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長崎大学留学生 セ ンター紀要 第 1 2 号 2004 年 71

中国人学生による漢字クラスに対する意見と要望

一漢字 クラスのア ンケー ト調査報告 一

藤山 智子

1 . は じめに

筆者 は以前本誌で、中国人学生 を対象 に漢字教育 を行 う際、何 を教育項 目 として取 り上 げるか とい うことについて述べ た。註 1 )現在 、そ こで述べ た内 容 に従い、長崎総合科学大学別科研修課程 ( 以下別科)で中国人学生 を対象 に授業 を行 っているが、受講 している学生達 はその授 業内容 に どの ような感 想 を持 ち、何 を学 びたい と思 っているのだろうか。学生の授業内容 に対 す る 評価 と要望 を調べ るため に、筆者 は毎年最後の授 業で ア ンケー ト調査 を行 っ ている 。

本稿 で は 03年 と04年 に実施 したア ンケー トを基 に、漢字 の授業 内容や、授 業 に対す る評価 と、要望、意見 をまとめ、 ア ンケー トで得 られた結果 を考察 す ることに よって、学生 は漢字 を学習す る ことを どの ように捉 えてい るか、

問題 となる点 は何か について述べ る 。

2. アンケー トの概要

2‑1. ア ンケー トの対象 になる授業

漢字の授業 は通年 で、週‑ コマ ( 90 分)行 われている 使用教科書 は前半 ( 4 月 〜9 月初旬)は別科で編纂 された別科初級漢字 、後半 ( 9 月初旬 ‑1 月下旬) は東京外 国語大学の中級 日本語漢字練習帳 Ⅰと、それ に沿 った 自作 プ リン ト を使用 してい る 。 いずれの教科書 も別科 のメイ ンテキス トとして使 われてい る別科 日本語 Ⅰ、中級 日本語の漢字教材 として作 られた ものである 。

授業の内容 は前半 と後半で多少異 なる 前半 は学生の 日本語力が まだ、あ

ま り高 くない ことか ら、教科書 に掲載 されている漢字 の読み方 と、 日中に字

形 の違いがあ る場合 は 日本の字形 を確実 に覚 えることを目的 としてお り、一

つの漢字 に対す る学習項 目はあ ま り多 くない。後半 は教科書 に取 り上 げ られ

ている見 出 し漢字 について、教科書 に取 り上 げ られていない読み を加 え、語

桑例が動詞の場合 は簡単 な文型 を提示 し、使 い方 を確認 した。例文 には慣用

的 な表現 も時 々取 り入れた。 さらに、形声文字の場合 は同 じ音符号 を持 つ漠

(2)

7 2 中国人学生 による漢字 クラスに対す る意見 と要望

字 を提示 した。 また、同音異義語 もい くつか紹介 した。 日中で字形 の異 なる 漢字 につ いて は前 、後半 を通 じて、全 て 日本 の字形 と中国の字形 を板 書 し、

学生 に違 い を指摘 させ た。そ して、必要 な もの についてはその書 き方 を板書 しなが ら指導 した。 ア ンケー トで学生 に評価 を求めている授 業 の内容 は後半 で とりあげた 7 項 目についてである

2‑2 アンケー トの内容

ア ンケー トでは、授 業 の内容 や授 業 の進 め方 に対 す る評価 や要望 ( 質問1、

2、3) 授 業内容が実生活 に役立 ったか ( 質 問 4) 、授 業や クラス に対 す る感想 ( 質問 7、8) に加 え、直接授業 に関す る質問ではないが来 日か ら 1 0 ケ月が経過 して、漢字 の授 業、その他 の学習、 日本 での生活 を通 して、 日本 の漢字及 び 漢字語嚢 に対す る理解が どの くらい伸 びたか とい う質問 を した ( 質問 5 、6) 。

ア ンケー トは無記名 で行 われ、事前 にア ンケー トでいかなる回答 を して も 一切評価 には関わ らない こ とを明言 した。 ア ンケー トの実施者 は授 業 の担 当 者 である筆者 である 。

2‑3 ア ンケ ー トの対象

ア ンケー トの対象 は 03 年 、04年 に別科 に所属 した漢字 圏の学生 で、それぞ れ 9 名 、1 4 名 の計 23 名 であ る 内 2 名 が台湾 出身、残 り 21 名 は大陸出身者 であ る 調査対象 となった学生 の 日本語力 は中級か ら中上級 であ る

