茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)36号(1987)65−78
中・高生の喫煙に関する調査研究 一家庭・両親の意識,行動との関連を中心に一
大谷 尚子*・照沼 紀子**
(1986年9月27日受理)
Research on Smoking of High School Students with Special Reference to the Relationships of their
Smoking to their Parents Attitude to Smoking
Hisako OTANI*and Noriko TERuNuMA**
(Received September 27,1986)
は じ め に
近年,喫煙による健康障害は,喫煙者本人への害だけでなく,吸わされる煙(副流煙)による非 喫煙者への影響が注目されている。先進諸国では,公共の場所は禁煙となり,喫煙者は減少傾向に
ある♂) 2)また,教育課程の初期の段階から喫煙予防教育を取り入れている国もある。3)わが国における喫煙者数の動向をみると,男性の喫煙者の減少化傾向を認めることはできても,4)
逆に女性や若年者(未成年者)の喫煙は増加傾向にある。従来は,喫煙と言えば男性や非行少年と いった限定された人達のものとして受けとめられていたのに対し,現在は未成年者の誰でもが心理 的抵抗感を持たずに容易に煙草を手にすることができる社会的風潮にある。つまり,事態はより深
刻化したとも言えよう。このような状況の中,一方では嫌煙権運動も活発化し,各種団体(禁煙教育を考える会等)から
5)−7)
禁煙教育のための副読本も刊行され,また,散発的ではあるが禁煙教育に取組む学校もみられるよ
うになってきた。8ところで,禁煙教育を進めていく上で,未成年者がどのようにして喫煙行動に至るのかを考えて 9)みる必要があろう。村松らは,喫煙の経験,習慣に影響を及ぼす諸要因の研究を多角度から試み,
両親の喫煙の影響が大きいことに言及している。確かに,生徒を取巻く人々の喫煙に対する意識・
行動と生徒の喫煙行動との関連を明らかにすることは重要であり,それはまた学校での禁煙教育を
効果的たらしめるためにも必要である。そこで,本研究では中・高校生およびその保護者の喫煙に対する意識・行動を明らかにすると共 に,両者の関連を探っていく。これは,学校と家庭との連携を図るためにも重視されるべきことで
*茨城大学教育学部教育保健学科
**茨城県土浦聾学校
ある。
皿 調査対象と方法
讐 調査対象
表1調査対象表1に示す通り,地域・
A 群 B 群 C 群
校種および性が異なるA, 学
年 ・ 性 中2男子 高2男子 高2女子
B,C群の生徒およびそ 通 学 校
東京都男子校国立大附属校(同一校舎) 福島県私立女子校の保護者(父親と母親)、 を対象とする。
喫煙指導の取り組み 特別な取組みはない ロ健の授業は定期的に実施
保健授業実施 S体指導(映画に 謔驕jで喫煙指導
2回実施
2 鯛査方法
@生徒については,質問
?z票・一斉調査法によ 保護者の職業構成
会社員:約60% 公務員:約15%
ゥ 営:約10%
サの他(大学教員,医師,国鉄な
農 業:13%
?ミ員:39%
y木建築:12%
務員:11%
り行った。保護者につい ど):約15% その他:9%
ては,生徒を介して調査 家兄
[を家庭に持ち帰らせ後 羅日回収した。生徒とその 成令保護者の回答が照合でき
() 兄弟全てが
?w生以下
Z弟全てが mZ生以上
注)
T4%
O%
0%
S1%
0%
T3%
るよう生徒と保護者の調 回
分 析 数i回 収率) 117組
i84%)
111組
i67%) 133組
i94%)
査票は同一番号を付した。
収調査票記入者は父親又 そのうち両親の
答があるもの 98組
74組 127組 は母親のいずれかでよい
注)A群父母はB,C群に比べて若いと推察される。が,設問内容によっては
父母両方の意見を記入し
てもらうことにした。保護者対象調査票の回収率は表1の通りである。
調査は1984年7月(A・B群)と10月(C群)に実施した。
調査票の主な項目は次の通りである。
(1)生徒用
①家族構成,家庭内の喫煙者・禁煙者の有無 ②喫煙による健康被害についての知識内容 ③喫 煙に対する意見(成人男子・女子,未成年者,両親について) ④家庭における喫煙に関する指導 の有無 ⑤喫煙と健康に対する関心の有無 ⑥喫煙防止行動(仮定設問に対する予測行動)につい
て②保護者用
①喫煙に対する意見(成人男子・女子,未成年者,保護者自身,自分の子供について) ②喫煙
による健康被害についての知識の有無 ③家庭における喫煙に関する指導の有無 ④家庭での今後
の指導への意欲
大谷・照沼:中・高校生の喫煙について 67
皿 結果と考察
1 家庭における生徒・保護者の喫煙行動 表2 家族の喫煙状況
1)生徒の喫煙環境としての家庭
()内%(喫煙の有無) A群 B群 C群
?Q男子高2男子 高2女子
計
