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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 鶴    智 之

     学位論文題名

    Revision of the tribe h/Iordellistenini     (Coleoptera :rvIordellidae) in Japan

(日本産ヒメハナノミ族(コウチュウ目,ハナノミ科)の分類学的再検討)

学位論文内容の要旨

  ヒ メハナ ノミ族は,コウチュウ日ハナノミ科に含まれ,全世界から40属1,200種以上が知られ る,科内では最大の族である.幼虫は腐朽材や枯れた草本の茎の内部を摂食する植食昆虫で,一部 の種はアサ輯植物の茎を食害する害虫としても知られる,多くの種の成虫は,日中活発に飛び回り,

様々な植物の花に集まって花粉や蜜を摂食する花粉媒介昆姐でもある,近年,生物多様性保全研究 において,森林環境内のマレーズトラップで多量のヒメハナノミ族の個体が採集されることからI 環境評価指標生物として有用であることが示された(Sugiura et al.,2008,2009a, b).また,ミバェが 植物の茎に形成したゴ冖ルに選択的に侵入するヒメハナノミ族の一種が,ミバェの寄主転換と連動 してホストレースを形成することが報告され,種分化研究の対象種としても扱われている(Blait et 鹹,2005控ど).このようにヒメハナノミ族は,生物多様性研究や種分化研究の対象として注目を 集めている.

  ヒメハナノミ族を対象生物として利用する研究が増えているが,その基盤となる分類は非常に遅 れており,世界的に見ても包括的な研究例はない.理由のーっに,形態形質が種や属間で極似して いることが挙げられる‐本族に含まれる種は流線型の体と鋭くとがった尾節を持つロニ←クを形態 をしており,他の甲虫と容易に区別できる.しかし,種,属の分類研究に有用な形質は著しく乏し く ,誤同定 種や定義の暖昧な分類群が多数存在し,安定した分類体系は未だ構築されていない.

  このような状況のもと,本研究では,日本産ヒメハナノミ族について,種,属レベルの分類学的 整理を第一の目的とした,日本各地から収集した標本やタイプ標本に基づぃて分類学的再検討を行 い,検討の不十分であった多くの種について詳細に記載した.さらに,記載で用いたデータに基づ き,ほとんど検討されてこなかった属分類群間の系統関係の構築を第二の目的とした.また系統解 析 の結果か ら,幼 虫寄主植 物とヒ メハナノ ミ族の 系統との 関連性に ついても検討を行なった.

  種 レベル の分類学的整理:日本産ヒメハナノミ族は114種2亜種が記録されているが,本研究に 船 いて新 たに4新種3初記録 種が加 えられた .さら に既知種 について 再検討 した結果 ,19種2亜 種の異物同名(シノニム)が認められた,一方で他種のシノニムとされていた2種は,それぞれ独

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立 種 で あ る こ と が 判 明 し た , 以 上 の 結 果 , 日 本 産 ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 は4新 種 を 含 む104種 に ま と め ら れ た . 雄 交 尾 器 な ど の 重 要 形 質 の 記 載 が 不 十 分 で あ っ た78種 に っ い て 詳 細 な 再 記 載 を 行 う と と も に,す べて の種に ついて 検審毒 を付 した,

  属 分 類 体 系 の 再 構 築 : 日 本 産 ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 は こ れ ま で13属2亜 属 に 分 類 さ れ て き た が , 本 研 究 に お け る 系 統 解 析 の 結 果 に 基 づ き 次 に 示 す 体 系 の 変 更 を 行 っ た .    1)Pseudomordellina, Pseudomordetlistenaの2亜 属 を そ れ ぞ れ 独 立 属 と し た .2)Tolidostena属 の2亜 属 ,Tolidostenaと Neotr idostenaをMordellochroa属 、の亜 属に 移した ,3)Ermisch ella属の日 ・ニ本 産種5種をFalsOmordellina 属に移 した .4) Falsomor・カ 脇fg阿Dぬ亜 属を日 本か ら新た に記録 し勵むD´ ,め′ カ髭む胞灯ロとGゆ甜胞打Dぬ の 両 属 に 含 ま れ て い た 短 段 刻 種 を 本 亜 属 に 移 し た ャ5) 恤 帆 め 册 ゞ 轟 浙 口 細 地 刪 ロfとMp° ゆ ゅ ぬ の2 種 を 元 に 新 属 脇 搾DmD脇 を 設 立 し た ェ 以 上 の 結 泉 , 日 本 産 ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 は14属3亜 属 に ま と め られた .

