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東医大誌 55(1):1,1997
大学改革について考える
東京医科大学学長
渋 谷 健
医科大学の存在意義,医科大学に対する社会的要請は,時代とともに大きく変わりつつありま す.昨年は,本学が創学80周年を迎えた節目の年であり,また大学設置基準が大綱化されて5年 目の年でもありました.高齢化・少子化・ボーダーレス化等,様々な傾向の流動的で不透明な時代 に,豊かで活力のある社会の形成発展のために医科大学が如何に貢献できるか,厳しく問われてお りますが,視点を変えてみれば,本学の在り方を根本的に見直し,大学改革を果敢に断行する千載 一遇の好機でもあります.
21世紀に活躍する人材を育成する最も重要な拠点である大学は,一私立大学とは申せ,所有す る優れた,しかし限りある教育資源を有効に活用しつつ,固有の意義(college identity)を鮮明に して行く工夫が,何よりも大切となっております.
従来本学は,都心型大学としてその立地条件を生かし,「良医の養成」に立て特色ある医科大学 づくりを目指して参りました.「大綱化」以来,本学では,自己点検・評価,カリキュラム改革,国 際学術交流,大学院教育改革,情報ネットワーク・システム構築等の懸案事項について,全学的な 規模で鋭意検討,推進し,教育研究改革の実を得ております.しかし,未だ万全なものとは言えな い点もあり,様々なご意見が寄せられております.これらの意見に耳を傾けつつ,謙虚に本学の現 状を見つめ直し,課題・問題点を洗い出し,有効な方策を検討することが目下の急務であります.
時代は,確実に「教育者が研究する」時代から「研究者が教育する」時代へ推移しております.
私は大学と大学院の研究・教育水準の向上に力を注ぐべきだと思います.このことは,学術研究の 高度化,優れた研究者並びに医師という高度専門職業人の養成機能の強化を意味します.
学風や校風の伝承を基に,シラバスの提示を含む斬新な教育方法の改善と相まって,在るべきキ ャンパスの構築,特に老朽化した教育研究施設の整備は,来たるべき世代のために果たすべき緊急 の責務と考えております.
本学の特徴ある新しい教育研究システムを創出して行くために,教育研究に携わる全ての職員 が,自主自学,互恵の精神を以て発揮される決意と活力に大いなる期待をしております.