博士(工学)薛 自求 学位論文題名
砂岩の透水性と微視的構造との関連性に関する実験的研究
学位論文内容の要旨
砂 岩の 透水性 は,従 来から 石油工 学や 地熱工 学,鉱 山工学 にお ける重 要な研 究テー マであ る。
最 近では ,圧縮 空気 や石油 などの 地下貯 蔵や ,廃棄 物の地 層部分 など, 地下 空間の 新しい 応用分 野 におい ても, 研究 の必要 性が増 してい る。
本 研 究は2種 類 の 砂岩 と1種 類 の泥 岩 を 供試体 とし て,ト ランジ ェント ・パル ス法 により ,静 水 圧,間 際水圧 ,差 応力下 の透水 性を調 べる と共に ,特に ,砂岩 の透水 性と 微視的 構造と の関連 性 を明ら かにし たも のであ る。
本 論文 は全7章か ら構成 されて いる。
第1章は 序 論 で ,本 研究の 背景 および 目的, 既往の 研究の 概要 ,本論 文の構 成にっ い述 べてい る 。
第2章は , 岩 石 の透 水係数 を測 定する ための トラン ジェン ト. パルス 法にっ いて, 測定 原理に 係 わる問 題を扱 って いる。 従来用 いられ てい る厳密 解に基 づく評 価法は ,作 業が煩 雑な割 に大き な 誤差を 伴いや すい こと, また, 多くの 研究 者が用 いてい る近似 解に基 づく 方法は ,空隙 率の大 き い岩石 に適用 した 場合に は,結 果の信 頼性 に欠け ること を指摘 してい る。 その上 で,使 用が簡 便 で,し かも正 確な 評価値 の得ら れる方 法を 新たに 提案し ている 。透水 係数 は浸透 流がダ ルシー の 法則を 満たす 場合 に意味 を持つ 。そこ で, トラン ジェン ト・パ ルス法 で実 現され る浸透 流に関 し て,ダ ルシー の法 則が成 立する 上限に っい て理論 的な検 討を行 い,成 立の 判断基 準を導 いてい る 。そし てこの判断基準を実験結果に適用し,.本研究で採用した測定条件の範囲内では,ダルシー の 法則が 成立し てい ること を確認 してい る。 .
第3章は , ト ラ ンジ ェント ・パ ルス法 によっ て透水 係数を 正確 に測定 するた めの技 術的 諸問題 と ,その 解決方 法に っいて 述べて いる。 測定 誤差を滅らすために,種々の技術を開発しているが,
こ れらの 中には ,供 試体の 側面に 水を流 さな いため の供試 体の処 理方法 と確 認方法 の開発 ,供試 体 を含水 飽和さ せる 方法と 確認方 法の開 発な どが含 まれて いる。
第4章 は,2っの 方法を 用い て岩石 内部の 微視的 構造を 明ら かにす る試み をして いる 。第一は,
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岩石 の薄片 を顕微 鏡下 で観察 し,観 察結果 を画 像処理 する方 法であ る。こ のとき,岩石中に分布 する 空隙を 明瞭に 観察 するた めに, 予め着 色樹 脂で空 隙を充 填する 方法を 用いている。そして,
静水 圧の負 荷に伴 い, 白浜砂 岩の場 合,大 きな 場合を 持ちア スペク ト比の 小さい空隙が閉鎖する こ と , 来 待 砂 岩 の 場 合 , 柔 ら か い 構成 粒 子 が 塑 性変 形 を す る こ とな ど を 明 か にし て い る 。 第二 は, 静水圧 の載荷 ・除荷 に伴う 弾性 波速度 や体積 ひずみ の変 化を測 定する方法である。弾 性波 速度― 静水圧 線図 、体積 ひずみ ー静水 圧線 図の形 状や弾 性波速 度や体 積ひずみのヒステリシ スの 静水圧 に対す る依 存性を 基に, 微視的 構造 を間接 的に推 定する 試みを している。白浜砂岩の 場合 ,静水 圧が小 さい 段階で は体積 ひずみ や弾 性波速 度の変 化が大 きいこ と,来待砂岩の場合,
