高齢社会の現状と展望
一家族の変容と人口構造の変化からみてー
教科・領域教育専攻
社会系コース
吉 本 有 希
第I章 序 論
「家族J についての研究は多種多様に行われ
ており、論者によって「家族Jに対するイメー
ジは一様に変化している。共通していることは、
現代において家族は家族成員それぞ、れの生活パ
ターンを持ち、家族困撲といわれる時間を共有
することは少なくなっているということである白
すなわち家族聞の粋は薄れてきているのであるロ
家族とはその存在過程において様々な問題に直
面し、それを乗り越えていくことで家族として
の粋を深めていくと考えられる。現代の家族が
直面する問題の主要なものとしてあげられるの
が高齢者問題である。家族と高齢者との関係は
どう変化していくのか、また家族としての粋が
薄れた現代の家族に高齢者問題を乗り越えるこ
とはできるのだろうか。政府各省庁によって行
わ れ た 世 論 調 査 や 実 態 調 査 を も と に 意 識 の 変
化・関係の変化をみることで、将来的にどのよ
うに変容していくか考察することを本論文の目
的とする。
第E章 家 族 の 変 化
かつて家族は「家」制度のもとで、家の存続
という大きな役割を担っていたロ家の存続を遂
行するために、家族は形成されていたと考えら
れる。しかし、戦後の新民法の制定により、明
確であった家制度の崩壊と共に家族の役割は変
化をしてきた。家族の役割の変化は古くからあ
った社会規範・慣習の薄れとあいまって、家族
指 導 教 員 山 本 準
に関わる様々な局面、結婚・離婚・出生の実態
の変化をもたらした。
また家族内関係においても「夫は仕事、妻は
家 庭Jに代表されるような伝統的な役割意識が
存在していた。世論調査からは役割意識の薄れ
てがうかがえるが、実態からは依然として役割
は存在しているといえるロ成員の関心は家族を
中心とするものではなく、家族を基盤として、
外に広がっていることは明らかである。
急激に変わりつつある家族を明らかにしたこ
とで、家族とは個人それぞれのライフスタイノレ
の中で選択的に結ぼれたネットワークに過ぎな
いとしづ現状が浮かび上がってきた。
第
E
章 人 口 構 造 の 変 化
戦後
1
9
6
0
(昭和
3
5
)
年にかけての出生数の
落ち込みを、第一の人口転換と呼び、
1
9
7
5
(昭
和
5
0
)
年から始まった出生数の低下は第二の人
口転換と呼ぶ。出生数の減少は現代においても
続いている。少子化という言葉で表されるが、
合計特殊出生率は減少を続け、人口再生産に必
要であるとされる約 2.08を維持することがで
きず、 2003(平成
1
5
)
年には遂に1.29に達し
た白多産多死から少産少死へと変化し、子ども
をたくさん生む必要がなくなったことや、第E
章でも述べた、家制度の崩壊によって子どもを
持つことの絶対的な拘束が存在しなくなった。
ゆえに子どもを持っかどうかは個人のライフス
タイルの一環として位置づけられることとなっ
n
J
L
M
円
i
円
べ
U
た結果、少子化は進展してきたのである口
高齢化率が 7%を超えた状態を f高齢化社会J、
14%
を超えた状態を f高齢社会J というが、わ
が国ではわずか 24年の聞にこの変化が起こっ
た。世界でも類を見ない早さで、あった。高齢化
により、高齢者が増加することは社会に対して
扶養・介護という問題を突きつけることとなる。
わが国では少子化と高齢化が同時に進行してき
ていることから、十年後には四人に一人が高齢
者という社会がやってくると予測されている白
従来の社会保障制度では高齢者を支えることが
出来なくなると考えられる。
第W章 高 齢 者 問 題
高齢者福祉は高齢化の進展と高齢社問題の表
出に遅れる形で、進展してきた。身体的介護が
主な介護プランのモデルとして考えられていた
が、近年では認知症と呼ばれる障害に対応する
介護プランの作成が急務となってきているロ
高齢者の増加は将来的にも続き 2040(平成
52)年に減少に転じるまで増加し続けると予測
されているロ高齢者の増加に伴い、介護を必要
とする高齢者の数も増加することが予測されるo
もはや介護に対応する政策をとることよりも、
介護を必要としない高齢者の実現を目指す政策
をとることが、必要不可欠となっている。
平均寿命が延びている現状では、ほぼ例外な
く高齢となることを意味する。高齢となってか
らの人生をどう生きていくか、計画を持って、
健康で活力ある高齢者となれるように予防して
いくことは、高齢者に限らず、若い世代でも必
要であると考える。予防政策を進める上では、
高齢者にとって家族の存在は大きな役割をしめ
ると予測される。高齢者の変化を家族が早期に
察知し改善策を講じていくことが介護予防の最
善策であると考える。家族が単独世帯の増加や
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「夫婦のみ
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片親と子
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と家族の形態が多様
化している今、家族に高齢者を支えるほどの力
があるとはいえないD 家族と高齢者、そして住
んでいる地域すべてが、連携しあい高齢者問題
に取り組む体制が望まれる。
第V章 結 論
家族において存在する伝統的な役割意識に基
づく役割分業を基本にしてわが国の高齢者福祉
政策が行われてきた。介護に代表される高齢者
問題は個々の家庭の問題として捉え、積極的に
は支援を行わないという性格をおびていた。介
護者(家族内の主に妻や嫁)は介護を無償労働
として引き受けていた。その負担ははかりしれ
ず大きかった。そこで、高齢者問題を社会全体
の問題として、対応していく制度がとられるよ
うになった。
しかし、社会全体が不況に低迷し、拡大再生
産が可能ではないことから、役割分業は不可能
となり、さらに労働人口の減少により、社会保
障や税の負担は重くなる一方である。家族世帯
の担い手である男性の雇用賃金が不安定であり、
従来介護者で、あった主婦も働かなければならな
い状況になっているのである。高齢化が急激に
進み、四人に一人が高齢者になるであろう社会
の到来を前にして、介護など高齢者をめぐる問
題は既存の年金制度・介護保険制度に代表され
る制度では対応しきれず、社会全体をもってし
でも支えることが難しくなってきている。そこ
で、再度家族の必要性が考えられるのだが、家
族単独世帯が増加するなどにより、高齢者を支
えるだけの要素を備えにくい状況に陥りつつあ
るD既存の家族形態をモデノレとする政策を改め、
家族の多様性に合致する家族形態における高齢
者支援プランの作成が必要不可欠であると考え
る。