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博 士 ( 医 学 ) 加 納 里 志 学位論文 題名 Tripartite motif protein 32 facilitates cell growth and migration via degradation of Abl― interactor2

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博 士 ( 医 学 ) 加 納 里 志

     学位論文 題名

Tripartite motif protein 32 facilitates cell growth and     migration via degradation of Abl ― interactor2

(Tripartite motif protein 32はAbl‑interactor2の 分 解 を 介 し て     細 胞 増 殖 お よ び 運 動 能 を 促 進 す る )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景と目的】

  ユビキチン化はタンパク質の翻訳後修飾のーっであるが、その主な機能としてプロテアソ ームを介したタンパク質分解に関与している。そのユビキチン・プロテアソームシステムは ユビ キチン活 性化酵 素(El)、ユビ キチン 結合酵素(E2)、そしてユビキチンリガーゼ(E3) によって構成されるが、中でもユビキチンリガーゼは標的タンパク質の認識に関与する。

Tripartite motif protein  (TRIM protein)はRING‑finger、B‑Box、coiled‑coilの3つのド メイ ンを特徴 としたタンパク質である。ユビキチンリガーゼの特徴とされるRING‑finger ドメインを持っことからその多くはユビキチンリガーゼとして機能する。今回研究対象とし たTRIM32はPiasyやactinのユ ビキチ ン化に関与することがこれまでに報告されている。

さ ら に、 ヒ ト 頭頚 部 扁 平上 皮 癌 にお い てTRIM32のmRNAの 発 現が 上昇 してい ることが 報告 された。 しかし 、発癌に おけるTRIM32の機能的役割はいまだ明らかにされていない ため、本研究ではTRIM32の分子生化学的機能解析を行った。

【材料と方法】

@ウェスタンブロット法および免疫組織染色法を用いて、ヒト頭頚部扁平上皮癌組織にお     けるTRIM32のタンパク質発現レベルを検討した。

◎ 酵母2ハ イブ リ ッ ト法 を 用 いてTRIM32と結合 するタン パク質 を網羅的 に検索 した。

    さらに 同定さ れたタン パク質 とTRIM32との哺乳類細胞内での結合、ユビキチン化、

    そして分解を検討した。

◎ レト ロ ウ イル ス ベ クタ ー を 用い て 作 製し たTRIM32の過剰 発現細 胞、およ びsiRNAに     よ りTRIM32の発 現をノ ックダウ ンした 細胞を作 製した 。これら を用いて 、TRIM32     による細胞増殖能、細胞周期、細胞運動能およぴシスプラチンによるアポトーシスヘの   影響を検討した。

【結果】

@ 同一 患 者 の頭 頸部扁平 上皮癌 組織と正 常組織 でのTRIM32の タンパク 質発現を 比較す     ると、70%の症例の癌組織で発現の亢進を認めた。また、免疫組織学的にも扁平上皮癌   組織におけるTRIM32の高発現を認めた。

◎ 酵母2ハ イブ リッド 法を用 いてTRIM32の 新規結合 タンパク 質とし てAbl‑interactor2     (Abi2)を同 定した。TRIM32とAbi2の結合は、あVI VOおよび面ガむりでも確認でき、

    さ らにTRIM32はNHLドメ イ ン を 介し てAbi2と結合す ること が明らか になっ た。ま     た、血vivo ubiquitination assayによってTRIM32によるAbi2のユビキチン化を認め     た 。さ ら にpulse‑chase analysisに よって、 野生型TRIM32 (WT)に よるAbi2の分

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(2)

    解促 進を認 め、しか もその分 解はRINGド メイン を欠損さ せたTRIM32 (ARING)や 、     プロテアソーム阻害剤によって抑制されることから、Abi2の分解がユビキチン・プロ     テ ア ソ ー ム シ ス テ ム 依 存 的 に 行 わ れ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。

◎ 細 胞増 殖 能 に関 す る 検討 では 、TRIM32 (WT)は細胞 増殖に対 して促 進的に働 いた。

    一 方TRIM32 (ARING)やsiRNAに よ っ てTRIM32を ノ ッ ク ダ ウ ン さ せ た 細 胞     (siTRIM32)で は逆に抑 制され た。また 、血清 飢餓状態 にすることでGO/G1期に細胞     周期 を同調させた細胞を用いて行ったFlow cytometric analysisでは、TRIM32 (WT)     はS期へ の 移 行が 促 進 され、TRIM32 (ARING)では 抑制され た。細 胞増殖に 対する   影響 がAbi2の分 解を介し て行わ れたことを調べるために、Abi2を過剰発現させた細胞     で細 胞増殖 を検討し たところ 、Abi2過剰発現細胞では増殖が抑制された。しかし、