  系 統 解 析 : ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 の 系 統 関 係 は , 一 部 の 属 間 に つ い て の 考 察 を 除 きtま と ん ど 行 わ れ て こ な か っ た . 本 研 究 で は 日 本 産 ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 の 属 , 亜 属 問 の 系 統 関 係 や 分 類 学 的 問 題 点 を 検 討 す る た め に 内 群31種 , 外 群3種 を 選 択 し , 成 虫 の 外 部 形 態29形 質 を 用 い て 分 岐 学 的 解 析 を 行 っ た . 解 析 の 結 果 ,cI:O.51, 魁 :O.72, 樹 長98の 最 節 約 樹 が5つ 得 ら れ た , こ れ ら の 最 節 約 樹 に つ い て 厳 密 合 意 樹 を 探 索 し , 一 つ の 樹 形 カS得 ら れ た . こ の 結 果 に 基 づ き 系 統 関 係 の 考 察 を 行 っ た と こ ろ , 内 群 の う ち ,Gゆ 甜 を 門 口 属 が 最 基 部 で 分 岐 し , 祖 先 的 な 形 質 状 態 を 持 っ た 属 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た , 残 り の 分 類 群 はM。 ′ ぬ 〃 む を 門口 属 な ど4属を 含 む ク レ ード (A) を 除い て 大 部 分 が基 部 で 多 分 岐 とな り , 系 統 関 係 は 示 さ れ ぬ か っ た が , 日 本 産 り 仰 む 曲Pぬ 属 が 厠 加 聊D′ ぬ ロ 加 ロ 属 と ク レ ー ド を 形 成 す る こ と や , 勵bDmD′ ぬ 〃 む あ 閉 ロ ,GゆD舵 門Dぬ 而 属 に 含 ま れ て い た 短 段 刻 種 が , 日 本 未 記 録 の 朋bDm0 仇 〃 轟 轟 珊Dぬ 亜 属 に 含 ま れ る こ と が 示 さ れ た , ク レ ー ド (A) は 他 に 比 べ て 解 明 度 が 高 く , nP砒mD´ 伽蜘ロ ,珊P耐みmD′ぬ〃蝨地カロ2亜属の基亜属からの独立性や,乃fむぁs絶門ロ属とA釦′.出ぬcカ′Dロ 属 の 近 縁 関 係 が 示 さ れ た . さ ら に特 異 な 雄 交 尾器 を 持 つ 脇 ′ ぬロ む 印 靜 ロ 幻統 閉 伽 甜 は クレ ー ド (A)の 基 部 で 独 立 し て 分 岐 し て い た こ と か ら , 新 属 と し て 扱 う べ き で あ る こ と が 示 唆 さ れ た ,   幼 虫 寄 主 植 物 と 系 統 関 係 の 考 察 : こ れ ま で に 知 ら れ て い る ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 甲 虫 の 寄 主 植 物 記 録 は 非 常 に 少 な ぃ が , 本 研 究 で 新 た に4属11種 の 寄 主 植 物 が 判 明 し , 過 去 の 記 録 と 合 わ せ て8属20種 と な っ た , こ の 寄 主 記 録 を ヒ メ ハ ナ ノ ミ 各 種 ご と に 検 討 し た と こ ろ , 寄 主 特 異 性 は 低 か っ た が , 記 録 を 草 本 と 木 本 に 分 け て 再 検 討 す る と , 木 本 食 は8属 に わ た っ て 見 ら れ た の に 対 し , 草 本 食 は 胸 ′ ぬ ぬ セn nピ ル ゐmD砒 伽 瑠 の2属 に 限 定 さ れ て い た . ま た 外 群 と し て 用 い た ハ ナ ノ ミ 族 も 木 本 食 で あ り , 海 外 の 記 録 を み て も こ の2属 以 外 に 草 本 食 を 示 す 分 類 群 は 存 在 し な か っ た , 以 上 の 幼 虫 食 性 タ イ プ ( 木 本 ま た は 草 本 ) を 今 回 得 ら れ た 日 本 産 ヒ メ ハ ナ ノ ミ 族 の 系 統 樹 上 に マ ッ ピ ン グ し た と こ ろ , 食 性 タ イ プ は ク レ ー ド (A) 内 の 枝 端 部 に 位 置 す る 朋 み 砒 贓 ゞ 地 カ ロ 属 とAe甜 あmD脇〃 加 ロ 属 の2 属 に お い て , 木 本 食 か ら 草 本 食 へ と 移 行 し た こ と が 示 唆 さ れ た , こ れ ら2属 と 最 近 縁 で あ る Aわrぬ 〃mロ 属 とnP癇 朋0´ ぬ ロ む 絶 門 ロ 属 は , 幼 虫 が 枝 や 蔓 な ど 植 物 体 の よ り 細 い 部 位 を利 用 す る こ と     ―lOO−

