ソシオンの理論 (3) : ソシオンの一般理論
その他のタイトル Theory of Socion (3) : General Theory of Socion
著者 雨宮 俊彦, 木村 洋二, 藤澤 等
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 25
号 1
ページ 63‑163
発行年 1993‑09‑05
URL http://hdl.handle.net/10112/00022562
関西大学「社会学部紀要」第
25巻第
1号 ,
1993,pp. 63‑163. ISSN 0287‑6817ソシオンの理論
(3)‑― ソ シ オ ン の 一 般 理 論 ー 一
雨宮俊彦・木村洋二• 藤 沢 等
Theory of Socion(3): General Theory of Socion Toshihiko AMEMIYA, Yohji KIMURA, Hitoshi FUJISAWA
Abstract
The general model of socion theory is proposed. Our previous socion model consisted of weights network among socions and the basic operations of weights within it. Into this previous socion model, we introduce two new elements. The first is an introduction of an "issue socion" and a
"group soc ion": these a re one‑directional virtual socions and have sym‑
.metrical positions in relation to each other. By introducing these new elements it becomes possible to analyze problems, such as the relationship between attitudes and personal relations and the̲ phenomena of group pressure.
The second is an introduction of the internal representation of weights network (the world of weights) into each socion. The analysis of the re‑
lationship between the subjective aspects and the objective aspects of person and society (for example, communications among socions, incon‑
sistencies among worlds. of weights,・interactions .between the operations of weights and communications, etc.) become possible through the intro‑
duction of these notions. We assume that, this general model is a logical consequence of the dynamic interpersonal relational ̲model and that, this model can be a platform for further studies. In this paper, we introduce an outline of a general model of socion theory, then we analyze the ideas and methods of socion game playing, which can be a most important field for empirical studies of our model. Finally we discuss the meaning and
possible consequences of our model.
Key words: social interactions, balance theory, group dynamics, social network, self orgamzatlon, communication, social attitudes, social sentiment, social self, socion, weights, socion games
抄 録
ソシオンの一般モデルが提案された。これは,ソシオン間の荷直ネットとそこでの基本的荷重オペ レーションにくわえ,作用方向が一方向的でたがいに対称的な,イシューとグループにかんする,仮 想的なソシオンとこれにかんするオペレーション,そして,各ソシオンにおける荷重ネットの内部表 象(ソシオンの荷重世界)を導入したものである。イシューとグループにかんするオペレーションに より,態度と対人関係のあいだの関連,集団への同調といった事象があっかえるようになった。また,
荷重世界の導入により,ソシオン間のコミュニケーションの問題,荷重世界のはがれ,オペレーショ ンとコミュニケーションの関係など,ソシオンにおける主観と客槻の問題があつかえるようになった。
ゾシオンの一般モデルは,個人と社会の間の関係のレベルを基盤とした自己組織化論としてのソシオ ン理論の帰結であり.今後の研究のプラットフォームとなるものである。本論文では,まず, ソシオ ンの一般モデルの概略を紹介し,つぎに,一般モデルの実証研究の場となるソシオンゲームのコンセ プトと方法についての検討をし,さいごに,一般モデルのもつ意味についての厳論を展開する。
キーワード:社会的相互作用,バランス理論,集団力学,社会的ネットワーク,自己組織化,コミュ ニケーション,社会的態度,社会的感情,社会的自己,ソシオン,荷重,ソシオンゲーム
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関西大学「社会学部紀要」第
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1サ
は じ め に
ソシオンは,ニューラルネットワークを構成する素子であるニューロンにならって命名され た, ノシアルネットワークを構成する索子にたいする,われわれの造語である。ソシアルネット ワークを構成するモデルとしての個人がソシオンである。われわれは,ソシアルネットワークに かんする要素と全体の諸問題を関係論的にあつかいうる,ニューラルネットワーク理論に対応す るような自己組織化理論をソシオンの理論とよび, これを確立するための模索をつづけてきた