3. ア ンケー トの結果 3‑1 質問 1

質問 1 で は授 業へ の評価 を尋 ねた。学習 した 7 項 目について、それぞれ (と

て も良い )(まあ まあ良い )(あ ま り良 くない )(不必要 )の四段 階の選択肢 の

中か ら一つ を選 んで もらった。

(3)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 第 1 2 号 2004 年

質問

73

1.以下 の内容 につ いて勉 強 しま した。 どうで したか。

( ∋漢字 の読 み方 (とて もよい まあ まあ

② 漢字 の書 き方 (とて もよい まあ まあ ( ∋同音異義語 (とて もよい まあ まあ

④ 日中漢字 の違 い (とて もよい まあ まあ ( 9同じ音読みを持つ漢字 (とて もよい まあ まあ

⑥ 言葉の意味、使い方 (とて もよい まあ まあ ( ∋慣用表現 (とて もよい まあ まあ

集計結果

よ くない 不必要) よ くない 不必 要) よ くない 不必要) よ くない 不必要) よ くない 不必 要) よ くない 不必要) よ くない 不必 要)

順位 項 目 よい とて も まあ まあ よ い あ ま り よ くない 不必 要 無 回答

1 位 ( ∋漢字 の書 き方 1 8 5 0 0

2 位 ( ∋漢字 の読 み方 1 7 5 1 0

3 位 ④ 日中漢字の違い 1 4 9 0 0

4 位 ( 訓貫用表現 1 3 1 0 0 0

5 位 ⑥ 言葉 の意味 や 使 い方 1 3 9 1 0

6 位 ⑤ 同 じ音読 み を 持つ漢字 1 3 8 2 0

(とて も良い )が多 く得 られ た項 目は 「 漢字 の書 き方 」 ( 78 %) 、 「 漢字 の読 み方 」 ( 7 4%) で、やや下 が るが それ に次 いで 「日中漢字 の違 い 」 ( 61 %) であ る これ ら 3 つ の項 目は筆 者が教 える際 に中心 に据 えた項 目であ る 一方 、評 価 が低 い方 の項 目は 「同音 異 義 語 」 ( 52%) 「同 じ音読 み を持 つ漢 字 」 ( 57%)

「 言葉 の意味 や使 い方 J ( 5 7 %) であ る。 (*括弧 内 は くとて も良い )の回答率)

(不必要 )と回答 された ものはなか った。

(4)

7 4 中国人学生 による漢字 クラス に対す る意見 と要望

3‑2 質問 2

質問 2 では質問 1 と同 じ 7 項 目について、 もっ と勉 強 したい と思 った もの は何 か尋 ねた。 回答方法 は 7 項 目の中か ら勉 強 したい と思 った もの全 て を選択 す る 方法 に した。 それ に、「その他」 とい う項 目を加 え、それ を選 んだ学生 には具 体 的 な内容 を書 いて もらった。

質問

2. もつ と勉 強 したい と思 った ものは どれですか○○ を付 けて くだ さい

( 複 数 回答可) ( ∋漢字 の読 み方 ② 漢字 の書 き方 ③ 同音異義語

④ 日本 と中国の漢字 の違 い ⑤ 同 じ音読 み を持 つ漢字

ア ンケ ー ト集計結果

順 位 項 目 人数

1 位 漢字 の読 み方 1 7 言葉 の意味 や使 い方 1 7

2 位 慣用表現 1 4

3 位 同音異義語 1 3

4 位 同 じ音読み を持 つ漢字 1 0

5 位 漢字 の書 き方 4

6 位 日中の漢字 の違 い 3 * 「そ の他 」 の 回答 に対 す る具体 的内容

( カタカナ、外来語 、人名漢字 )

結 果 を見 る と 「 漢字 の読 み」 とい う回答 とと もに 「 言葉 の意味 や使 い方」

や 「 慣用 表現」 とい った語桑 や、表現拡 充 につ なが る項 目に興味 が集 まって い る それ に対 して、「 漢字 の書 き方 」 「日中漢字 の違 い 」 とい った字形 を学 ぶ こ とに関す る項 目へ の回答 は大変少 ない。

