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高校中退に関する実態調査

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(1)

茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989)193−205 193

      高校中退に関する実態調査

一中退に至るまでの過程と中退者の心身の状況について一

大谷 尚子*・清水 利江**

  (1988年9月12日受理)

AFact−finding Survey on Leaving High School in Mid−Course:

     The Factors and Process of Leaving School

Hisako OTANI and Rie SIMIzu

  (Received September 12,1988)

1 は じ め に

 近年,高校生の中途退学者(以下「高校中退者」と称す)が急増しつつあり,教育問題としてだ けでなく,大きな社会問題としても取り上げられている。

 昨年の1月,文部省から発表された昭和60年度の高校中退者数は約11万5千人と,59年度に比べ 約5千人余り増加しており,史上最高を記録した1)。

 本来,義務教育でない高校への進学は強制されるべきものでなく,中途退学して別に進路にむか うことは各人の自由である。あえて,問題視すべきことではない面もある。しかし,わが国のよう な学歴偏重主義の社会にあって,高校を中退せざるを得なくなった青少年の挫折感・敗北感は軽視 できないほど大きなものと推察される。一部の高校中退者のなかには,「高校中退」という人生の 転機を通じて,かえって活路を見出し自己実現へと発展させることも可能である。しかし,大半の 高校中退者は,状況をさらに悪化させ,立ち直るのに本人および周囲の人々の大きな労力を必要と するであろう。

 高校中退者をこれ以上増やさないために,また,「中退」したことを後悔する者,「中退」につ いて悩む者を一人でも減らすために,一刻も早く,「中退」の実態を正確につかみ,対策を考えて いく必要があると思われる。

 高校中退の実態については,前述の文部省や教育委員会による調査のほか,一般民間人ら2)によ り概要が明らかにされてきつつある。本研究では,特に定時制高校に通う高校中退者を対象として,

「中退」がどういった経過をたどって起こるのか,また,中退者の心身の状況はどうなるのかを明 らかにしたい。

*茨城大学教育学部教育保健学科.

**純建築設計室(水戸).

(2)

II研究の方法と対象

  1 研 究 方 法  1)対象の抽出(選定)

 東京都と千葉県の定時制高校に通っている生徒のうち,高校中退の経験をもつ生徒を,当該校養 護教諭らに抽出してもらうよう依頼し,対象者を選定した。

 2)調査の実施       表1 対象者の概況  当該校養護教諭を通して,アン

ケートおよび面接調査を行った。

・実施期間:昭和62年11月中旬〜12  月中旬,回収率:95.6%

・調査内容:(1)「中退」した高校の  概況・高校選択について (2)「中  退」した高校での,入学時から

「中退」までの高校生活状況につい

て,③「中退」の経過について(「中退」の発端〜

退学まで)(4)「中退」以後の生活について⑤「中退」

に関する意見

性別 現在の所属学年 年    齢 男女 1 2 3 4 15  16  17  18  19 20〜

東京

逞t

15 7 P1 10

2 3 11 6 S 3 11 3

0 0 9 6覧7 0 Q 0 3 3 4 9

26 17 6 6 22 9 2 0 12 9 11・9

60,539.5 14,014,051,120.9 一  }R2.6    67.4

 2 研究対象の概況 1)属 性

本研究の対象者の属性は表1の通りである。

表2 高校の選定理由 自分の成績に合っている 家から近い

将来進みたい方面に合わせて 自分のやりたい部活動が強い 校風・制服などにあこがれて その他

 2) 「中退」までの高校生活の概況   ① 高校進学にあたっての選定理由

 中退者が「中退」した高校を高校進学にあたって選ん だ理由としては,表2に示す通り「成績に合っている」

が56%と最も多い。逆に「やりたい部活動が強い」「将 来進みたい方面に合わせて」といった,主体的・積極的 な理由で選定している者が少ない。

  ② 入学した高校の概況

 ○ 中退者が「中退」した高校の設置主体としては,

表3に示す通り,公立4割,私立6割と,私立の方が多 かった。定時制高校(公立)を中退したものが2名含ま

n= 43   %55.8 16.3

表3 入学した高校の概況等  n= 43 高校の

增@類

公      立

п@    立 ウ  回  答

58.1%

R9.6 Q.3

教師の

ウえ方

わかりやすかった ワあ ま あ … 墲ゥりにくかった ウ  回  答

4.7 S6.5 S6.5 Q.3

家庭で

フ学習

毎日していた 栫Xしていた

Sくしなかった

4.7 Q0.9 V4.4

れていた。文部省が行なっている調査でも,私立の方が多いという結果3)が出ている。

 ○ 中退者の教師の教え方に対する評価は,全体的に見て良くない。

 ○ 家庭での学習状況は,7割以上の者が「ほとんどしていなかった」と答えている。

(3)