表2は,調査対象家庭の喫煙状況を
η1=117 η==111 η=133 η=361示している。C群の場合は,父母共に
父母ともにすう ***U (5.1) 8 (7.2) 16(12.0) 30(8.3)
非喫煙者である生徒は約3割というこ 両
とになる。村松らの1975年愛知県下
母のみ すう 0 4(3β) 1 (0.8) 5(1!Dの中・高校保護者のそれは2.4割であ
父のみ すう 37(31.6) 41(36.9) 73(54.9) 6151(41.8) . 10)
チたから,ほぼ近い数値である。それ
親 父母ともにすわ
ネい
***V4(63.3) 58(52.3) 43(32.3) 175(48.5)
に対し,A・B群生徒の家庭では,5
兄姉 喫煙する兄姉いる ***R (2.6) 9( 8」) 27(20.3)39(10.8)
割強が非喫煙両親である。A・B群父
家 ***
親は「喫煙は健康に悪いのですうべき
族禁煙者がいる 34(29.1) 31(27.9) 16(12.0) 81(224)
でない(すわない)」という回答がC
A群 B群 C群 計群父親(36%)より有意に多く(49%)
父 母 父 母 父 母
VL=98 η=74 η=127
父 母
ホ=299なっており,また,表3にあるように
子 子供の喫煙を知 2 4 3 5 1『i 16
16 25 ことにA群(中学生)の父親の場合は
供 った経験がある (2.0)(4.1) (4。1)(6.8) (8.7)(12.6) (5.4)(8.4)子供の前では喫煙しないように努めて
*印は他の群と比べて有意に多い又は少ないことを示す。いるようだ。 *5% **1% ***0.5%水準で有意差あり 先進諸国では,医師・知識人等エリ (以下同)
一トはタバコをすわないとも言われて
11)
「るが,A・B群保護者は職
表3 生徒からみた両親の喫煙態度(%)業構成から見て,日本のエリ
父 親 母 親
一ト層に該当しているとみな A群 B群C群 A群B群C群
すこともでき,先進諸国と同
η=n7η=111η≒133π=117η=111η=133じ傾向に近づいていることを 子供の目の前で… ***P7.1 35.157P a5 6.3 7.5
示していることにもなる。 す
n中.高校生の保護者,ぞ なるべく子供の目の届か ネい所で…
***
P5!雲 2.7 2.2
0.9 2.7 3.0
家庭の状況をみてみると・c Σ 人の前ではすわないが… 1.7 27 3β
1.7 0.9 0.8
群のように,子供の前で平気
「すってはいけない」と注モしながら 2.6 2.7 2.2 0 0.9 0.8
で喫煙している父親がいる家
@ 育上,庭・保護者をかかえる学校が
喫煙していない(健康上,教
@ 仕事上)
***U3.2 54.128.6 94.9 88.3 87.2ある一方,A群のように,禁
煙の必要性を知り喫煙しない父親やたとえすうとしても,子供の目の前ではすわないようにしてい
る家庭・保護者をかかえる学校がある。このように,保護者の喫煙状況には,地域差,職業構成上の差異がみられるので,学校と家庭が
連携する上では,地域の,そして保護者の喫煙状況を分析,把握することが必要である。
2)生徒の,両親の喫煙に対する態度
親が喫煙している場合に,その生徒はどのような気持で受けとめているかをみたのが表4である。
中学生(A群)の場合,高校 カ(B・C群)とは異なる反応
表4 両親への喫煙に対する生徒の受けとめ方 ()内%
A群 B群 C群
を示している。即ち, 「残念に 東京男子 東京男子 福島女子 計
思う」と8割もの者が答え,そ
中学生 高校生 高校生両のうちの7割の者が,家族等に 両親が喫煙している者 π=43 π=53 π=90 η=186
親 *** ***
禁煙を謝たことがあるとして 霞 残念に思う
33(76β) 29(54!7) 36(40.0)
98(52.7)喫煙に対し否定的態度を明確に 繧 何も思わない
8(備21(396)42(4訪
71(38.2)示している・ 蓼 良いと思う 1 (23) 1 (1.9) 6 (6.7)
8(4.3)
それに比べ・福島の好高校 象 そ の 他 1 (23) 1 (1.9) 4 (4.4)
6(3.2)
生の場合(C群)は, 「残念に 持
N, A
1(1.9) 2(2.2) 3(1.6)思う」が4割であり,「何も思
家族等に 全 体 42(359) 30(27つ) 45(33.8) 117(32.4)わない」とする者の方が多い。 禁煙を勧 めたこと
両親喫煙群 *
Q9(67.4) 24(45.3) 43(47.8) 96(51β)
そして,禁煙を勧めることは約
あり 両親非喫煙群 13(17.6) 6(10.3) 2 (4.7) 21(12.0)半数にも満たない。父親の喫
禁煙を勧めた者π=42 η=30 π=45
η=117煙に対して無関心,または好意 赫
I態度でいると言えよう。この 蓮アとは,単にc齢好だから 葛
すっている本人の健 Nを心配して キわない人に迷惑が ゥかるので
