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博 士 ( 薬 学 ) 東 田 千 尋

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 東 田 千 尋

学 位 論 文 題 名

新 規 の 神 経 分 化 因 子 TA20 の 研 究 : ク口 ー ニ ン グ、 発 現 お よび 機 能

学 位 論 文 内容 の 要 旨

  100 nM TPA(Protein kinaseC(PKC) 活 性 化 薬 ) お よ び 、lmM diBu―cAMP

( 膜 透 過 性cAMP誘 導 体 ) の 、 ニ ュ ーロ ンモ デルNG108‐15細胞 に対 する 突起 伸 展 効果 を検 討し た。TPAあ るい はdiBu−cAMP単独 処理 によ るものと比較して、両 薬 物 処 理に よっ て、400ルm以上 の長 い突 起の 伸展 が強 く引 き起 こさ れた 。こ の 突 起 伸 展 は72時 間 の 薬 物 処 理 を 必 要 と し 、 ま た 処 理 後72時 間 を境 とし 、伸 展 突 起の さら なる 伸展 が認 めら れた。また 、両薬物処理よって伸展した突起のみが 薬 物除 去後 も退 縮し なか った 。10 nM staurosporine(protein kinase阻害薬)

存 在 下 では 伸展 がほ ぽ完 全 に抑 制さ れた 。ま た、 対照 群で はほ ば24時間 周期 で 認 められ弛[3H] thymidine取り込みが、 両薬物同時処理においては48時間以降、

完 全に 抑制 され た。 以上 の結 果よ り、TPA+diBu−cAMP 72時間処理 はNG108−15 細胞の神経分化を誘導す ることが示唆された。

  NG108−15細胞 にお いてTPAとdiBu―cAMP同 時処 理で は、 それ ぞれ を単 独処 理 し た場 合と 比較 してGAP−43 mRNAの強 い誘 導が 引 き起 こされた。ラ ットGAP―43 cDNAをNG108‐15細 胞 ヘト ラン スフェクションし、持続的にGAP−43を発現する、

NGーGllを 作製 した と ころ 、薬 物未処理下では形態変化を示さなかっ た。NG108− 15細胞 にお いてdiBu‐cAMP 72時間 処理 によ り伸 展し た突 起は、その後薬物を培 地 から除去す ると著しく退縮したのに対し、NGーGll,細胞において倣diBu−cAMP 除 去 後 も突 起が 維持 され た 。こ の時 のGAP‐43 mRNAは 、NG108−15とNGーGll両 細胞において、diBu−cAMP 72時間処理後に各細胞の 未処理時の約2倍量に増加し、

NG−Gll細 胞で は卜 ラ ンス フウ クシ ョン によ るGAPー43 mRNAの定常量の加算があ る ため 、常 にNG108‐15細 胞の 薬物未処理時の2倍以上の発現量を維持していた。

次 に、 高K゛( 脱分 極 性) 刺激 誘発acetylcholine (ACh) 放出量を検討したとこ ろ 、l mM diBu‑cAMP 72時 間 処 理 後 のNG108‐15およ びNG‐Gll細胞 のど ちら に お いて も未 処理 細胞 と比 較し て約4倍の 増加 が示 され た。 その後diBuーcAMPを除 去 し て24時 間後 の放 出量 は 、NG108−15細胞 では60.9%の減 少が 認め られ たが 、 NG‐Gllでは31.9Xの減少にとどまった。

  こ れ まで の結 果よ り、NG108‐15細胞 にお いてTPA十diBu−cAMP処 理に より 、 よ り長 い突 起の 伸展 が引 き起 こされ、そ の突起は薬物除去後も維持されること、

な らぴにその 突起維持にGAP−43が関与す る可能性が示唆された。しかしながら、

GAP−43は 突起 伸展 そ れ自 体に は積極的に関与しないことから、TPA+diBu−cAMP 処 理に より 誘導 され るGAP−43とは 異な る分 化因 子が 存在 すると推定された。そ こで、differential screening法により、両薬物処理により強く誘導される因子、

