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冠動脈バイパス術前後におげる凝血能の検討 : 血小板容積を中心として

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Academic year: 2021

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(1)

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(fE2 N- BBXU62iF 8 E 14 H )

Platelet Volume and Blood Coagulation Parameters during Early Postoperative Period in Patients who Underwent

Coronary Artery Bypass Surgery

Yoshio UETSUKA

Department of Cardiology (Director: ProL Koshichiro HIROSAWA)

Tokyo Women's Medical College

To evaluate postoperative changes in blood platelet count, mean platelet volume (MPV), and other parameters concerning blood coagulation, we studied 15 patients who underwent coronary artery bypass grafting (CABG). Parameters measured were platelet count (Plt), MPV, and levels

of 6-thromboglobulin (6-TG), fibrinogen (Fbg), antithrombin III (AT III),・and plasminogen (Plg).

Measurements were repeated on the preoperative day, immediately after the operation, and then

1, 2, and 4 days, and 1, 2, 3, and 4 weeks after the operation. Plt and MPV were determined using

a Coulter Counter ZBI and a Channelyzer C-1000, 6-TG level was determined by RIA, and Fbg,

AT III and Plg levels, by the single radial immunodiffusion method. The results of measurements were seen in the following table.

postop preop Od ld 2d 4d lw 2w 3w 4w Plt(×104/xtl)25.0 11.8 9.3 8,3 11.8 25.5 46.7 38.9 28.7

MPV(ptm3)8.82

8,04 8.59 9,06 9.44 8.29 7.76 7,90 8,21

P-TG(ng/ml)32.7

121.6 45.0 36,O 40.1 51,7 59.7 49.8 46.8

Fbg(mg/ml)369

308 446 581 610 692 650 547 546

ATIII(mg/dl)26.3

22.5 23.0 25,O 26.1 27,4 26.4 26.2 25.7

Plg(mg/dl)10.7

8.9 7.2 7,7 10.4 11,6 10.8 10.9 10.6

It was interpreted that blood platelets were mainly consumed and destroyed during extracor-poreal circulation, because Plt count decreased and P-TG levels increased markedly immediately

after the operation. MPV decreased significantly following operation, probably due to the

consumption of large sized platelets. The increase in MPV during the first postoperative week suggested that large and young platelets were produced in this period. The dramatic increase in Plt count, the increase in 6-TG and Fbg level, and the decrease in Plg level after the operation

reflect that the patients may be exposed to increased risk of the thrombotic occlusion of

saphenous vein grafts.

(2)

緒 言 血栓の形成には三つの要因が関係しているとい おれており,それは,いわゆるVirchowのtrias として知られている.その第一は血管羨め変化, 第二は血流の変化,第三は血液性状の変化である. 心臓手術は体外循環を用いる場合が多く,体外 循環の前後では血液成分の一種である血小板の数 が大きく変動することが知られている1)∼3>.その 原因としては,体外循環回路に用いられている人 工材料の表面に患者の血小板が粘着,凝集するこ と4),肝臓,脾臓などの血小板プールに血小板がと りこまれ,体内における血小板分布に変化が生じ ること5)などが考えられている. 一方,冠動脈パイパスグラフトに用いられた大 伏在静脈の閉塞は術後比較的早期に生じることが 多い6)とされており,血小板数の著しい増減も,そ れと密接な関係がある可能性がある. 本研究では,冠動脈バイパス患者を対象として 手術前後の血小板数,血小板容積,血小板放出反 応によって生じるβ・thromboglobulin(β一TG)の 測定を中心に凝血学的検討を加え,その結果につ いて考察を加えてみたところ若干の知見を得たの で報告する. 対象および方法 1985年6月から1986年6月の間に東京女子医科 大学附属日本心臓血圧研究所において手術を行 なった,冠動脈・ミイパス手術(coronary artery bypass grafting:CABG)の15例で,年齢は39歳 ∼71歳(平均56.9歳)であった(表1).性別は男 性14例,女性1例で基礎心疾患としては陳旧性心 筋梗塞が8例,狭心症が7例であった.バイパス グラフトの種類は大伏在静脈使用11例,内胸動脈 使用3例,大伏在静脈+内胸動脈が1例であり, 1例あたりの平均・ミイパス数は1.67本であった. 手術は高カリウム心筋保護液による心停止下に行

