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コミュニケーション リチュアル

I

:Pモードオペレーション:

V I  

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図m2 CモードとPモード

スクジアムの表彰台をのぽるとか,公衆の面前で失態を演じるといった広場での出来事や儀式 では,それを目撃している複数のソシオンにほぼ同一の表象ネットワークが起ちあがる。視線

(目配せなど)によって「注意」が連結され,頷きあったり笑ったりするうちにオペレーション が同期化する。表情表出と知覚のループで結ばれて「引き込み現象」が起き,複数のサプネット がほとんど区別できないかたちで一体となって機能する。

なかでも,生理一回路的に荷重を無化する「笑い」の共同は,きわめて重要である。一斉に生

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ソシオンの理論(3)(雨宮・木村•藤沢)

れる笑い声や,おもわず見合わせた目に浮ぶ含み笑いなどは,それぞれの脳で別々に機能してい るはずのネットワークが,同時に同一の表象について同型のオペレーション(この場合は荷重備 給のキャンセル)をしたことを自他に明示する,決定的なシグナルである(木村1983)。

その他,会場にどよめく驚きの声や漏れる溜め息,割れるような拍手なども同様で,その「場」

でほぼ同型のオペレーションが現実に展開されていること,いいかえると原初的な共同主観性が 構成されて現に生き生きと作動していることを如実に示している。

Cモードには, 思わず「場」に引き込まれたり, 「雰囲気」に呑まれたりするテンポラリーな シンクロから,集団催眠や集合的熱狂のような強いシンクロニゼーションにいたる,一連のスペ クトルがある。日常の会話などでは,共通の話題というひとつの接点をめぐって,ネットワーク に局所的なシンクロが起きて,弱いCモードが実現している,と考えられる。

広場の祭りや集会では,よく拍手をともなう賛同や称賛の声が時を同じくしてあがる。団交や 人民裁判などでは,一斉に怒声があがったり,嘲笑の渦がまいたりする。このような場面では,

つよく連結されたCモードのもとで,荷重を集合的に付与したり剥奪したりする社会的ドラマが 進行していると考えられる。強くシンクロしたCモードのネットワークは,動作が超個体化して ほとんど個人にたいする帰属性を失い,いわゆる集団心理の様相を呈することがある。

われわれの考えでは,集団とはこのソシオン・ネットワークのCモードオペレーションを物象 化したものであり,個人という銀念は,逆にPモード・オペレーションのもとにあるソシオネッ

トの機能を実体化したものである。

1 1 1

1‑3

たたみ込みと展開

ソシオネットは,ふつう, CモードとPモードのあいだを通時的に往還するかたちで機能す る。 CモードからPモードヘのネットワークの機能モードの移行を「たたみ込み」あるいは「内 化

( I n t e r n a l i z a t i o n ) ,

逆に

P

モードから

C

モードヘの移行を「くり広げ」あるいは「外化

( E x ‑ t e r n a l i z a t i o n )

とよぶ。

図皿

3

で内化と外化の概念を示した。私

I , I I ,  

皿への写像機能

U i .I s ,   f

戸)が,

A

の内部 への「たたみ込み」であり, その逆の写像が繰り広げ=サプネットの外への「展開」(アクショ

ン)である。

A

B

の部内の小円(それぞれの私

I , I I ,  

皿)の間の対応づけがインクーバ一ソ ナル・コミュニケーション,

A

の内部の小円の対応

C / 2 , I s )

がイントラパーソナル・コミュニケ ーションに相当する。当面,認知と行為のループを把握するための凶式であるにとどまるが,逆 写像や合成写像を考えると,投射と取り込みをはじめ誤解の修正や荷重の押しつけといった興味 ぶかい問題をオペレーションをふくんで整理できる可能性がある。

一般に, Cモードに展開しで情報をすったサプネットは, Pモードヘのたたみ込みに際し,そ の個体のネットワークに特有のバイアス,たとえば記憶された文脈や自己中心的なバイアス(と くに私皿への整合化)にさらされる。そのとき,ネットワークにさまざまなレベルのオペレーシ

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関西大学「社会学部紀要』第25巻第1

ョンの反据や荷重場のゆらぎが生まれる。思考や夢,あるいは空想などは,おそらくその意識ヘ の反映である。サプネットは,結果としていずれ一定の均衡状態に到達する。

A  B 

t a  

fs  図直3写像のモデル

しかし,ここで得られたサブネットの均衡解は,あくまで暫定的なものにすぎない。 Pモード の個別的な解は, Cモードで他のソシオンから作用をうけると,容易にぐらついたりくずれたり する不安定で暫定的な「主観的」状態にとどまる。サプネットの均衡解は,他のソシオンのオペ

レーションによって,ネットワーク上でサボートされたとき,はじめて機能的に安定化する。ソ シオンの主観的世界が安定するためには,コミュニケーションやインタラクションによってそれ を社会的に,つまりネットワーク上に現実化しなければならない。

