍と共 に摘出した。肺,鎖骨下動静脈には浸潤はな かった。欠損部は13×13cmになっており, 胸壁再建しない場合,肩甲骨が胸郭内へおち こんでしまうため,マーレックスメッシュ= レヂンサンドイッチ法にて再建した。 病理組織学的所見:切除標本の割面(図一4) では大きさは6.5×5.5cmであった。表面 (図の上方)は壁側胸膜でおおわれており, 内部は二相となっていた。壁側は充実性で, 一部に出血している部分があり,胸膜側は多 房性ののう胞を形成していた。切除標本の 弱拡大像(図一5)では,血管の周囲に核が 大小不同な小型の細胞がび慢性に増殖して

いるのがみられた。又,perivascular

pseudo rosetteの形成もみられた。又同標 図一3 図一4 図一5 一2一

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本の強拡大像(図一6)では,Homer−Wright pseudo rosetteの形成もみられた。 免疫染色では,neuron specific enolase染 色(NSE染色)(図一7)では胞体が強く染 色され,陽性と判定した。同時に行ったPAS 染色は陰性,Myoglobin陰性, S−100陰性, PTAH疑陽性であった。 術後経過:術直後は低分化型の滑膜肉腫が 最も強く疑われたため,Doxorubicin, DTIC, VCR, CPAによるCYVADIC療法を 開始したが,最終診断がAskin腫瘍となった ため,以後のクールは中止した。現在は,フ ルッロン及び,家人の希望により丸山ワクチ ンの投与を行っている。術後10ヶ月たった 平成3年8月のCT(図一8)では胸腺の腫脹 があるものの,再発はみられていない。又, 術後のNSE値も,平成3年10月29日で,7. 6ng/m1と正常値であり,術後13ヶ月たっ た現在も再発の徴候なく,健在である。 考 案  Askin腫瘍は,1979年Askinらt)により 発表された,小児期から思春期にかけて胸壁 または肺末梢より発生する,悪性の小細胞に

よる腫瘍である。Askinはこれを

“Malignant small cell tumor of the thoracopulmonary region in childhood” と定義し,20例についてretrospectiveに調 査したところ,平均年齢は14.5歳で,75% が女性であり,遠隔転移は少ないものの,局 所再発が多く,平均生存期間は8ヶ月であっ た。  しかし他の報告では平均生存期間は12ヶ 月から18ヶ月,最長生存は96ヶ月2)という ものもあった。  病理学的所見では光学顕微鏡的には,腫瘍 細胞が,小円形,裸核状で一様であり,び慢 性に増殖する時にHomer−Wright型の花冠 形成を認めるのが特徴の一つである。又 図一6 図一7 図一8 一3一

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間質には血管か結合組織の増殖を認める3)。 電子顕微鏡では,腫瘍細胞は明るく細胞内小 期間は少ないものの,polysomeの発達がみ られる。又細胞突起も発達しており,その中 に有芯性の小型神経分泌穎粒を認める時が ある3)。免疫的染色においてはNSE陽性, Desmin陰性, Myoglobin陰性, LCA陰性。 PASは陽性であるが一部では陰性のものも 報告されている。又最近,染色体分析では 11番と22番の染色体に転座一t(11;22) (q24;q12)が認められるとの報告がある4)。  本症例では,光学顕微鏡の細胞特徴,又 NSEが陽性に染色されたことよりAskin腫 瘍と判定した。現在術後13ヶ月を経過した が,再発の徴候なく経過している。Askin腫 瘍は症例数が本邦で十数例と少なく,そのた めか術後の治療においても,化学療法,放射 線療法とも確定した方法はない。本症例に おいても,今後とも厳重なfollow−upが必要 と思われた。 文献 1)Askin FB, Rosai J, Sibley RK, Dehner LP.  McAlister WH. Malignant small cell tumor  of the thoracopulmonary region in childhood  :Adistinctive c!inicopathologic entity of  uncertain histogenesis. Cancer.1979;43:2438  −2451 2)Parikh PM, Charak.B.S. et a1. Treatment of  Askin Rosai tumor−need for a more aggressive  approach. J. Surg. Oncol Vol 39, No.2:126  −8,1988 3)泰 順一:Askin腫瘍の1例:小児がん1988 No.  24:439−440 4)木下恵司他:染色体異常t(12,16)のみられたAskin  tumorの1男児例:小児がん1990 Vo1.27, No.  1:387−388 一4一

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