ない,ice slushによるtopical coolingも併用し

た.体外循環の充填液としてはCPD(クエン酸ナ トリウム燐酸デキストロース)加新鮮血液とハル トマソ液を主体に希釈率は25%になるようにし た.体外循環液中には抗血小板薬の投与は行なわ ず,抗凝血薬としてヘパリンを人工心肺充填轟音 に5,000単位,経静脈的に200単位/kgの割で投与 表1 対象のプロフィール 症例 性別 年齢 診 断 名 術 式 グラフト

フ種類

手術時間 体外循環 ? 間 人工肺型番 人工肺型式 1 男 50 陳旧性心筋梗塞 CABG(2本) 大伏在静脈 440分 ユ78分

WH1700

気泡型 2 61 陳旧性心筋梗塞 CABG(2本) 大伏在静脈 387分 132分

WH1700

気泡型 3 男 53 狭心症 CABG(1本) 内胸動脈 510分 148分 WH 1700 気泡型 4 男 58 陳旧性心筋梗塞 CABG(1本) 大伏在静脈 330分 78分 WH 1700 気泡型 5 男 61 狭心症 CABG(2本) 大伏在静脈 505分 172分 WH 1700 気泡型 6 男 48 陳旧識心筋梗塞 CABG(1本) カ室瘤切除術 大伏在静脈 291分 124分 LPM 50 膜 型 7 男 、61 狭心症 CABG(2本) 内胸動脈 蝠嚶ン静脈 365分 117分 WH 1700 気泡型 8 男 67 狭心症 CABG(1本) 大伏在静脈 230分 90分 WH 1700 気泡型 9 男 40 陳伴性心筋梗塞 CABG(1本) 内胸動脈 295分 80分 WH 1700 気泡型 10 男 53 陳旧性心筋梗塞 CABG(2本) 大伏在静脈 325分 116分 LPM 50 膜 型 11 男 71 陳旧性心筋梗塞 CABG(2本) 大伏在静脈 475分 142分 LPM 50 膜 型 12 男 65 狭心症 CABG(2本) 大伏在静脈 295分 128分 WH 1700 気泡型 13 男 61 狭心症 CABG(1本) 内胸動脈 285分 99分 WH 1700 気泡型 14 男 39 狭心症 CABG(3本) 大伏在静脈 720分 180分 WH 1700 気泡型 15 男 65 陳旧性心筋梗塞 CABG(2本) 大伏在静脈 320分 203分 WH 1700 気泡型 一1502一

(3)

し,体外循環中のactivated clotting time(ACT) をHemocron⑪にて測定し,常時400s㏄以上に保 つようにした.体外循環終了後血圧が安定したと ころで中和量の2∼3倍の硫酸プロタミンの投与 を行なった. 使用人工肺は15例中12例はHarvey社製気泡型 肺のWH 1700を,残りの3例ではTravenol社製 膜型肺のLPM 50を用いた.平均体外循環時間は, 132分(78分∼203分)であった.なお,全症例に おいて手術翌日からワーファリンの経口投与を行 ない,抗凝血薬法のコントロールの目安はトロソ ボテスト(TT)で10∼25%とした. TTのコント ロールが至適領域にはいるまでの最初の1週間に おいてはウロキナーゼ平均9万6千単位/日の点 滴静注を行なった.測定項目は血小板数,血小板 容積,β・TG,フィブリノゲン(Fbg),アンチトロ ンビンHI(AT III),プラスミノゲン(Plg)を測 定した.血小板数と血小板容積は次のようにして 測定を行なった. まず,EDTA 2Kの採血容器に患者の静脈血2cc を採取,検体を40分間静置することによって多血 小板血漿(PRP)を得た.そのPRPを3,000倍に

希釈し,Coulter thrombocounter(Counter Elec一

tronic社製)を用いて血小板数を測定し, Coulter

Counter ZBI型(Coulter Electromic社製)を用 いて血小板容積を測定し,Coulter Channelyzer

C・1000を用いてその粒度分布を分析した(図1).

