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斎 藤 義 則

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(1)

地方中小都市における中心性および中心商業核の 施設構成等の変化とまちづくりの課題について

斎 藤 義 則

1 はじめに      地方中小都市に関する既往研究は少なく,DID 人口規模の小さい地方中小都市は,モータリゼー   人口規模ごとに空間構造を分析したものD,地方 ションの発達による日常生活圏の広域化にともなっ  小都市の概念規定と人口公正の変化を分析したも て,周辺農山村の中心地としての機能が弱められ  の2),居住地特性をアンケート調査から分析した てきたことはすでによく知られている。また,都   ものなど3)がある。他には,シンポジュウムの記 市化を経て人々のニーズが多様化し高度化するに  録〉やシンポジュウム資料5}として出版されたも つれて,地方都市の中でも特に商業集積の少ない   のがある。いずれの研究も地方中小都市の中心性 地方中小都市の中心商業核は消費者のニーズに十   と中心商業核についての分析はなされていない。

分応えられずに,衰退化する傾向にあり,その中

心性の回復と中心商業核の再生がまちづくりの重   2 研究の対象と方法

要な課題の一つになっているが,その実態があま   研究対象とした地方中小都市は,沖縄県を除い り明らかにされていない。       た1985年度に設定されている広域市町村圏の中心 そこで本稿は,地方中小都市の中心性の回復と  都市で1985年の国勢調査による人ロが3万人以上5 中心商業核の再生に資することを目的として,都   万人未満に該当する98市町である6)。

市化以前と都市化以降の中心性および中心商業核    アンケート調査は,1996年10月に生活圏におけ の立地施設等の変化の実態とまちづくりの課題に  る中心地機能と中心商業核の変化に関して98市町 ついてアンケート調査により明らかにしようとす  の企画担当課長宛に実施し,89市町から回答を得 るものである。       た。

1)戸沼幸市;人口尺度論 彰国社 1980年5月

2)和田幸信;町村合併から見た地方小都市の成立と地域特性に関する研究,日本建築学会計画系論文報告集,355 号,pp.71−81,1985年9月

人口・DID人口30万人以上の大都市人口からみた地方中小都市の人口構成とその経年変化に関する研究,同上 406号,pp.111−121,1989年12月

3)拙稿:地方都市圏における都市分布からみた中小都市の居住地特性,第26回日本都市計画学会学術研究論文集,

PP.661−666,1991年

地方中小都市における中心核の立地形態変容と市街地構造について,茨城大学政経学会雑誌,第65号,pp.49一 57,1996年3月

4)伊藤滋:小都市の魅力 清文社 1991年5月

5)日本建築学会都市計画委員会:地域像と計画のパースクティブ 1995年5月

6)1995年国勢調査では,8都市が5万人を超えている。茨城県鹿嶋市(60,671人),茨城県龍ケ崎市(69,161人),

栃木県大田原市(53,683人),栃木県黒磯市(56,275人),福島県原町,千葉県東金市(54,522人),和歌山県橋本 市(53,472人),鹿児島県国分市(50,048人)。

(2)

アンケートの主要な内容は,①都市の歴史的基   くなっている。

盤とまちづくりへの活用,②昭和30年以前とアン   都市化前後の地方中小都市における中心性の強 ケート調査時点でみた都市化前後の中心地機能の  化と衰退が小売り商業機能に大きく左右されてき 変化とその理由,③中心商業核における都市化前  たことがあらためて確認できる。

後の施設構成の変化と利用特性,④中心地機能強

化の課題とまちづくりの目標,⑤中心市街地にお    図1 都市化前後の中心地機能の変化 ける道路体系の変化,の5項目43設問であり,本 囲もとからあった機能 口強化された機能■弱くなった機能 稿では,このうち⑤を除いた4項目について分析    その他 4

を行った。      なし

7

観光

3 広域市町村圏における中心性とその変化     文箋繕鶴を) 田  19

文化(高等

(1)中心性の変化      教育機関) 表1は,地方中小都市の都市化前後の広域市町   情報樋信

工業 14

村圏内における中心性の変化を示したものである。 9       流通

アれをみると,「都市化以前から中心性が強かっ      医療 卸         i

@     た」都市が59都市(72.8%)あり,地方中小都市  業務(官公庁など)

業務(金融・

が広域市町村圏において重要な位置を占めていた    保険など)

