50 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(12) イ トウ コウ イチ伊藤公一(昭和33
博士(医学) 甲第203号平成4年2月21日
学位規則第4条第1項該当(医学研究科専攻,博士課程終了者)
ヒト甲状腺乳頭癌の分子生物学的解析 (主査)教授 浜野 恭一 (副査)教授 出村 博,内山 竹彦論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年の分子生物学的研究手法の発達により,様々な 腫瘍におけ’る遺伝子レベルでの変化が明らかにされて きた.甲状腺腫瘍においても,ここ数年の間に癌遺伝 子,癌抑制遺伝子の関与についてのいくつかの報告が なされてぎたが,まだ腫瘍発生過程や悪性度との関係 が十分に明らかになってはいない.本研究では甲状腺 乳頭癌症例を対象にサザン・ハイブリダイゼーション 法を施行し,癌化を起こす遺伝的異常の検索を行った. 対象および方法 甲状腺乳頭癌症例(主に腫瘍径の大きな症例)を対 象に,60例の手術摘出標本より腫瘍部と正常甲状腺部. から高分子DNAを抽出,サザン・ハイブリダイゼー ション法を行い,RFLP(restriction fragment length polymorphism)解析を用いて,特異的染色体領域での 染色体欠失(loss of heterozygosity, LOH)の検出か ら,臨床病理学的な諸因子との関連性についての検討 を加えた.さらに受容体型チロシン・キナーゼ群の遺 伝子(名紘’漉遺伝子),c一〃z夕6遺伝子, c-6乃B-2遺伝子, EGF受容体遺伝子などの既知癌遺伝子の活性化も調 べた. 結果 1,3,10,13,17番染色体上のRFLPマーカーを 利用したハイブリダイゼーションでは17番染色体短腕上のマーカー,MYH2において25血中1例でLOHが
検出された.癌遺伝子での検討は腫瘍部のみを対象に ハイブリダイゼーションを行ったが,いずれにおいて も遺伝子の再構成,増幅などのDNAレベルの変化は 認めなかった.c・初y6遺伝子に関しては,良性腫瘤,バ セドウ病組織についても検討を加えたが,異常は認め なかった. 考察および結論 今回の甲状腺乳頭癌におけるLOH検出は,まず既 に他臓器の癌で高頻度の欠失が報告された染色体上の 受一カーを主に選択して施行した.結果としては,17 番染色体洋学のMYH2において1例で明確iに欠失を 認めた以外は全て陰性であった.欠失を認めた症例(35 歳・女性)は多発性腫瘤,前頸筋浸潤,所属リンパ節 転移が認められた進行例(t4nl)ではあったが,欠失を 認めなかった例の中にも,それ以上の進行症例が含まれており,MYH2たおけるLOHと臨床病理学的な諸
因子との関連性は特に見出されなかった.代表的な癌 関連遺伝子を用いたサザン・ハイブリダイゼーション についても同様に,明確なDNA診断の指標は見つか らなかった.しかし,生物学的悪性度が低いとは言え, 甲状腺乳頭癌にも必ず細胞の癌化に関与する細胞内物 質や遺伝子があるはずである.今回の検討で,甲状腺 乳頭癌には他臓器の癌とは異なった遺伝子変化が存在 する可能性が強く示唆された. 一654一51