*
R6(85!7) 20(66.7) 40(88.9)
@ *
Q7(643) 玉9(633) 20(44.4)
96(82ユ)
U6(564)
ということだけではなく,その め
部屋が汚れるので 1 (24) 4(13.3) 4 (&9)9(7.7)
地域で父親を始め成人男子が喫 毒 お金がかかるので 3 (7.1) 2 (6!7) 4 (8.9)
9(7.7)
煙しているのが当り前という地 由
他人を不快な気分にウせるので 4 (9.5) 6(20.0) 5(11.1) 15(12.8)域環境からも大いに影響を受け
そ の 他 0 1(3.3) 0 1(09)ていると思われる。
なお,B群(東京,男子高校生)の場合は「何も思わない」とする者が4割と多くみられるが,
その理由の中には,父親ほ父親,自分は自分というような個人主義的な不干渉の姿勢からくるとい うものもみられるので,C群女子高校生の「何も思わない一当り前のことなのだから」という意味 とは異なりそうだ。男子高校生の場合,家族に禁煙を勧めた者も少なくなっているが,上記のよう な主義・姿勢によると思われる。なお,禁煙を勧めたとする場合の理由は,本人の健康を心配して
というよりは,周囲の人の健康や迷惑を考えて,即ち副流煙の問題からということが特徴的である。後述する副流煙の知識修得がB群に多いということの反映でもあろう。
3)家庭における喫煙に関する指導
(1》指導実施状況
表5に示す通り,保護者が指導したことがあると回答した家庭は45%,生徒が指導されたことあり
とする率は24%であった。同一家庭の親子を対象にしたにもかかわらず両者の回答率はだいぶ差が
ある。多くの場合,親が指導した積りでいても,対象となる生徒の側では必ずしも指導されたとは
受けとめていないことがわかる。生徒の受けとめ方とは別に,5割弱の家庭で喫煙に関する話しが
大谷。照沼:中・高校生の喫煙について 69
なされたとみてよい。 表5 家庭での喫煙に関する指導状況(父母回答家庭)
なお,父母の喫煙の有無別にみると
()内%生徒回答
保護者回答 生徒と保保護者の側では「指導した」の回答は
護者共に喫煙の有無にかかわらずほぼ同率であ
「指導された」 「指導した」 「指導有」ったが,生徒の側の「指導された」率 ヘ,父母がすう場合,ことに母親が喫
総 数π=299 72(241)
庭135(452)
o釜111隅
(16つ)
煙する場合に「指導された」が多い。
@ 母 また,親子共々一致して喫煙に関す
骼w導(話しあい)があったことを認 煙 ゚た家庭は全体で16%であった。特に
父有
rの別
父母すわない家庭
@ η=139 サの他の家庭π≒160 モキう家庭η=156 o母すう家庭ηニ26
lllll:1由44(2&2)葉 *12(46.2)一」
59(42。4)
@76(47.5)
@74(47.4)
(12.9)
i17.9)
i30.8)
母親が喫煙している家庭においては
31%が「指導あった」としている。 表6 「指導した」「指導された」内容(抜粋)
これらのことより,母親喫煙家庭
(保護者と生徒が一致した回答)は,親子間で喫煙に関する疑問・
保護者の回答 生 徒 の 回 答
不安等からくる意見交換が多く行
肺ガン等,病気の原因になる TV,ラジオ,雑誌などで伝
われているといえる。 1
から。 えられた時に「健康を害する」
家庭で指導した(指導された)
といわれた。
内容のうち多いものは「健康によ …
響,,曹冒−冒層層曹曹9.曹■幽9曹9.一一■幽曽幽曹一一一一一一一一一一一一一一一一一一一,蜷lが禁煙した際に理由を子 ,冒,冒,.曹曹一¶,冒¶一層冒曹一.一■雪.雪冒曹曹,,冒層冒■曹曹,曹冒曹響雪,■雪,響,層一
モェたばこをやめた理由など
2くないから」「未成年者だから」
供に語った。 食事の時に話してもらった。
および「迷惑がかかるから」であ 一…
一一甲,一甲一一一一,一一一一一一一一■一■一一■一}一一一一一甲一一一,雫,甲,,,一一暫■注Nに悪くガンになる。 },,,,,雪層}層雫,層層層「曹曹.曹.幽「層,曹一■9●■■幽曹圏一一■■曹幽9●一●一●9●一
黷ェ父に対して「あまりすわ った。保護者の回答によると全体 3 ない方がいい」と注意したこ
的に健康面からの指導が群を抜い
とから。肺ガンの心配のこと。曹■雪,, ,,一,雪,¶冒「冒雪,層■曹冒9曹雪.雪匿曹曹■甲.・9一匿雪9.曹9「・曹,層,■雪雪・曹■ 冒曹 一一 ■曹曹一9曹一一 匿謄曹■ 一■曹一曹幽曹O− 一一 曹 一一一一一一 一一 一一 一一 一一,甲一一一 ,甲
て多い。特にA群(中学生)保護
すっている人も又,周囲の人 「健康上よくない,他人の迷者は,本人及び周囲の人の健康を 4 も体に害があることは確実だ 惑だ」などと言われた。
重視した内容となっており(90%, から・㌔新聞などで喫煙の害 他群は74%),「未成年者だから」 一一一一一一 がでているたびに話題にする。一雪層曹曹■冒曹匿■曹囑9.曹匿・.,,■■曹尊サ,弓,層,,雪,曹・噂,甲9・辱,.