ことがわかる.都市化以降はこのうちの半数にあ 商業麟髄謡

u辮講畿贈冨ξ瀞必蹴黙)

  9@       3瞼

@      蜀

@       51

@   15

B 、。2。3ぎ、。,。6。

のが「都市化以降に強くなった」都市が13都市   (3) 中心性変化の理由

(16.0%)を占める。      図2と図3は,都市化以降に中心性が強くなっ

(2)中心地機能の変化      た都市と弱くなった都市を対象として,強くなっ 図1は,地方中小都市における中心地機能が都   た理由と弱くなった理由を示したものである。

市化前後でどのように変化したかを示したもので   強くなった理由としてあげられているのは,

ある。      「大型店・郊外店舗の進出などによる商業機能の強 都市化以前は,小売り・卸売り商業機能をはじ  化」,「都市間の交通体系が整備された」ことの割 めとして,業務機能,文化機能,医療機能,情報  合が高くなっている。これに対し「旧商店街の整 通信機能,流通機能と多様な機能が複合的に集積  備による商業機能の強化」をあげる都市は少なく していたことがわかる。      わずかに3都市である。これは,地方中小都市に

都市化以降に中心性が強くなった都市の強くなっ  おける中心性の強化が既存の中心商業核の発展に た中心地機能は,小売り商業機能と医療機能が目  つながっていないことを示している。

立っており,同様に中心性が弱くなった都市の弱    中心性が弱くなった理由としてあげられてい くなった中心地機能は小売り商業機能の割合が高   るのは,「商店街の衰退」,「商店街の道路・駐車場

表1 都市化前後の中心性の変化 以前は中心性がな 以前から強く以降以前は強かったが以前は弱かったがかったが以降は強

も強い    以降は弱い   以降は強い    くなった  以前も以降も弱い合計

30      29      10       3       9  81

(3)

整備の遅れ」,「人口の停滞・減少」,「サービス,  いた施設と,都市化以降に増えた施設と減った施 娯楽機能が衰退した」ことの割合が高い。これら  設を示したものである。

は,地方中小都市の中心性の回復のためには,ど   都市化以前は,大型店と中型店を除いた小売店,

のような中心地機能の強化をめざして商店街の振  飲食店,官公庁,文化・娯楽施設,住宅の割合が 興を図るのか,ヤイカーショッピングに対応した  高い。都市化以降は,小売店が多くの都市で減少 商店街の交通インフラ整備,商圏人口もしくは中   し,大型店,中型店が増えているのが大きな特徴 心市街地の夜間人口の回復などの対策が必要であ  である。

ることを示している。      減ったと回答した都市が多いのは文化娯楽施設,

官公庁,飲食店である。文化娯楽施設は都市化以 図2 都市化以後に中心性が強まった理由    前にあったと回答した都市よりも多く回答してお 他の市町村の       り,その減り方の著しさを示している。飲食店は

機能が弱まった    4

人口が増えた     ,       減ったと回答した都市も多いが,これを上回って

情報機能の整備 ・      増えている都市が多く,新旧の飲食店の再編成が

商店街の道路・

駐車場整備    ・      進んでいることをうかがわせる。その他に減った

都市間の交通体系が 17

整備 施設より増えた施設が多いのは,住宅,サービス

文化機能が強化 7 施設,業務施設がある。

工業機能が強化 o       都市化過程を経て,従来からの小売店が大型店

流通機能が強化       6

サービス,娯楽機能      や中型店に経営を圧迫されて減少してきたこと,が強化      9

業務機能が強化    ,      官公庁の郊外立地移転と文化・娯楽機能が衰退し

商業機能が強化(大型店・

・1  てきたことが確認できる。

郊外店舗の進出など)

商業機能が強化    3

(旧商店街の整備)

゜  5   °  盤5  2°  25  図4 中心商業核における立地施設の変化 図3 都市化以後に中心性が弱まった理由

■元からあった施設ロ増えた鮪設■械った鮪設         ° ……i百 … …… …    ……… 7…………

@  その他  2       官公庁      23 サの他の市町村の      11機能が強まった      10      工場   8

人口の停滞・減少       隆8      佳宅       21 情報機能の整備の  3       25遅れ      文化 娯楽鮪設      6

観光機能の衰退   2      サービス施設     14 商店街の道路・駐車      盒g

場整備の遅れ      賜撒  8

都市間の交通体系      6

      中型店      30       4

ャ通機能が衰退

       4       大型唐       50 ニ務機能が衰退

サービス、娯楽機能      14       0  10  20  30  40  50  60  70  80 が衰退

商店街の衰退 24

0 5      5  即  麗  (2)中心商業核の立地形態変化と発展・衰退傾 4 中心商業核の立地施設構成および立地形態の    向

変化と利用特性      表2は,中心商業核の立地形態の変化を都市化

(1)立地施設構成の変化       前後で示したものである。

図4は,都市化以前から中心商業核に立地して    中心商業核が形成されていない2都市を除くと,

(4)