大谷・清水:高校中退の実態 195

皿 結 果 と 考 察

  1 中退に至る過程  1)概 況

 「中退」という事象は,「○月△日付退学」と明記されるように,ある一時点のことである。し かし,それに至るまでには種々の過程があり,その間の生徒の心理的葛藤を考えると,中退に至る までの経過を追ってみる必要があろう。

 本調査では退学した時期のほかに,「あなたの周囲で,中退のことが口に出されるようになった のはいつ頃からですか」という内容で,中退の「きっかけ」 (発端)について質問した。次いで

「中退すること(させられること)がはっきりと決まったのはいつ頃からですか」と中退の「決定」

の時期を問うた。本調査の回答者の場合,3人を除く40人の者が「自主的に」退学したとする者で あったので,「決定」の時期は「決心」した時期と言うこともできる。それらの結果をまとめたの が,表4である。そしてその数値から無回答(以下NAと称す)の値を除いて経時的に累積したも のが図1である。

      1。詳       1°°

表4 中退に至るまでの過程(時期の分布)

       数値は人数

i学年,時期

@学期)

きっかけ・発端

フ 時 期

決心・決定 フ 時 期

退   学 フ 時 期 1年1学期

@2@3

12(27.9)

P5(349)論8)3(7.0)

3(7.0)

P2(2。9)}127   (62β)12(279)

藩臨

2年1 6(14.0) 3(7.0) 2(4の

2 1(z3)伽    82(4.7)   (1&6)    103(7.0)   (23.3

3 2(4.7) 3(7.0) 5(1L6)

3年1

2 1(2.3)

3 2(4.7) 2(5.4)

無回答 3(7.0) 6(14ρ) 6(14.0)

累積率

50

 0  1末2末3末1末2末3末1末2末3末

    1年    2年    3年 →時期   一太線は上昇率が最も高い時期を示す

図1 中退に至るまでの過程(時期の分布)

975  _一曽      /β一        ,一  一

惣ζ〆      !

100

 !潤e・ /き1 81  67鼻/ 々2

E!/・・

cチ/

729

8  ノ ←中1/

P4°㍗ 退

o  

1!・・

決   心 

・一.

挟  81 81

 この図より「発端」の時期は1年次の1〜2学期に7割弱を占めていることがわかる。1年次の 3学期にそのほぼ大半が「退学」という行動をとり,一応の結論をみる。そして,また,2年の1 学期に「発端」のみられる者が若干高率になり,結論の出ないまま経過するが,その多くが2年次 の3学期において「中退」という結論を出している。

 なお,学校の専攻の違いにより,「発

糊欝縁謙灘戦 54・  37・1執騙

学期までに「発端」が発生している滞琶,[===亜=二=]」1騙一

2)「発端」・「決定」・「退学」。   5。  1。。辱

の時期の相互関係      鮪意差あり   ①「発端」→「決意」       図2専攻別にみた「中退」の発端時期  (姦2舗)

(4)

 生徒が「発端」から中退することを「決意」するまでの期間は表5の 通り,2ケ月以内という早期決定群と,4ケ月又は6ケ月以上の晩期決 定群に2分される。

  ②「決定」→「退学」

 「退学」の時期は図3の通りで「決定」した月と同じ月のうちに退学 する者が64%と多い。また,

その翌月に退学するという者 も22%であり,あわせて約9 割が「決定」してから2ケ月 以内に退学している。

 また,年度末の3月を照準に 退学している者は42%であった。

  ③

 図4に示す通り,

決意と同一月に退学   63.9%

41.7 22.2 lL2 8.3 13.9

年度末の3月に退学 2.8 決意した次の月に  退学22.2%

     その他

       41.7%

図3 退学の時期についての分布     中退経過→再入学までの期間

         「発端」→「決定」→「退 学」の相互の期間が短い場合には,退学後に定 時制に再入学するまでの期間も短い。

 テキパキ決断して,テキパキ転進ということ である。これは,本人および周囲の人々の性格 によるもののほか,高校に通う上での困難度が 大きければ大きいほど決断時間を要し,回り道 を必要とすることも考えられる。