一,,,,噸甲幽,一■曹,■.響,・,・曹.一..曹一曹.99■・一一曽一一一一一一一甲一一一一
(18%,他群は30%)というよう 喫煙に関するTV,新聞など 主に喫煙に関するTVをみて な方便で一時的に禁煙を押しつけ 5 目についた都度,子供に有害 いて「体によくない」「吸っ
であることを話す。 て得することは一つもない」
ていないことが注目される。A群
などと話す。
保護者は,自ら喫煙する者は少な …一一 曹冒一9■曹・曹,曹囑曹・9囑・..曹匿曹匿■曹一曾.雪曹■雪冒,冒魎曹.曹.9
翌フ子の場合,結婚して子供 ・,噛層層・魯■冒,■曹●一一一曹一曹■一●一幽●一■曹■魑幽一一一一■一幽一幽一一暫一一一一一
@「女の子はすっちゃいけませ
く(表2,3参照),また,その 6
を生む場合によくない。 ん」といわれた。
理由や主義等を自分の子供に伝え ー… 曹・¶曹■曹■9■曹・一一一一■一一一騨,層冒層冒曹「層雪,層,層「一曹匿●雪冒
スばこは体に悪いからすって ■曹匿曹.曹■■.,層¶冒,.曹9■匿一一.曹■曹曹「曹圏曹,層,曹,曹曹一〇・,冒■■●■,冒曹
ミ会人でけっこうすっている ようとしたと思われる。しかし, はダメ。 人もいるけれど,肺ガンなど
生徒の側の回答率は47%と少なく 7
になりやすいから。それに私保護者の指導(子供への願い)は
は女の子だから,そんなもの子供の心に記憶され定着すること
はすうものではないと言われた。が難しいことを示す。
表6は,前述の「指導した」「指導された」と親子が一致して回答のあった家庭での話しあい内
容をまとめたものである。
これらの内容は,健康面の内容が殆どであり,女子の場合,母子保健の面からの指導もみられる。
TVなどの映像による刺激もかなり印象に残ると思われる。このような指導の機会・内容は,今後
の指導に際して参考になろう。② 今後の指導意欲
家庭で喫煙に関して子供に指導する意志があるかどうかを質問した結果は,表7の通りである。
「指導しようと思う」と回答した者は,父
親は5割弱であるのに対し,母親は6割と 表7喫煙に関する指導の意欲
, 有意に多かった。 「指導し・うと思う」の回答者数(率)
1
A しかし,B群(男子高校生)の父親につ
父親回答 母親回答いては,保護者自身が喫煙する場合には, A群 π=98
51(520)**69(70幽指導しようと思う割合が6割を越え,その B群 F74 34(45.9) 40(54.1)* *
意気込みを認めることができる。B群の父 C群 η=127 52(40.9)* 69(54.3)」
親は自らは喫煙習慣を断つことができない 計 η=299 137(45.8)***178(59.5)
でいるが,禁煙の必要を感じ,高校生とい 喫無保護者すわない π=38
、喫煙常習化の危険年令の段階にいる自分 煙別 (
12(31・6)「 20(52・6) *
の子供に詣導しておきたいという意識が器〃すう・−35 *
Q2(62.9)」 20(57.1)
強いためであろう。
2 生徒・保護者の喫煙に関する関心・理解と意見 1)喫煙と健康に関する理解状況
表8は,生徒と父母の知識の修得機会等を示したものである。
① 知識修得の機会
生徒の場合は学校の授業が,教科等の学習の機会として大きな位置を占めることになるが,喫煙 に関しても調査対象の高校生の場合は学校教育に負うところが大きい。
学校授業以外では,マスコミのTV・ラジオにより知識を修得するものが,生徒,父母とも多い
(B群生徒以外の群は,第1位の修得機会となる)。次いで,新聞,雑誌の順となる。父母の場合 は検診の機会や講演会で知ったとする者もみられる。特に,福島県の場合は,検診の機会に知った
とする父母が有意に多く,地域保健等地域の特色といえよう。また,保護者のうちでは,A群とB・C群の間に差が多く認められることより,若い父母の方が 喫煙と健康に関する知識を修得する機会を多く持っていると言える。また,そのことは,若い父母
は,喫煙と健康に関して関心を持っていることでもある。
②知識修得状況
主流煙,副流煙について知っているかどうかをみると(表8一②)「よく知っている」とする者
は,高2男子に特異的に多く,学校授業の成果と思われる。 「全く知らない」とする者は,A群(中学生)では約4割,C群(福島・女子)では3割である。父母の回答は,無回答率が多かった。概
して,父親より母親の方が知識の修得率が高いのは,修得機会の多さと,関心の深さによるもので
あろうか。大谷・照沼:中。高校生の喫煙について 71
③ 間接喫煙に対する感
@じ方
表8 喫煙に関する知識の修得,受けとめ方
表8一③は,周囲の人の喫
生徒の回答 父母の回答A群 B群 C群 父 母 備 考
煙に対してどのような受けと
π=117炉111ηr133 η=299η=299父母共通母のみ
め方をしているかを示してい ① 学校の授業 6B 77.5 36.8 ******る。不快に感じる率は,A, 一 TV,ラジオ
7L8 49.5 73.7 47.5 63.5曙生徒(鯨)が約8割と留最も多し㌔次に多いのはA群 鹸 康るの母親(7割),次いでC群 一機生徒とB・C群母親(6割) に会
新 聞
G 誌
@本
氈@診
S8.7 34.2 24B***
Q5.6 1&9 29.3 Q9.1 18.9 11.3
3α8 i麗
P9.1 26.4 P9.7 23.7