都市化以降に中心商業核が拡大していることがわ  業核の発展・衰退傾向を示したものである。これ かる。そして,既存の中心商業核と連続して拡大  をみると,新旧の中心商業核が共存して繁栄して したのが「面的に広がっている」,「軸状に延長し  いるのは6都市(10.3%)にすぎず,「新しい商 ている」ものであり,不連続に拡大したのが「複   業核が繁栄」し既存の中心商業核が衰退している 数の核で多核化」,「複数の軸で多軸化」した都市  のがほとんどで49都市(84.5%)を占める。

である。「異なった形態の商業核が複合している」

都市ではどちらにも該当しえるし連続不連続の    表4 新旧中心商業核の発展・衰退傾向 両方で構成されることもある。

都市数パーセント 中心商業核の立地形態変化で多くを占めるのが   共存している 6    10.3 既存の商業核とは不連続に新たに形成された商業   新しい商業核が繁栄している 49    84.5 核で構成される,「多核化」と「多軸化」であり,  両方衰退している 2     3.5

1     1.7

前者が36都市(42.9%),後者が24都市(28.6%)       合計

58   100.0 を占める。

都市化過程を経て,ほとんどの地方中小都市に 表2 中心商業核の立地形態変化 おいてその中心商業核が拡大もしくは複数化して 郁市数パーセント いるにもかかわらず,既存の商業核は衰退してい

商業核の形成はみられない 2     2.4 ることが確認される。

面的に広がっている イ状に延長している

11    13.1

〟@  10.7   (3)新中心商業核の施設構成と利用特性

複数の核で多核化 36  42.9   図5は,新たに形成された中心商業核における

複数の軸で多軸化

ルなった形態の商業核が複合している

24    28.6

Q     2.4 立地施設と既存の中心商業核から移転した施設を

合計 84    100.0 示したものである。

立地施設で最も多いのが大型店で50都市とアン 表3は,表2の「面的に広がっている」,「軸状   ケート回収都市の半数以上を占め,次に中型店の に延長している」都市を対象に既存の中心商業核  28都市,飲食店の24都市が続いている。さらに,

の発展・衰退の傾向を示したものである。     文化・娯楽施設の13都市,サービス施設の11都市,

「衰退している」と回答したのが15都市(60.0  住宅の10都市が続く。

%)を占め,地方中小都市における中心商業核の

拡大が発展に結びついていないこと,商業集積の     図5 新中心商業核における立地施設 低密度化に寄与していることを示している。

暫新しい商桑槙の麺設檎成0新しい商桑核へ移った施設

宮公庁

表3 既存の中心商業核の発展・衰退化傾向

工場 4

都市数   パーセント 住宅 10

文化・娯楽施設

変わらない 3      12.0 13

サービス施設 11

衰退している 15       60.0      桑務施設 7

発展している 7        28.0         飲食店

24 合 計 25       100.0        小発唐 23

中型店 28

表4は,中心商業核が「多核化」,「多軸化」,    大型店 50

「複合」している都市を対象にして,新旧申心商 0       10      20      30      40 50

(5)

既存の中心商業核から新しく形成された中心商   めていることが,既存の中心商業核の救いとも言 業核に移転した施設はで最も多いのは小売店で23  えるが,いずれにしても高齢者層の利用を除くと 都市である。ついで,飲食店や大型店,中型店が   新たな中心商業核に利用客が奪われていることが 続いている。      わかる。