「 その他」は 3 名 の学生 が選 び、それぞれ 「 人名漢字 」 「 外 来語 」 「カタカナ」

とい う回答 を してい る 。 「カ タカナ」 とい うのは、 カタカナ表記 の言葉 とい う

(5)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 第 1 2 号 2 00 4 年 75

意味で、「 外来語 」 と同 じ意味合 いで使 われているようだが、漢字 に関す るア ンケー トで 「 外来語 」 や 「カタカナ」 とい う回答 をす る とい うのは 日本人 と してはあ り得 ない こ とである 学生 の中には漢字 とい う言葉 を文字 と捉 えて いる者がいるようだ。

何 が漢字授 業の項 目か とい うことは さてお き、「同音異義語 」 慣用表現

「 外 来語 」 「カ タカナ 」 な ど、語嚢 に関す る項 目を学生達が もっと学 びたい と 思 ってい るようで、彼 らは漢字 の授 業 を語桑拡充 ための授業 と捉 えてい るの ではないか とい う様子が うかが える

3‑3 質問 3

筆者 は一つの見出 し漢字 について、で きるだけた くさんの読みを提示 した。

質問3ではそれについての感想 を3つの選択肢の中か ら一つ選 んで もらった。

質問

3. 一つの漢字 について、その漢字の色 々な読み方 を勉強 しました それについて どう思い ますか○

1.‑度 にた くさん習 うことがで きて良か つた○

2 . もつとた くさん習いたか った○

3. ‑度 にた くさん習 つて も忘 れるので、少 しずつ習いたか った○

この回答 については03年 と04年で全 く違 う回答が得 られたため、年度 を分 けて結果 を示 したい と思 う 。

03 年の結果

i ‑, ‑ EL= i t ' i誓 言 諾 崇 ㌫

習 いたかった

04 年の結果

(6)

76 中国人学生 による漢字 クラスに対する意見 と要望

一見 03 の学生 の方 が学習 に積極 的 な ように見 えるが 、筆者 の印象 で は 04 の 方 が熱心 に学 習 に取 り組 み、確 実 に覚 えてい こう とい う意欲 が見 えた 。03 は それ ほ ど熱心 で はな く、 ときに授 業態 度 もあ ま り良 くなか った。 テス トであ

ま りいい点が取 れ な くて も気 に しない学生 も何 人かいた。

これ は筆者 の推測 に過 ぎないが 03 の結果 には もっ と学習す れ ば良か った と い う後悔 が 、0 4 の結 果 には一生懸命勉 強 して もなか なか覚 え られず、苦労 し た とい う心情 が現 れ てい るのか も しれ ない。 いず れ に して も、個 々の学生 に よって受 け取 り方 が違 い、 これで ち ょうど良い とい う量 を設 定す る こ とは難

しい。

3‑4 質問 4

漢字 の授業が実生活 で役 に立 ったか を尋 ね る質問であ る。 (大変役 に立 った ) か ら、(全然役 に立 たなか った )までの四段 階の選択肢 か ら、一つ を選 んで も

らった。約 7 0% が (大変役 に立 った ) 、約 3 0% が (少 し役 に立 った )と回答 し た。(あ ま り役 に立 たなか った )(全然役 に立 た なか った )と回答 した学生 は い なか った。

3‑5 質問 5 、質問 6

質問 5、6 は授 業 とは直接 関係 ない質 問 だが 『 来 日 してす ぐに 日本 の漢字 を 見 た ときどの くらい意味が理解 で きたか 』 今 、 日本 の漢字 を見 て どの くらい 意味が分 か るか』 と質問す る こ とに よ り、 日本 の漢字 、漢字 語菜 の理解 度 に