Coulter CounterおよびCoulter Channelyzerの

設定条件は次の通りである.aperture tube:70μ,

amplification(A):1/2, aperture current(1):

1/4,stop at full scale 1Kまたは4Kとした,計 算はV=K.A.1.T.の式(ただしK:constant, T:

図1 血小板数の測定と血小板容積測定に用いた Coulter Counter ZBI(右)とChannelyzer C・1000

(左) Platebt x104/μ1

60

50 40 30 20 10 0

焦一一一

!! 、、、、

1

双1/翼

ノノ ’ ノ ! ’ ! , ノ ’ P18telet ノ ノノ ノノ” T / !

β一TG コロ

\」

N=L4 n9/㎡ 200 β一TG 150 100 50 0 Before op op ld 2d 4d Iw 2w 3w 4w

(D8ys 8fter OP)

図2 冠動脈バイパス術後の血小板数とβ・トロンボグロブリン(β・TG)の経時的な変 化

(4)

read out)によった.容積既知のLatex粒子を測 定することにより,上記条件下のconstant(K) を算出,K=1.328とな:つた,実際の測定に際して は,前述のZBIおよびCoulter Channelyzerに interfaceを用いてパーソナルコンピューター PC9800(NEC社製)と接続し,血小板容積を平均 値(mean),中央値(median),最頻値(mode) の3種類に関して計測を行なった.

β・TGはAmersham三密のβ一TG RIAキッ

ト,Fbg, AT III, Plgは一元免疫拡散法にて測定 した.また,採血の時期は術前,術直後,術後1

日,2日,4日,1週,2週,3週,4週目の合

計9回とした. 結 果 1.血小板数 血小板数(×104/μ1)の術前値(mean±SD)は 25.0±7.5であったが,全症例にて手術2日後に最 低値をとり,8.3±4.4となった。その後の2週間 で1血小板数は著しく増加し,2週間目のピーク値 で46.7±13.7に達した.その後ゆるやかに下降を 示した(図2). 2.血小板容積 血小板容積の平均値(mean),中央値(median), 最頻値(mode)は,いずれも手術直後に最低とな り,手術4日後に最高となり,2週間後の血小板 数が増加する時期に一致して若干の減少をみた (図3).血小板容積の平均値,すな:わち平均血小 板容積(mean platelet volume:MPV,μm3)は,

mean±SDで術前8.82±0.89であったものが,術 直後には8.04±0.90に減少し,4日後には,9.44± L17にまで増加,2週間後には7.76±1.17にまで 有意に減少を示した(図3,4). 3.β・トロンボグロブリン(β一TG) β一TG(ng/ml)は,術直後に著明に増加し,そ ∼甲’ 10 9 8 7 6 5 4 N=15

矯二1二二¥二瀬鶉

Before op op ld 2d 4d lw 2w 3w 4w

{Days after Opl

図3 血小板容積(Platelet volume)を平均血小板容 積(MPV),中央値(median),最頻値(mode)でみ たもの Platelet XlO4/μ1 60 N=15 50 40 30 20 10 0 MPV[

騨1

MPV

卜一/

、 , / ト /イ

h

Platelet CDunt ! ! ! ! Pく0.G5

/\\

MPV μmヨ 12 11 10 9 8 7 6 Before op o d望ld 4d lw 2w 3w 4w

(Days after Op)

図4 冠動脈バイパス術後の血小板数と平均血小板容積(MPV)の経時的変化

0

(5)

の後急速に正常域にまで低下を示すが,2週間後 の血小板数が最大に達する時期に一致して若干の 増加を示した.具体的には術前(mean±SD)の 32.7±17.6から術直後には121.6±61.2と明らか な増加を示しているが(p<0.001),手術翌日には 45.0±26.7に戻っている.しかし2週間後の時点 で59.7±33.7とまだ術前に比較して統計学的に有 意に高値であった(p〈0.05)(図2). 4.フィブリノゲン(Fbg) Fbg値(mg/d1)は術前に比し術直後有意に減少 が認められその後著増を示し,この増加は術後1 ヵ月の時点でなお持続が認められた(図5).

