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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 齋 藤 由 里 子

学 位 論 文 題 名

イネ縞葉枯ウイルスのゲノム構造および イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子に関する研究

学位論文内容の要旨

  本研究は、イネ縞葉枯ウイルス(RSV)の2つの主要夕ンバク質遺伝子のコーディング様式 を明らかにし、またインド型イネModanに由来するイネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb‑iのポジ ショナルク口ーニングを目指して、染色体上座乗位置を特定し、さらにその物理地図上におけ る抵抗性遺伝子座を限定したものである。

    1.イネ縞葉枯ウイルスゲノムの解析

1)RSVの外被夕ンパク質と感染特異夕ンバク質のアミノ酸部分配列を決定した。外被夕ン バク質は純化ウイルス粒子から、感染特異夕ンパク質はイネ感染組織からそれぞれ精製し、プ 口テナーゼ処理により生じたぺプチドのアミノ酸配列を決定した。その結果、外被夕ンパク質 についてはカルボキシル末端を含む8ペプチドと感染特異夕ンバク質については11ベプチド

(うち3ベプチドは重複)のアミノ酸配列を明らかにした。

2)  外被夕ンバク質および感染特異夕ンパク質のアミノ酸配列から設計したオ1」ゴヌクレオ チドプローブを用いてウイルスゲノムRNAに対してハイブリダイゼーションを行い、それぞ れのタンバク質をコードする分節RNAを特定した。その結果、外被夕ンバク質はRSVの第3 分節RNAにアンチセンスでコードされ、また、感染特異夕ンバク質は、第4分節RNAにセン スでコードされ、それぞれ異なる極性でコードされていた。このことから、RSVのコーディン グ様式はアンビセンスであると考えられた。

    2.イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子の解析

1)グラフィカルジェノタイプによる座乗領域の推定をした。インド型イネModanに由来す るイネ縞葉枯病抵抗性品種と感受性品種のゲノムDNAを抽出し、イネ染色体上に分布する322 個のRFLPマーカーのRFLP分析を行い、グラフイカルジェノタイプを明らかにした。それに よると、抵抗性品種のModan由来の染色体領域は日本型イネとの交配が進むに伴って第11染 色体上の特定領域に収束した。この染色体領域は縞葉枯病抵抗性に関与するものと考えられた。

抵抗 性 品 種星 の 光 では4個 のRFLPマ ー カ ー(gm2410、XNpb220、XNpb257、XNpb254)、 むさしこ がねでは2個 のRFLPマーカ ー(gmZ410、XNpb220)がインド型イネの遺伝子型を 示し、抵抗性遺伝子5ルbイは第ll染色体上約28〜36cMの領域内に存在する可能性が高いこ とを明らかにした。

2)抵 抗性遺伝 子SCybイの 座乗する と考え られる第11染色体上の新規の24個のRFLPマー カーを用い、コシヒカリ(感受性)と朝の光(抵抗性)間で多型を検出できるマーカーの探索 を行った。供試24周のRFLPマーカーのうち、8個のRFLPマーカーが多型を示した。また、

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(2)

800種の10塩基のオ1」ゴヌクレオチドプライマーによるRAPD分析を行い、約2,200の増幅 DNA断片 の うち 、コ シヒ カりと朝の光間で多型を示す5断片を得た。これら5断片をRFLP マーカーとして検討したところ、1断片が多型を示し、これをRFLPマーカーST10とした。

したがって、コシヒカりと朝の光間で多型を示す新規の9個のRFLPマーカーを得た。コシヒ カりと朝の光間で多型を示すマーカーは、前項 の4個のRFLPマ一カーと合わせて13同にな った。

3)Stvb‑i遺伝子の座乗位置を特定した。  コヒシカリ/朝の光のF2を用いて、交配親問で 多型 を示 す13個のRFLPマーカーとイネ縞葉枯 病抵抗性の連鎖解析を行った。F2の120個 体からそれぞれDNAを抽出し、RFLPマーカーを用いて各周体の遺伝子型を得た。そのF3系 統を用いて縞葉枯病抵抗性検定を実施し、F2個体の抵抗性程度を評価した。検定の結果、供 試したF2集団は26: 56: 38(感受性型:中程度抵抗性型:抵抗性型)に分離し、期待された 1:2:1に適合してい た。各F2個体の遺伝子型と抵抗性反応結果との連鎖解析の結果、抵抗 性 遺 伝 子Stvb‑iはXNpb220とXNpb254/257に 挟 まれ る1.8cMの 領域 内に あり 、RFLPマ ーカーST10とO.OcMで連鎖していることが明らかとなった。