静 水 圧が 約50MPaに な っ た とき , 弾 性 波 速度 は 顕 著な変 化を示 さな いのに ,体積 ひずみ は急 激 に増 加する こと, 除荷 過程で は載荷 過程よ りも 弾性波 速度が 小さく なり, 残留ひずみが大きいこ とな ど,多 くの知 見を 得てい る。ま た,こ れら の挙動 の多く は,顕 微鏡に よる観察から推定され た 岩 石 の 微 視 的 構 造 の 変 化 に よ っ て説 明 す る こ とが 可 能 で あ る こと を 明 ら か にし て い る 。 第5章は, トラ ンジェ ント. パルス 法によ る岩 石の透 水係数 の測定 結果 を述べ ている 。岩石 の 透水 性に対 する静 水圧 と間際 水圧の 影響を 詳し く調べ るため に,こ れらの 圧カに関し種々の負荷 経路 を用い ている 。特 に,繰 返し負 荷で生 じる 透水係 数のヒ ステリ シスの 変化と,静水圧と間際 水 圧 が 透 水 係 数 へ 及 ぼ す 影 響 の 差 異 を 明 ら か に す る こ と に 研 究 の カ 点 を 置 い て い る 。 白浜 砂岩 の場合 ,一定 の間際 水圧の 下で 静水圧 を負荷 した初 期の 段階で は,透水係数が著しく 減少 し,ま たヒス テリ シスが 大きい こと, 静水 圧が大 きくな るにっ れて, 透水係数の滅少の程度 とヒ ステリ シスの 両方 が小さ くなる ことを 見い だして いる。 来待砂 岩の場 合,静水圧が20〜 40 MPaの と き , 透 水係 数 の ヒ ス テリ シ ス が 最 大に な り, それ以 下の静 水圧 に対し ては, 透水係 数 が除 荷に伴 い若干 回復 するこ とを見 いだし てい る。
自浜 砂 岩 に っ いて は , 載荷 経路の 途中で 供試 体の破 壊を試 みてい る。 破壊に より数 倍大き く な っ た透 水 係 数 は , その 後 の静水 圧の負 荷によ り, 速やか に滅少 し,破 断面の 影響 がなく なる こと ,差応 カが負 荷し た場合 ,透水 係数は あま り変化 せず, 破壊の 直前に なって増加することな どを 明らか にして いる 。
第6章は, 両砂 岩の透 水性と 変形挙 動を, 媒体 中に管 路が分 布する 二相 モデル を用い て解釈 す る試 みをし ている 。こ のモデ ルでは ,静水 圧や 間際水 圧が変 化する と媒体 と管路が変形し,それ に よ って 変 形 挙 動 が もた ら され, かつ管 路中の 水の 流れが 影響を 受けて 透水係 数が 変化す る。
モデ ルの 媒体が 弾性体 の場合 ,透水係数に対する静水圧の影響は,間際水圧よりも大きくなる。
また ,同一 の断面 積で は,ア スペク ト比の 小さ い管路 の方が ,静水 圧の負 荷にともなう断面積の
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変化 が大 きく, 体積ひ ずみや 透水係 数に それだ け大き な変化 をも たらす 。さらに,アスペクト比 の小 さな 断面形 状を持 つ管路 が多い 場合 ,静水 圧の負 荷によ り, アスペ クト比の小さい順に不可 逆的 に管 路が閉 鎖する とすれ ば,静水圧→透水係数線図は下は凸になり,ヒステリシスが生じる。
白 浜 砂 岩 の 透 水 性 の 主 た る 特 徴 は , こ の モ デ ル に よ っ て 説 明 す る こ と が で き る 。 モ デルの 媒体が 弾塑性 体で あれば ,管路 の周囲 に形成 され る塑性 領域の 有無により,管路の断 面 積 の 変化 す る 割 合 が異 な る 。40MPa前 後 の静 水圧 下で来 待砂岩 に認 められ た特異 な変形 ・透 水挙 動は ,これ によっ て説明 するこ とが できる 。
第7章 は 結 論 で , 本 研 究 で 得 ら れ た 主 な 結 果 と 今 後 の 展 望 に っ い て 述 べ て い る 。
学位論文審査の要旨
主査 教授 石島洋 二 副査 教授 佐藤寿 一 副査 教授 中島 巌 副査 教授 三田地 利之
本 論文 は,岩 石の 透水性 と微視 的構造 との関 連性 を明ら かにす ること を目 的とし て,2種の 砂 岩 と1種の 泥岩を 用い, トラン ジェン ト・ パルス 法によ り,静 水圧 ,間際 水圧, 差応力 下の透 水 性を 実験的 に調べ たもの で,全7章 から構 成さ れてい る。
