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奈良県の中学校におけるゴミ処理に関する実態調査

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

奈良県の中学校におけるゴミ処理に関する実態調査

著者 谷口 義昭, 西田 季子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 36

ページ 35‑41

発行年 2000‑03‑01

その他のタイトル A research study on the actual situation for the disposal of waste in Junior High School of Nara Prefecture

URL http://hdl.handle.net/10105/7025

(2)

奈良県の中学校におけるゴミ処理に関する実態調査‡

谷口 義昭 ・西田季子‡

   (木材加工教室)

要旨:ゴミ焼却炉から排出されるダイオキシンの問題は、工場や住宅地だ けでなく、学校内に設置されている焼却炉にまで及び、その使用が禁止さ れた。中学校技術・家庭の木材加工の実習で出てくる木くずや木片は従来 焼却炉で処分されていたが、これらは自由に焼却処理できなくなっている。

このため、木材加工実習用教材においてゴミ排出量の少ないキット教材に 変更されることが懸念される。そこで本研究では、中学校におけるゴミ処 理の実態を把握し、技術科教育への影響度を検討するための基礎資料を得

ることを目的として調査を実施しれ

 文部省が焼却炉の使用禁止を通達した後、県内の90%以上の学校では焼 却炉を使用せず、木くずや木片はゴミ処理施設に引き取ってもらっている。

現在約50%の学校でキット教材が使われているが、木くずや木片などのゴ ミ処理の問題が生じた後でも、木材加工実習の題材を変更する学校はごく 少数であり、一枚板を使用している学校では、キット教材への変更は否定 的である。80%以上の学校で、材料の幅や長さを基準にして木片を保管し、

学校の工夫でそれらが有効に再利用されている。

キーワード:ダイオキシン、ゴミ処理、焼却炉

1.はじめに

 地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少、酸性雨など地球環境について世界中が注目して いるなか、現在日本では、ゴミ焼却処分場から発生するダイオキシンが大きな社会問題になって いる。厚生省は、1997年に規定量以上のダイオキシンを排出している焼却施設を発表した。同年 9月に各学校に設置されている焼却炉からもダイオキシン類等の有害物質が排出されるというこ とで、文部省は、原則としてその使用を廃止することを決定する通達を出した 〕。さらに、「地 球環境問題に関する行動計画」の中でもこの問題を取り上げ、学校におけるゴミ処理に係わる環 境衛生管理の充実を強調している2)。焼却炉とダイオキシンの関係は、学校教育において環境問 題を身近なところから考える良い機会ではないかと思われる。

 技術・家庭の授業において、生徒が実習中に木材を加工する過程で、必然的にのこくずやかん なくず、切れ端材等が排出される。従来これらは校内に設置のゴミ焼却炉で処理されていたが、

前述の文部省の通達でこの処理が難しくなっていると思われる。そこで、実習教材として一枚板

 ^A research study on the actuaユsituation for the disposaユ。f waste in Junior High Schooユ  of Nara Prefecture

‡^

xoshiaki TANIGUCHI(D印α材肌e枕。!乃。加。io8ツ,N伽αση〃ersiむ。ゾ刃ぬ。αれ。η)

sokiko NISHIDA(Dξραr亡肌e航。!τεcんπo王。gツ,Nαrασπゴリers{む。∫亙dαcαれ。η)

(3)

や集成材から、木くずの排出量が少ない、あらかじめ必要な形状にカットされたキット教材への 転換が懸念され、ゴミ処理の木材加工用実習教材に及ぼす新たな問題が考えられる。

 本研究は、ゴミ処理という新しい観点から、技術・家庭における今後の環境教育の在り方の指 針を得ることを目的として、奈良県内の技術担当教師にゴミ処理の方法を中心にアンケート調査 を行った。

2.研究方法

 1998年10月に、奈良県内の中学校110校で技術を担当している教師を対象にアンケート用紙を 配布した。そのうち72校から回答を得た(回収率:65.5%)。

 調査の内容は、概略次に示す項目であった。

   1)校内における焼却炉使用の有無について

   2)焼却炉の使用禁止前と後の木くずや木片の処理方法の変化について    3)木材加工実習で使っている材料について

   4)焼却炉の使用禁止にともなう製作題材の変更とキット教材について    5)処分する木材と保管する木材の判定基準について

   6)木くずや木片の利用について    7)環境教育の展開について

 なお、木くすと木片の違いを明らかにするため、アンケートの依頼状にそれぞれ次のような定 義「木くずとは、木材を切り、または削りなどしてできた屑。」「木片とは、木のきれはし、きぎ れ」を記述した3〕。