P1.7 1α0の
*A群
@ 多い**A群
スい *A群
@ 多い***C
講演会 4.3 5.0
Q多い
となる。父親の割合は少ない。 ②
コ松らの調査結果によると 主流 流煙 よく知っている ォたことがある
154 盗5158
S8.7 36.9 579
28.1 38.5 R0B 3&1
不快を感じる率は,小学生で 煙に
7害嚇学生約6害幅校弱全く知らない
m,A
35.9 3石 25.5
@ 0.8
4.3 4.7
R6,8 18.7
生約5割と年齢階級による差
不快な感じをもつ 84石 76β 63.1 35.1 61.2 *A群が認められたカ㍉本調査にお ③ 間
何も感じない 13.7 20.7 36.1
25.4 18.1
多いいても男子の場合中学生(A 接す
快い感じをもつ 1!7 2.7 0.8 α7 0.3群)と高校生(B群)の間に 購 そ の 他
0 0 0 0.7 0.3
そのような傾向が認められる。騎
N,A 0 0 0 38.1 2α0ただし,村松らの数値と比べ
身体症状があらわれる
**
T2.1 38.7 57.9 3M 錺
て本調査結果の方が不快感率
は高い。この差は時代的な差による面も大きいカ㍉A,B群の差異は副流煙に対する理解状況の差
も影響していると思われる。また,村松らの調査では,中高校生において男子と比べて女子の方が不快感率が有意に高いとあ った魁本調査では,B−C群の比較において,男子と女子の差より,東京と福島という地域差あ るいは副流煙に対する理解状況の差の方が大きいため,明確にすることができなかった。
間接喫煙により,せきが出る,のどが痛くなる,目が痛くなるなど身体症状が現われるとする者 は女性(女子高校生母親)は6割と多く,ついで中学男子(5割),高校男子(4割),そして父 親(3割)となる。女性および中学生の段階では男子も,間接喫煙による障害を身をもって感じて
いるということがわかる。なお,村松らの調査では,症状有者が中・高校男子で7割強と本調査に比べて多かった。本調査 結果の数値が少ないのは,周囲の喫煙者の減少に加えて村松らの調査時(1975年)より今日の 方が大気汚染(健康障害は相乗作用で増幅する)対策や喫煙環境の換気改善等公共施設の環境改善
が進んだためであろうか。この身体症状発現率と不快感率を比較してみると,父母の場合ほぼ同じ割合を示していた。そ
れに比べ生徒の場合は,A, B群(東京・男子)は,大幅に不快感率が高くなっていることが注
目される。特にB群は,身体症状発現率のほぼ倍の者が不快に感じている。これは,表8一②に示し
たような副流煙の害に関する理解が深いことも関連があろう。それに対し,C群(福島・女子)に
っいては,身体症状を訴える割合に比べて,不快感率は多くはない。副流煙の害に関する理解はA 群と同じであることから,他の要因,ことに家庭環境において喫煙者が多く,しかも肯定的雰囲気
(表2参照)であることが作用していると思われる。ちなみに,本人あるいは配偶者が喫煙者であ
る場合には,父母において不快感を訴える者が少なくなっていた。このような家庭の喫煙に対する雰囲気等と生徒の意識・行動との関連については,後に詳述した
い。
④ 生徒の「喫煙と健康」に対する関心度
生徒の「喫煙と健康」について,どの程度の関心をもっているかをまとめると,図1の通りであ
る。
A群(中学生)の場合は,非常に知 1)生徒の回答
全く知りたい そN
閧スいという回答が2.5割を占め,他 とは思のA
非常に知りたい 少し知りたいと思う わない 他 群と比べて関心の強さを示している。
A群 =117
a群(男子高校生)は,授業で学ん
***Q5.6 54.7 15.4 だこともあってか,「全く知りたいと B群π=11717.1
50.5 2a4零 は思わない」という回答も2割強と多
かったカ㍉それでも・なお「知りた固 c群π=117
10.5 722 12.0とする意見は7割を占める。生徒達は
2)両親からみた子供の関心度
「喫煙と健康」に関して関心をもって 他の人にも 自分もすいたいと思っている
いると言えよう。 ている禁煙すすめ わからない・NA 全く無関心
図1−2)は,両親からみた生徒の A群父π=98
10.238.8 50.0
関心度である。どの群も,父親は日頃 母π=9811.2 27.6 60.2
の子供との接触不足もあってか「わか
らない・無回答」が多い。それにして B群父π=74 14.9 45.9、
37.8
も,多くの保護者は,子供を「全く無 母π=7410.8 28.4 58.1
関心」ととらえている。「他の人にも
禁煙を勧めている」というように生徒 C群父πニ127 a4
45.7
44.1の行動を認めた父母は約1割である。 母π=127
8.7 33.1 55.1
前述表3に生徒自身の禁煙勧告状況を
示しているが,それ(全体では3割) 図1 「喫煙と健康」への関心度(生徒と両親の回答比較)
と比べて少ない。
保護者は,わが子の喫煙に対する関心やその積極的行動を過少評価しているといえよう。
2)喫煙の是非に関する意見
① 喫煙の是非について
喫煙に関して,成人男毛成人女子および未成年の場合に分けて,それぞれの是非を質問した。「ど lDような場合でもすうべきでない」とする回答の割合を図示すると図2のようになった。
社会通念として,成人男子の喫煙が認められていることが反映して,成人男子の喫煙に関して「す