「きっかけ1と「決意」が  同一学期内(短い)

    n=21

 別の学期(長い)

    n=16

「きっかけ1と「退学」が  同一学期内(短い)

    n=17

 別の学期(長い)

    n=18

表5 「きっかけ」から「決   定」までの期間につ   いての分布

     該騨藷      者舗聾

 0(同じ)

 1ケ月  2ケ月  3ケ月  4ケ月  5ケ月 6ケ月以上

人(6)人  (6)

 (1)

 (0)

 (2)

 (2)

 (6)

 →中退後再入学までの期間が短い者の割合 0       50     %

6L9

25.0

64 333

図4 中退の経過相互の関連   2「中退」の原因(きっかけ)とその中退過程の特徴

 1)中退の原因(きっかけ)

 「どういうことがもとで,r中退』のことを考える(思う)ようになったのですか」という質問 に対して,図5のような回答が得られた。重複回答が多いのであるが,「厳しい校則への反感」

「教師からの差別扱い,友人との不仲」「成績不良による教師からの訓戒,授業についていけない」

「家庭の経済的事情,親へ の反発」に大別され,それ ぞれにおいて約%の者が該 当していた。強制的に中退 させられたとする者は「非 行・問題行動を起こした」

と回答していた3事例のみ で,あとは,「自主的に」中 退したということであった。

 文部省の調査結果では,

「学校生活・学業不適応」

が最も多く(構成比26.6%),

27.9

25.6

23.3

27.9

7.0

2α9

20 0

U

差別・対人関係

学習・成績

非行・問題行動

そ  の 他

内訳()内人数,重複回答あり 校則が厳しいことに反感をもった(12人)

教師に差別を受けた(5人)友だちとの仲がうまく いかなくなった(6人)暴力ふるわれた(1人)

成績が下がり先生に注意された(5人)

授業についていけなくなった(8人)

家庭が経済的に苦しくなった(5人)

親に対する反発から(4人)

引越しのため(1人)家の事情により(2人)

楽しくなかった。つまらなくなった(2人)

別の進路みつけた(1人)

その他(4人) NA(2人)

図5 中退の原因(n=43)

(5)

大谷・清水:高校中退の実態 197

次いで「進路変更」 (同26.5%),「学業不振」(同 14%)となっている。

 本調査による「校則への反感」や「教郎からの差 別扱い」などは,文部省調査の場合では「学校生活 の不適応」か「進路変更」の範疇に入れられてしま うものが多いだろう。本調査の場合の「中退の原 因」は文部省調査の中退事由と比べて,中退を考え 始めた「きっかけ」を重視した生徒の気持ち,生徒 側からとらえた原因を表わそうとしたものである。

表6 男女別,高校種類別にみた中退の原因 男  女 公立 私立 n営26 n躍17 n昌17n−25

%    % %   %

校     則 30.8 23.5 17.6 36.0 差別・対人関係 26.9 23.5 17.6 32.0

学習・成績 34.6  5.9 楽一 29.4 20.0 家     庭 23.1 35.3 35.3 24.0 非行・問題行動 7.7  5.9 5.9  8.0

 また・男女別に比較したものが表6である。学習・成績面については,女子の中では最も少ない 理由になっているのに対して(6%),男子の場合は最も多い理由となって(35%)対照的である。

両者の間に有意な差が認められた(直接確率計算法による。危険率5%)。

 なお・高校の種類(設置主体)別に比較をしたところ,公立校では私立校に比べて「学習・成績 面」や「家庭面」の原因・理由が多くなっており,反対に私立校に多いものは「校則」 「差別・対 人関係」であった。文部省の調査結果においても「学業不振」は公立校に多く(構成比,公立:15.8

%,私立:10.9%),「問題行動等」は私立校に多くなっていた(構成比,公立:60%,私立:10.