(木村・藤沢・雨宮
1990,藤沢・雨宮・木村
1991,木村
1991, Amemiya, Fujisawa, Kim‑ura 1992,
藤沢
1993)。本論文は,われわれの模索のとりあえずの到達点をしめすものである。本論文で提示するソシ オンの一般理論は,まだ,あらけずりの作業段階のものである。モデルの詳細の展開や,その意 味の解釈,シミュレーション,ゲーミング,そして,データとの照合による実証的研究などにつ いては,今後の課題としてのこされている。しかし,理論の輪郭についていえば,われわれは,
今回提示する,ソシオンの一般理論は,個人と社会の中間の関係のレベルに立脚した自己組織化 論としての,論理的な帰結にまで到達したものであり,今後の研究のプラットフォームとなるも のだとかんがえている。
ソシオン理論の鍵になるもっとも基礎的な概念は,ィ悔重である。荷重は,ニューラルネットワ ークにおけるニューロン間のシナプス結合の強度に対応する。
ソシオン理論においては,荷重はソシオン間のネットワークの各チャンネルにたいする好一 悪,あるいは, 信頼ー不信の程度をあらわす。 こうした, ノシアルネットワークにおける, 好 悪,信不信のパターンは,伝統的に,ソシオメトリー(河井
1985)や社会心理学のバランス理論
(Taylor. H. F. 1970)の研究対象となってきた。ソシオンの理論はこれらの研究のながれを継 承するものだが,ことなるのは,たんに,好悪,信不信のパターンを記述したり,その安定度を 問題とするのではなく,ダイナミックなパターン変化のロジックを内在的にとらえようとする点 にある。(もちろん, これは外在的な要因の影響を否定するものではない。 ソシオン理論におけ る外在的な要因と, その影響のしかたについては, 木村・藤沢・雨宮
1990,藤沢・雨宮・木村
1991で検討した。)
こうした荷重変化の内在的なロジックが,荷重オペレーションルールである。これは,ニュー ラルネットワークにおけるシナプス結合強度の変化の学習)レールに対応する。ただし,ニューラ ルネットワークにおいては,ネットワークの外部からの教師信号や環境からの入カパターンヘの 適応という要因が直接的にたはらきうるのにたいし,ソシアルネットワークでは,これらの要因 は間接的にしかはたらかない。したがって,われわれの以前の論文では,ニューラルネットワー クとの対応を強調し,荷重変化の内在的なロジックを学習)レールとよんだが,本論文以降は,荷
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ソシオンの理論 ( 3 ) (雨宮・木村•藤沢)
重オペレーションルール,あるいは,たんにオペレーションルールとよぶことにする。
木村・藤沢・雨宮
(1990)で議論したように,ニューラルネットワーク理論とソシオン理論に は,局在論でも全体論でもない。関係論的自己組織化論としての,基本的な共通性がある。関係 のなかに分散的にかきこまれている情報や関係の総体からのエマージェントな特性の出現を具体 的に分析しうることや,組み合わせ論的複雑さの問題に直面することなどである。
しかし,システムとしてみると,ソシアルネットワークには,ニューラルネットワークとは,
いくつかの重要なちがいがある。
ひとつは,うえにのべたような,ネットワーク外部との相互作用の間接性である。これは,人 間社会の多面性によるのだろう。つまり,環境への適応に直接的にかかわる技術・経済的な側面 にたいし,ソシアルネットワークにおける諸関係は人間社会の別の側面を形成しており,ソシア ルネットワークは環境への適応に間接的にしかかわらない。この点は,より単純な要素から構成 され,一面的に機能しなくてはならない,ニューラルネットワークとはことなる。ニューラルネ ットワークは,環境からの入カパクーンや,教師信号の直接的な制約のもとで形成され,また機 能せざるをえない。これにたいし,ソシアルネットワークは,明確な教師信号や環境からの入力 なしに,内部的に規定される秩序を形成する傾向がつよい。
人文系の学者のあいだでは,こうしたソシアルネットワークにおける秩序の特性を,言語秩序 の恣意性と直接むすびつける議論が流布している。言語は環境との直接的なむすびつきをかき共 同体に結合し,かつ人間のコミュニケーションと認知の一般的なのりものとなる記号なので,社 会と言語の秩序が,なんらかのかたちで,たがいに関連していることは,おおいにかんがえられ る。しかし,ソシアルネットワークのロジックを研究することなしに,言語の特性をもって,社 会を説明したとおもってしまうのは,構造主義言語学帝国主義によりかかった自己満足にすぎな いだろう。言語と社会の関係をうんぬんするまえに,まず,ソシアルネットワークのロジックへ の組織的な接近が必要であり,これが,ソシオン理論の課題である。
もうひとつのちがいは,要素と全体の関連における要素の位置づけである。ニューラルネット ワークにおけるニューロンのシナプス結合強度は,周辺のニューロンの活動パクーンによって変 更され,また,ぎゃくに変更されたシナプス結合強度が,周辺のニューロンの活動パクーンに影 響をあたえる。このように,ニューラルネットワークにおいては,全体が要素を規定し,要素が 全体を規定するという,要素と全体の間の循環的な関係がある。しかし,ここでの循環的な関係 の要となるシナプス強度の変更は,全体的パクーンの関数としての一義的なパラメークの変更で しかない。これにたいし,個人とソシアルネットワークの間の循環は,質的により高次で複雑な ようにおもえる。これは,個人のパラメークの変更が,たんなるソシアルネットワークの関数と しての一義的なものではなく,各個人がソシアルネットワークの表象をそれぞれの視点で形成 し,この表象にたいする操作,さらには,複数の操作間の矛眉についての作業をそれぞれにおこ ない,結果として個人のパラメークが変更される,という経路をへるものでも,ありうるからで
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ある。
このような,たたみこみとメク操作にもとづく要素の自由度は,意識をもつ人間という存在に 特有の現象だろう。もちろん,これは,人間の意識がソシアルネットワークからはなれて存在し うるというのではない。波乗りをするひとが,波のうごきにのりながら,そこでのあるゆらぎや 分岐をとらえ,逆に,波にはたらきかけ,みずからの進路をかえていく自由をもつようなもので ある。こうした,個人とソシアルネットワークのあいだの,特異な循環的関係は,これまでのわ れわれのモデルの範囲外だったが, 今回の一般モデルでは, 正面からとりくむべきテーマとな る 。
