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組織分布および発育に伴う発現量の変化 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 ) 阿 部 啓 之 学 位 論 文 題 名

ウシのグルコーストランスポーターの構造、

組織分布および発育に伴う発現量の変化 学位論文内容の要旨

  反 芻動物の糖 代謝の特徴として、食餌由来のグルコースが少ない、体内グ ル コースの多 くは糖新生に依存している、単胃動物に比べて低血糖である、

と いった点が 挙げられる。さらに、インスリンの血糖低下効果が弱い、いわ ゆる「インスリン抵抗性」も知られている。血中グルコースが細胞内ヘ取り込 ま れ 利用され る最初の律 速段階分子 は細胞膜の グルコース 輸送坦体GLUTで あ る が、 特 にイ ン ス リン はGLUTア イ ソフオー ムのーっで あるGLUT4に 作用 し てグルコー ス取り込みを促進する。そこで本研究では、反芻動物でのイン ス リン抵抗性 の原因を探 る手がかり として、ウ シのGLUT4に焦点を当てて、

そ のcDNAをクローニ ングして、 アミノ酸配 列を決定し たのち、組 織分布や 生後発達に伴う変化を検討した。

  第1章 では 、まず、 ホルスタイ ン種のウシ の骨格筋か ら抽出したRNAを出 発 材 料 と し てRT‑PCR、RACEな ど の 手 法 を 用い て ウシGLUT4cDNAをク ロ ー ニング した。その 後、プラスミドに組み込み、大腸菌に形質導入して増殖し 塩基配列を決定した。ウシGLUT4cDNAは全長2,624bpで1,527bpの翻訳領域を 持ち509アミノ酸をコードすることが予想された。このアミノ酸配列を他の単 胃動物 種(ヒト、 マウスおよぴラット)のGLUT4と比較したところ、90.6〜9 3.5% と高い相同 性がみられ 、特に糖鎖 付加部位で ある57番目のアスパラギ ン、約20個の疎水性 アミノ酸からなる12カ所の膜貫通領域などの保存構造が 確認さ れた。しか し、単胃動 物でインス リンによるGLUT4のトランスロケー ションに関与するといわれているC‐末端領域については、508番目のアスパラ ギ ン が ウ シ で は ヒ ス チ ジ ン に 置 換 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。   次 い で、 ホ ルスタイン 種のウシGLUT4における508番目の アミノ酸置 換が 反芻動 物に共通か 否かを確かめるために、黒毛和種のウシ、ヒツジ、ヤギお よ ぴブ タ のGLUT4cDNAの一部 を上記と同 様にクロー ニングした 。C―末 端領 域の25ア ミノ酸の配 列の比較をしたところ、黒毛和種ではホルスタイン種の ウシと同様に508番目のアミノ酸はヒスチジンであったが、ヒツジ、ヤギおよ ぴブタはヒト、マウスおよぴラッ卜と全く同じ配列であり、508番目のアミノ

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酸は アスパラギンであった。したがって、このアミノ酸置換は、反芻動物共 通 に み ら れ る イ ン ス リ ン 抵 抗 性 を 説 明 す る も の では な いと 思 われ る 。   さら に、ウシGLUT4の発現組 織を明らかにするために、ホルスタイン種の 成牛 の骨格筋、心臓、肝臓、大脳皮質および脂肪組織などの組織サンプルに つい てウエスタ ンブロツ卜 およびノーザンブロット解析を行った。GLUT4の タン パク質、mRNAと もに、単胃 動物と同様 にインスリ ン感受性部 位である 心臓 、骨格筋および脂肪組織にのみ発現していたが、その発現量は少ないこ とが 明らかとな った。

  第2章で は、ウシに おけるGLUT4の発現量の 低さと反芻 胃の発達や 揮発性 脂肪酸VFAの生成との 関係を明ら かにするた めに、出生 直後(Oケ月齢) か ら12ケ月齢ま でのホルス タイン種の ウシのGLUT4のタンパク質レベルの推移 をウエスタ ンブロット 法で調べ、GLUT1の変化と比較した。骨格筋(胸最長 筋、大腿四 頭筋)、脂肪組織(腎周囲脂肪組織、腰部皮下脂肪組織)およぴ 大脳皮質の いずれにお いてもGLUT1タンパク質 レベルはO〜12ケ月齢 まで大 きな変化が 認められな かった。こ れに対してGLUT4タンパク質は出生直後が 最大の発現 レベル(100%)であ り、月齢が進むにしたがって減少し、12ケ 月齢になると、脂肪組織で32‑‑‑ 40%、骨格筋では43〜69%の低いレベルにな った。

