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ジルコノセン錯体と一酸化炭素および カルボニル化合物との反応

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Academic year: 2021

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博士(薬学)萬(三刀)静恵

学 位 論 文 題 名

ジルコノセン錯体と一酸化炭素および カルボニル化合物との反応

学位論文内容の要旨

≧:はじ塑迄

  遷移金属錯体と一酸化炭素との反応は、学問的にも工業的にも重要である。特にメタラサイ クルと一酸化炭素との反応は、環状カルボニル化合物の生成が期待できるため、大変興味深い。

これまでメタラサイクルと一酸化炭素との反応では、メタラシクロペンタン、ペンテンあるい はペンタジェンといった、5員環と一酸化炭素との反応は数多く見られ、また4員環の例もい くっか報告されているが、3員環の反応はその例がない。しかしながら、3員環メタラサイク ルにCOが1分子挿入すると、反応性の高い4員環環状化合物が生成し、さらに反応する可能 性がある。そこで、遷移金属として、ジルコニウムを選択し、ジルコニウムを含む3員環化合 物と一酸化炭素およびその等電子体のイソニ卜リルとの反応を試みた。また、ジルコノセン錯 体とカルボニル化合物との新規反応に関しても検討を行った。

2.ジル=とZセン―ア坐圭Z蛍佳とニ酸i匕炭塞とQ反応

  ジルコノセンーアルキン錯体はジルコナシクロプロペンと等価であると考えられることから まず、一酸化炭素との反応を検討する基質として選択した。反応は、THF中、Cp2Zr(n‑Bu)2に ホスフイン等の配位子、種々のアルキンを順次加え、系中でジルコノセンーアルキン錯体を調 製し た。ここにCOを常圧で導入し、酸処理した。その結果、アルキンの置換基がPhやTMS 基の場合、反応は進行しなかったが、アルキル基の場合には、4−ヒドロキシ‑2‑シクロブテノン が得られた。なお、反応機構は以下のように考えている。まずジルコノセン―アルキン錯体に COが1分子 挿入して 、4員 環が生 成する。 この反 応性が高 いことから、2分子目のCOが反 応し、転位によって、オキサジルコナシクロプロパンを形成する。この酸処理によって、4‐ヒ ド口キシ‑2‑シクロブテノンが得られた。本反応は、アルキン錯体とCOを用いたダブルカルボ ニル化の新規反応である。

3.ジル呈Z皇とジアル量坐蛍佳と二酸化底塞とC反応

  次にジルコノセンーアルケン錯体にっいて同様の反応条件にて検討を行ったが、反応は全く 進行しなかった。これは、ホスフインの配位により、COの挿入が阻害されたものと考えられ たので、配位子のない錯体を試みた。低温で調製されるCp2Zr(n‑Bu)2は、室温でジルコノセン

―ブテン錯体となることが知られているので、これを用い、反応を行った。THF中、‑78℃で Cp2Zr(n‑Bu)2を調製し、,ここにCOを反応させながら室温に戻した。結果は予想とは異なり、

口−ヒドロキシアルデヒドが生成した。リチウム試薬だけでなく、種々のグリニヤール試薬を 用いたときにも反応は進行した。推定される反応機構は以下の通りである。まず、ジルコノセ ンジアルキルにCOが1分子挿入した後、オキサジルコナシクロプロパンへと変換される。こ ニにもう1分子のCOが挿入し、オキサジルコナシクロブタンを形成し、酸処理によって、a‑

ヒドロキシアルデヒドが得られたと推定される。本反応は、COの挿入により3員環を形成し、

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(2)

こ の オキ サジ ルコ ナ シク ロプ ロパ ン がCOと反 応し て4員環 とな っ てい る。 この 点か ら 、本 反 応 は 、 オ キ サ ジ ル コ ナ シ ク ロ プ ロ パ ン と COと の 新 規 反 応 で あ る と 言 え る 。 4.ジ ルコノセン豊Z坐量坐鐘佳と4Z三.塑坐とQ反応

  次に 、 ジル コノ センジ アルキル錯体とイソニトリル を用いても同様に検討を行 った。まず、

Cp2Zr(n‑Bu)2を用 い 、COの代 わり にt‑BuNCを 反応 させ た とこ ろ、 イソ ニト リ ルが1分 子挿 入 し たジ ル コノ セン 錯体が 生成した。この溶液を塩酸で 処理したところ、得られた 化合物は、Zr に 結合 し たBu基がCIに 置き 換 わっ たジ ルコ ノ セン ーイ ミン 錯体 で あった。種々 のりチウムお よびグ リニヤール試薬を用いて反 応を検討した結果、いずれの 場合も収率よく錯体が得られた。