どの程度 の変化 があ ったか を調べ た。

質問

5. 日本‑来 たばか りの時、 日本 の漢字 を見 て どの くらい意味 が分 か りま した か。

1 .9 0 % 以上 2.7 0‑8 0 % 3.5 0‑6 0 % 4.3 0‑4 0 % 5. ほ とん どわか らなか った

6. 今 、 どの くらいわか る ようにな りま したか。

1 .9 0 % 以上 2.7 0‑8 0 % 3.5 0‑6 0 % 4.3 0‑4 0 %

5. ほ とん どわか らない

(7)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 第 1 2 号 2 00 4 年

集計結果

1 2

1 0 8 4 6 2 h J / L j , 〜

0 ① 90% 以上 ② 7 0‑8 0 % ③ 5 0‑6 0 % ④ 3 0‑4 0 %

な と

i ‑ I : / ' L y

質問 5 0 1 1 2 4 J6

77

この結果 に よる と、 ほ とん どの学生が来 日当初理解 で きたのは 6 0% 以下 と 回答 してお り、その うち約半数 は 5 0% 未満 しか理解 で きなか った と回答 して い る ほ とん ど分 か らなか った と回答 した学生 も 6 名 に上 った 。70% 以上 は 1 名 、90% 以上 はい なか った 来 日 1 0 ケ月後 、 日本 の漢字 に対 す る理解 度 を 6 0% 以下 と回答 した学生 は全体 の約三分 の一 に減少 し、その うち 5 0% 未満 と 回答 した学生 は1名で、ほ とん ど分 か らない と答 えた学生 はい なか った。一万 7 0% 以上 わか るが質問 5 の一名か ら 1 4 名 に増加 し 、9 0% 以上 と回答 した学生 も 2 名 いた 質問 5 は学生達 が来 日 して 1 0 ケ月 を経過 してか ら質問 した もの なの で、実際 に感 じてい た こ ととはズ レもあ る と思 われる し、両質問 とも、あ く

まで も学生 の主観 で 回答 された ものであ るので、 この結果 は厳密 なデー タと は言 えない。 しか し、 この結果 は母 国語 で漢字 を使用 してい る学生 も、 日本 語 を書 き表 している漢字 は学習 しなければ ちゃん と理解 で きない とい うこと

を示 しているのではないだろ うか。

(8)

7 8 中国人学生 による漢字 クラスに対す る意見 と要望

3‑6 質 問 7、8

質 問 7 で漢字 を勉 強す る こ とに対 す る感想 を、 質問 8 で ク ラス に関す る感想 を 自由回答形 式 で尋 ね たが 、 回答 の 内容 を区別 した学 生 が ほ とん どい なか っ たので、 ここで は両 質問の 回答 をま とめて分類 す る こ ととす る 。

質 問

7. 漢字 を勉 強 す る こ とにつ いて どう思 い ま したかo

回答 は大 き く分 け る と [ 学習項 目に対 す る意見 、感想 ] [ 漢字学 習 に対 す る 感 想] [クラスの進 め方 に対 す る意見 ] の 3 つ に分 け られ る

3‑6‑1 学習項 目に対 す る意見 、感 想

[ 学習項 目に対 す る意見 、感想 ] は、多 い順 に [ 読 み] [ 意味] [ 語嚢 ] [ 字 形 ] [ 書 き方] に分 かれてい る

ア ンケ ー ト集 計結果

順位 項 目 内容 人数

1 位 読 み 読 み は難 しい 6人

授 業 で読 みの練習が 良か つた 3 人 勉 強 して読 みが分 か る よ うにな った 3 人 もつ と読 み を練 習 したい 2人 た くさん読 み を練 習 した 1 人

2位 意味 日中の漢字 は意味が違 う 4 人

日中の漢字 は意味 が 同 じ 3 人 勉 強 して意味 が分 か る よ うにな った 1 人

3 位 語 嚢 語嚢 を もつ と勉 強 したか った 3 人 語 桑 をた くさん習 えて よか つた 2人

4 位 字形 日中の漢字 は同 じ 3 人

日中の漢字 は似 てい るか ら間違 いやす い 1 人

(9)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 第 1 2 号 2004 年 7 9 3‑6‑1‑1 読みに関す る意見 、感想

これ に関す る意見感想 は全部 で 1 5 あ り、一番多 か った。内容 は大体、難 し か った、 もっ と勉強 したい とい う2つ に集約 され る 。 学生が本 当に 日本語 の読 み に苦労 し、勉 強す る必要 を強 く感 じてい ることが伺 える

3‑6‑1‑2 意味 に関す る意見 、感想

ここで学生が い う 「 意味」が漢字語桑 の意味 なのか、漢字 その ものの意味 なのか判別 は難 しいが 、8 回答 申5 つ は 日本 の漢字 と中国の漢字 は同 じだが意 味が違 うとか、意味が分か らない とい うものだ。残 りの3 つ は漢字 を見 れば意 味 が大体分 か る と言 っている この中で ひ とつ 「日本 の漢字 と中国の漢字 は ほ とん ど同 じと思 う で も、沢 山漢字 と言葉の意味が違 う。 」 とい う回答があ り、 これ は字形 は同 じだが、漢字語蓑 、漢字 その ものの両方 で意味が違 うと 述べ てい る