3.結果と考察 3.1焼却炉の使用状況

 県内の中学校における焼却炉の使用状況をまとめた結果を表1に示す。同表には、焼却炉の使 用廃止を通達した後、文部省が全国の中学校を対象としてゴミ焼却炉の使用状況を調査した結果 も併せて示してある。県内で焼却炉の使用を既に取りやめている学校は77.8%、使用している学 校は22.2%であった。全国では、既に使用をやめている81.8%、10年度中にやめる7.6%、使用を 継続する予定10.6%(1998年5月1日現在)である。焼却炉の使用についてカイ2乗検定を行っ たところ、パヨ〕=2.2となり奈良県内と全国では有意差が認められなかった。したがって、焼却 炉の使用状況は、奈良県内と全国の調査結果は近似していることがわかる。

表1中学校における焼却炉の使用状況

既に使用を 1O年度中に使用を 今後とも使用を

取りやめている 取りやめる予定 継続する予定 計

奈良県内 (77.8%) 56 (13.9%) 1O (8.3%) 6 (100%) 72

全  国 8,372 773 1,090 10,235

(文部省調べ) (81.8%) (7.6%) (10.6%) (1OO%)

奈良県=平成10年10月〜11月現在 全 国:平成10年5月1日現在

〔検定〕

 パ=2.2(φ=2)、同等牲・N.S.

(上段=学校数、下段:率)

(4)

 奈良県内を北部、中部、南部の3つに地域を区分して、焼却炉の使用の有無をまとめた結果を 表2に示す。調査の時点では、北部で11校が使用していたが、11校の中で平成10年度中に10校、

      表2 奈良県内の地域別焼却炉使用状況

奈良県内の地域区分

焼却炉を使用している 焼却炉を使用していない

北 部

ユ1注〕

21

中 都

ユ9

南 部

14     注)1O年度中に使用を取りやめる学校数を含む。         (枚数)

      学校名が不明3校。

    〔検定〕

     π,=6.5ヰ (φヨ2)、 ヰ:P堂、05

すなわち全県で13.9%に相当する中学校が使用を取りやめる予定である。したがって、県内の 91,5%の中学校は平成11年度以降焼却炉を使わないことになる。このことから、県内の学校では 文部省通達への対応の速さがうかがわれる。当然のことではあるが、各市町村の教育委員会単位 で焼却炉の問題も対応されていることもわかる。

3.2木くずや木片の処理方法

 焼却炉の使用禁止前と後の木くずや木片の処理方法の変化について調査した結果を図1に示す。

0学校の焼却炉で処理 口業者に引き取ってもらっていた 圓生徒に持ち帰らせる 円その他

        (a)焼却炉を使用していた頃         (b)調査日現在(1998年10−11月)

      図1 木くずや木片の処理方法

焼却炉を使用していた頃は、学校の焼却炉で処理していた82.6%、業者に引き取ってもらってい た5.8%、その他11.6%である。調査日現在では、学校の焼却炉で処理する16.5%、業者に引き取っ てもらっている63.3%、生徒に持ち帰らせる2.5%、その他11.6%である。この結果から、業者に 引き取ってもらい、地方自治体に設置されている「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」4)に準 拠した焼却炉で処理してもらう学校が多くなっていることがわかる。なかには、木くずや木片が 校内で自由に処分できないために生徒に持ち帰らせて、家庭から出るゴミと一緒に地方自治体で 処理するなど、苦肉の策を講じている学校もある。

3.3木材加工実習で使う材料

 木材加工の実習で使用している材料を、一枚板、集成材、キット教材、その他の4つのカテゴ

リーで質問した。結果を図2に示す。ここで、一枚板とは丸太から所定の幅、長さ、厚さに製材

された板材、集成材は木材の節や割れを取り除いた小木片を接着剤で集成してできた板材、キッ

(5)

      図2 木材加工実習で使用する材料

ト教材は製作題材の寸法通り、または幾分大きめにカットされた部材をセットにしたもの、と定 義できる。図2から、キット教材が48.8%と最も高く、一枚板と集成材はそれぞれ22.5%、その 他6.2%であることがわかる。技術科教育におけるキット教材に関する賛否の議論は重要であり、