うべきでない」とする割合は,他の場合と比べて少ない。大谷・照沼:中・高校生の喫煙について 73
生徒の回答をみ
生 徒 の 回 答 父 母 の 回 答 喫煙有無別 父母の回答
てみると,いずれ
7T0%
50% 50%の場合にも,A群
成人男子
***T8.125.8
***36.2
(中学生)は,B, の喫煙に 38.7 16.7 43.2*
ついて
b群に比べて有意
27.1***40.5
15.4
に多く「すうべき
成人女子
85.5*** 60.9 65.2でない」とする回 の喫煙に
65.8 56.4 ***
*** 78.6
答が多い。高校生 ついて 69.9 75.3 42.3
と比べて素直にあ
るべき姿を追求し 未成年者
966***
83.2の喫煙に
72.1***ていこうとする年 っいて
8α5
95.0*代を示している。
サれに比べてB群
i男子高校生)で
口A群 =117
mコB群 撫111
福b群 π=133[コ父・−299
mコ母肚299
父日薯ない籍1
齠﨔tない舞:211 は,未成年者の喫
図2 喫煙の是非に関する意見煙に対して「すう
(「どのような場合でもすうべきでない」とする回答率)
べきでない」と回
答しているのは,7割しかいない。現実生活の中で喫煙している(せざるを得なくなっている)普通(「非行少年」
に属さない)の未成年者に接したり,あるいは,未成年者だけの法律上の規制に反発した結果とも
一言えよう。
このようなことから,高校生の指導に際しては,(小)中学生とは異なる視点での指導が必要と
示唆される。父母の回答についてみると,いずれの場合も,母親の方が「すうべきでない」とする回答が有意 に多い。喫煙の有無別にみてみると,未成年者に関する意見では喫煙の有無には関係がみられなか ったが,成人の喫煙に関しては,喫煙者の方が非喫煙者と比べて「すうべきでない」とする回答は 有意に少ない。特に,成人女子が喫煙している場合には,その傾向が強い。
しかし,また別の視点からみてみれば,本人は喫煙していながら「どのような場合でもすうべき でない」とする意見を持つ者が父親2割,母親4割もみられることであり,その多さに注目したい。
父母の現実の行動と意見が異なることになるわけだが,それだけ喫煙習慣からの脱脚の難しさを示
すものであり,早期禁煙教育の必要性を痛感させられる。②禁煙すべきとする理由
「どのような場合でもすうべきでない」とする意見をもった人の,その理由をまとあると表9の
通りである。ほとんどの項目において,父親と母親の回答は同じ傾向にあるが,生徒の回答と父母の回答には
有意差が多く認められた。生徒の回答の特徴をあげてみると,本人の健康上の配慮は,父母に比べて少なく,それに対して
間接喫煙の害(周囲の人の健康,気分を不快にさせる)を多く指摘している。また,成人女子と未
成年者の喫煙に関して 表9 「どのような場合でもすうべきでない」とする理由の回答内訳
は,胎児への影響を心 (%)
配する理由が有意に多
成人男子の喫煙に 成人女子の喫煙に 未成年者の喫煙に い。「たばこ代にお金ェかかる」という理由
ついて
ナ雀笠7{釜獲:7;1
ついて
ホ生舞6{釜縄窮
ついて
Bi鵯。{釜鰯象
は,生徒固有の意見と 本人の健康に
@ よくない言えよう。
Vα9{器:1*** @ 72.0556 { 80.0*** @ 92.782.7 { 93.3***
日頃接している成人 将来胎児に影
@ 響があるから喫煙者に対する被害反
*浮Wql:1
Vα3{18:1
***Ra3{ll:1
***発感情に起因するとこ 周囲の人の健
@ 康によくないうもあるのではないか
V55{ll:1***
Tα4{ll:1
*** *T13{ll:1
と思われる。 たばこ代にお
@ 金がかかる未成年者が喫煙すべ
@ 3.924.5 { 0.8*** ***
@ 1.1154 {α9 47{1:1
きでないとする理由と 他人を不快な
@ 気分にさせるして,健康上の理由を
5麗 {11:1
S25{ll:1***Rα3{ll:1
***あげた生徒は,父母の 法律で禁示ら
@ れているから回答よりは少なく8割
4a3{ll:1
にとどまっていた。「未
成年者はどのような場合にもすうべきではない」と明言した者についてのみの意見であるにもかか
15)16)
わらず,健康障害(喫煙開始年齢が若け豹ば若いほど健康への害は重篤)という視点が無い者が2
割ほどなお存在していた。法律上の禁止という外側から
の規制では未成年者の喫煙を防 父親の意見別比較 母親の意見別比較
止したとしても,成人になって
0 50 100% 0 50 100%からの喫煙は防止できない。喫 成人男子 =77 50.6 π=121 46.3
について π=220 39.6 餌=76
39.2煙と健康との問題を根底から理
解させる必要を感じさせられる。成人好。;181
77。9 =225
76.9について =116 73.9 ;72
73.63 生徒の喫煙行動等に及ぽす
未成年者π富245 86.9π;282 86.2
家庭喫煙環境
について π=52
80.8 = 15 80.01)両親の喫煙に関する意見
の影響
→すうべきでない →すうべきでない
(生 徒 回 答) (生 徒 回 答)
両親の喫煙に関する意見の内 容が,その家庭の子供の意見に