意識をもつ個人と社会の特異な循環関係は,デュルケーム,ウェーバーいらいの社会学におけ る未解決の中心課題である。ソシオンの一般理論における,ソシオンの相互作用のモード論で,
われわれは,この課題にたいするフォーマルなモデルにもとづくシステマテイックな分析をおこ なうことをこころみた。われわれは,このこころみが,社会学の未解決の中心課題への,ひとつ の,あたらしいアプローチをきりひらくものになることを期待している。
今回の論文でのべる,ソシオンの一般モデルのベースになるのは,藤沢・雨宮・木村
(1991)で提案した,ソシオンの荷重ネットとそこでのダイアッドとトライアッドの荷重オペレーション である。一般モデルでは,これに,おおきく,ふたつの要素がくわわる。
ひとつは,イシューとグループにかんする仮想のソシオンとこれにかんするオペレーションル ールの浮入である。イシューとは,原発に賛成か反対か,クラスの文集をつくるべきかいなか,
自治会費を値上げすべきかいなか,などなどといった,集団において係争点となりうるような一 連の問題である。木村・藤沢•雨宮 (1990) では,イシューにたいする個々のソシオンの態度の ことを内部状態(荷重とおなじく,ー
3 +3くらいの範囲の数値で表現される)とよび,荷重 とは区別し,内部状態が他の各ソシオンの内部状態と各ソシオンとの荷重に左右されることを,
選択的他律とよんだ。一般モデルでは,イシューを他のソシオンからの被選択荷重のみをもつ特 殊な仮想のソシオンとして,導入した。イシューにたいする態度を,各ソシオンの内部状態として 表現しようが,各ソシオンのイシューソシオンヘの荷重として表現しようが,モデルの数学的構 成からいえばおなじことだが,モデルを思考のツールとしてかんがえれば,イシューソシオンと いった仮想のソシオンを導入したほうが,理論的なみとうしがよくなると判断したからである。
イシューが集団の個々のソシオンからみられ,被選択荷重のみをもつのにたいし,グループは個 々のソシオンをみて,それにたいする選択荷重のみをもつ。みんなは,あのひとをどうおもって いるか,この問題についてどんな判断か,などといった,仮想のみんな,あるいは,われわれに 相当するのが, グループソシオンである。 グループソシオンは, ィシューソシオンとは対照的 に,各ソシオンにたいする選択荷重しかもたない。イシューとグループにかんする仮想的なソシ オンを導入することにより,木村・藤沢・雨宮
(1990)で言及したが,藤沢・雨宮・木村 (1991)のソシオンの荷重モデルではあつかえなかった。態度の選択的他律や態度関係と好悪関係の関
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ソシオンの理論 ( 3 )(雨宮・木村・藤沢)
連 , 集団への同調などの問題が, 一般モデルではあつかえるようになる。 また, 今回の論文で は,自己回帰ループのかかわるオペレーションルールについても,簡単に検討した。
もうひとつあたらしく郡入されたのは,ソシオンの内部と外部,主観と客観,コミュニケーショ ンの問題とかかわる。これまでのソシオンモデルでは,ソシオン
Aがソシオン
Bにおいた荷重,
ソシオン
Bがソシオン
Cにおいた荷軍,など,すべての荷重が公共的で透明なものだと想定して いた。つまり,ソシオン
Aの観察するソシオン
Aがソシオン
Bにおいた荷重と,ソシオン
Bの観 察するソシオン
Aがソシオン
Bにおいた荷重とのあいだ,また,ソシオン
Aの観察するソシオン
B
がソシオン
Cにおいた荷重と, ソシオン
Bの観察するソシオン
Bがソシオン
Cにおいた荷重 と,ソシオン
Cの観察するソシオ,ン
Bがソシオン
Cにおいた府重とのあいだ,などなどのあいだ に , くいちがいはないものと想定し,そのうえでオペレーションがはたらくとかんがえた。
実際の社会的相互作用においても,きらいなひとをみんなでいじめたり,すきなひとに親切に したり,荷重関係をアクションとしてしめし,そうした公共的なアクションの場のなかで,荷重 オペレーションがなされるという相互作用のモードがある。したがって,公共的で透明な荷重モ デルは,これが妥当な側面はあるし,また現実の社会的相互作用の単純化した一次近似としては 必要なものである。しかし,現実の社会的相互作用においては,ある荷重関係を観察者がことな って観察するという観察荷重のはがれの事態はつねにしょうじているし,藤沢
(1993)で議論し たように観察者に直接観察される荷重の視界には一定の制約がある。そして,こうした荷重のは がれや視界は,実際の社会的相互作用のダイナミズムにおける重要な要因となっている。
一般ソシオンモデルでは,各ソシオンの内部にソシオンとソシオネットの表象がたたみこまれ るモデルを一般的なケースとしては想定する。これまでの公共的で透明な荷重モデルは,この一 般モデルの特殊ケースとして位置づけられる。両者のモデルのちがいは,社会的相互作用のモー ドのちがいに対応し,公共的で透明な荷重モデルが対応するような公共的なアクションの場にお ける社会的相互作用を
Cモード
(CollectiveMode)の相互作用,各ソシオンの内部にたたみこ まれたソシオンとソシオネットの表象における荷重オペレーションを
Pモード
(Personalまた は
PrivateMode)の相互作用となづける。また,
Pモードにおける,各ソシオン内部のソシオ ンとソシオネットの表象を,サプソシオンとサプソシオネットとよぶことにする。サプは,主観 的
(Subjective)または下位の
(Sub)を意味する。
ソシオン内部の荷重表象とそこでのオペレーションを想定することにより,ソシオン間の荷重 の情報の伝達としてのコミュニケーションを,ソシオン内部の荷重変更としてのオペレーション と区別して定義することが可能になる。
Cモードの相互作用においては,オペレーションとコミ ュニケーションが分離しないまま,
Concurrentにしょうじているとかんがえることができる。
このようにして,一般ソシオンモデルではじめて,コミュニケーションの問題や,社会的相互作 用における主観と客観, リアリティーの問題が,システマティックな分析の姐上にのぽることに なる。
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以下,本論文では,
る 。
IIでは一般ソシオンモデルのもっとも有力な実証の手段となりうるソシオンゲームのコンセ プトと方法,そして,そこであつかえる諸問題について検討する。最後に,
まず
Iで , 一般ソシオンモデルの概略, モデルの道具だてを簡単に紹介す
皿では, 一般ソシオ ンモデルのもつ意味について,社会学的, コミュニケーション論的な観点から議論を展開する。
I .