  TRIM32を共 発現さ せた細胞 では、Abi2の発現が低下しかっその抑制能も阻害された。

    さら にTRIM32によ る腫瘍増 殖に関する影響を検討するために、癌遺伝子である活性   型c‑Srcを共発現させた細胞を用いてcolony formation assayを行った。結果、TRIM32   は活 性型c‑Srcの足場 非依存性 増殖能 に対し促 進的に 働いた。次に、これまでにAbi2     は細胞運動能に関与することが報告されていたため、TRIM32の細胞運動能に対する影   響を検討した。すべての実験は細胞増殖能の影響が無視できるように血清飢餓状態で行     った 。Wound healing assayでは、TRIM32 (WT)は傷の修復を促進させ、逆にTRIM32     (ARING)やsiTRIM32では 抑制さ れた。ま た、transwell migration assayで も同様     にTRIM32 (WT)では 細胞の 移動が促 進された 。最後 に、シスプラチン耐性扁平上皮     癌細 胞でTRIM32の 発現が亢 進して いたとい う結果 から、TRIM32のシスプ ラチンに     よるアポトーシスヘの影響を検討した。まず、SRB assayでシスプラチン投与に対し生     き残 った細胞数を測定したところ、TRIM32 (WT)では増加し、一方、TRIM32 (ARING)     およ びsiTRIM32では 減少し た。さら にFlow cytometric analysisを 用いてsub‑Gl     peakを 測 定す る とTRIM32 (WT)で は 減少 し 、 また ウ ェ スタ ン ブ ロッ ト 法 によ り     cleaved caspase‑3の発 現を検討したところTRIM32 (WT)では減少していた。これら     の結 果からTRIM32はシスプ ラチンによるアポトーシスに対し抑制的に働くことが示   唆された。

【考察】

  これ までに、TRIM32はPiasyの分解 を介して 、UVBによるケ ラチノサ イトの アポトー シスを抑制することが報告されていた。しかし、頭頚部扁平上皮癌は口腔や咽喉頭の粘膜に 発 生しUVBの影響はほとんど受けないことから、別の標的タンパク質の分解を介して頭頚 部 扁平上皮 癌の発 癌に関与 している のではないかと考えられた。今回の研究で同定した Abi2はこれまでの報告から癌抑制遺伝子として機能することが示唆されている。このため、

TRIM32がAbi2をユビ キチン化 し分解 を促進することで、癌遺伝子として働くことが考え られる。また、Abi2は非受容体型チロシンキナーゼc‑Ablと複合体を形成し、c‑Ablの基質 が 結合する のを阻 害するこ とが報告 されている。このため、TRIM32によってAbi2の分解 が促進されることでフリーな活性型c‑Ablが増加し、結果として細胞増殖を促進、また発癌 に関与するのかもしれなぃ。また、Abi2は細胞運動能に対し抑制的に働くという報告があ る ことから 、TRIM32がAbi2の 分解を 促進することで細胞運動能を促進している可能性が ある。この結果から、TRIM32が癌細胞の浸潤や転移にも関与していることが示唆される。

さ らに、TRIM32がシスプ ラチンに よるアポトーシスを抑制することから、シスプラチン の耐性化にも関与していることが考えられた。

【結論 】

  今回の 研究結果 より、 ユビキチ ンリガ ーゼTRIM32の新 規標的 タンパク 質とし てAbi2 を同定 した。そ して、TRIM32は癌細胞の増殖や転移、そして抗癌剤の耐陸化に関与する 癌遺伝 子として 機能す ることが 示唆され た。

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(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨

     学位論文題名

Tripartite motif protein 32 facilitates cell growth and     migration via degradation of Abl 一 interactor2

(Tripartltemotifprotein32はAbトinteractor2の分 解 を 介し て 細胞 増 殖およ び運動能 を促進す る)

  ユビキチン化はプロテアソームを介したタンパク質分解に関与しているが、その標的タ ンパク質 の認識に 関与して いるのが ユビキチ ンリガーゼである。TRIM proteinは RING‑finger、B‑Box、coiled‑coilの3つのドメインを特徴としたタンパク質であり、その 多くはユビキチンリガーゼとして機能する。今回研究対象としたTRIM32はPiasyやactin のユビキチン化に関与することがこれまでに報告されている。さらに、ヒト頭頸部扁平上 皮癌においてTRIM32のmRNAの発現が上昇していることが報告された。しかし、発癌 におけるTRIM32の機能的役割はいまだ明らかにされていなぃため、本研究ではTRIM32 の分子生化学的機能解析を行った。