3‑6‑1‑3 語垂 に関す る意見 、感想

漢字 の クラスで言葉 をた くさん勉強 で きて良か った とか、 もっ と日常生活 で よ く使 う言葉 を習 いたか ったな どの回答 があ った。 この中で一名 は 「日本 に来たばか りの時か ら日常生活 にあま り使 わない漢字 を教 えて くれた け ど・ ‑」

と明 らか に 「 言葉」 の代 わ りに 「 漢字」 とい う言葉 を使 っている ここで も また、中国人 と日本 人の漢字 に対す る概念 の違いがあるので は と感 じる

3‑6‑1‑4 字形 に関す る意見 、感想

字形 に対す る意見感想 は 3 つである その どれ もが 日本 の漢字 と中国の漢字

はほ とん ど同 じだ と述べ てい る 筆者 は授 業 で 日中の字形 を併記 し、違 い に

つ いて詳 しく説 明 して、 日本人 には判読 で きない簡体字 を指摘 して きた。 ま

た、 中国人学生が 日本語 を書 く際 に簡体字 を使 用す る ことに対 して違和感 を

感 じてい る 日本語教 師 も少 な くない。色 々 な意味 か ら漢字 国学習者 に字形 の

違 い に焦点 を当てた漢字教育 をす るべ きだ とい う意見 もある 。 許2 1しか し、中

国人学生 の字形 の違 い に対す る認識 は非常 に低 い とい うことが わか る 日本

人 は簡体字 を見 た ときに これは異 なった字形 だ と感 じる ように中国人学生達

は感 じていない ようだ。

(10)

8 0 中国人学生 による漢字 クラスに対す る意見 と要望

3‑6‑115 書 き方 に関する意見、感想

回答 に書 き方 に対 す る意見 を寄せ た学生 は一名 だった。その意見 は好意的 な ものであるが、全般的 に書 き方 に対す る興味 は非常 に低い ようだ。

3‑6‑2 授業の進め方 に対する意見

「 説明 に対す る評価 」 「 宿題 の量 」 「 教科書 について 」 「テス ト 」 「 授業 の方 法 」 授業時間の設定」 な どについて、様 々な意見が上が った。

ア ンケー ト集計結果

内容 人数

宿題が もつ と多いほうが よい 3 人 授業の方法 をもつと面 白 くす るべ きだ 2 人

詳 しい説明が よかつた 2 人

テス トはよかつた 1 人

もつと難 しい漢字 を勉強 したい 1 人

『 宿題が もっとあったほ うが よい』 とい う回答 の中には、「テス トを して も 後で全部忘れるので宿題 のほ うが効果がある」 とい うものや、「 授業 中に問題

をた くさん解 かせ、た くさん間違 えた人 にはた くさん宿題 を出すべ きだ 」 と 懲罰的な宿題があれば、学習の動機 になる とい う具体的な意見 もあった。

授業時間の設定 について 『 体育の後 に授 業があるのは よ くない』 と回答 し た学生 は一名 だったが、暗記 を必要 とす る科 目で は集 中力が保 てる時間に授 業 を行 うようにす る といった配慮 は必要か もしれない。

3‑6‑3 漢字学習に対する感想

5 つの回答が寄せ られ、「 勉強 は役 に立 った 」 「 大変だった」 とい う意見 だ。

(11)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 第 1 2 号 2004 年

ア ンケー ト集計結果

81

内容 人数

漢字 の勉強 は役 に立 った 3 人

漢字 を勉強す る ことは大変 だ 1 人

4. 考察

4‑1 字形 ・書 き方 に対 する関心の低 さ

ア ンケー トを通 して気 になったの は 日中の字形 の違 い を知 り、 日本 の字形 を正 しく書 くとい う学習項 目に対す る関心 の低 さであ る それは質問2、7、8 の回答 に現れている