地方中小都市の新たな中心商業核の形成は,大

型店,中型店を核にして,これに飲食店の新規立        図7 利用客の居住地 地と既存の小売店が移転して形成されている場合

が多いことがわかる。 0   5   10  15  20  25  30  35  40

図6,7,8は既存の中心商業核と都市化過程 8

で新しく形成された中心商業核における利用客の   市町外 9      40

特徴を示したものである。 0 2

図6 利用客の年齢層         市町内 19 37

0   5   10  15  20  25  30  35  40

0 3

0 近隣 19

@    32 高齢層       32

W 3

18 ■他の市町村    囲どちらとも言えない

1 口新しい商業核   團既存の商業核

中年層 19 38

0      15

図8 利用客の購入商品 若年層 4      38

0   5   10   15  20  25  30  35

1 28

11

■他の市町村   囲どちらとも言えない 高級品 2 17

口新しい商業核   圏既存の商業核 4

買回り品 18

@     33 図6の利用客の年齢層をみると,若年層と中年 3

層で圧倒的に新しい中心商業核が利用されている 0 25

      最寄り品のに対し,高齢者層では逆に既存の中心商業核の

31 2

割合が高い。

図7の利用客の居住地をみると,近隣地区から ■他の市町村   囲どちらとも言えない 自市町内,市町外のいずれにおいても新しい中心 口新しい商業核   國既存の商業核 商業核を利用する割合が高い。

図8の購入する商品をみると,高級品で他の市

町村が最も割合が高くなっているのを除くと,高   5 中心商業核の整備課題・方針と中心性回復策 級品,最寄り品,買回り品のいずれにおいても新    (1)中心商業核の整備課題

しい中心商業核の割合が高い。       表5は,中心商業核が抱えている問題を中心商

「どちらとも言えない」の回答が一定割合を占  業核の立地形態変化別に示したものである。

(6)

全体では「駐車場不足」というハードなインフ   いずれにしても,「(消費者)ニーズに対応した ラ整備と,「ニーズに対応した店舗が少ない」と  店舗を誘致する」などの商業経営にかかわる対策 いう経営ソフトに関することが最も高い割合を占  よりも,まちづくりに直接かかわるまちなみつく めている。「回遊性がない」,「複数の商業核に分   りや道路整備,回遊1生の向上に期待がよせられて 散し中心性が薄れている」,「町に活気がない」,  いることがわかる。

「町並みに魅力がない」も多くの都市で共通に指   (3)中心性回復の対策

摘されている。「複数の商業核に分散し中心性が    表7は,広域市町村圏内における将来の自都市 薄れている」が多核化した中心商業核と多軸化し  の中心地としての役割を示したものである。

た都市の割合が高くなっているが,これらを除く   自都市にだけ中心都市としての機能を集中させ と,中心商業核の立地形態変化による大きな違い  たり,自都市だけで自立できることを目標として はみられない。      いる都市は少なく,周辺市町村と機能を分担しな

(2)中心商業核の整備方針      がら中心都市として存続することを目指している。

表6は,中心商業核の立地形態変化別に中心商   では,どのようにして中心性の強化を図ろうと 業核の整備方針を示したものである       考えているかを示したの斌表8である。

これをみると,「個性的な町並みをつくる」が   比較的割合が高い項目をあげれば,「住環境を 最も多く,「商業核どうしをつなぎ回遊性を高め  整備して人口を増やす」,「歴史的なものを保全・

る」,「道路体系を整備する」と続いている。特に,  修復して観光・交流機能を強化する」,「自然環境

「回遊1生を高める」は,整備課題と同様に多核化  を保全し利用して観光・交流機能を強化する」,

した中心商業核と多軸化した都市の割合が高くなっ  「旧商店街を中心に商業機能を強化する」,「文化 ている他は,共通した傾向を示している。     施設(ホール,美術館など)をつくって文化機能

表5 中心商業核の立地形態変化別にみた中心商業核整備の問題

町並 みに 一つの商業核      ニーズに対応魅力

複数の商業核商業核が広がではニーズに      した店錨が少がな町に活気がな に分散    った  対応できない 道路が複雑 回遊性がない 駐車場不足   ない   い    い   合計 商業核なし 0      0      0      0      1      2      1    1      2    7

面的に拡大 4         2         2         0         7         8         9   4         4   34

軸状に延長 2         2         1         0         4         7         5   6         8   31

多核化 17         2         7         7        16        22        20   13        10   95

多■化 15        3        6        1        10        18       19  11        14  79 複合化 1      ユ      1      0      1      1       1     1      0     5

合計 39        10        17         8        39        58        55  36        38  251

表6 中心商業核の立地形態変化別にみた中心商業核の整備方針

ニーズに対応活気を出すた 一つの商業核回遊性を高め新しい商業核       個性的な町並した店舗の勝めのイベント

の重点整備    る    の整備   道路整備   みづくり    致     開催   合計 商業核なし 0       1       1       ユ       1       1       0    5