7%)が,その結果と共通する。一方,文部省調査では「経済的理由」 「家庭の事情」を理由とす る者の構成比率は公立校より私立校の方が高くなっていたが,本調査結果では異なる傾向を示した。

 2)原因別にみた中退の過程

 中退の原因別にみた中退の過程を図6に示す。中退原因のA〜E別にその特徴を列挙すると次の ようになる。

 A 校則に対する反感による中退

 No.7,No.12を除いて全て1年次生の段階で退学している(No.7は原因が重複している事例 であるが,退学が3年次3月ということより「成績不良に基づく中退」の色が濃い事例である)。

校則について反発を覚えて4月早々に退学してしまった事例(No.1)もあるように,早期に発端 がみられる点が特徴的である。また,夏休み明けの9月もユつのポイントとなる。夏休み中の自由 の体験と,校則の徹底によるギャップによって中退の「決意」・「実行」がみられたり,中退の

「発端」になっているのである。なお,Eの非行による中退群と共通する面として「発端」→「決 定」→「退学」の期間が非常に短い事例も多い。

 B 差別等教師・友人との対人関係からの中退

 Aの校則反感群の場合と共通する面が多い。特に注目されるのは中退の「決定」 は1年次のうち になされていること,および,3学期ことに1年次の,また,2年次も含めて3月に,退学してい る者が有意に多いことである。

 C 成績不良等学習面の問題による中退

 「発端」となる月は,1年次の6月以降である。中間テストなどにより,中退について思いめぐ らすようになると思われる。3年次の3月に「卒業」できずに自主的に「退学」することになった 2事例は共にこのC群に含まれている。退学の時期については,3月という年度末を1つの節目に

(6)

A校

j

l

    一一時期(学年, 月)

B

差別・対人関係

C

学習・成績

D家

2 3●

4●

5 6●

7●

8●

9●

10●

11 12

1●

2 3 4●

5 6●

7 δ

e.一一一一.一.5

8●

9 10●

11●

8●

9 10

1●

2●

3 4●

5 6●

7 8 9

0ーム ー−

E 難〔i

動問

..一.一.一・5

    6     面

官δ   恥

●_5    る

●一一・−L−一一〇

●一一?

●一一。?

●一一?

●』L−O●____一一一5

●一一?

      ●一る

e..一..一一・一一6

      凡例  ●

      きっかけ    決意      退学

A〜Eの番号に・印を付してある事例は,他の原因の項にも記載されている重複事例である。

    (A3=BI A4=B4 A6=DI A7 ・= C5=D2 A8=B8=D4 A9=D5A10=BIO== C 8 B6=C4 B9=D6 B11=C9=DIO)

        図6 中退の原因別にみた中退に至るまでの過程(事例)

(7)

大谷。清水:高校中退の実態 199

していることが推察される。

 D 経済その他家庭事情による中退

 1年次の1学期に「発端」があった事例は皆無であり,2年次以降に「発端」がみられる事例は 他群に比べて多い。また,短期間で退学にまで至るという事例は少ない。

 E 非行・問題行動による中退

学校に慣れる期間を必要とすることから,1年次の2学期以降の発生であり,「発端」→「退学」

の期間は非常に短い。即刻中退と言える。

  3 中退の過程にともなう生徒の心身の状況  1)中退を考えていた時期(「発端」→「決定」)

 何かのきっかけで「中退」を自分の問題として考え始めてか ら「中退しよう」と決心するまでの間は,生徒本人にとって大

・いに悩む時期であろう。その時の学校への登校状況をまとめて みると表7−1)の通りである。続けて登校し続ける者は1割で,

あとは学校から遠ざかってしまうことがわかる。なお,特に

「校則」に反発して中退した者は登校率が低い(図7参照)。

その時期に心身への影響があるかどうかをみると表7−2)の通 りである。2割弱の者が「なし」と答えていた。8割の者は何 らかの心身の変化に気づいていた。特に,多い変化(症状);は,

「意欲の低下」,「イライラ」であった。そのうち,「イライ ラ」「夜眠れない」「ノイローゼ」等心身症状の強い者は3割 に及んだ。特に,中退原因が家庭の問題である場合にその影響 が強いようであった(図7参照)。