第 1章 は 序 論 で , 本 研 究 の 目 的 及 び 既 往 の 研 究 に っ い て 述 べ て い る 。 ト ラン ジェン ト・ パルス 法に関 する基 本的問 題を 扱った 第2章では ,まず ,正確 な透 水係数 の 評価 方法を 浸透流 の厳密 解に基 づい て導出 し,併 せて, 透水 係数が 間際水 圧の関数である場合に も, この評 価方法 が有効 である こと を確認 してい る。次 に, 測定条 件がダ ルシーの法則に適合す るこ とを判 断する ための 具体的 な基 準を導 き,こ の判断 基準 を用い て,本 研究で採用した測定条 件の 範囲内 では法 則が成 立して いる ことを 確認し ている 。
第3章では ,トラ ンジェ ント .パル ス法に よって 透水性 を調 べると きの技 術的諸 問題 と,そ れ らの 解決方 法にっ いて述 べてい る。 とりわ け,供 試体の 側面 を不透 水条件 にし,供試体を含水飽 和さ せるた めの方 法の開 発は特 筆に 値する 。
第4章 で は ,2っ の 方 法 により 岩石内 部の微 視的 構造を 明らか にして いる。 着色 樹脂で 空隙を
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充填させた岩石薄片を鏡下で観察し,観察像を画像解析する第1の方法により,白浜砂岩の場合,
アスペクト比が小さく大きな面積を持つ空隙が静水圧の重荷によって閉鎖すること,来待砂岩の 場 合 , 柔 ら か い 構 成 粒 子 が 塑 性 変 形 す る こ と な ど を 明 ら か に し て い る 。 静水圧の載荷・除荷に伴う弾性波速度と体積ひずみの変化を詳細に調べる第2の方法を基に,
白浜砂岩の場合,圧カの小さい段階では体積ひずみや弾性波速度の変化が大きいこと,来待砂岩 の場合,ある大きさの圧カを境に,弾性波速度は顕著な変化を示さないのに体積ひずみは急激に 増加すること,除荷過程では載荷過程よりも弾性波速度が小さくなること,残留ひずみが大きい ことなど,多くの知見を得ている。そして,これらの多くは,顕微鏡による観察から推定された 岩 石の 微視 的構 造 の変 化に よっ て説 明 するこ とが可能であることを明ら かにしている。
第5章では,岩石の透水係数の測定結果を述べている。白浜砂岩の場合,一定の間際水圧の下 で静水圧を負荷すると,圧カの小さい段階では透水係数が著しく減少し,またヒステリシスが大 きいこと,圧カが大きくなるにっれて,透水係数の滅少する割合が減り,ヒステリシスも小さく なることを見いだしている。来待砂岩の場合,ある大きさの静水圧の下で透水係数のヒステリシ スが最大になり,それ以下の静水圧に対しては透水係数が除荷に伴い若干回復することを確認し ている。
白浜砂岩にっいては,破壊により透水係数が数倍大きくなるものの,静水圧の負荷により,速 やかに非破壊の値に収束すること,差応カを負荷した場合,透水係数はほとんど変化せず,破壊 の直前になって増加することなどを明らかにしている。
第6章では ,2‑3のカ学特性を持つ媒体中に管路が分布するニ相モデルを用いて,両砂岩の 透水性と変形挙動の解釈を試みている。弾性媒体の場合,静水圧の負荷により管路がアスペクト 比の小さい順に不可逆的に閉鎖すると仮定したときには,静水圧一透水係数線図は下に凸になり,
ヒステリシスが生じる。白浜砂岩の透水性の主たる特徴はこのモデルで説明できる。弾・塑性媒 体の場合には,管路の周囲に形成される塑性領域の有無により,管路の断面積の変化する割合が 異なる。ある大きさの静水圧下で来待砂岩に認められた変形・透水の特異な挙動はこれによって 説明できる。
第7章は結諭で,本研究で得られた主な結果を述べている。
これを要するに,著者は,資源開発工学ならびに岩石力学に対して貢献するところ大なるもの が あ る 。 よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る資 格あ るも の と認 める 。
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