面的に拡大 ユ        4        2         5        7        0        4  23

軸状に延長 3         3         0         3         7         4         6  26

多核化 2        22         5        14        16         7         6   72

多軸化 1        11         1        13        ユ4         6         9   55

複合化 0        2        0         1        0        ユ        0   4

合計 7       43        9       37       45       19       25 185

(7)

表7 広域市町村圏における自都市の役割    地方中小都市においても都心居住を推進すること 都市数パーセント が重要な課題になっていることを示している。

中心都市としての機能を集中させる 12    14.6

周辺市町村と機能を分担する 62  75 6  6 歴史的基盤とまちづくりへの活用

圏域内で均等な役割を担う ゥ市町で自立する

7     8.5

P     1.2 (1)歴史的基盤の保全状況と重層性

合計 82   100.0 前節までの分析により,地方中小都市の中心性

の強化や中心商業核の整備方針において歴史的環

を強化する」の順になる。       境の保全・活用が大きな期待がかけられているこ 全体の傾向としてみれば,新しい施設整備や誘      とが明らかになった。本節以降ではこれをふまえ 致産業機能の強化,あらたな事業展開というよ       て,地方中小都市の歴史的基盤の保全状況,まち

りも,すでに今ある良さをさらに充実強化するこ       づくりへの活用実績の評価,今後のまちづくりへ とで,中心性の強化を図ろうとしているようにみ       の活用意向についてのアンケートの分析結果を示 える。その典型が自然環境と歴史的環境に対する       す。

期待感として表れていると考えられる。      表9は,地方中小都市の歴史的成立基盤を示し さらに,大型店が立地して新しく形成された中      たものである。いずれの地方中小都市も個性的で 心商業核ではなく,既存の中心商業核を中心とし       多様な歴史的基盤を持っていることがわかる。

た中心商業核機能の強化や文化機能の強化にも表

れている。また,「住環境整備により人口を増や 表9 地方中小都市の歴史的基盤 す」が最も多くの都市であげられていることは,

都市数   パーセント 表8 中心性強化の対策 中世の城下町 15       17.4

都市数 パーセント 近世の城下町 17       19.8

旧商店街を中心に商業機能 宿場町 12       14.0

を強化 31 13.4

大型店を中心に商業機能を 門前町 5       5.8

強化 17 7.4 港 町 10       11.6

郊外型店舗を中心に商業機 温泉町 1       1.2

能を強化 9 3.9

業務機能の強化 6 2.6 農山漁村集落 21       24.4 サービス、娯楽機能の強化 13 5.6 その他 5       5.8

文化施設をつくって文化

@能を強化 26 11.3 合 計 86      100.0 高等教育機関を誘致して文 表10は,市街地の歴史的骨格と建造物の保存状

化機能を強化 15 6.5

況を示したものである。「ほとんど残っていない」

歴史的なものを保全・修復

オて観光・交流機能を強化 35 15.2 と回答した都市は15都市(17.2%)だけで,何ら 自然環境を保全・利用によ 表10市街地の歴史的な骨格と建造物の保存状況 り観光・交流機能を強化 31 13.4

テーマバークをつくって観 都市数パーセント

光・交流機能を強化 8 3.5 多く残っている 10    11.5 住環境を整備して人口を増

竄キ 37 16.0

多少残っている

s街地の骨格だけ残っている

31    35.6 R1    35.6

@    17.2 ほとんど残っていない 15

その他 3

合計 87   100.0

合計 231 100.0

(8)

かの形で歴史的な基盤が残っていることがわかる。  を進めてきた」が31都市(38.3%)である。

表11と表12は,歴史的に形成された骨格道路と

中心商業核が現在のものとどのように重なりあっ  表13市街地の歴史的な骨格と建造物のまちつく ているかを示したものである。 骨格道路は約半数      りの活用実績

の都市で「ほとんど重なって」 おり,「一部が重 都市数パーセント

なっている」をあわせると7割弱を占める。 保全・修復・再生に努めてきた

゚代的な市街地の骨格づくりと調和させてきた R1    38.34     4.9

中心商業核についても, 「ほとんどそのまま重   近代的な市街地の骨格づくりを優先させてきた 46    56.8

合計 81   100.0

なっている」のが36都市 (41.4%)を占め,「一

部が重なっている」をあわせると6割を占める。   今後の意向では,「道路整備や再開発などの近 地方中小都市の中心商業核の振興による中心性   代的な市街地の骨格づくりと歴史的な町並みと建 の強化は,このような地方中小都市が持っている  造物の保全・修復を調和させながらまちづくりを 歴史的基盤をどのように活用するかにかかってい   を進めていくつもりである」が最も多く60都市 るとも言える。      (70.6%)を占める。さすがに,「歴史的な町並み