表7 中退を考えていた時の様子

11=43 休まずにきちんと…  140%

時々休んだ     23.3

状況

ほとんど行かなかった 58.1 な し   8人(18.6%)

(2)

うわの空       7人 意欲の低下     ユ0 いらいら       8 食欲不振      1

眠れない      3 頭痛        ユ ノイローゼ      4 その他       5

きっかけ峠決定の時期 退学 の 時 期 退 学  の  あ  と

登 校 状 況

w校に通った ソ強くあり心身への影  や  め た 時ルっとした 寂しい・挫折 後悔していない 別の方法

ネかったと思う

今はとても

yしい

167 41.7   8.3 33.3 16.7

@ 182

273

@ 700

417 R64

T83

33.3

R6.4

T00

36.4 364

364 R0D  30.0

校   則n−12 キ別・友人 n=11

@  ρw習・成績 n−10 ニ 庭 面 n篇12    行 n=3

20 20ρ 30ρ

58.3

25     25 16.7 8.3

100.0

 16.7

333 0 O 333 33.3

図7 中退原因別にみた生徒の状況

(8)

 2)退学した時点

 思い悩み決心した結果,退学という行動を とった段階では,どのような気持ちになった のであろうか。表8をみると,「ほっとした」

「解放感」というようなプラス評価で受けと めた者は3割,「寂しい」「挫折感」といっ たマイナス評価で受けとめた者は2割,あと の5割は,両者をあわせもつ「悲喜こもごも」

複雑な心境のようであった。

 なお,中退の原因別にみると,校則に反発 した場合は「ほっとした」者が多い傾向にあ り,非行で退学させられた者は,「挫折感・

寂しさ」を味わっている(図7参照)。

 3)退学後の気持ち

 「中退後,やめなければよかったと思うこ とがありますか」という質問に対して,「全 く思わない」と回答した者は44%,また,「今 考えて,中退

以外の方法が あったと思い ますか」とい う質問に対し て, 「なかっ たと思う」と 答えた者が35

%であった

(表8)。この うち,両者共 にあわせて回 答した者は23

%(10人)み られた。全体 の%の者は,

中退したこと について自己 の選択が間違

いではなかっ      図8

表8 生徒の「中退」にともなう気持

(n= 43)

気た退搦條w ソのし

ほっとした,解放された    30.2%

シ者を合せもつ(NAを含む)  46.5 竄オい,挫折感        23.3

退学後の気持ち

やめなけれ

ホよかった

@ 一一幽冒一一一

?゙以外の 禔@法 は

全く思わない    44.2 栫X思う      23.3

「つも思う     18.6 mA         14.0 ネかったと思う  ,34.9

?チたと思うが      27.9しかたがなかった

?チたと思う    25.6 mA         11.6 は活現

y(在オ瑠い制校か)生

今とても楽しい        23.3 ワあまあ楽しい        37.2 ツまらない      9.3 ヌちらともいえない       18.6 mA       11.6

→中退を後悔していない      →今の高校生活は楽しい0       50      %      50

467% 67

1{口・2学期n=15 P年3学期  n=12 Q年〜    n=10

750・:・ 50ρ ・

300 200

582

退学の時期

1聾1・2学期 n=12 P年3学期  n=13

Q研〜    n=12 250

別の力法があったと思う  決

@定退↓

p間 1ケ月以内  n=31 Rケ月以上  n=5

48.4

@         .・100

後悔している 222

421・;・

40ρ

Ofr    n39 P年     n=10

Q年     nニユ3

R年     n;5

53.8

55

80.0

中退の経過と中退後の気持ち

(9)

大谷・清水:高校中退の実態 201

たと確信していると言えよう。なお,そのうちの1人(図6参照 事例D11)は中退の時の気持ち は「寂しかった」と回答していた。D11は家庭の経済的事情により学費が払えずに中退することを 自主的に決めた事例である・定時制に通って4年目の時点では自らの轍を受容し,最善の方法で あったと言い切っている事例として注目したい。

一方逆に・「やめ鮒ればよかった」といつも思うと回答した者,あるいは,「中退以外の方 法があったと思う」と回答し堵力洛々2害揃後みられた.両者共に回答していた者は9%(4人)