ソシオンは,こうして, Pモード・オペレーションで到達した内部状態,希望や怖れをふくむ 主観的意図を実現するために,行為や発話を通してネットワークヘ働きかける。この外化の運動 が, しばしばターゲットになった他者のサプネットに当人の意図を超えたオペレーションをひき おこしながら,ソシオンの多重ネットワークに新しいダイナミックスをもたらす源泉となる。

子どもを例にとってみよう。広場でみんなで遊んでいじめられたりするのは, Cモードに展開 したソシオネットのオペレーションである。自分の家に帰って布団のなかで泣いたり,明日のこ とを思って不安になったりするのは, Pモードにたたみ込まれたサプネットのオペレーションで ある。翌日ふたたび友だちに会って仕返しをしたり仲なおりしたりするのが,

C

モードヘの展 開,つまりアクションあるいはコミュニケーションである。

ソシオンのネットワークは,集合的なCモードと個別的なPモードのあいだを移行しながらダ イナミックに機能している,と考えられる。伝統的な社会学の用語では,集合Cモードが「聖」,

分散Pモードが「俗」ということになろう。なお,今日のメディア化された多元的社会では,複 数のサプネットが,物理的な分散ー集中という形態にあまりかかわりな<,

p

モードやCモード を折り重ねて互いに連結され,視点や荷重のバイアスのちがいを内包したまま,高度に複雑なオ ペレーションを多重的に展開している,と見るべきであろう。

直ー

1‑4

思考と儀式

内化されたネットワークは,昼間のデキコ` 卜の荷重を吸ってうねり,反据する。その運動は夢

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ソシオンの理論(3)(雨宮・木村•藤沢)

や空想といったオペレーションをつうじていずれ一定の解に収束するが,それだけでは,まだ思 考する者としての人間は誕生しない。出来事の余韻を吸ってうねるネットワーク上で翻弄される 私,サプネットによって夢みられる「私」が存在するだけである。

この反響やうねりをともなうこのサプネットの動作を,覚醒時に言語表象を用いて操作誘導す るのが「思考」であり, そのエイジェントが「主体一私」(メタ・オペレークー)である, と考 えられる。このエイジェントは,サプネットのダイナミックスについての情報(記憶や気づき)

をもつ選択的スイッチング機能で,若干の自由荷重(意志)を用いてサプネットのシステム・ダ イナミックスに介入を図ることができる,と思われる。

思考は,言語記号をもちいて記憶表象を起ち上げ,これに荷重のオペレーションをほどこす操 作である。対象化的な思考が成立するには,知覚表象による引き込みや記憶表象の反響から荷重 機能をひきはがして,言語的意志(在れ,失せろ)によって独自に荷重をオペレーションするこ とが必要である。子どもの内面性が未熟であるのは,単に論理一言語機能が未熟であるのではな く,おそらく知覚の引き込みや記憶の残響の力がつよすぎて,言語系による自律的な荷重の誘導 が難しいからだろう。

ところで,広場の儀礼は,知覚可能な表象や現実のアクションを用いてシンボリックに集合的 な荷重オペレーションを展開するいわば外面的な思考であるとみることができる。席の上下や装 束,飾りつけられた肖像,挨拶儀礼などは,知覚表象のパターンに荷重秩序を投射して,その関 係を外部で思考するための装置である。表彰台をのぼるとか,王座を降りるといった儀式のパフ ォーマンスは,そのシンボルの変換操作をつうじて,見ている者のサブネット(主観的世界)の なかに実際に荷重オペレーションを惹起する。戴冠式や叙勲などの式典,判決や刑罰の儀礼的形 は,広場を埋めて見守る観衆の溜め息と一緒に,ソシオネットの荷重布置,つまり象徴的な社会 秩序を現実に変容する。なお,そのような儀式の遂行は,論理思考に優るとも劣らない厳密なル ールに則って行われなければならない。そうでなければ, (思考と同じ様に)そのオペレーショ

ンの帰結は無効となる。

言語による個別的な荷重オペレーションが個人の「思考」であるとすれば,広場の「儀礼」や 社会的イベントの「演出」は, 集団の思考あるいは集合意識

( c o l l e c t i v ec o n s c i o u s n e s s )

を構 成する,というべきであろう。

これにたいし,より記号性の高い象徴によって荷重オペレーションを誘導するのが,表出的シ ンボリズムであり,これも人間のおこなう一種の思考と考えられる。たとえば,ぉ人形遊びや肖 像に髭を生やすといったプリミティヴなものから始まって, 「箱庭療法」や「描画」のようなよ り象徴性の強い活動,さらに,神話や物語り,文学,詩歌といった一般性の高い芸術までが,こ の種の「思考」つまり象徴モードの荷重オペレーションに含まれる。

なお,密かに採取された唾液や毛髪に,厳密に定められた手順つまりシンボル・システムの変 換ロジックに従って,然るべき操作を加える,といった類の本格的呪術も,この系列に属する一

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ドキュメント内 ソシオンの理論 (3) : ソシオンの一般理論 (ページ 63-102)

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