mean±SDで術前の368.9±942から術直後は

308.0±80.0,2週間後,4週間後ではそれぞれ ATm mB細 30 20 10 0 N=15 トー一一一一一一一一一一NS一一一一一一一一一ヨ

Pく0・001一一{

織レL

Fb9 Pく0,005

臣一一H

」.__L∼⊥

P<0、001一一一一一一一一一一一! Fb9 1000 酊9如 800 600 400 200 0 Before op op ld 2d 4d lw 2w 3w 4w

(Days after Op)

’ 図5 フィブリノゲン(Fbg)とアンチト台ンビンIII(AT III)の経時的変化 AT皿 m巳〆肥 30 20 10 0

NS一

N=15 一一i Plasminogen

NS一一一一一一一一H

Plasmir}09en mg畑 20 15 !0 5 Before op op ld 2d 4d lw 2w 3w 4w

(Days after OP)

(6)

649.7±71.3と546.4±88.0であった. 5.アンチトロンビンIII(AT III) AT III(mg/dl)はPlgと同様に術直後には術 前に比し有意に低下し,術前mean±SDで26.3± 43であったものが,術直後には22.5±2.8まで低下 し,4日後には26。1±4.3にまで回復した(図5). 6.プラスミノゲン(Plg) % 100 50 0 じ む り ロビ

A・;ECC≧132 min(N=7) B;ECC〈132 min(N=8) Plg(卑g/dl)は術前に比し術直後有意に低下し, 4日後にほぼ下値に戻った.mean±SDで術前の 10.7士1,6から術直後の8.9±1.4へ低下し,4日後 には10。4±1.3となった(図6). 7.体外循環時間の長短による血少板数減少度 の比較(図7) 全症例の平均体外循環時間である132分以上の

群をA群,それ未満の群をB群とした.A群7例

とB群8例との間に年齢,バイパス本数,人工肺 ←NS一レ ←NS一レ申NSゆ

AB A B A B afterop

Post oP lday 2day

図7 体外循環時間の長短による血小板減少度の比較 A群:体外循環時間132分以上,B群:132分未満. 両群間に統計学的有意差はみられなかった.術前の 血小板数を100%とした.ECC:体外循環時間, NS:有意差なし。 % 100 50 o むロリ ビ

Group A=MO(N躍3) Group B=BO(N=12)

出+壬

寺一NS→ 脅一NS一ウ r−NS一ゆ

ABABABafteroP

Post oP lday 2day

図8 人工肺の種類による血小板減少度の比較 A群:MO=膜型肺, B群:BO=気泡型肺 術前の血小板数を100%とした Fbg 600 mg/dE 400 200 AT田 30 mg/d£ 。丁 MPV 10 μm3 9 8 7 6 20 10 β一TG ,00 ng/m旦 80 60 40

」1

Plg 盲5 mg/d£ 10 5 0 Plt 50 1ぴ/μな 40 30 20 10 0 ロ\ 口 ▲ 口『口 ▲!

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△ ■ 隔 Fbg ロ ム ロ

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▲/ Plg MPV △

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\、

日\.

Before op op ld 2d 4d lw 2w 3w 4w 図9 代表的な冠動脈バイパスの1症例における凝血学的パラメータの経時的変化 Fbg:フィブリノゲソ, AT III:アンチトロンビンIII, Plg:プラスミノゲソ, MPV: 平均血小板容積,Plt:血小板数,β・TG:βトロンボグロブリン 1506一

(7)