ヌう作用するのであろう姻 幣禦の{i言齢謙鷲lll齢
』3は成人男子,成人女子,未成
年者に対して,各々親の意見「ど 図3 両親の意見別にみた生徒の意見(「すうべきでない」)
のような場合でもすうべきでな
大谷・照沼:中・高校生の喫煙について 75
い」とした家庭の生徒が,その親と同じような意見をもっているかどうかをみようとしたものであ
る。
この結果生徒の喫煙の是非に関する意見は,父母の意見とは,全く関係がないことがわかった。
つまり,喫煙に関する見解は親子は別である。
2)家庭での喫煙に関する指導の影響
喫煙に関する話題が出され,親と子で話しあい,指導がある家庭においては,その子ども(生徒)
の意見や行動は喫煙予 防と結びついているの
指導の有無別比較 指導されたか有無別比較 Fナあろうか。 (保護者の回答による) (生徒の回答による)
図4は,両親の回答
意
成人男子
45.2 45.8どのような場 について
39.2 40.9で指導したという群・
合にもすうべ
また生徒の回答で指導
きでない 成人女子
78.5 84.7ホ見
について
74.1 73,3されたとする群が,他
群と比べて,生徒の意
関
喫煙と健康について
20.0***29.2
見や行動に差異を生じ
心
「非常に知りたい」 14.8 13.3させているかをみよう
友人がすっていたら
28.1* 33.3*としたものである。こ
「やめるように説得する」 19,1 20.0
れによると,生徒自身
喫友人に喫煙を勧められたら
が「指導された」と話 「きっぱり断り、止めるよ 69.6 72.3
煙 60.5 62.2
う勧める」
しあいを印象深く体験
オた場合は,成人女子
予防 iAB群のみ) =85=85
***
U9.6 Uα5の喫煙に対する否定的 行 20歳になったら 403 47.4
「絶対禁煙する」 44.9 40.7
意見(すうべきでない)
動
や喫煙と健康への関心
解=85(AB群のみ) 蕗=85 52。9*R6.5
を高めることに影響を
0 50% 0 50%
及ぼしていると言えよ 口指導した 撫135 【:コ指導されたπニ72
う。 ■指導しなかった ■指導されていない
=162 =225
なお,生徒の喫煙行
動を探るために, 「も 図4 指導の有無別にみた生徒の喫煙意識,行動 しも,○○○だったら
あなたはどうしますか」という設問で,生徒に喫煙予防行動を予測して回答してもらった。その回 答をみてみると,「もしも,友だちがすっていたら,やめるように説得する」という回答は全体に 少なかったが,指導のあった家庭の生徒の場合には,喫煙予防行動を行うという回答が有意に多か
った。
また,C群(福島・女子高校生)の場合には,家庭の指導の有無が全く生徒に作用していないよ
うだが,A・B群(東京・男子中・高校生)の場合には,保護者が指導したという家庭の方が「も
しも友人に喫煙を勧められたら,きっぱり断り,さらには,止めるように勧める」という回答が多
くなっている。また,「20歳になった時,絶対に禁煙する」という回答も多い。
男子の場合,家庭における喫煙に関する話しあいの有無(雰囲気等)が,喫煙予防行動にも影響
しているという点で注目できる。3)保護者の喫煙の有無による影響
図5は,両親共にすわない家庭と,父
成人男子 50.3紳率母がすう家庭に分けて,各々の生徒の喫
について 31.431.5意
煙に関する意見や意識をみようとしたも
どのような場№ノもすうべ 成人女子
77.1
のである。
きでない
について 68.6U9.6これによると,両親共喫煙しない家庭 見 85・7「
未成年者 8L2 奉
の生徒は,「どのような場合にもすうべ
について 71.4−一きでない」とする意見を有意に多く持っ
ている点は注目される。特に,一般社会 ェ成人男子の喫煙を認めようとする風潮
関心 喫煙と健康について 15・4
@ 18.8
@ 「非常に知りたい」 25.7
の中で,成人男子の喫煙に対する意見に L意な差をつけたことは,非常に重大な
麗
友人に勧められたら uきっぱり断り,止めるよ64.6−「59.1 *
予 う勧める」
45.6−一一」ことと思われる。なぜなら,前述したよ 防
49.7一
うに,保護者の喫煙に関する意見や言葉 行 動 20歳になったら「絶対に禁煙する」
2α。348ト」***
上の指導では,子供の喫煙に対する認識
0 50 100%
を変え難いことが明らかになったからで
口両親ともすわない η=175 ある。 薗父すう =181
また,この図から,生徒の未成年者喫 ■巳母すう =35 煙に関する意見や喫煙予防行動(予測意
見)に対して,父親以上に母親の喫煙が 図5 両親の喫煙の有無別生徒の喫煙意識
強く影響していることがわかる。母親が
喫煙している家庭の生徒は,特に,未成年者の喫煙を否定的にとらえる者が有意に少なく,また,
友人の勧めに対しても強行に断わる者や,20歳になった時には,禁煙したいという決意をもつ者も 有意に少なくなっているのである。逆に,生徒に喫煙と健康に関して「非常に知りたい」という回 答を有意に多くさせている。母親の喫煙に対して心配したり,疑問を持っていることの反映でもあ
ろう。生徒の喫煙志向に対する心理的動揺を示しているとも言えよう。
以上のことより,生徒の喫煙に対する意識・行動に強く影響を及ぼす家庭・保護者の状況というも