筆者 は別科 での漢字 の授 業 の第一 回 目に 日本 の漢字 を学ぶ際の心得 と して 日中には字形 の違 いがあ り、中国のみで使 われてい る字形 を 日本 人が理解 で きない場合が ある また、違 いが小 さい と して もそれ は 日本語 で は誤字 とみ な され るので、 日本語 で書 くときは 日本 の漢字 を使用 す る ように指導 してい る 。 また、毎 回の授 業で字形 の異 なる ものが出て きた ときは、 日中それぞれ の字形 を板書 し、学生 に違 い を指摘 させ、それ を認識 させ、 日本 の漢字 を書 くように指導 してい る それ に もかかわ らず、 ア ンケー トで は 日中の字形 の 違 いや、 日本 の漢字 の書 き方 を学 びたい と回答 した学生 は非常 に少 な く、 日

中の漢字 は大体 同 じだ と回答 した学生 もい る

どう して、 この ような認識 のギ ャ ップが生 まれ るの だろ うか。林 ( 2002) は台湾での漢字 の使 われ方 について、「 新 聞や雑誌 では繁体字 しか使 わないが、

手書 きの場合 は中国大陸の簡体字、台湾特有 の簡体字 、 日本 漢字 に由来す る 簡体字 な ど人それぞれ適 当に使用 し、それ らは誤用 とみなされない 。 」 と述べ てい る 中国大 陸で異字体が どの ように取 り扱 われてい るか はっ き りした説 明 は得 られ なか ったが、筆者 の教 える学生達 の話 による と、簡体字以外 の字 形 、特 に繁体字 は外 国映画の字幕や、出版物 な どで頻繁 に見 られ、彼 らは異 字体 に対 してあ ま り違和感 を もっていない ようである 一方 日本 では昭和 24 年 に現在我 々が使用 しているいわゆ る新字体 を定 めた当用漢字字体表が告示

され、そ こで は 「 今後 、各官庁 においては、 この表 に よって漢字 を使用 す る

とともに、広 く各方面 にその使 用 を勧 めて、当用漢字字体表制定 の趣 旨の徹

(12)

82 中国人学生 による漢字 クラス に対す る意見 と要望

底す るように努 めることを希望す る」 と字体の使用 に制限 を加 えている 各 種専 門分野や個 々人の表記 にまで及ぼそ うとする ものではない としなが らも、

今、現在特別 な場合 を除いてはここに納め られた以外 の字形 を目にす ること は少 な く、 日本人は字形 の違い を敏感 に意識 している つ ま り、 日本語 で記 述す る場合 には、 日本で使 われている字体 を使用す ることが必須 なのである しか し、今 までの ところ、別科での字形 の教育 はあ ま りうま くいっている とはいえない。今後 、 さらに 日本の漢字 を使 うことの必要性 を学生達 に説 く ことや、指導方法の工夫が必要 だが、 日本語教育 の中で漢字 圏学生 をを対象 と した漢字教育が ほ とん ど行 われていない ことも原 因の一つ と考 え られ る 。

日本語 を学ぶ漢字 圏の学生 の間に 日本語では 日本 の字形 を使 わな くてほな ら ない とい う認識が広 まれば、改善が見 られるのではないだろ うか。

4‑2 漢字の授業の捉 えかた

漢字の授業 を語桑や表現 を拡充す るための授業 と捉 えてい るような意見 も 目立 った。中には漢字の クラスであるに もかかわ らず、外来語 を習いたい と い う意見 もあった。 ここには中国人 と日本人の漢字 を学ぶ とい うことに対す る認識の違いがあるような気がす る

日本人 にとっては、か な ( 普) と して記憶 している語葉 をどうや って漢字 で書 き表すか とい うことが漢字学習の中心 である 学習中に知 らない語蓑が 出て きた として も、その意味や使 い方 を知 るのはあ くまで も二次 的なことで もっぱ ら漢字 の書 き方、読 み方 、送 りが なの振 り方 な どに集 中す る 。 非漢字 圏の学生 もおそ らく同 じ認識 を持 っているであろ う 。 しか し、 このア ンケー トや授業 を通 して、筆者の クラスに在籍す る中国人学生 は語桑 を習 うことが 一次的な ことで、その読みや書 き方 を学ぶ ことは二次 的なこ とだ と捉 えてい