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が報告されており(Tokei ,1953 ),本族の幼虫食性タイプが太い木本の幹から細い枝や蔓へ,さらに 細い草本の茎へと移行していったことが推察された.

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学位論文審査の要,旨 主 査    准 教 授   大 原 昌宏 副 査    教 授    秋 元 信 一 副 査    教 授    高 橋 英 樹 副 査    准 教 授   吉 澤 和徳

     学 位 論文 題 名

    Revision of the tribe Mordellistenini     (Coleoptera:Mordellidae) in Japan

( 日 本産ヒ メハナノ ミ族(コウ チュウ目 ,ハナノ ミ科)の 分類学的 再検討)

   本論文は、図127 、表 2 、引用文献 129 編からなる総頁 469 頁の英文論文である。参考論文 10 編が添えられている。

   ヒメハナノミ族は、コウチ斗ウ目ハナノミ科に含まれ、全世界から40 属1 ,20Q 種以上が知 られる、科内最大の分類群である。本族 j ま植物と密接な関連を持った昆虫で、幼虫は腐朽材や 枯れた草本の茎内部を摂食することが知られており、キク科やアサ科植物の害虫にもたってい る。成虫は、花に集まり花粉や蜜を摂食する花粉媒介昆虫でもある。近年、生物多様性保全研 究において、森林環境内のマレーズトラップで多量のヒメハナノミが採集きれることから、環 境評価指標生物として有用であることが示されている、。また、ミバェが茎に形成したゴールに 侵入するヒメハナノミ族の一種が、ミバェの寄主転換と連動してホストレースを形成すること が報告され、種分化研究の対象としても扱われている。このようにヒメハナノミ族は、生物多 様性研究や種分化研究の対象として注目を集めているが、本族を利用するための基盤 となる分 類 は 非 常 に 遅 れ て 茹 り 、 世 界 的 に 見 て も 包 括 的 な 研 究 は 行 わ れ て い な い 。    本研究では、日本産ヒメハナノミ族について、種、属レベルの分類学的整理を第ーの目的と した。日本各地から収集した標本やタイプ標本に基づいて分類学的再検討を行い、検討の不十 分であった多くの種について詳細に記載した。きらに、記載で用いたデータに基づき、これま で検討されてこなカゝった高次分類群の系統関係の構築を第二の目的とした。また系統解析の結 果から、 幼虫寄主 植物とヒ メハナノ ミ族の系統 との関連性についても検討を行なった。