  まず、頭頸部扁平上皮癌組織と正常組織でのTRIM32のタンパク質発現を比較すると、

70%の症例の癌組織での発現亢進を認めた。次に、酵母2ハイブリッド法を用いてTRIM32 の新規結合タンパク質としてAbl‑interactor2(Abi2)を同定した。両者の結合は、血wvo および面vitroでも確認でき、その結合部位はTRIM32のNHLドメインであった。さら に、TRIM32によるAbi2のユビキチン化と分解の促進を認めた。その分解はRINGドメ インを欠損させた変異TRIM32や、プロテアソーム阻害剤によって抑制されることからユ ビキチン・プロテアソームシステム依存的に行われていることが明らかになった。

  TRIM32による細胞増殖能に関する検討では、TRIM32は細胞増殖に対して促進的に働 いた。ま た、TRIM32はGO/G1期 からS期へ の移行を加速した。さらにTRIM32と活性 型c‑Srcを共発現させた細胞を用いてcolony formation assayを行った結果、TRIM32は 活性型c‑Srcの足場非依存性増殖能を促進した。次に、TRIM32の細胞運動能に対する影 響を検討 した。Wound healing assayで は、TRIM32 (WT)は傷の修復を促進させ、

transwell migrationassayでは細胞の移動が促進された。最後に、シスプラチン耐性扁平 上皮癌細胞でTRIM32が高発現していたという結果から、シスプラチンによるアポトーシ スへの影響を検討した。まず、SRBassayでシスプラチン投与後に生き残った細胞数を測 定したと ころ、TRIM32(WT)では増加した。さらにTRIM32によるsub.Glpeakの減

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俊 哲

弘  

  鎮

田 藤

秋 近

畠 福

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

少 、およびcleaved caspase‑3の発現低 下からTRIM32がシス プラチンによるアポトーシ スに対し抑制的に働くことが示唆された。

  こ れらの 結果か ら、TRIM32は 、癌抑制 遺伝子と しての 機能が報 告され ているAbi2を ユビキチン化し分解を促進することで、癌遺伝子として働くことが考えられた。また、Abi2 は 細 胞運 動能に 対し抑制 的に働く という 報告があ ること から、TRIM32がAbi2の分解 を 促 進するこ とで細 胞運動能 を促進 している可能性がある。この結果から、TRIM32が癌細 胞 の浸潤や 転移に も関与し ている ことが示唆される。さらに、TRIM32がシスプラチンに よるアポトーシスを抑制することから、シスプラチンの耐性化にも関与していることが考     丶

えられた。

  口 頭発表 後、副 査の近藤 教授か ら、「TRIM32に 対する 他の基質 タンパ ク質の存 在」

「TRIM32の発現 量と臨床 像との 関連」「Abi2による腫瘍検体の染色結果」次いで、副査 の 福田教授 から、 「過去の 報告に おける頭頚部癌でのTRIM32発現割合とその原発部位」

「正常組織でTRIM32の発現が亢進していた理由」「今後の治療や検査への応用の可能性」

次 いで、副 査の畠 山教授か ら、「TRIM32のknock‑out mouseを用いた発癌に関する実験 の 構築」「Abi2の分解 だけで は説明で きないTRIM32の機能」さらに、主査の秋田教授か ら 、「癌遺 伝子と してのTRIM32遺伝子変化の報告の有無」「癌抑制遺伝子としてのAbi2 遺伝子変化の報告の有無」「Abi2がエピジェネティックに抑制される可能性」についての 質問があった。いずれの質問に対しても申請者は自身の研究結果や文献的知識に基づき適 切に回答した。

  こ の論文 は頭頸 部扁平上 皮癌で 高発現す るTRIM32の新 規標的タ ンパク 質としてAbi2 を 同定し、 その分 解が細胞 増殖や 細胞運動能の促進に関与し、さらにTRIM32によるシス プラチン抵抗性への影響を検討した点で高く評価され、今後の頭頚部癌治療への応用が期 待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ 申請 者が博 士(医学 )の学位 を受け るのに充 分な資 格を有す るもの と判定し た。

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参照

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