る様子が うかが える 。

菱沼 ( 1989) は 日中の漢字 について、中国語 において漢字 は唯一無二 の絶 対 の地位 を保持 してお り、中国語 は漢字 だけで表記 されるようにで きている の に対 して、 日本語 において漢字 はその地位 を保証 されている ものの、かな の支 えな しには存在 し得ず、かなの方が地位 的に優位である と述べ ている

唯一の文字 として母国語 の中で漢字 を自由 自在 に使 い こな している中国人 学生が 日本人の ような漢字学習の意識 を持 ちがたいのは当然 の こ とか もしれ

ない。

(13)

長崎大 学留 学 生 セ ン ター紀 要 第 1 2 号 2 0 0 4 年 8 3

5. おわ りに

近年少 しずつではあるが、漢字 圏学習者 に も漢字 の教育 をす るべ きだ とい う意見 が聞かれる ようになった。討2 )た しか に、非漢字 圏の学習者 に比べ て必 然性 は低 い とい え るが 、漢字 か ら何 とな く意味 が推 測 で きるため にに読 み ( 発音) を正確 に覚 えなか った り、意味 を誤解 した りと漢字 を巡 るマ イナスの 要 因は決 して少 な くない。漢字 圏学習者 に対す る漢字教育 はその ようなマ イ ナスの要因 を取 り除 くの に役 に立つ に違 いない。

漢字 圏学習者 を対 象 と した漢字 の教科書 を作成す るべ きだ とい う意見 もい くつかあ る 。 甜 筆者 も同感 である 。

今後 、漢字 圏学習者 に対す る漢字教育が広 まることによ り、学生が持 って い る漢字 の知識 を、 日本語学習 の中で よ り有効 に生 かせ る方法が兄いだせ る

こ とを望 む とともに、筆者 も微 力 なが らその研究 に貢献 したい と思 う 。

註 1 ) 藤 山 ( 2 0 0 2 )p p. 41 ‑ 5 1

註 2)育 ( 1 9 9 4 ) 、和 田 ( 2 0 0 2 ) 、林 ( 2 0 0 2 ) な ど。菅 は韓 国人 日本語学習者 につい て、和 田は中国人学習者 についての漢字教育の必要性 を述べ ている 林 は台湾の 日本語学習者 について、 日本 の字形 を正確 に教 えることによ り 日中同形語の誤用 を防 ぐことがで きるので はないか と述べ ている

註 3 ) 和 田 ( 2 0 0 2 ) p p 8 3‑ 一9 2

参考文献

藤 山智子 ( 2 0 0 2 ) 「中 国 人学 生 を対 象 とす る漢 字 教 育 一漢 字 の何 を教 え る か 一」

『 長崎大学留学生 セ ンター紀要』第 1 0 号 p p 41 ‑ 5 1

和 田衣世 ( 2 0 0 2 ) 「中国人学習者向け漢字教材 の必要性 について 」

『 北海道大学留学生 セ ンター紀要』第 6 号 p p8 3 ‑ 9 2

曹喜 徹( 1 9 9 4 ) 「漢字系学 習者 の ための漢字教 育 のあ り方韓 国人の 日本語 学習者 を中心 に 」

『 世界 の 日本語教育』第 4 号 p p 6 1 ‑ 7 3

酒井順子 ( 2 0 0 2 ) 「 漢字学習 プロセス における調査 と研 究」

(14)

84 中国人学生 による漢字 クラスに対する意見 と要望

『 東 京外 国語大 学留 学 生 日本 語教 育 セ ンター論 集 』 第 28 号 pp43 ‑ 5 9

林玉 葱( 200 2 ) 「 字形 の誤 用 か ら見 た 目中 同形 語 の干 渉及 び その対 策 一台 湾入学習者 を中心 に ‑」

『日本語教 育』 第 11 2 号pp45 ‑ 5 4 菱沼透 ( 1 989 ) 「 漢字 の用 い方 ( 中国語 との対象 ) 」

『 講座 日本 語 と日本語教 育 第 9 巻 日本語 の文字 ・表記 ( 下) 』

明治書 院 pp1 6 9‑ 1 93 林 史典 ( 1 9 77 ) 「日本 にお ける漢字」

『 岩波講座 日本語 8 文字 』 岩波書 店pp1 5 9 ‑ 2 08

( 留学生 セ ンター非常勤講 師)

参照

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