   種レベルの分類学的整理:日本産ヒメハナノミ族は114 種2 亜種が記録されていたが、新た

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に 4 新 種 3 新 記 録 種が 加 え られ た 。 既知 種 に つい て 再 検討 し た 結果 、 19 種 2 亜 種 の同 物 異 名

(シノ ニム)が 認めら れた。一 方これ まで他種 のシノ 三ムとさ れていた 2 種 は、それ ぞれ独立 種 であ る こ とが 判 明 した。以 上の結 果、日本 産ヒメ ハナノミ 族は4 新種を 含む104 種にま とめ ら れた 。 雄 交尾 器 な どの重要 形質の 記載が不 十分で あった78 種 につい ては詳細 な再記 載を行 ない、、全種の検索表を付した。

   高次分 類(属 レベル) の分類学 的整理 :これま で13 属2 亜属に 分類さ れてきた カミ、本研究 に よる 系 統 解析 を 踏 まえて検 討した 結果、2 亜属 をそれぞ れ独立属 とし、 1 属を 別属の 亜属と し て扱 っ た 。さ ら に 2 亜属 を日本 から新た に記録 し、1 新属を設 立した 。以上の 結果、 日本産 ヒメハナノミ族は14 属 3 亜属にまとめられた。

   系統解 析:ヒ メハナノ ミ族の系 統関係 ほ、一部 の属間 についての考察を除きほとんど行われ て こな か っ た。 本 研 究で は 内 群31 種 、外 群 3 種 を選択 し、成虫 の外部 形態 29 形賞 を用い て分 岐学的解析を行ない、.CI : 0.49 丶RI: 0.70 丶樹長:10;2 の最節約樹5 っを得恕この系統関係から、

内群の うち、Glipostena 属が最 基部で分 岐し、祖 先的な 形質状態を持った属であることが示唆 された 残りの分 類群で は基部に 多分岐 が生じ一 部の系 統関係は 不明とな った斌 Mordellistena 属やPseudo+nordellina 属が 倉まれ るクレー ド(A) など、大 部分の分類群問では系統関係が明ら かとなった。

   幼虫寄 主植物 と系統関 係の考察 :ヒメ ハナノミ 族甲虫 の寄主植物記録は非常に少ないが、新 た に4 属 11 種 の 寄 主植 物 が 判明 し 、 過去 の 記 録 と合 わ せ て8 属 如 種と な っ た。寄 主記録 を草 本と木 本に分け て検討 したとこ ろ、木 本食は外 群のハ ナノミ族 及び内群 の8 属にわた って見ら れたの に対し、 草本食 はMor ぬ 〃函紹 門a と m め加 D 耐 e ロ所 ロの2 属に限定されていた。食性タイ プ(木本または草本)を系統樹上にマッピングしたところ、クレードくA )内の枝端部に位置する A あ 砒〃む紹 門口属 とnP 励所0r ぬ 脇ロ属 の 2 属 におい て、木本 食から草本食へと移行したことが 示唆された。さらti これら2 属と最近縁である臓 ′ぬ〃加ロ属とn ¢ あ m0 ′ぬ〃ぬ細ロ属は、幼虫 が枝や 蔓など植 物体の より細い 部位を 利用する ことが 報告されており、本族の幼虫食性タイプ が 木 本 の 細 い 枝 や 蔓 か ら 、 同 様 に 細 い 草 本 の 茎 へ と 移 行 し た こ と が 推 察 さ れ た 。    以上の ように 本研究は 、日本産 ヒメハ ナノミ族 の分類 学的・系統学的な情報の整備をもたら し、食 性変化に関する進化学的仮説を提示したものである。本研究の結果.は、従来、困難とさ れ てい た ヒ メハ ナ ノ ミ族 の 種 分類 ・ 属 分類 ・ 系 統関係 を飛躍的 に解明 k 種同 定を可能 にする など他 研究の基 礎とな るもので あり、 その成果 は学術 上、応用上、高く評価される。よって、

審査員 一同は、 鶴智之 が博士( 農学) の学位を 受ける のに十分な資格を有するものと認めた。

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