ソシオンの一般モデルの概略
ここでは,ソシオンの一般モデルの概略をごく簡単に紹介する。紹介は,
形式的,網羅的にのべることに重点をおき,モデルの意味についての検討は,ほとんどおこなわ ない。このため,社会的感情や社会的自己など,荷重関係の現象学的な意味解釈とかかわってし モデルの道具だてを
ょうずる問題についての記述は省略した。また,
ルの発生論的な整理などもおこなっていない。
モデルをどう実証するかといった問題や, モデ
紹介は, まず 1 . では,公共的な透明荷重モデルを前提に,荷重のオペレーションルールにつ いて,概観する。 つぎに,
2.では,各ソシオン内部の荷重表象の問題を導入し, ソシオン間の コミュニケーションの問題を検討する。最後に,
3.では, オペレーションとコミュニケーショ ンの相互作用の問題と一般モデルの延長線上にある問題について,簡単に論ずる。
1‑1.
オペレーションの概要
I ‑1‑1.
基本的オペレーションルール
A,B,C,D,E
の五個体からなる集団,あるいは,五つのソシオン からなるソシオネットを想定することにする。個体間の関係の存在については,
のように,選択か排斥かの基準をもちいることも,一般のネットワーク理論のように直接の言語 以下の説明では,すべて,
ソシオメトリー
的情報交換の有無を基準とすることも, それぞれの理論の目的におうじてさまざまである。
ソシオン理論では,好きか,嫌いか,信頼できるか,信頼できないか,直接の判断をもてるソ
'>
︶
ネ C
•...•
A
□
ニ
図 1 ‑ 1 5 つのソシオンからなるソシオネット
‑ 68 ‑
ソシオンの理論( 3 ) (雨宮・木村•藤沢)
w . .
図
1‑2ソシオン
A, B, Cのトライアッド
(Wahはソシオン
Aがソシオン
Bにおいた荷重。)
w
••はソシオン
Aの自己回帰ループヘの荷重。
表
1‑1基本的荷重オペレーションル_ル
I.ダイアッドオペレーション
1 . 対称化
'1Wab=7J・(Wba‑Wab)I I . トライアッドオペレーション
2.
並列転移
JW ab=71•f (Wac)•g(Wbc) 3.直列転移
JW ab=7J•f (Wac)•g(W cb)(JW
はオペレーションルールを適用した場合の荷重の変化。)
7
J
は変化率。
f,gはトライアッドルールにおける伝達関数。
シオンとのあいだには,直接的ソシオンチャンネルが存在することになる。直接的ソシオンチャ ンネルは,対象とするソシオンと言語的なコミュニケーションをもつ場合も,たんに,集団での ふるまいを観察できる機会をもつだけの場合もある。これにたいし,間接的なソシオンチャンネ ルをつうじて荷重をもつのは,うわさの他者にたいしてである。さらに,視界の外のソシオンも 存在する。しかし,視界外のソシオンも,直接,間接のチャンネルをもつソシオンとはチャンネ ルをもちうるので,当該ソシオンヘの影響力の外にあるソシオンというわけではない。
図
1‑1にしめすように,
A,B,C,D,Eの五つのソシオンの間には, すべて直接的なソシオ ンチャンネルが存在するものとする。さらに,
2.以降での記述と関連するのだが,たがいにあ いての荷重表象を参照する関係をもつソシオン間には,ダイアッド的ソシオンチャンネルが存在 するものとする。
こうしたソシオネットにおける基本的な荷重オペレーションルールについては,二者関係,三 者関係のみをかんがえればよいことは,藤沢・雨宮・木村
(1991)でしめした。四者関係以上の
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関係は,すべて三者関係を合成したものとしてあつかうことができる。
そこで,
A,B,C,D,Eの五つのソシオンのソシオンネットから,
A,B,Cのトライアドをと りだして(図
1‑2),基本的荷重オペレーションルールを説明する。表
1‑1にしめしたのが,基 本的荷重オペレーションルールのすべてである。それぞれのルールには,数式がしめされている が,これは,こうした式で各ルールを表現しうるという程度のめやすにすぎない。ファジー集合 をつかったエキスパートシステムの表現で,もし,この荷重がこの程度ふえたら,こちらの荷重 はこの程度変化させろ,ただし,この限界はこすな,などといった,より洗練された表現も可能 だろう。ここでの数式は,コンビュークシミュレーションなどの場合にもすぐつかえるような,
簡便な表現という以上の意味はもたない。
ダイアッドにおけるオペレーションルールは,対称化のみである。これは,自分を好きなひと を好きになり,自分を嫌いなひとは嫌いになるという,相互の荷重の対称化への傾向である。も ちろん,実際の二者間の荷重関係は,かならずしも対称的ではないが,これは, トライアッドや イシュー,グループ,自己回帰ループなどによるオペレーションによるものとかんがえるのであ る。ダイアッドにおけるオペレーションルールは,いくらくみあわせても,二者関係のたんなる 加算にしかならない。したがって,対称化は,個々の二者関係においてローカルな均衡にむかう 傾向であり,二者関係をこえた全体的うごきはうみださない。むしろ,そうした全体的うごきの 抑制要因としてはたらく。