である。(図6参照。事例:A2,A4・B4,C10, D 7 中退の原因は多様であり,特定でき ない)。約1割の者は,中退後4〜5年の時点において,自己の中退を「早計だ,悔いの残る選択 であった」と評価していることになる。このような事例を是非少なくしたいものである。

 なお,中退原因別にみてみると(図7),「学習・成績」がきっかけで中退した群は,全く後悔 していないと言いつつ,中退以外の方法があったのではないかと思っているところが他の場合と比 べて特色がある。

現在の定時制での高校生活に対して・rとても楽しい」「まあまあ楽しい」をあわせて,少しで も楽しいと感じている生徒は6割以上いることになる。中退者のうち,現在の生活を「楽しい」と 言える状況にある者が多くみられることに注目したい。中退をバネに現在の生活を充実する方向に

もっていけたと言えよう。なお,これは,本調査の対象者が定時制高校に再入学することができ適 応している中退者に限っているために好成績を示していることが考えられる。

なお・はっきり「つまらない」と答えている生徒は9.3%(4人)であった.この4事例(図6 参照・事例C・・D・・D・・D・)は現樋学している定時制高校を自分で決めて再入学し緒

(1事例はNA)であったが・背景1・家庭の経済的事情が介在している軸1が3例みられる点から,

学業のみならず家庭経済を含む生活全体の輔を背負った状況にあるようだ。次に返学後の気 持ちが中退の経過と関連していることを図8にまとめた.これによると,1年次の時1、中退を決意 したり,退学してしまった者の方が,2年次以降の退学より後悔は少ないようだ。また,決意から 退学するまでの期間が長い場合や,中退した後,再入学するまでの期間が長い場合には,中退した

ことに対して,後悔している者の割合が高い。そして,現在通う定時制高校の生活において,楽し く感じるか否かも,中退に対する後悔度と対応して,中退の経過と関連がみられた。

  4「中退」者の周囲の反応と対応  1)相談相手

 高校生にとって「中退」という変則的な事態を引きおこすには,1人では大きな重荷になる(そ のことは前項で触れた)。そのため,周囲の人たちに自分の「中退」について話しをし,相談にのっ てもらいながら妥当性を確かめたり,自分の気持ちを整理してみたりしたと思われる。図9は中退 者が「中退」について乱た相手である・85%の者が言齢に乱をしていた.特に,親.教師と共 に友だちが上位を占めている。

 周囲の友人の存在は,高校生にとって,親・教師と同じように(あるいはそれ以上に)重要であ ることがわかる。なお・教師に話した場合・ほとんどの者が担任に話しをしているのであるが 最初に話しをするという事例は少なく,約1割であった.中学時代の教師に対して,9ず初汲 話したという事例と同率である。

(10)

表9 中退原因別にみた相談相手

%( }内は1番目に相談した人

。にも

教師 教師 友人 相 談 校    則n−12 i25.①75.0

8.3 i8.3)

66.7 i41.の

50.0 i16.7)

16.7

差別・対人関係n−11 i36.4)54.5 27.3 i27.3)

63.6 i36.4)

63.6 i27.3)

18.2

学習・成績面n−10 i20。①40.0

0 50.0 i30.①

60.0 i30.①

0

家  庭  面n−12 i25.0)83.8 18.2 i9.1)

83.8 i50.①

50.0 i16.7)

8.3

非行・問題行動n−3 i0)33.3

0 66.7

i0)

100.

i100)

0

 中退のきっかけが高校入学に間もない時期から みられることから,中学時代の教師の方が話しや すい面もあろう。また,中退したいと思うように なった原因・理由が「(高校の)教師から差別さ れた」とか「(高校の)校則に反発する」気持ちな どの場合は,高校の担任教師にはすぐには話しに くい面もあろう(表9参照)。中学時代の教師に相 談した事例は全て定時制高校への再入学までの期 間は有意に長かった。それだけ高校進学にむけて

教師

友だち

兄姉

  その他

(先輩のお世話になっている人)