型式に統計学的な有意差を認めなかった.結果は, 術前の血小板数を100%とし,術後どれほど血小板 数が減少したかを血小板減少率でみた場合,A群 では術直後47.5±24.0%,1日後は37.2±17.6%, 2日後には31.0±16.9まで減少.一方B群では術 直後51.1±7.8%,1日後39.4±8.7%,2日後 34.7±9.5%であり,いずれも平均値においては A群の方が減少の程度が強かったがその差は有 意ではなかった. 8.膜型肺と気泡型肺による血小板減少率の比 較(図8) 今回は膜型肺が3例にすぎなかったが,気泡型 肺12例との間の血小板減少率の比較を行なった. 平均値では気泡型肺の方が,血小板の減少率が大 ぎかったが,両者の間に統計学的な有意差はみら れなかった. 最後に代表的な症例(図9)を1例呈示し,前 述のパラメータをすべて一つの図中にplotして みた.術直後から血小板数は著明に減少し,2日 後に最低値を示した.MPVは術直後に最低とな り,4日後に最大に達した.β一TGは術直後に最高 値を示し,PlgとAT IIIは術直後に減少するが4 日後には術前値まで回復した.Fbgは術後1ヵ月 でも依然として術前に比べ高値であった. 考 察 1.体外循環中における血小板の質的量的変化 について 体外循環直後には図1に示したごとく,血小板 数の著明な減少と,血小板の活性化により放出さ れるβ・TGの著明な増加が観察された.体外循環 後には血小板数が減少することはよく知られてい るが,これは例えばSc㎞idtち1)によると血小板 が変化をひき起こす主な原因として,体外循環回 路の人工物質表面と血液が接触,これにより血小 板が活性化され,人工物質表面に粘着凝集するこ とによって体循環中の血小板数が減少を来すとさ れている.この事実は,体外循環における人工物 質表面に凝集あるいは付着した血小板の光顕およ び電顕的観察により証明されているη.本研究に おける術直後のβ一TGの著増はこれを裏づけて いるものと考えられる.加えて,人工物質との接 触により赤血球もまた溶血を起こし,これにより 赤血球から放出されるADPがさらに血小板の凝 集を充進させることも考えられる3).なお, Salzman2)は体外循環後に血小板減少が生じる原 因として,体外循環充填液中の保存液による希釈 もその一因であると指摘している. 一方51Cr標識血小板を用いた研究で体外循環 中」血小板は肝臓にtrapされ,体外循環終了後再び 流血中に戻ってくるとされている5).このような 手術中の血小板の体内分布の変化も術直後の血小 板数の増減に関与しているといえよう. 血.小板数が体外循環直後に著明に減少すること は,しぼしぼ術後に出血傾向を生じ,種々の問題 を惹起する要因の一つと考えられるため,これを 防ぐことが肝要である.この対策として現在考え られることは,1)体外循環回路の人工物質の抗血 栓性,抗血小板性のものを用いる,2)短時間作用 型の抗血小板剤8)で,点滴静注を中止すれぽ体外 循環終了と同時にその効果が失なわれるようなも の,例としてプロスタグランジン9>や現在開発中 のDN 969310>を術中に投与することで,血小板の 凝集を予防することなどが考えられる. また,体外循環回路単独運転の場合よりも,人 工肺をそれに加えた場合,さらに吸引を併用した 場合の方がより血小板数の減少が著しいといわれ ている.これは術中の吸引などの操作による血球 のshear stress11)が関係しているので,この予防 として吸引回路はなるべくゆっくりと吸引するよ うにすることが望ましい. 以上体外循環による開心術後においては,血小 板数の著明な減少があり,今後体外循環装置など の工夫,改善によって血小板数の減少を最小限に おさえることができるならぽ,術後2週間目のリ バウンドによると考えられる血小板数の著明な増 加をある程度おさえうるかもしれないという期待 がもたれる. 2.血小板容積に関して 大型血小板は若年血小板であると一般に考えら れており,その粘着能も高いといわれている12)13). これらの点より血小板容積は血小板機能と密接な 関係をもっているといえる14).