4)Stvb‑i遺伝子座 領域における物理地図を作製した。Stvb‑i遺伝子と連鎖する3つのRFLP マーカー(XNpb220、ST10. XNpb257)をプ口ーブとしてYACライブラリー(日本晴由来)

か ら6個 の ク 口 ー ン を選 抜し た。 同様 にXNpb220、ST10、XNpb254の3つ のRFLPマ ーカ ーとYACクローンY4366の切断断片をプ口ーブと して、BACライプラリー(シモキ夕由来)

から18個のク口ーンを得た。各クローンの挿入DNA末端断片をプローブとしたサザンハイブ ルダイゼーションおよび制限酵素断片の泳動バターンからBACク口ーンの相互関係を調べ、18 ク口ーンを整列化した。これにより、Stvb‑i遺伝子座を含む1.8cMの領域を18の整列化BAC クローンによりカバーすることができた。また 、XNpb220−XNpb254/257間(遺伝距離で 1.8cM)は物理距離にして約620kbに相当していた。

5)Stvb‑i遺伝 子座 領域 を限定した。  物理地図の作成に用いたBACク口ーンの挿入DNA 末端断片およびサブクローンから34の分子マーカー(2 SCAR、32RFLP)を開発した。また、

既 存 のRFLPマ ー カ 一XNpb220お よ びST10と を そ れぞ れSCARマ ーカ ーに 変換 し、 計36 個の分子マーカーを得た。これらの分子マーカーを用い、連鎖解析に供試したF2集団の中で XNpb220−XNpb254/257間で組換えを生じていた4個体と抵抗性品種むさしこがねについて Stvb‑i座 領域 にお ける 遺伝子型を調べた。そ の結果、Stvb‑i座はSCARマーカー7Lと21R との間、約286kbに限定された。さらに、ルコンピナントインブレッドライン(黄金晴/月の 光)から選抜されたStvb‑i座近傍での組換え系統を用いた解析から、Stvb‑i遺伝子は約120kb の領域内に存在することが明らかとなった。以上の結果、Stvb‑i遺伝子のクローニングの基盤 が整った。

6)DNAマーカーによルイネ縞葉枯病抵抗性個体を選抜した。  抵抗性遺伝子と密接に連鎖 するSCARマーカーST10による縞葉枯病抵抗性個体の選抜の可能性を検討した。国内で育成 され たModanに 由来 する 抵抗 性品 種・ 系統 はす べてSCARマーカーによるDNA断片の増幅 が認められた。また、F2集団(コシヒカ1」/朝の光)120個体について検討したところ、DNA 断片の増幅が認められた個体は、抵抗性型もしくは中程度抵抗性型であり、増幅のみられなか った個体はすべて感受性であった。SCARマーカーによる判定と生物検定による判定は一致し、

Modanに由来する縞 葉枯病抵抗性個体・系統の選抜効率は極めて高く、DNAマーカ一選抜に よる育種へ応用ができるものと認められた。

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(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    上田一郎 副査    教授    生越    明 副査    教授   喜久田嘉郎 副査    教授    三上哲夫

学 位 論 文 題 名

イネ縞葉枯ウイルスのゲノム構造および イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子に関する研究

  本 研 究 は 、 図37、 表8引 用 文 献103を 合 み 、6章 か ら な る 総 頁 数104の 和 論 文 であ る 。他 に参 考論 文11編が 添え られ てい る。

  イネ 縞 葉桔 れ病 は、 昭和30年 代後 半か ら現 在ま で日 本の イネ ウイルス病とし ても っ とも 重 要である。本研 究は、イネ縞葉桔病に対する抵抗性イネ作成の基礎知見 を得 る ため に 、ウイルス遺伝 子とイネの抵抗性遺伝子を解析したものである。その内 容は 以 下の よ うに 要約 され る。

    1.イネ 縞葉 枯ウ イル スゲ ノム の解 析

    イ ネ 縞 葉 枯 ウイ ルス(RSV)のコ ーデ ィン グ様 式が アン ビセ ンス であ る こと を明 ら かに した 。ま ず、RSVの外 被 夕ン バク 質に つい ては カル ボキ シル 末端 を含む8ペプ チ ド、 また 感染 特異 夕ン バク 質に つい ては11ペプチド(うち3ペプチドは重複)のア ミ ノ酸 配列 を明 らかにした。そして、 アミノ酸配列から設計したオリゴヌクレオチド プ 口 ー ブ を 用 い てウ イル スゲ ノムRNAに 対し てハ イブ リダ イゼ ーシ ョン を 行い 、そ れ ぞれ のタ ンパ ク質 をコ ード する 分節 ,RNAを特定した。その結果、外被夕ンパク質 はRSVの 第3分 節RNAに アン チセ ンス でコ ード され 、ま た、 感染 特異 夕ン パ ク質 は、