X線構 造解 析の 結 果か ら、 イミ ノ基 が ジル コニウムに 配位していることが明らか になった。こ れ まで ロ ・水 素を 持たな ぃジルコノセン錯体へのイソ ニトリルの挿入反応による 錯体は報告が あ るが 、 鎖状 のジ アルキ ルジルコノセン錯体を用いた 反応は、ロ位の水素の引き 抜き反応との 競 争と な るた め、 興味あ る点ではあったが、今まで報 告例はなかった。本反応で は、ジルコニ ウムが ロ‐水素引き抜きを行うより早くイソニトリノレの挿入が起こることを明らかにし、また、

生 成す る 錯体 のジ ルコニ ウムーイミノ結合は、酸処理 でも開裂しないほど窒素が 強く配位して いた。

5.ジ ル呈士22里釜Z空2三Zと二酸 化崖塞とQ反応

  5員 環の ジル コ ナサ イク ルと 一酸 化 炭素 との反応に おいては、ジルコナシクロ ペンタン、ジ ル コナ シ クロ ペン テンが 対応する環状カルボニル化合 物を与えるのに対し、ジル コナシクロペ ン タジ ェ ンは 長い 問、一 酸化炭素に対して反応不活性 であると信じられてきた。 しかし、この 反 応の 再 検討 を行 なった 結果、アルキル基を有するジ ルコナシクロペンタジェン であれぱ、反 応 は室 温 で進 行し 、酸処 理によってシクロペンテノン 誘導体を与えることを見出 した。種々の ジ ルコ ナ シク ロペ ンタジ ェンを用い、検討を行った結 果、鎖状アルキルのみでな く、ジルコナ インデ ンを用いても反応は進行し た

6. ジ ル 呈 三 空 蠱 を 田 ! ニ たZ墨 三 坐2bと 趨 よ 墜Z重 量 ヒ と 類 壷 ≧ らQイ と 乏 と透 聾 佳金 成   フェ ニ ル置 換ア リルア ルコールが酸触媒により閉環 し、インデン誘導体を与え る反応は知ら れ てい た が、 これ まで報 告されたものは、アリルアル コールの合成法に制限があ り、一般性の 低 いも の であ った 。そこ で、ジルコノセン錯体を用い 、アルキンとケトンから合 成できるオキ サ ジル コ ナシ クロ ペンテ ンが、加水分解によルアリル アルコールを生じる反応を 利用すること を 考え た 。ケ 卜ン として フェニルケ卜ンを用いること により、加水分解によルフ ェニル置換ア リ ルア ル コー ルが 生成す る。これが系中の酸触媒によ り閉環反応が起こり、その 結果、多置換 イ ンデ ン 誘導 体を 高収率 で得ることに成功した。種々 のフェニルケトンを用いて も反応は進行 し た。 ま た、 複素 環を有 するものを基質として用いた 場合にも反応は進行した。 また、フェニ ル基を 有する1,3‐ブタジェンが 酸触媒によって、同様の閉環 反応が起こり、インデンを生成す ること は報告されていた。そこで 、フェニル基を有するジルコ ナシクロペンタジエンを合成し、

過剰の 酸を加えてみたところ、予 想通り、加水分解で1,3‐ブ タジェンが生成すると同時に系中 の酸触 媒により、インデン誘導体 が合成できることを見出した

Zよ圭 と變

  1) ジルコノセンーアルキン錯体 と一酸化炭素との反応により、4‐ヒドロキシ.2‐シクロブテ     ノ ンが得られることを見いだ した。

  2) ジル コノ セ ンジ アル キル 錯体 と 一酸 化炭素との 反応によルダブルカルボニ ル化が起こり     酸 処 理 に よ り 、a‐ ヒ ド ロ キ シ ア ル デ ヒ ド が 生 成 す る こ と を 見 い だ し た 。   3) ジル コノ セ ンジ アル キル 錯体 と イソ ニトリルと の反応により、安定なイミ ノ錯体を得る     こ とに成功した。

  4) ジル コナ シ クロ ペン タジ ェン と 一酸 化炭素との 反応において、室温で反応 させた場合、

    シ クロペンテノンが得られる ことを見いだした。

  5) ジ ル コ ノ セ ン 錯 体 を 利 用 し た 多 置 換 イ ン デ ン 誘 導 体 合 成 法 を 確 立 し た 。

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(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

高橋 橋本 小笠原 中島

学 位 論 文 ´ 題 名

    

保 俊一 正道

    