別の機会に論じるためここでは触れないが、県内での普及率の高さは予想外である。

3.4 題材の変更とキット教材

 そもそも本研究を遂行しようと考えた主な目的は以下の通りであった。焼却炉の使用禁止にと もなって生徒に製作させる実習題材が、一枚板や集成材を用いて自由に設計する教材から、木く ずや木片の排出量の少ない、あらかじめ必要な形状にカットされたキット教材へと転換されるの ではないかとの懸念である。

 焼却炉が使用禁止された以降の題材変更について調査した。その結果、実際に変更した学校は ゼロ、変更しようと思っている学校は1校(1,4%)のみであり、変更していない学校が98.6%

である。なお、変更していない学校には、キット教材を現在使用している48.8%の学校が含まれ ている。したがって、キット教材に変更を予定している学校を加えると、県内でキット教材を使 用しない学校は約50%であることがわかる。

 焼却炉が使用できなくなった現状から判断して、木材加工の実習教材をキット教材に変更する ことについて教師の考えを聞いた。その結果を図3に示す。変更は良いことだユ!.5%、ゴミ問題 を考えると仕方ない34.4%、変更はあまり良くない13.1%、ゴミ問題と関係なくキット教材は使 用すべきでない19.7%、その他2!.3%であった。

D変更は良いことだ

ロゴミ間観を考えると仕方がない 藺変更はあまり良くない

国ゴミ問題と関係なくキット教材は使用すべきでない 国その地

図3 焼却炉使用禁止による木材加工材料のキット教材への変更について

(6)

 そこで、焼却炉の使用禁止で生じる実習教材のキット教材への変更に対する教師の意識と、実 習に使用する材料の関係をクロス集計した結果を表3に示す。一枚板を使っている学校の教師は、

実習教材のキット教材への変更は否定的であった。一方、集成材使用の学校では一定の傾向が見 られず、またキット教材を使用している学校では、変更はあまり良くないと考えているものの、

ゴミ間題を考えると変更は仕方ないと考えている教師が多いことがわかる(パ。〕=12.8,P<

.05)。

        表3 実習に使用する材料とキット教材への変更に対する教師の意識

実習に使用する材料

一枚 板 集 成 材 キット教材

キット教材への変更は良いことだ 1 2 5

ゴミ間題を考えると変更は仕方ない 1 4 14

教師の意識

変更はあまり良くない 10 4 8

ゴミ問題に関係なくキット教材は使

pすべきでない 4 3 2

〔検定〕

γ昌=12.8‡ (φ=6)、 串=P=.05

(枚数)

3.5木材の保管

 木材加工の実習中に出てきた木くずを処分するか保管するかの判定について質問した。その結 果、大きさ(幅、長さ)を判定の基準にしている学校が54.4%、大小に関係なく保管する29.4%、

すべて処分している16.2%であった。記述欄には、当該年度に出た木くずはとりあえず保管して おくとの意見が見られ、多くの学校で木くずは保管されていることがわかる。

 大きさを処分の判定基準としている学校について・寸法別に分析すると次のような結果であっ た。幅については、50㎜未満8校、50以上一100mm未満7校、100以上一150m未満16校、150以上一 200㎜未満4校、教師と生徒が大体の大きさで判断4校(大きさの基準は規定していないとのこ と)であった。長さについては、100㎜未満1校、100以上一200㎜未満12校、200以上一300㎜未 満12校・300㎜以上10校・教師と生徒が大体の大きさで判断4校てあっ㍍

3.6木くずや木片の利用

 木くずや木片を何かに再利用することを考えたことがあるか否かを質問した。その結果を表4 に示す。実習に使用する材料が一枚板や集成材、キット材の別にかかわらず、72.0%の教師が再 利用を考えたことがあると回答し、カイ2乗検定の結果でも教師の意識に差は見られない

(λそ呈〕=1.7, N,S.)o

        表4 実習使用材料と木くずおよぴ木片の利用1こ対する教師の意識

実習に使用する材料

一枚板 集成材 キット教材

教 何かに利用できると考えたことが

師 ある 15 13 26

の土

、冒」

何かに利用できると考えたことは

識 ない 3 5 13

〔検定〕

κ,=1.7(φ=2)、N.S.