TA20cDNAを単讎した。

  TA20は 全 長1823 bpよ り な り 、 ホ モ ロ ジ ー サ ー チ に よ り 、5 側 約670 bpは 未 知 の 配 列 で あ り 、 モ こ か ら3 末 端 ま で は マ ウ ス の ミ ト コ ン ド リ ア の cytochromeb(cyt. b)の 全 長 と9bp異 を る の み の 高 い 相 同 性 を 有 す る こ と が

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(2)

分 かった。 そこでTA20のgeneと しての局 在について検討した。NG108−15細 胞 から、核 とミトコン ドリアを 分取し、 各画分よりgenomic DNAを抽出し、

Southern blottingしたところ、5 側unknown region 657 bpのプロープに結 合 するパン ドは核DNAにの み存在し た。一方、cyt.bhomology regionである 3 側1166 bpや全長1823 bpをプローブにした場合は、核にもミトコンドリア にも強く結合するパンドが多数検出された。NG108−15細胞の核画分を用いた nuclear run−off法により 、TA20mRNAが核内で 転写され ているこ とが示さ れ た 。ま た 、TA20のunknown regionとcyt.b homology regionの連結部を 増 幅させる プライマーを用い、NG108−15細胞のRNAを鋳型にしたRT/PCRを行 な った結果 、TA20DNAが細胞内 で実際に 連なって存在していることが示され た 。以上の 結果より、TA20geneは核DNAであることが示され、それにより、

細 胞 質 内 翻 訳 機 構 によ っ て 翻訳 さ れてVヽ る こ とも 予 想さ れ た 。Iぬtro translationの系 に おい て 、TA20geneから 約20 kDaの 蛋 自貫 が 生成 さ れ た 。TA20cDNAの 配 列 上 、20 kDa前 後 の 蛋 白 質 へ 翻 訳 さ れ る 読 み 枠 は 748‐1308 bpの み で ある と から 、 こ の部 分 をTA20のopen reading frame と推定した。ここから予想されるアミノ酸配列は、全く新規のものであった。

  NG108−15細胞にお けるTA20mRNAの発現 を、Northern blottingにより検 討したところ、100 nM TPAあるいは1mM diBuーcAMP単独処理よっては検出され なかったが、両薬物処理72時間後に約2倍の誘導が認められた。ラット各組織 に おけるTA20mRNAの 発現量を、RT/PCR法により 検討した ところ、 胎生19日 齢では小脳、心臓に高く、生後21日齢では小脳、海馬、肺に高く、大脳皮質や肝 臓にも発現していることが示された。

  TA20cDNAを 細胞にト ランスフウ クション してその 形態に及 ばす影響を検 討した。非移入細胞ならびにべクターのみを移入した細胞では何の変化も認めら れ なかった が、TA20のトうンスフウクタントでは薬物未処理下で長い突起を 著 しく伸展 するととも に、増殖 を停止し た。その効果は、T A20mRNAの発現 量と比例していた。NG108 15細胞の親株であるマウスニューロプラストーマ N18TG‐2は 、 薬 物処 理 に よるTA20mRNA発現に おいてNG108−15細胞と同 様 の挙動を示し、トランスフウクタントにおいても同様の突起伸展効果を現した。

し かしラッ トグリオー マC6Bu−1細胞 では、定常時におけるTA20の発現は他 の 細胞と同 様に認められるものの、薬物処理によるTA20の増加もトランスフ ェ クタント における形態変化も見られなかった。よって、TA20は神経細胞に おいてその分化に関与する因子であり、非神経細胞を神経様に転換する作用は有 していないものと思われる。

  TA20をglutathioneS―transferase(GST)と の 融 合 蛋 白 貿 と し て 冒. coli内で発現させた後、GSTに対するアフイニテイカラムで精製した画分中 に は 、 約 58 kDaの 融 合 蛋 白 質 の シ ン グ ル パ ン ド が 検 出 さ れ た 。   以 上、本研 究において、1)TPAとdiBu−cAMPの72時間同時処理は、突起伸 展や増殖停止などの神経分化を強く弓Iき起こし、両薬物処理によって発現量が多 くなるGAP−43が、伸展した突起の維持と、伝達物質放出促進に関与している、

2)両 薬 物72時 間処 理 に より強く 誘導され る新規因 子TA20cDNAは、神 経細 胞 において 、突起伸展 ならびに 細胞増殖 抑制作用 を有する こと、3) TA20 geneは 核に存在し、mitochondrial DNA‐like sequenceを有し、分子量約20 kDaの新規の蛋白買へと翻訳されること、を見い出した。TA20の神経分化へ.