トライアッドにおけるオペレーションルールには,並列転移と直列転移との二種類がある。並 列転移は,対象とするあるソシオンにたいして,正のあるいは負のおなじ符号の荷重を共有して いるソシオン間に正の荷重が,ことなる符号を共有しているソシオン間に負の荷重が生ずるとい ぅ,オペレーションである。対象となるソシオンヘの関係を媒介として,それにたいして並列的 に複数のソシオン間の関係がしょうずるので,並列転移とよぶ。これにたいし,直列転移は,媒 介項となるソシオンが他のソシオンにたいしてもっている荷重をうつしとるオペレーションであ る。媒介項を中心に三つのソシオンが直列的に結合してしょうずる転移なので,直列転移とよ ぶ 。
それぞれあるソシオンを媒介として,他のソシオンとの荷重関係が変更されるという意味で,
トライアッド関係なのだが,媒介の意味がことなる。並列では,媒介するソシオンがどういう荷 重をもっているかにかかわらず,媒介項はたんなる対象でしかない。これにたいし,直列では,
媒介するソシオンがどういう荷重をもっているかが重要となる。直列転移においては,媒介項の ソシオンの他のソシオンにむけた表象作用,あるいは,媒介項のソシオンがさししめす記号作用 をよみとる能力が前提となる。この意味で,直列転移は典型的な三項関係だといえる。これにた いし,並列転移では,媒介項となるソシオンを中心に他のソシオンがひとまとまりになったりす るという点で,二項関係と三項関係の中間的な側面がつよい。実際,サルのむれなどでも,共通 の敵を媒介とした結束といった事態はしょうずるらしい。しかし,直列転移は,記号作用とおな
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ソシオンの理論 ( 3 ) (雨宮・木村•藤沢)
じく,サルでは安定しては存在しないと予想される。おそらく,この背景には,三項関係のロジ ックがあると,われわれはかんがえている。
トライアッド関係は,ダイアッド関係とはことなり, くみあわせていくと,四者,五者,任意 の多者関係を形成し,グローバルなダイナミズムを生成する。並列転移がくみあわさると,ある スターや共通の敵,または,いけにえを中心とした連帯といった同心円構造が形成されやすい。
これにたいし,直列転移は,ネットワークを鎖状にのばしていくことになる。
I‑1‑2.
イシューとグループにかんするオペレ_ションルール
図
1‑3にイシューとグループを ノシオネットの周辺においた場合の図をしめした。 ソシオネ ット内部の荷重関係の表示は省略した。ここで,イシューにたいしては各ソシオンがそれぞれの
G
図
1‑3イシューソシオンとグループソシオン
A
B
cD E
A B
cD E
G
w .. W,b W,c Wod w .. I. Wba Wbb W1,e wbd Wte lb Wea W,b Wco Wo1 Wee I. Wc1a Wdb wdc Wdd Wc1e
L i
w .. web Wee w"" w ... I. G. Gb G. Gd G. GI図
1‑4イシューとグループを導入したソシオネットの荷重マトリクス
‑ 7 1 ‑
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荷重をもつのにたいし,イシュー自体は他への荷重はもたない。イシューとは,被荷重のみをも つ純粋な客体としての仮想のソシオンである。これにたいし,グループは,イシューをふくむ他 のソシオンにたいし,荷重をもつが,グループ自体は,他のソシオンからみられるという被荷重 をもたない純粋な主体としての仮想のソシオンである。これにたいし,通常のソシオンは客体で あると同時に主体でもあるという二重性をもっている。
図
1‑4が,図
1‑3に対応する荷重の行列表記である。行成分が荷重をもつ側のソシオンを,
列成分が被荷重側のソシオンをしめす。 たとえば,
Waeはソシオン
Aのソシオン
Eにたいする 荷重である。行列表記では,イシューは,列側のみにあらわれ,グループは行側のみにあらわれ る。たとえば,
leはソシオン
Cのイシューにかんする意見を,
Geはソシオン
Cがグループによ ってどうおもわれているかの被荷重を,
GIはグループのイシューにかんする意見を, それぞれ 表現する。
ここでは,とりあえずイシューはひとつとしたが,実際には,イシューはソシオネットで係争 点となるような問題の数だけ存在しうる。複数のイシューにたいする各ソシオンの態度には共通 に変動する成分があるので,たとえば複数のイシューにたいする各ソシオンの態度を因子分析す れば,いくつかの基本的な要因としてのイシューを抽出できるだろう。