第4分 節RNAに セ ン ス で コ ー ド さ れ 、 そ れ ぞ れ 異 な る 極 性 で コ ー ド さ れ て い た 。

    2.イ ネ縞 葉枯 病抵 抗 性遺 伝子 の解 析

1)  イ ン ド 型 イ ネModanに 由 来 す る イ ネ 縞葉 枯病 抵抗 性品 種と 感 受性 品種 のゲ ノ ム に つ い て 、RFLP分析 を行 った とこ ろ 、抵 抗性 品種 のModan由来 の 染色 体領 域は 日 本型 イネ との 交配 が進むに伴って第11染色体上の特定領域に収 束した。抵抗性品種星 の 光 で は4個 のRFLPマ ー カ ー(gm2410、XNpb220、XNpb257、XNpb254)、 む さ し こ が ね で は2個 のRFLPマ ー カ ー(gm2410、XNpb220)が イ ン ド 型 イ ネ の 遺 伝 子 型 を 示 し 、 抵 抗 性 遺 伝 子Stvb‑iは 第11染色 体上 約28〜36cMの 領 域内 に存 在す る

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可能性が高いことを明らかにした。さらに、コシヒカリ(感受性)と朝の光(抵抗性)

間で新規 に多型を 検出できるRFLPマーカーをST10を含め9個得た。コシヒカりと 朝の光間 で多型を 示すマーカーは、前項の4個のRFLPマーカーと合わせて13旧に なった。

2)これら13個のRF LPマーカーとイネ縞葉枯病抵抗性の連鎖解析を行い、5L‑vb‑i 遺伝子の座乗位置を特定した。コヒシカリ/朝の光のF2の120個体について、RFLP マーカーを用いた各個体の遺伝子型解析と抵抗性程度の評価を行った。遺伝子型と抵 抗性反応結果との連鎖解析の結果、抵抗性遺伝子5 L‑vb‑iはXNpb220とXNpb254/257 に挟ま れる1.8cMの領 域内にあ り、RFLPマー カーST10とO.OcMで連鎖していた。

3)St‑vb‑i遺伝子座領域における物理地図を作製した。  Stvb‑i遺伝子と連鎖する3 つ のRFLPマ ー カ‑ (XNpb220、ST10、XNpb257)とYACク 口 ー ンY4366の 切 断 断片をプ口ーブとして、BACライプラリー(シモキ夕由来)からク口ーンを得て、こ れらを整列化した。これにより、5 L‑vb‑i遺伝子座を含む1.8cMの領域は物理距離に して約620kbに相当していた。

4)Stvb‑i遺伝子座領域を限定した。  物理地図の作成に用いたBACクローンの挿 入DNA末 端断 片 お よび サ ブ ク口 ー ンか ら34の 分 子マ 一 カ ー(2SCAR、32RFLP) を開 発 し、 ま た 既存 のRFLPマー カ ーXNpb220お よ びST10と をそ れぞれSCARマ ーカーに変換し、計36個の分子マーカーを得た。これらの分子マーカーを用い、Stvb‑i 座近傍での組換え系統の解析から、S t‑vb‑i遺伝子は約120kbの領域内に限定した。

以上の結果、Stvb‑i遺伝子のク口ーニングの基盤が整った。

5)抵抗性 遺伝子と密 接に連鎖するSCARマーカーST10による縞葉枯病抵抗性個体 の選抜の可能性を検討した。SCARマーカーによる判定と生物検定による判定は一致 し、Modanに由来する縞葉枯病抵抗性個体・系統の選抜効率は極めて高く、DNAマ ーカー選抜による育種ヘ応用ができるものと認められた。

    以上のように、本論文は、ウイルス遺伝子のコーディング様式を明らかにして、

外被夕ンパク質で形質転換した抵抗性イネ作出を可能にした。さらに、インド型イネ Modanに由来するイネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb‑lの、物理地図上における抵抗性 遺伝子座を限定して、この遺伝子を塩基配列レベルで解析出来るようにした。これら の研究成果は、関連学会で学術上高く評価されている。

    よって、審査員一同は、齋藤由里子氏が博士(農学)の学位を受けるに十分な 資格を有すると認めた。

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