の 作 用機 序 や 細胞 内 局 在な ど につ い て 、今 後 の検 討 、解 明が待た れる。

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(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

′教授 教授 教授 助教授

野村 栗原 有賀 徳光

学 位 論 文 題 名

靖幸 賢三 寛芳 幸子

新 規 の 神経 分 化 因子 TA20 の研究 : クローニング、発現および機能

  申 請 者 、 東 田 千 尋 は 、 神 経 細 胞 の 分 化 に 関 す る 薬 理 学 的 、 生 化 学 的 、 分 子 生 物 学 的 研 究 を 進 め て き た が 、 今 回 「 新 規 の 神 経 分 化 因 子 TA20の 研 究 : ク ロ ー ニ ン グ 、 発 現 お よ ぴ 機 能 」 と い う 題 目 の 学 位 論 文 を 申 請 し て き た 。

  神 経 系 の 分 化 、 成 熟 に は 数 多 く の 因 子 が 関 与 し て 、 軸 索 の 伸 長 、 シ ナ ブ ス 形 成 、 神 経 伝 達 物 質 の 合 成 と 放 出 、 各 種 イ オ ン チ ャ ネ ル の 増 加 な ど と い っ た 現 象 が 生 じ る が 、 ど の よ う な 因 子 が ど の よ う な 機 構 で 神 経 分 化 を 引 き 起 こ す か に っ い て は 明 確 に さ れ て い な い 。 本 論 文 は 、 神 経 芽 細 胞 腫 と 神 経 膠 細 胞 腫 と の 雑 種 細 胞 で あ るNG108−15 細 胞 を 用 い て 、 神 経 分 化 に 関 与 す る 新 し い 因 子 の 単 離 、 発 現 、構 造 、 作 用 機 構 に つ い て 解 析 し た 研 究 で あ り 、 以 下 の 新 知 見 を 得 て い る 。   NG108−15細 胞 に12−O−tetradecanoylphorbol 13−acetate(TPA、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼC活 性 化 薬 ) とdibutyryl cAMP(diBu−cAMP、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼA活 性 化 薬 ) を 添 加 し 、 そ の 神 経 突 起 伸 展 や 細 胞 増 殖 に 対 す る 効 果 を 検 討 し た と こ ろ 、 両 葉 物 の 同 時 処 理 に お い て の み 長 い 突 起 伸 展 が 認 め ら , れ る こ と 、 伸 展 し た 突 起 が 維 持 され る こ と 、 さ ら に 細 胞 増 殖 が 停 止 す る こ と を 見 い 出 し た 。 こ の 事 実 か ら 、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼCと ブ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼAの 両 キ ナ ー ゼ が シ ナ プ ス 形 成 に 重 要 な 役 割 を 担 う こ と を 示 唆 し た 。

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    Growth‑associated protein ‐43 ( GAP ‐ 43 )は、軸索伸展や標的ニ    ユー ロ ンの 認 識と到達 に関与する growth cone (軸索 の際長端) に    高濃 度に存在す る酸性蛋白 質であり、 神経分化や シナプス形成にお    ける その役割が 注目されている。申請者は、NG108 −15 細胞において TPA と diBu ー cAMP の 同 時 処 理 が 強 く GAP − 43 mRNA を 発 現 さ せ る こ    とを 示 した 。 またGAP ― 43 cDNA をト ランスフェ ク卜した NG108 − 15    (NG − Gll )細胞 では、 diBu ‐cAMP 処理により伸展した短い突起が維 持 さ れる こ と、 またア セチルコリ ン(ACh )の放出が 増加するこ とを 示 し た。 こ のこ とより 、 GAP − 43 が 増加すると 伸展突起が 維持され、