グループソシオンは,みんな,あるいは,われわれに対応するような仮想の主体である。ソシ オンの集団がふたつに分裂するときなど,われわれと,あいつらというように,グループソシオ ンがふたつ成立することもあるだろう。このようなグループソシオンの存在は,和をもってとう としとなす, みなさんの意見にしたがいます, 多数決ではなく全員一致, などなど, といった
Togerthemessを強調する日本的な集団をかんがえるにあたっては, 不可欠の存在だろう。 日 本的な集団においては,各ソシオンは,実際にそういう仮想のグループの存在とそれがどんな荷 重をもつかを想定しながら,自らの荷重を調整しコミュニケーションをおこなっており,こうし たグループソシオンの影響はリアルだからである。
もちろん,超越的な価値の軸に準拠しての,他とことなることや,個人主義を強調する集団に あっては, グループソシオンの存在は, そう明瞭ではない。また, 個人主義的な文化において は,普遍的な判断基準ではなく,個々の集団状況を基準にする傾向など,その存在をみとめた<
ないようなものだろう。しかし,ふたつの集団が対立するばあいなどに,われわれと,あいつら といった意識がしょうじ,そうした上位の仮想の存在にてらして他者を位置づけ判断するという 傾向は,人間社会に普遍的に存在するようにおもえる。したがって,グループソシオンにつなが るようなプロセスは普遍的に存在するが,個人主義的文化においては,抑圧され,あまり影響力 をもたないとかんがえることができるだろう。もちろん,集団的コンセンサスを重視するような 文化においては,逆に,個人的な主張が抑圧されることになる。
文化というのは,人間と社会にそなわっている普遍的な傾向のある側面のみを選択的に強調し 展開させ,他の側面は相対的に無視あるいは抑圧する,一種の比喩の体系のようなものである。
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ソシオンの理論 ( 3 )(雨宮・木村・藤沢)
おそらく,ソシオンモデルにおいて,グループソシオンの存在が,通文化的普遍性にかんして,
もっとも微妙なケースだろう。われわれは,グループソシオンは, 日本的な集団においてとくに 顕著に発展しているが,日本的集団にのみ,存在する孤立した特異な現象ではなく,個人主義的 な集団では無視あるいは抑圧されるような,ある普遍的なプロセスに対応していると想定してい る 。
もし文化が一種の比喩の体系とするなら,社会的相互作用の通文化的に普遍なモデルとしての ソシオンモデルにもとづき,種々の文化を分析する可能性がしょうずる。たとえば,ごく単純化 していってしまうと,キリスト教のカトリシズムの愛を,わたしが好きな神が好きな人は好きと いった,直列転移のロジックにもとづくものであるとか,空白の中心としての天皇を並列結合の ロジックの応用例として分析するなどである。このへんの問題については,本論文では十分に議 論できないが,つぎの機会に,補助線もいくつかひいて本格的に展開する予定である。
表
1‑2が,イシューとグループにかんするオペレーションルールである。
選択的他律は,好きな,あるいは,信頼する他者のイシューヘの態度にちかづくように,自ら のイシューにたいする態度とちかいソシオンヘの荷重をまし,ことなるソシオンヘの荷重をへら すようなオペレーションである。図 1 ‑ 5 の d は , ソシオン A について, 両オペレーションの関 係をしめしたものである。ここにしめされているように,選択的他律と協和化による荷重の変更 は,たがいに拮抗する関係にある。選択的他律と協和化のどちらが優先されるかは,そのときの ソシオネットとイシューヘの荷重付置の状況も影響するが,基本的には小集団研究でいわれてき ているように,対人関係を優先するのか,態度関係を優先するのかという,ソシオンの特性が重 要になる。
選択的縮約は,グループソシオンの荷重決定のオペレーションである。グループにおける影響 カのおおきいソシオンのもつ荷重が選択的におとしこまれ,縮約されて,グループソシオンのも
表
1‑2イシューとグループにかんするオペレーションルール
I.イシューオペレーション
1.
選択的他律
.dla=7J•~Wai"Ii 2.協和化
I.dWab=7J•{ 1 (I.‑I
炉
+1)n . グループオペレーション
3.選択的縮約
.dGa=7J•~a1•W1a
I
4.
周辺同調
JW ab=7J• (Gb‑W ab)
(JW, JI, JG
はオペレーションルールを適用した場合の各種荷重の変化。
n は変化率。
a1は,グループにおけるソシオン
iの影響力の指数。 )
‑ 73 ‑
関西大学「社会学部紀要』第
25巻第
1号
A B C D E
B
C D E
〈アンカー C 荷重〉
a.
対称化
A B C D E
〈複写〉
〈直列軸〉
c.
直列転移
B C D E
B
D E G
B C D E
︿ 協 和 化
﹀
d.
イシューオペレーション
A B C D E 図
1‑5各オペレーションの作用方向の図解 A
B C D E G
e.
