献
辞
碩学泰斗の人,私たちの越後和典先生は1992年3月末日をもって本学を定年 退官されることになりました。 先生は1927年,当滋賀県のお生まれで,京都大学経済学部をご卒業後,同大学 院労研生,関西大学教授を経て,本学教授に迎えられたのが1972年,あの大学 紛争の余早いまだ消えやらぬ頃のことでありました。その嵐は当時どの大学に あっても人々をその渦中に巻き込んだものです。しかしそれも越後先生の研究 活動と論文執筆の勢いを止めることはできませんでした。巻末に掲げた先生の 業績目録がそれを証明しています。紛争の渦中にあって論文発表のペースはい ささかも乱されておらず,私たちが先生のことを「泰山北斗」と呼ぶ所以です。 ざっと数えただけで著書6,論文130余,その他辞典,事典,書評,経済展望な ど無数といっていいほどです。 先生のご専門は経済政策論でありますが,とくに産業組織論および産業政策 論の先進的研究は学界の極めて高い評価を得ております。経済学博士の学位を 授与された『反独占政策論一アメリカの反トラスト政策一』に引き続いて発表 された一連の著作がそれですが,さらに,『競争と独占一産業組織論批判一』(1985 年)に代表される新オーストリア学派の経済思想の研究もこの分野での第一級 の業績として学界の高い評価を受けております。 先生は研究の組織者として,たとえば産業学会会長,日本経済政策学会副会 長,常務理事,幹事等を務められるなど,わが国の学界と学問水準の向上,研 究のプロモーターとしても今なおご活躍中であります。 学界活動のほか,先生はその広い視野と学識により中央と地方をとわず各種 委員に就任を要請されて,産業構造審議会(通産省),滋賀県地方労働委員会公益委員,彦根市総合発展計画審議会委員等々数えきれないほどの委員や会長を歴 任され,世に言う社会に役立つ学者としても大いに貢献されました。 学内においては,経済学部長,大学院研究科長,附属図書館長,評議員等の 要職を歴任して,多くの困難な諸問題に取り組み,管理運営上の重責を果たさ れました。 先生が今,定年とはいえご退官されることは,経済学部にとっても経済学会 会員一同にとっても,まことに残念ではありますが,先生はもう滋賀大の,と いつより日本の越後教授になっておられます。そのような先生を本学からお送 りできることに,私たち後進は誇らしさを感じています。滋賀大学経済学会は ここに,先生のこ退官を記念して,学内外にわたる研究者25名の寄稿労作を論 文集として,深い感謝の意と仰ぎ見る想いを込めて,先生に捧げます。 幸いにして先生は同じ滋賀県にお住いです。ご退官後は健康にいっそう留意 され,ひきつづき導きの先達として,私たちをご指導くださいますようお願い 申し上げます。 1991年11月 滋賀大学経済学会長 美 崎 皓