また大腿四 頭筋のGLUT4mRNAをノーザン ブロット法 で測定した ところ、0. 5〜2ケ月齢に いったん上 昇したのち3ケ月齢から減少に転じ12ケ月齢では出 生時の73%レ ベルとなっ た。このよ うなウシGLUTの生 後変化は、 ラットや マウスなど の単胃動物 での成績、 すなわちGLUT1は新生子期に高く離乳前後 で低下する のに対して 、GLUT4は当 初低く離乳期にかけて上昇するという生 後発達変化 と大きく異なっている。これは、ウシなどの反芻動物では、生後 の哺乳期か ら牧草へと飼料条件が変わることに伴い、反芻胃の発達と反芻胃 内発酵が盛 んになることにより、末梢に供給される主要なエネルギー源がグ ルコースか らVFAに切 り替わって いくことに対応した適応に他ならない。し たがって、 このようなGLUT4の適応 的低下が反芻動物に特有のインスリン抵 抗性の一因になっていると考えられた♂

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学位論文審査の要旨

主 査  教 授  斉 藤 昌 之 副 査  教 授  高 橋 芳 幸 副 査  助 教 授  木 村 和弘

副 査  助 教 授  森 松正 美( 岩手 大学農 学部 )

     学位論文題名

ウシのグルコーストランスポーターの構造、

組織分布および発育に伴う発現量の変化

  反芻動物の糖代謝は、体内グルコースの多くが食餌由来ではなく糖新生に依存してお り、単胃動物に比べて低血糖であるという特徴がある。さらに、インスリンの血糖低下効 果が弱い、いわゆる「インスリン抵抗性」も知られている。本学位論文は、反芻動物での インスリン抵抗性の原因を探る手がかりとして、細胞膜グルコース輸送担体(GLUT)、

特に イン スリン 応答性のGLU T4に焦点を当てて、ウシGLU T4の分子構造や、組織分 布、生後発達に伴う変化を検討したものである。

  第1章 では 、ホ ルス タイン 種牛 の骨 格筋か ら抽 出し たRNAを 出発 材料と して ウシ GLUT4cDNAを ク ロ ー ニ ン グ し 、 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。 ウ シGLUT4cDNAは 全 長 2,624bpで1,527bpの翻訳領域を有していた。予想される509アミノ酸の配列は、他の 単胃動物種(ヒト、マウスおよぴラット)のそれと約92%の高い相同性がみられ、・特に 糖鎖付加部位である57番目のアスバラギン、約20個の疎水性アミノ酸からなる12ケ所 の膜貫通領域などの保存構造が確認された。しかし、単胃動物でインスリン応答に関与す るといわれているC‑末端領域については、508番目のアスバラギンがヒスチジンに置換 していることが明らかとなった。このアミノ酸置換は、ヒツジとヤギでは見られず、単胃 動物と同様にアスバラギンであった。したがって、これは、反芻動物共通にみられるイン スリン抵抗性を説明するものではないと結論した。さらに、ウシGLUT4の組織分布に ついて、ホルスタイン種成牛の組織サンプルを用いてウエスタンブロットおよぴノザンブ ロット解析で調べたところ、単胃動物と同様にインスリン感受性部位である心臓、骨格筋 およ び脂 肪組織 にのみに存在するが、その発現量は少ないことが明らかとなった。

  第2章 では 、ウ シにおけるGLUT4の発現と反芻胃の発達の関係を明らかにするため に、出生直後(0カ月齢)から12カ月齢までのホルスタインのGLU T4の推移を調ベ、

GLU T1の変化と比較した。骨格筋、脂肪組織および大脳皮質のいずれにおいてもGLU T1 夕ンバク質レベルは0〜  12カ月齢まで大きな変化が認められなかった。これに対して

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GLUT4夕ンバク質は出生直後が最大の発現レベルであり、月齢が進むにしたがって減少 し、12カ月齢になると成牛と同じ低いレベルになった。このようなGLUTの生後変化は、

単胃動物での成績、すなわちGLUT1は新生子期に高く離乳前後で低下するのに対して、

GLU T4は当初低く離乳期にかけて上昇するという変化と正反対である。これは、発育に 伴い反芻胃の発達と反芻胃内発酵が盛んになり、末梢に供給される主要なエネルギー源が グルコースから揮発性脂肪酸に切り替わっていくことへの適応に他ならず、反芻動物に特 有のインスリン抵抗性の一因になっていると思われる。

  以上のように本研究は、反芻動物の糖代謝の特徴の一端についてウシGLU T4に焦点 を当てて解明したものであり、獣医生理学・生化学領域の発展に貢献するものである。よ って審査員一同は上記学位論文提出者阿部啓之氏が博士(獣医学)の学位を授与されるに 十分な資格を有するものと認めた。

参照

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