(枚数)

(7)

 木くずや木片を利用している学校で記述された再利用の事例をまとめた結果を表5に示す。小 物製作等の追加題材が最も多く、士と混ぜて肥料にする、サンドペーパ研削用またはのこびき案 内用あて木、他教科での利用、校舎の修理、集成材の製作等々であり、各学校の工夫がうかがわ

れる。

      表5 木くずおよび木片の利用状況

利  用  方  法 学校数 利  用  方  法 学校数

追加題材(小物製作) 12 集成材を作る 4

土と混ぜて肥料にする 8 のこびき、かんな削り等の練習用 3

当て木(サンドペーパ、のこびき) 7 修正用(失敗した生徒用) 3

他教科での利用(クラブ活動、文化祭) 6 燃料

32

校舎の修理 5 教材、見本

 さて・近年・身近な自然環境を学校内に復元しようというビオトープの運動が盛んになってい るミ〕。ビオトープの復元においては、木材加工で出てきたのこくず、かんなくずや木片はカブト ムシなどの昆虫の生息に利用できる可能性が高い。木材は長い間放置すると土に帰り、しかも有 害物質も含まれていないため残土に害を与えることもない安全な材料であると言える。このため、

木材加工の実習で出てきた木くずや木片は学校内におけるビオトープに大いに活用することを提 案する。

3,7 環境教育の展開

 平成9年度に、奈良県内の中学校110校を対象にして、技術系列の授業における環境教育の展 開状況を調査した。その結果、木材加工で環境教育を展開している学校が62.3%であり、6つの 学習領域のなかで最も展開率が高かった6〕。そこで、平成10年度の本調査では、木材加工の授業 に限定して環境教育の展開状況について再度質問した。その結果、環境問題を展開した(または、

展開している)学校は59.7%、今まではないがこれからは考えている学校が20.8%、展開しない 学校が19.5%であった。

 このたび公示された新学習指導要領ではτ〕、技術・家庭は技術分野と家庭分野に大別され、さ らに技術分野は①技術とものづくり、②情報とコンピュータに区分された。このうち、技術とも のづくりにおいて、生活や産業の中で技術の果たしている役割、「技術と環境・エネルギー・資 源との関係について知ること」が示され、環境教育の重要性が提示された。本研究において、奈 良県では80%以上の学校で環境教育について実際に展開、または展開を予定していることが明ら かであり、新学習指導要領で示されている環境教育に対応できると言えよう。

4.おわりに

 奈良県内の中学校技術・家庭で技術系列を担当している教師に対して、焼却炉の使用禁止にと もなうゴミ処理の方法で生じる問題を中心にアンケート調査を行った。その結果を要約すると次 の通りである。

 焼却炉使用禁止の文部省の通達後、県内の90%以上の中学校では焼却炉を使用していない。木 材加工の実習で出てくる木くずや木片を多くの学校はゴミ処理施設に引き取ってもらっている。

木材加工で使用する材料は、キット教材が半数を占めている。一方、木くずや木片などのゴミ処

(8)

理の問題が生じた後でも、木材加工実習の題材を変更する学校はごく少数であった。教師のキッ ト教材に対する意識を見ると、一枚板を使用している学校では、ゴミ問題にかかわらずキット教 材への変更は否定的であった。実習の後に出てきた木片を保管している学校は80%以上であり、

幅、長さを基準にして保管と処分を判断し、また保管された木片は追加題材、肥料、当て木など 各中学校の工夫で有効に再利用されている。木材加工の授業において80%以上の学校で環境関連 の授業展開を行っており、新学習指導要領で述べられている学習内容「技術と環境 エネルギー・

資源との関係について知る」に対しては対応できる。

引用文献

1)文部省:学校におけるごみ処理に係わる環境衛生管理(1997)。

2)文部省1地球環境問題に関する行動計画(1997)。

3)新村出:広辞苑第4版(1991)。

4)厚生省生活衛生局水道環境部:ダイオキシンの排出削減に向けて、ぎょうせい、pp.9−13

  (1997)。

5)杉山恵一、赤尾整志:学校ビオトープの展開、信山社サイテック、pp.129−144(ユ999)。

6)谷口義昭、久下沼有希子:中学校技術科における環境教育の現状一奈良県の場合一、奈良   教育大学紀要、48,1,pp.49−58(1999)。

7)文部省1中学校学習指導要領(平成10年12月)、大蔵省印刷局、pp.80−87(1998)。

参照

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