ジル コノセ ン錯体と 一酸化炭素および カ ルボニル化合物との反応

萬 (三 刀 )静恵 さんの ジルコ ノセン 錯体と一 酸化炭 素および カルボニ ル化合 物と の反応 と題 された博 士論文 は、全

6

章から なり、 ジルコノ セン錯 体と一酸化炭素お よ び カ ル ボ ニ ル 化 合 物 を 用 い た 新 規 合 成 反 応 に つ い て 述 べ ら れ て い る 。 第 一章 で は、本 論文の 内容の背 景につ いて述べ られて いる。遷 移金属錯 体と一 酸化 炭素と の反応 は、学問 的にも 工業的に も重要である。特にメタラサイクルと一酸化炭 素との 反応は 、環状カ ルボニ ル化合物 の生成が期待できるため大変興味深い。これま でメタ ラサイ クルと一 酸化炭 素との反 応では、 メタル を含む5員環 の反応は数多く見 ら れ、 ま た4員環の 例もいく っか報 告されて いるが、

3

員 環と一酸 化炭素 との反応 は その例 がない 。これに 対し三 刀さんは 、遷移金属としてジルコニウムを選択し、ジル コニウ ムを含 む3員 環化合物 と一酸 化炭素と の反応 開発を目 的とし 、研究を行った。

また、

5

員 環のジル コノセン 錯体と カルボニ ル化合 物との新 規反応 に関しても研究を 行った。

  

第二章 では、 ジルコノ センー アルキン 錯体と一酸化炭素との反応にっいて述べられ ている 。ジル コノセン ―アル キン錯体 に一酸化炭素を室温で反応させ、酸処理するこ とによって、4−ヒドロキシ‑2‑シクロブテノンが得られることを見いだしている。この 反応は 、アル キンのダ ブルカ ルボニル 化を経由する反応であり、アルキン錯体と一酸 化炭素との選択的反応の最初の例となる。

  

第三章 では、 ジルコノ センジ アルキル 錯体と一酸化炭素およびイソシアニドとの反 応にっ いて述 べられて いる。 ジルコノ センジアルキル錯体と一酸化炭素との反応によ りa‑ヒドロキシアルデヒドを与えることを見いだした。

  

同 様 に ジルコ ノセンジ アルキル 錯体と

t‑BuNC

を室温 で反応さ せると 、イソシ アニ ド が1分 子挿 入した イミノジ ルコノ セン錯体 が生成す る。さ らにこの 錯体の

X

線構 造 解析を 行って いる。こ れまで ロ_水素 を持たないジルコノセン錯体へのイソシアニド

    

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の挿入反応による錯体は報告があるが、鎖状のジアルキルジルコノセン錯体を用いた 反応は、ロ位の水素の引き抜き反応との競争となるため興味ある点ではあったが、詳 細な検討は行われていなかった。本反応では、ジルコニウムがB‑ 水素引き抜きを行 うより早くイソシアニドの挿入が起こることを明らかにしている。また、この錯体を 塩酸で処理したところ、得られる化合物はZr に結合したアルキル基が CI に置き換わ っ た イ ミ ノ ジ ル コ ノ セ ン 錯 体 で あ り 、 そ の 構 造 に 関 し て 議 論 し て い る 。    第四章では、ジルコナシクロペンタジエンとカルボニル化合物との反応について述 べている。ジルコナサイクルと一酸化炭素との反応においては、ジルコナシクロペン タンおよびペンテンが対応する環状カルボニル化合物を与えることは知られていた。

ジルコナシクロペンタジエンについては、長い間反応不活性であると信じられていた が、三刀さんはこの反応の再検討を行った結果、アルキル基を有するジルコナシクロ ペンタジエンであれぱ反応は室温で進行し、酸処理によってシクロペンテノン誘導体 を与えることを見いだした。また、一酸化炭素の代わりにMo(C0)6 を用いた場合で は、 2 種の異性体の混合物ではあるが、シクロペンテノンが得られることも見いだし ている。

   第五章では、ジルコナサイクルを経由する新規インデン合成法にっいて述べられて いる。ジルコノセン錯体を用い、アルキンとフェニルケトンから生ずるオキサジルコ ナシクロペンテンを、加水分解と同時に酸触媒によって閉環させることによって、多 置換インデン誘導体が高収率で得られることを見いだした。また同様に、フェニル基 を有するジルコナシクロペンタジェンを合成し、加水分解により1 ,3 ‐ブタジエンが生 成すると同時に系中の酸触媒によルインデン誘導体が合成できることを見出してい る。

   第六章では、ジルコナサイクルとアルデヒドおよびケトンを用いる反応について述 べられている。種々のオキサジルコナシクロペンテンについてプロパルギルハライド との反応を塩化銅の存在下、検討を行っている。その結果、用いる基質によルアレン 化合物あるいはケトブタジエンを作り分けることができることを見いだしている。ま た、ジルコナシクロペンテンとベンゾフェノンを用い、アルキンの異性化によるアレ ンの合成に成功している。

以上のように、三刀さんの研究では、ジルコノセン錯体と一酸化炭素およびカルボ ニル化合物を用いた反応における、興味深い知見が見いだされており、また、価値の ある合成研究への展開がなされていることなどから、博士の学位に十分値するものと 判断した。

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