こ れ が ACh 放 出 を 促 進 す る 構 造 維 持 に 関 わ る と 推 定 し た 。      上 述 し た よ う に 、 申 請 者 は TPA と diBu‑cAMP の 同時 処 理に よ り 長 い 突起 の 伸長 、 増殖 停 止、 薬 物 除去 後 の突 起維 持が引き起 こされ る こ とを 見 い出 し、さ らに、 GAP −43 は長い突 起の伸展や 細胞増殖に は 関 与し な いこ と を初 め て明 ら か にし た 。こ のこ とを基礎に 申請者 は 、 TPA と d.iBu − cAMP 同時 処 理で の み強 く 発現 する因 子が、両薬 物 処 理 特異 的 な神 経 機能 を 担う 因 子 であ る と考 え、 この因子を 探索す る た め 、 TPA と diBu ― cAMP 処 理 と diBu‑cAMP 単 独 処 理 細 胞 か ら そ れ ぞれpo エy (A )゜ RNA を抽出 し、dirfe ご ential screening 法により 両 薬 物 処 理 に お い て の み 発 現 し て い る ク コ ― ン TA20 を 単雛 し た。

TA20 の シ ー ク エ ン シ ン グ を 行 っ た と こ ろ 、 TA20cDNA は ェ 823 塩 基 対よ つ なる こ と、 マ ウス ミ 卜ニ ン ドリ アのcytocnrome ,D    ( cyt.b ) と高 い 相同 性 を有 す る がNG108 ‐15 細胞の核内 に存在し そこで転写されることを示した。また、|ロゲ|とr 〇 translation によ り TA20cDNA か ら 約 20 kDa の 蛋 白 買 が 生 成 さ れ る こ と を 示 し た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 TA20 遺 伝 子 は 孩 内 DNA と し て cyt.b と は 異 な る 未 知 蛋 白 買 へ と 翻 訳 さ れ る こ と を 示 唆 し た 。    次 に 、 TA20mRNA の 細 胞 お よ ぴ 組 織 に お け る 発 現 に 関 し 検 討 し た 。 ま ず 、 NG108 − 15 細 胞 に お い て 、 TPA と diBu‑cAMP の 両 薬 物 処 理 に よ っ て の み TA20 mRNA が 2 倍 に 誘 導 さ れ た 。 ま た ラ ッ 卜 胎 生 19 日 齢で は 、 小脳 と 心臓 に 、生 後 21 日 齢で は、小脳 、海馬、肺 に 高 く 、 大 脳 皮 質 や 肝 臓 に も 発 現 し て い る こ と を 示 し た 。   TA20 の 神 経 分 化 に お け る 機 能 を 明 ら か に す る た め 、 TA20

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(5)

cDNA を NG108 − 15 細 胞に 移 入 し た と こ ろ 、 長 い 突起の 著い ヽ伸 展と 増 殖 停 止 を 認 め た 。 ま た NG108 − 15 細 胞 の 親 株 へ の TA20cDNA の ト ラ ン ス フ ェ クシ ョ ン の ′ 結 果 か ら 、 TA20 はグ リ ア 細 胞 で は 機 能 を 有 せ ず ニ ュー ロン の分 化因 子とし て機 能す ること を示 唆し た。

   さ ら に 、 TA20 の 蛋 白 質 と し て の 生 成 、 発 現 に っ い て 、 E . co ハ 細 胞 内 発 現 系 を 用 い て 検 討 し た 。 TA20 を glutathione S −transferase ( GST )と の融 合蛋 白質と して E.co ハ内で発現させ、

GST の アフ イニ テイカ ラム によ 、る 本蛋白 貿の 精製 を行ったことによ り 、 TA20 の 抗 体 作 製 や そ れ を 利 用 し た TA20 の 免 疫 細 胞 化 学 的研究への応用の道を切り開V ヽた。

   以 上 の よ う に 、 本 論 文 は 新 規 の 神 経 分 化 因 子 TA20 の 発 見 、 単      一   ,

離に成功しその一次構造の解析を行V ヽ、さらに細胞,や組織での発現、

機能に関し新知見を提示しており、博士(薬学〉の学位を受けるに十分 値すると認めた。

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参照

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