誰にも相 談せず

0 50 70%

    (注)國は幡目に話した人 図9 「中退」に関する相談相手

の条件が整いにくいような複雑な問題を抱えていることが推測される。

 なお,養護教諭に話してみたという事例は,今日の「かけこみ寺」と言われる保健室の風評に反 して,2事例と少なかった。

       表10 養護教諭に相談した事例 2事例について詳細を表10

に示す。事例1は,客観的 にはあまり問題のない状況

(友人・担任関係,部活動 いずれをとっても)にある にもかかわらず心から高校 生活をエンジョイできない 女子高校生であり,日頃か ら保健室を活用していたよ うだ。そして,「中退」の問 題を自分の周囲の人のうち でも近い人から順に話しを していき,養護教諭がその相 談相手の1人に加えられた。

 事例2は,高校生活にお

ける対人関係(友人,教師,部活動)や,成績面で問題があるようで,本人も,そのことを中退の 理由にあげていた。相談相手は,まず,友だちであった。本来,近くの存在であるべき学級担任が

事 例  1 (女) 事 例  2 (男)

中退理由 楽しくなかった 授業・成績,差別,親への反発

高    校 公立大規模校 私立大規模校

友  だ  ち 交友関係に努力を払った 交友関係あまり努力せず,

友だちあまりない 友だちあまりない。

教室は静か 教室は賑やか

担     任 やさしい 冷たい

部  活  動 入部 楽しい 入部してすぐに退部 勉     強 中学時代に比べて難しい 中学時代に比べて難しい

成績は中学時代より良く 成績悪くなった なった

保健室の利用 よく利用していた ほとんどなし

「中退」の迷いに 意欲の低下 なし

よる心身の変化

中退の時期 きっかけ→決心→退学 譜錯一蝕一儲

相談した相手 ①親 ②兄姉 ③学級担任 ①友だち ②親③その他

(○の番号は順位) ④養護教諭 の先生④養護教諭⑤担任

(11)

大谷。清水:高校中退の実態 203

最後の相談相手であり,その前に学校の他の先生に相談している。養護教諭には,その「その他の 先生」の紹介・橋渡しにより話しをしに行ったと推測できる。養護教諭が学校内で教職員から身体 の健康問題以外の広い範囲にわたる生徒の相談相手であることが認められていたためであろう。

 2)中退を強制された生徒への支援  非行問題行動が発覚したことに

より,当事者,関係者間で話しあ いがなされ,「中退」が(生徒側 からみた場合)強制的になされよ うとした時の支援状況はどうで

あったか。

 該当する事例を表11にまとめた。

3事例とも「学校をやめたくない」

という思いを強くもっていたにも かかわらず中退する破目になった。

そのうち2事例は,親,又は教師 によってとりなしをされているが 果せなかったようだ。

 中退する生徒の立場に立つならば,

表11中退を強制されたときの支援者 事例El

@(女)

事例E2

@(女)

事例E3

@(男)

退学の時期 1年10月 2年11月 2年3月

「中退」の話題が浮上したときの気持ち

樺kした人

bしあい参加者

?゙しなくて済むよう働きかけてくれた人

中退させない ナほしい

@友だち②親 w級担任

齔e

ひどい

@友だち

w級担任

w級担任

やめたくない

@友だち②親 B兄姉④担任 w級担任

「なかった やめた時の気持ち

。楽しいか

寂しい頭にきた ヌちらでもない

寂しい yしい

悔しい ヌちらでもない

       「非行,問題行動」で全てが否定されることなく,立ち直れ る道を残しておく配慮が必要である。たとえ,やむなく退学することになったとしても,とりなし の人がいてくれたと,生徒が受けとめられたことは,立ち直りを促す上でプラスになろう。

 3)周囲の反対

 中退しようという気持ちでいる ことを周囲の人が知った時に,ど のような対応がみられたかをみる と,明らかに反対された者は35%

であった(表12)。

 特に,そのきっかけが1年の時 に発生した場合より,2年次以降 の発生の場合の方が周囲の反対が 多かった。 「せっかく1年以上も

表12 反対あったとする割合    再入学までの 0→期間が短い者 50%

総  数  n=43

時期別発端の 1年n=30 2年n=12

以降

34.9%

23.3%

66.7※

周囲の反対 ありn=15 鮎他・→3

400

】0.7

図10 周囲からの反対の有無と  再入学までの期間との関連

学校に通っているのであるから,続けて通学した方がよい」という趣旨による反応と思われる。

 また,周囲からの反対を受けた者は,中退してから現在の定時制高校に入学するまでの期間が短 い者が有意に多くなっている(図10)。周囲の人の中退者への関心の深さや,「高校には通った方 がよい」という考えが根底にあるからと思われる。