グル....:プオペレーション
つ荷重がきまる。これにたいし,周辺同調は,そうして形成されたグループソシオンの荷重の方 向へ,各 ノシオンがみずからの荷重を変更するオペレーションである。 図
1‑5の e には, ソシ オン
Bにたいする荷重について,選択的縮約と周辺同調のオペレーションの作用方向をしめして ある。ここでは,イシューの場合とはことなり,両オペレーションは拮抗するのではなく,たが いに循環し,強化する関係にある。
グループソシオンの荷重形成における選択的縮約で,各ソシオンがもつ影響力は, 基 本 的 に は,各 ノシオンヘのグループソシオンの荷重によって規定されるとかんがえることができる。も し,集団の中心を主体としてのグループソシオンとし,グループソシオンからの荷重がおおきい
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ソシオンの理論 ( 3 ) (雨宮・木村•藤沢)
ほど中心にちかく,ちいさいほど中心からとおいとすれば,影響力のおおきいソシオンは,集団 の中心ちかくに,そして,影響力をもたないソシオンは集団の周辺にいることになる。現象学的 には,グループソシオンから各ソシオンヘの荷重は,集団の中心からの距離として経験されるの だろう。
選択的縮約における影響度の係数が,グループソシオンからの荷重によっているとすると,影 響度の係数がきまらないと,グループソシオンからの荷重がきまらず,グループソシオンからの 荷重がきまらないと,影響度の係数がきまらないというような,循環論になってしまう。この循 環は,グループソシオンからおおきい荷重をうけ,影響力のおおきいソシオンがきまれば.その ソシオンが他のソシオンやイシューにたいしてもつ荷重をグループソシオンにおとしこんで,っ ぎには,その影響力の係数をつかって選択的縮約をするというようにしてぬけだすことができ る 。
結局,グループソシオンは仮象の存在であり,現実の各ソシオンの相互作用の延長線上に想定 され,各ソシオンのうごきを規定し,共有される仮象の存在,集団にとってのリアリティーにな る。問題は,グループソシオンが,影響度の係数とグループソシオンのもつ荷重,各 ノシオンの 荷重とグループソシオンのもつ荷重.の間の二重の循環のなかにあることである。影響度の係数 とグループソシオンのもつ荷重の間の循環は,グループソシオンのたちあがりに関連する。これ にたいし,各ソシオンの荷重とグループソシオンのもつ荷重にかんする,縮約と同調の循環は,
斉ー化圧力としてグループソシオンの固定にかかわる。
グループソシオンによる荷重布置は,縮約と同調の循環にはさみこまれているため,いったん 成立すると.安定的で,うごかしにくくなる。しかし,あたらしいソシオンの転入,あるいは,
転出などによるソシオネットの変化.ダイアッド, トライアッド,ィシューにかんするオペレー ションなどの他のオペレーションによるソシオネットの荷重布置の変化,これらの変動が,縮約 と同調の循環におけるクリティカルな部分を変更すると,ソシオネットは不安定化のフェーズを むかえる。ここでは,あたらしいグループソシオンの荷重が安定的に形成されるまで.ソシオネ ットのローカルな運動から延長線上の仮象のグループソシオンが,影響度の循環のなかで,不安 定に生起し,消滅し,拮抗し,ときには,誤情報,偶然的な変動によっても,ソシオネット全体 の運動の経路がかわってしまう。
以上のような,集団のダイナミズムのふたつのフェーズ,長期的な安定のフェーズと急速な流 動化と不安定化のフェーズは,日本的集団のダイナミズムとして,かなり一般的にみられる。こ うした日本的集団のダイナミズムの背景には,グループオペレーションにおける二重の循環のは たらきが存在するものとかんがえられる。
図
1‑5には, これまで説明してきたオペレーションルールの作用方向がしめしてある。 aの 対称化は対角成分の荷重の対称化の方向で,それぞれのペアについて別々に作用する。これにた いし, b の並列転移は, この図ではソシオン C にたいする列方向の荷重についておなじ符号をも
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関西大学「社会学部紀要」第
25巻第
1サ
つソシオン同士に正の荷重がしょうずるような転移である。具体的には,
Wac,Wbc, Wdcが負 の荷重で共通なので, それぞれ, ソシオン
Aについては,
Wab, Wad,ソシオン
Bについては
Wba, wbd,ソシオン
Dについては
Wda,wdbに正の尚重を転移することになる。 これは, 行 列での操作としては,それぞれの C にたいする荷重をそれぞれの対角成分にかさねるようにずら して,並列軸となる
C列を転写することになる。 cの直列転移の図では,ソシオン
Aがソシオン
Dを媒介項として ノシオン
Cとソシオン
Eへの荷重を転移する場合をしめした。ここでは,転移 の軸となるのは,アンカー荷重をもつ媒介項のソシオンが他のソシオンにたいしてもつ荷重の行 方向の軸である。あとは,この直列軸の荷重が,アンカー荷重の符号とおおきさがかけあわされ て,ソシオン
Aの行方向へ複写されることになる。
並列転移とグループオペレーションの作用方向は,にた荷重のならぶ列成分を軸としていると いう点で共通している。並列転移では,列方向に正の荷重がならぶスターや,負の荷重がならぶ 敵あるいはいけにえを中心とする同心円的結合がしょうじやすい。この同心円的に結合したソシ オンのあいだでは, スターや共通の敵, いけにえにたいして, にかよった荷重をもつことにな る。これは,われわれの荷重といってもいいものである。おそらく,ここからグループソシオン が仮想されるようになるとおもわれる。
並列転移はグループソシオンにくらべ,より普遍的なものである。共通の敵
(Hoffman1981がしめすように,それが一個体であっても,ー集団であっても, しくみは共通である)にたいす る集団の結束は, 嫌いな人を嫌いな人は好き, あるいは, なかまという並列転移によるものだ が,これは,個人主義文化の集団においても典型的にみられる。そして,これは同時に,並列転 移の媒介項となるソシオンヘの荷重からのみなる, 断片的なグループソシオンであるともいえ る 。 日本的集団で典型的にみられるようなグループソシオンは, おそらく, これがさらに展開 し,一般的になったものだろう。
1‑1‑3.