(8)

一方,これに対する異論も存在し,Thompson ら15)は血小板粒度分布と血ノ」・板の老若とは無関係 との説をとっている.実際に血小板のagingと血 小板容積との関係を研究するためには,血小板の 数が変動する疾患,例として特発性血小板減少性 紫斑病(ITP)などの血小板減少症や血小板増多症 において血小板容積を検討するか,ないしは開心 術のような人為的に」血小板数が極端に変動する状 況において血小板容積を経時的に追跡していくこ とが適当と考えられる.Gargら16>は前述のITP において,MPVは増大していると報告している. ところで,すでにLauferら17)はCABG,弁膜症 などからなる12例について体外循環開始前から終 了後120分までのみの血小板数およびMPVの測 定および検討を行なっているが,この結果血小板 数,MPVともに体外循環終了直後には減少する 傾向がみられた.この原因として彼らは,大型で 機能の高い血小板が体外循環回路内で選択的に消 費されるために容積が小さく機能の低下した血.小 板が後に残ったこと,これに加えて回路内で破壊 された変形」血小板が容積を減じていることをあげ ている.著者らはさらに術後1ヵ月間という長期 間の追跡調査を行ない(図2,4),血小板数,MPV のみならず,血小板の放出反応によって生じる β一TGの測定も併用して検討を行なったところ, 図2に示したごとく体外循環終了直後血小板数が 減少した時期に一致してβ一TGの著増が認めら れ,血小板が体外循環回路内で粘着および凝集す るため数を減じるというLauferらの説をさらに 裏づけたと考えられた. 一方,MPVは術後2日目にはほぼ術前のレベ ルにまで回復しており,この時期にはすでに大型 の幼若な血小板が体循環にあらわれつつあること によると推測された,また,血小板数が最大に達 した術後2週目において,いったん増加していた

MPVが低下しており,これは術前に比しても

p<0.01で統計学的に有意であるが,この理由と しては,1)血小板の寿命は7∼10日であるため術 直後に一挙に多量に新生された大型血小板が老化 のため容積を減じてきつつある時期と血小板数の ピークの時期とが重なったため,2)術後2週後の 血小板数のピークにおいても大型で機能の高い血 小板は消費されていた,などによる可能性が考え られた.あるいは,前述の1),2)とは対照的であ るが,3)血小板数とMPVの間には負の相関関係 がある18)といわ液,血小板数が増加するとMPV は減少する,などによる可能性も否定できない. ただし,2)ではこの時点でのβ一TGが若干増加 しているものの,著明ではないことから説明上無 理があるようにも思われる. 3.血小板容積の測定に関する問題点 血小板容積の測定において,本研究では,平均 血小板容積(MPV),中央値(median),最頻値 (mode)の3種を測定したが,最頻値および中央 値についてはCoulter channelyzer G1000を用い た場合,100channel中のおのおののchannel size に属する血小板の数が左右に少しずれただけで, 大きく変化するため,中央値,最頻値を採用する には少し難があるように思われた. 従って我々は測定結果の安定しているMPVを 3回測定し,その平均値を用いることとした. 4.Fbg, AT III, Plgの術後における変化 FbgについてはPerkinsら19)やPorterら20)が 体外循環後に減少することを認めており,著者ら も同様の結果を得た.今回の我々の4週間にわた

るFbgの追跡結果ではFbgは手術1日後より急

速に増加し,その増加は1ヵ月後においてもまだ 術前に復していなかった.AT III, Plgについて 術後長期間にわたって検討した報告は現在までの ところみられないようである.著者はFbgの連続 的な増加や術直後のAT III, Plgの一時的な減少 がみられたことは,術直後を中心にCABG例では 血栓を形成しやすい状況にあることを反映してい ると考えた. 5.人工肺の型式による差異と体外循環時間の 長短による差異 本研究に用いた症例はいずれも冠動脈バイパス 症例であり,対象疾患はほぼ均一と言えた.一方,

使用人工肺には気泡型肺と膜型肺がある.