のは,まず,保護者自身の喫煙行動であるという結論に達する。保護者の喫煙しながらの指導や意
見では,生徒を非喫煙者に導くことは難しそうだ。特に母親の喫煙は子供に与える影響が大きいの
で,喫煙している母親の意識の変革も必要だ。しかし,母親の習慣化してしまった喫煙をやめるに
は,困難が伴うことは必至である。悪循環を断つためにも,未成年男女対象の家庭と連携した学校
における禁煙教育の意味は大きい。大谷・照沼:中。高校生の喫煙について 77
W ま と め
中・高校生およびその保護者(父・母)約300家庭を対象に質問紙により喫煙行動および意見を
調査したところ,次のような知見を得た。1.中・高校生のうちの約半数の家庭は,保護者が喫煙している家庭である。
保護者の喫煙とそれに対する生徒の態度との関係から2つの家庭像に分けられる。
1つは,父親が子供の目の前ですっている家庭であり,子供はそのことに何の抵抗も感じること がない。禁煙を勧めることがあった場合は,すっている本人の健康を心配してのことである。
他の1つは,子供の目に見えないように父親がたばこをすっている家庭ではあるが,さらに,子 供は,そのことを残念に思い,かつ,主流煙のほかに副流煙の害に基づく禁煙勧告をしている。
前者の家庭が多い地域・学校として福島のC群が,後者の方が多い地域・学校としては東京・有 名進学校通学生家庭のA・B群が該当する。
2.家庭での喫煙に関する指導は,保護者回答によれば,5割の家庭で指導が行われた。生徒回 答によればその半数が「指導された」としていた。生徒が指導されたと記憶しているのは,母親が
喫煙する家庭の場合に有意に多かった。3.喫煙に関する情報源は,生徒では学校の授業(学校差あり)も多いが,生徒,保護者共通し て,TV・ラジオ,雑誌,新聞などのマスコミが多かった。マスコミ・本などの情報源に対する回 答は,中学生およびその保護者が高校生と比べて有意に多かった。また,マスコミ情報は父親より
母親の方が有意に多かった。4.副流煙に関して「よく知っている」と回答した割合は授業による禁煙指導が行われていない A・C群の生徒は2割弱,父親3割,母親4割であった。
5.間接喫煙に対して不快な感じを持った者は,父親は35%であり,生徒,母親は60%を越えて いた。不快感を持っか否かは,男女差,学年差という感受性の差のほか,副流煙の害に関する知識
の有無等多様な要素が絡んでいた。6.喫煙の是非に関する意見では,成人男子の喫煙に否定的な生徒は4割と少なく,成人女子,
未成年者に関しては,各々7割,8割と多かった。特に中学生の場合は,高校生と比べて,喫煙そ
のものに否定的回答が多かった。父母の回答は,成人男子については3割,成人女子については7割,未成年者については9割が
否定的意見であった。父親と比べて母親の方が否定的意見を持っていた。父母の喫煙の有無別では,成人男子と成人女子については,非喫煙者の方が否定的であったが,未成年者については,喫煙の
有無には関係なく,すうべきでないとする者が多かった。7.両親の喫煙の是非に関する意見とその子供の意見とは全く関連がみられなかった。
8.家庭における喫煙に関する指導の実施により,生徒の喫煙予防行動に影響を及ぼすことがで きるのは限られた地域環境(本稿では東京・男子校生)にある場合だけであった。
また,生徒自身が指導されたと記憶している場合には,成人女子の喫煙を否定的にとらえるよう になり,また,健康との関連にも関心が深まるなど,指導の成果を認めることができた。
9.生徒の喫煙観は,保護者の喫煙行動(喫煙の有無)により異なる。保護者の行動は保護者の
L
意見・指導より生徒に大きな影響を及ぼす。特に母親が喫煙している場合にその子供は,喫煙に肯 定的反応を示す。生徒に与える影響として母親の立場は大きい。
最後に,本調査にご協力下さいました諸先生および生徒・保護者の皆様に感謝申し上げます。特 にC群調査にあたっては,熊田多美先生に大変お世話になりました。お礼申し上げます。
注
1)伊佐山芳郎r嫌煙権を考える』岩波新書 1983,pp.38門)39.
2)平山雄『流行するタバコ病』健友館 1980,pp.189〜223.
3)和唐正勝「アメリカの喫煙予防教育」『学校保健研究』Vol.24,Nα12,1982,pp.574〜577.
4)厚生統計協会『厚生の指標,臨時増刊,国民衛生の動向 S60年度』1960, p.120,
5)白石尚『タバコの教科書』日本禁煙協会 1984,
6)平山雄・大島明『知っていますか?たばこの害』三夢書房 1985。
7)八路つとむ『バイバイスモーキング』学事出版 1977.
8)毎日新聞記事「香川県坂出市教委は今年度から小・・中学校全校で禁煙教育を……」1984,5.31,
9)村松常司ら「喫煙の経験,習慣に影響を及ぼす諸要因の研究第2報〜第6報」『学校保健研究』1976〜
1980,
10)前掲論文9)「第3報両親の喫煙と中・高校生の8θcoηd一施πd Tob㏄co 8配oんθについて」
1977.
11)前掲書2)pp.188〜189.
12)前掲論文9)「第4報両親の喫煙と小学生の8θcoπd−H血ηd 7bわαcco Smoんεについて」 1977.
13)前掲論文10)
14)前掲論文10)
15)前掲書2)pp.164〜171.
16)平山雄『タバコ病とその疫学,喫煙の医学』 講談社1982,pp.73〜117.