自己回帰ループにかんするオペレーションルール
自己回帰ループは,自分が自分にたいしておいた荷重である。ソシオン理論における自己のタ イボロジーやダイナミズムについては,木村・藤沢・雨宮
(1990),藤沢・雨宮・木村
(1991),木村
(1991)に議論が展開されている。たとえばソシオン
Aについていうと,
Waaが自己回帰 ループの荷重,あるいは,私
mである。これにたいし,任意の他のソシオンを
Xとすると,
Waxが私
Iの荷重,
Wxaが私
IIの荷重ということになる。荷重の行列表記でいえば, 対角成分の荷 重が私
m,この対角成分を中心に,行方向が私
I,列方向が私
IIということになる。
表
1‑3に , 自己回帰ループにかんするオペレーションルールをしめした。 自己評価は他者か らのひっかききずの総和であるという言葉があるが,
1の自己回帰はこの関係をしめしたもので ある。私
mは , 私
IIに選択的な重みづけをした結果をとりこんでかわっていくということにな る。ここで, ノシオン
iからの荷重の影響力の係数が, a 釘だが,上つきの添え字の
Aは,この
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ソシオンの理論 ( 3 )(雨宮・木村・藤沢)
表
1‑3自己回帰ループのかかわるオペレーションルール 1 . 自己回帰 .dWaa=7J 心 a糾 •W;a
2.
偏向対称化
.dWab=7J・(た
(rA‑Waa)+(Wba‑Wab))a 令は,ソシオンA にとってのソシオン
iの影響力の指数。
(
」 W はオペレーションルールを適用した齢の荷重の変化。
7Jは変化率。
~ おりぷ;;↑レi ご 温 ご ー プ の 重 み 係 数 。 , .はソシオン A )
係数が
Aの主観世界におけるものであることをしめしている。私
IIは,他者がわたしにおいた荷 重,他者にとっては私
Iとして主観であっても,わたしにとっては客銀的与件である。したがっ て,自分自身への荷重といったきわめて,個人的におもえる事象が,他者の主観のうらがえしと しての,客観的な荷重付置の制約のもとにあることになる。しかし,同時に私
mは,だれがなん とおもおうとわたしはわたしだ式の, 主観世界の拠点として, しばしば仮象される。 このよう に,自己回帰ループとしての私
mは,主観と客観のきりむすぶ場であり,この両者のはしわたし をしているのが, a 糾という客観世界をとりこむゲートを調節する主観世界の係数であるといえ
るだろう。
こうした客観世界と主観世界のはざまにある自己回帰
Jレープヘの荷重が,ダイアッド関係に介 入した場合の対称化ルールが
2.の偏向対称化である。ダイアッド関係では,自己の私
Iは他者 の私
I1であり,他者の私
Iは自己の私
I1であるという,ひとことで対称化といっても,自己と他 者のあいだで主銀と客観が反転しつつせめぎあうという現象がしょうずる。ここに,客観と主観 のはざまにある私皿が介入し,自己中心的なバイアスのもとで,かたむいた対称化とでもいった 事態がしょうずる。炉は対称化に自己回帰ループからのバイアスがどの程度影響するかをしめ す 。 糾 が
0なら,
2の式は対称化の式に一致する。 TA はソシオン
Aによる自己回帰
Jレープの平 均への期待値である。
Waaががよりおおきければ,
W心 は
Wbaよりもちいさいところでかた むいたまま対称化することになる。ここでも,各 ノシオンの自己中心的なバイアスをあらわす係 数には,主観世界をしめす上つきの添え字がつけられている。
1‑2.
ソシオンの荷重世界とコミュニケーション
1 . では,ソシオネットにおける荷重を, すべてのソシオンに共通のものとして, 議論をすす めた。これは,皿でのぺる C モードのオペレーションに相当し,また, C モードいがいの,より 一般的な場合をあつかうための,一次近似として必要な想定だった。
2.では,各荷重がどのソ シオンからみたものかについての区別を導入し,ここからしょうずる諸問題をあつかうことにし よう。これによって,モデルの表現は一次元分がふえ,より複雑なものになるが,ソシオンの内 部と外部にかかわる,ソシオン間のコミュニケーションの問題をあつかうことができるようにな る 。
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