McKenzieら21)は1975年シこ,七型肺は気泡型肺に 比べ体外循環中の溶血や血球成分の破壊が少ない と報告しているが,Clark22), Hesselら23)によれ 一1508一

(9)

ば,体外循環時事が2時間以内の短期間の人工肺 使用においては,両者間に血球破壊の程度,術中 術後の出血時間などで有意差をみなかったとのこ とである. 今回の両足間の比較検討においても,同型加斗 用例の3例の方が平均値で比較すると血小板減少 の度合が少なかったが,統計学的有意差は両群間 にみられなかった.症例数が少いので,今後さら に検討が必要と思われる. 二番目として,術前の予測では体外循環時間が 長くなるのに比例して血小板減少率が高くなると 想像したが,本研究でのA群(体外循環時間≧132 分),B群(体外循環時間く132分目の比較検討で は,平均値の対比においてはA群の方が減少率が 大きかったものの,平群の間に統計学的有意差を みなかった.この点も,今後症例を増やしての検 討が必要と思われる. 6.バイパスグラフトにおける血小板と血栓お よび動脈硬化の問題 冠動脈バイパス手術においては,・ミイパスグラ フトとして用いた大伏在静脈グラフトの閉塞が問 題となるが,多くの場合閉塞は術後早期に生じる といわれている.Fusterら6)はバイパスグラフト の狭窄または閉塞の問題を考える上で4期に分け て検討を加えている.第一は早期に生じる閉塞で あり,これは血栓による閉塞がほとんどである. 第二は術後1年までに起こる変化であり,これは 血小板に関係した内膜増殖(intilnal prolifera− tion)による血管の狭窄と言われている.第三には 術後1年目近くに生じてくる内膜増殖に血小板血 栓が加わった形のバイパスの閉塞で,これは抗血 小板剤の投与により予防できるとしている.最後 の第四番目としては動脈硬化性変化によるグラフ ト血管の狭窄であり,これは通常の冠動脈硬化と 同じプロセスで生じるものと考えられる.今回の 研究においても術直後には,術後2週間目に血小 板の著明な増加を来たすことは言うに及ばず,血 栓形成にinhibitionをかけるATIII,線溶現象に たずさわるPlgが著明に減少するとともに, Fbg が術後約4週間という長期間にわたって増加傾向 を示すことなどより,血栓が生じやすい状況にあ ることを示唆しており,この点術後早期における 大伏在静脈の閉塞は血栓によるというFusterら の報告と矛盾しない.従って術後の抗凝血薬療法 や抗血小板療法は術後早期から開始されるべきで あると考える. 結 語 以上,体外循環を使用して行なったCABGの15 例を対象として血小板数,MPVならびに凝血学 的パラメータを術前から術後4週間にわたり長期 間追跡し,この結果に検討を加えてみた.体外循 環によって血小板は回路内に粘着凝集し,その結 果術直後に血小板数は著明に減少し,MPVは低 下したと考えられた.これは機能の良い大型血小 板の選択的な消費が起こったためと推測した.術 直後の著明な減少に対し,術後2週間後にはリバ ウンドによると思われる著しい血小板数の増加を 認め,その値は術前値のほぼ2倍に達した.この ような体外循環による血小板数の急激な増減はバ イパスグラフトの術後早期における閉塞の誘因と なりかねないため,術中の血小板数の減少を軽度 に抑えることのできる体外循環法の確立が待たれ る.また,他の凝血学的パラメータの検討に関し ても,Fbgは術直後にはいったん低下するものの 術後約4週間という長期間にわたって増加傾向に あり,Plg, AT IIIは術直後に有意に低下するな どの多彩な凝血学的変化が生じ,術後早期には血 栓症を生じやすい傾向にあると考えられた.それ ゆえに,冠動脈バイパス術後には早目に抗凝血薬 療法ならびに抗血小板療法を開始することが望ま しいと思われた. 稿を終えるにあたり,御指導御校閲を頂いた循環器 内科学教室廣澤弘七郎主任教授に深甚なる感謝の意 を表するとともに,直接御指導を頂いた青崎正彦講師 に心から感謝いたします.また,本研究に御協力を頂 いた大木勝義研究員に感謝いたします. なお,本文の要旨は第27回日本脈管学会総会にて発 表した. 文 献

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参照

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