(12)

IV ま と め

 高校中退の実態を知るために,現在定時制高校に通っている中退者43事例を対象にアンケートお よび面接調査を実施した結果,次のような知見を得た。

1)「中退」は発端→決定(決心)→退学の過程をとる。多くは1年次の1,2学期に発端があり  1年次3学期までに退学してしまう。年度末の3月に退学している者は4割である。

2)「中退」の発端から決定までの期間は2ケ月以内群と,4〜6ケ月以上群に二分される。決定  から退学(行動)までの期間は,ほとんどが2ケ月以内である。中退に至る過程が短期間であっ  た群は,長期間であった群に比べて,定時制高校への再入学までの期間が短い。

3) 「中退」の原因としては,校則,差別・対人関係,成績。学習および家庭の問題がほぼ同率で  あげられた。非行・問題行動を理由に強制的に中退させられたとする回答は少なかった。「中退」

 の原因は性別,高校設置主体側(公立か,私立か)により異なった。

4)中退に至る過程は「中退」の原因により各々特徴が認められた。①校則に反発して中退したと  する群は,1年次のうちに退学している。特に,4月早々や9月という時期は重要なポイントで  ある。②差別・対人関係による中退群は,1年次のうちに決定がなされ,退学の時期は1年又は  2年次の3月という者が多い。③成績・学習上からの中退群は,1学期のはじめてのテストであ  る中間テストのある6月以降に発端があり,3月という年度末に退学する者が多い。④家庭の事

情による中退は,2年次以降に発端があり,中退に至る過程が全体的に長い期間を要す。⑤非行・

 問題行動による中退群は1年次2学期以降に発端があり,即刻退学という過程をとる。

5)「中退」を決定(決意)するまでの期間に何らかの心身への影響を自覚した者は8割みられた  が,特に,中退原因が家庭の問題にかかわる場合には,心身への影響は強くあらわれていた。退 学した時点では,悲喜こもごもの者が半分を占めたが,プラス評価(解放感等)は3割,マイナ  ス評価(挫折感等)は2割であった。

6)「中退」という1っの選択,結論を「間違いではなかった」と肯定的に受けとめている者は,

約%を占めた。逆に,その選択は「間違いであった」と後悔している者は1割弱であった。現在  の定時制の高校生活を「楽しい」と回答している者は,約6割であった。ただし,再入学した現 在の高校生活に適応している者が調査対象となっているという条件を勘案しなければならない。

7)中退の過程が早いテンポで進んだ群は,後悔が少ない。

8)「中退」について相談した相手は,親,教師(学級担任のほか,中学時代の教師などいろいろ)

 と共に,友だちが上位を占めた。養護教諭が相談相手になる経路として2つの典型を得た。

9)「中退」を強制された3事例は,全例「学校をやめたくない」という気持ちをもっていた。な  かには,周囲から何の支援を受けることなく(本人からみて)退学させられた事例もみられた。

10)「中退」することについて周囲からの反対を受けた者は4割弱であった。特に2年次以降に中  退の兆しをみせた場合は反対を受けた。周囲から反対を受けた者は,退学後に再入学するまでの  期間は短くなっていた。

 最後に本調査に協力して下さいました高校生の皆さんおよび調査の労をとって下さいました田辺 淑美,米田英子,北村美佳,倉田邦彦諸先生に感謝いたします。

(13)

大谷・清水:高校中退の実態 205

1)文部省初等中等教育局高等学校課,昭和60年度公,私立高等学校における中途退学者数等の状況,「教育 委員会月報」38巻11号,1987,2.

2)高校中退者を対象にアンケート・面接調査を行っているものとして,松田博美(労働教育センター所属),

長岡義幸,藤井誠二のグループがいる。

3)前掲1)公立校における中退者の比率1.9%,私立校の場合は2.9%。

参照

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