や建造物の保全・修復よりも道路整備や再開発な 表11骨格道路の重層性        どの近代的な市街地の骨格つく りを優先させてま 都市数パーセント   ちづくりを進めていくつもりである」という都市 そのままほとんど重なっている

齦狽ェ重なっている 「個性的なまちづ

ほとんど重なっていない 28   32,2  くりをめざしてできるだけ歴史的な町並みと建造 合計 87  100.0  物の保全・修復・再生に努めていくつもりである」

と回答した都市は,相変わらず少なく8都市(9。4 表12 中心商業核の重層性        %)である。

都市数  パーセント

ほとんどそのまま重なっている 36   4L4  表14 市街地の歴史的な骨格と建造物のまちつく

一部が重なっている ルとんど重なっていない

18   20・7     りの活用方針33    37.9

合計 87    ユ00.0

都市数パーセント 保全・修復・再生に努める 8     9.4

(2)歴史的基盤のまちづくりへの活用       近代的な市街地の骨格づくりとの調和 60    70.6 近代的な市街地の骨格づくりを優先 17    20.0

表13,表14は,地方中小都市の歴史的基盤をま 合計

85    100.0

ちづくりにどのように活用してきたか,今後どの ように活用する意向があるかを示したものである。

過去において,「個性的なまちづくりをめざし  7 むすび

てできるだけ歴史的な町並みと建造物の保全・修   地方中小都市を対象としたアンケート調査から 復・再生に努めてきた」都市は少なくわずかに4  都市化前後の広域市町村圏における中心性の変化 都市(4.9%)にすぎない。最も多いのは,「歴史  および中心商業核の施設構成変化とまちづくりの 的な町並みや建造物の保全・修復よりも道路整備  課題について分析した。

や再開発などの近代的な市街地の骨格づくりを優   本稿の分析結果は,地方中小都市における中心 先させてまちづくりを進めてきた」都市で46都市  性の強化と中心商業核の振興がきわめて厳しい状

(56.8%)を占める。「道路整備や再開発などの近  況にあることを改めて再認識させるものであるが 代的な市街地の骨格づくりと歴史的な町並みと建   一方で今後の対策としていくつかの重要な手がか 造物の保全・修復を調和させながらまちづくりを  りを与えてくれる。

(9)

その一つは,大型店の誘致による新たな中心商 業核の形成は,地方中小都市の中心性の強化に貢 献するものの,既存の中心商業核の強化には必ず しもつながらないことである。むしろ,商業集積 を低密度に拡散させるという問題が生じているこ とが明らかになった。

さらに計画論として言えば,新旧の中心商業核 が共存していくためには相互の機能分担による回 遊性の向上をはかることが必要であること,そし て既存の中心商業核の歴史的基盤の活用と都市化 以降に減少した文化・娯楽機能を回復し,大型店 を核とする新中心商業核との違いを明確にする必 要があると考えられることである。

そして,地方中小都市にはこれらの文化・娯楽 機能を回復する対策を可能とする潜在的なまちづ くりの資源が豊富に存在していることである。歴 史的な成立基盤は多様であり,かつその基盤が保 存されている都市が多いことはすでに指摘したと おりである。

地方中小都市の位置づけを再検討することも必 要であろう。日常生活圏が広域化しているなかで,

従来,人口規模の小さな地方中小都市は生活圏の 中心都市としての役割を果たすことは困難であり,

ここに中心地機能を配置することは効率が悪いも のと考えられてきた。しかし,工業化を基盤とし た都市化を経過した今日の我が国では,都市の魅 力は人口や産業集積の巨大さと都市の利便性など に求められるのではなく,都市の歴史的環境や文 化,自然環境の豊かさに代表される都市の個性と 快適性に求められるようになっている。

このような社会的状況のもとでは,地方中小都 市の人口の小規模性はディメリットではなく,む しろ自然環境と共生し,親密な少人数社会を形成 するための有利な条件として評価でき,脱都市化 社会における新しい都市文化を創造するフロンティ

アになることが期待される。

参照

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